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トレーラーの一階で、騎士団幹部達は休憩を取っていた。
四聖剣の3人は隅の方に陣取って座っている。
傍目にはいつものように休憩を取っているように見える。
しかしいつもと違うところがあった。
一つには四聖剣と一緒に休憩を取る事の多い藤堂の姿がない事。
一つには四聖剣の最年長者、仙波の姿がやはり見られなかった事。
そして一つにはその場にいる卜部、千葉、朝比奈の様子がいつもよりも硬い事があげられるだろう。
ゼロのいない緊張しなくても良い、穏やかな時間。
それを破るかのように、ばたばたと騒々しい音とともに駆けつけてきたのはその場にいなかった幹部の南だった。
「扇ッ!大変だ」
その言葉に、一同の表情に一瞬にして緊張が走る。
名指しされた扇は、がたっと立ち上がって南を見る。
「どうした!?」
「今、キョウトから‥‥てか桐原公から連絡が有って、至急に扇副司令と話がしたいって」
南の言葉に、その場の空気がざわついた。
何故「副司令」の扇を名指ししたのか?とそれぞれが疑問に思ったからである。
「‥‥おれ、に?ゼロにではなく?」
「あぁ、出来るだけ早い方が良いらしいから‥‥‥‥」
戸惑っている南にこれ以上聞いても分からないだろうと、扇は頷いて出口へと向かう。
そこへ着信音が鳴り響き、扇の足も止まった。
慌てたのは着信音が鳴った携帯の所持者である卜部である。
「ッ‥‥すまん」
卜部はそう言うと幹部達に背を向けるようにして通話を繋げた。
『すまない。今、良いか?』
スピーカーにしていないので、相手である藤堂の声が聞こえるのは当然ながら卜部だけである。
「あー‥‥はい」
『‥‥不都合ならば、適当に相槌していれば良い』
「はい」
卜部の様子に足を止めたままの扇を筆頭に視線が卜部に集中している。
『桐原公が扇に連絡を取るそうだ。一応、おれのところにも連絡が有った為に至急に出かけたと言う事にしておいてくれ』
「え‥‥と」
『これから戻る。話は戻って、落ち着いてから話す。頼んだ』
「えッちょッ待ってくださいッて、それなら‥‥って切れてるし」
慌てた声を出した卜部はがっくりと肩を落として切れた携帯に力ない苦情を述べた。
「‥‥今の、藤堂さんか、仙波さん?」
そろっと尋ねたのは急ぎのはずの扇だった。
「あー‥‥中佐、です。中佐のところにも桐原公から連絡が有ったとかで‥‥」
卜部は答えながらも恨めしげな視線を携帯に向ける事を忘れない。
無言で続きを促す恐らくはその場全員の視線を受けて、卜部は「この落とし前は取って貰いますからね、中佐ぁ」と心中で叫んでから続けた。
「大至急だって呼び出されたとかで、仙波さん連れて出たそうです。詳細は戻ってからで、後扇さんにも桐原公から連絡が行くとかなんとか‥‥」
卜部の説明に、視線は自然と扇へと移る。
扇はうろたえながらも「と、とにかく桐原公と話をしてから、だな」と言うと通信室へ向かう為に扉から出て行った。
残った幹部達は顔を見合わせてから、扇の後を追う事にしたらしく、我先にと部屋を出て行った。
残されたのは四聖剣の三人だけとなった部屋で、卜部は深々と溜息を吐いた。
「中佐はなんと?」
「んー‥‥とだな」
卜部は唸りながら周囲を見渡し、誰もいない事を確認すると、声を潜めて続ける。
「急用で仙波さんと出掛けたってぇ先が桐原公んとこだったらしいな。んで、これからこっちに戻って来るんだと。後は言ったとおりだ」
「‥‥‥あれ?じゃあ桐原さんって今こっちに出てきてるんですか?」
「じゃねぇのか?」
引っ掛かりを覚えた朝比奈が尋ねると、卜部は投げやりに答えて嘆息した。
一方扇は桐原との連絡を取り付ける。
『すまぬな』
「いえ。‥‥それで、おれに話とは‥‥」
『実は所用で租界にきておるのだがな。身辺をうろつく不振人物を捕らえてみれば騎士団の者らしく、相違なければ引き取りに来るように、との要請をな』
桐原の言葉に扇と、部屋の外で聞いていた幹部達は驚く。
「えっと、藤堂さんを呼んだのがその件、ですか?」
『いや?それはまた別件だな。‥‥さて、所持していた身分証には「ディートハルト・リート」とあるのだが?』
扇は危うく声を上げそうになり、背後から聞こえた「ぐぇ」とか「げぇ」とか「なにしてんだあの野郎」と言った声は無視する。
「た、確かに、団員‥‥ですが‥‥。き、桐原公に何かご迷惑を!?」
扇は蒼白になるのを感じながらもなんとかそう尋ねてたのだった。
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作成 2008.08.19
アップ 2008.10.02
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Ⅳ.ばったり遭遇「桐原+α」編 【5】アジトにて。留守番四聖剣と苦労人扇。
一方アジトでは?という感じの話でした。
留守番四聖剣に藤堂から、扇には桐原からの連絡が。
まぁ、精々驚いてください幹部一同様、でした。