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──「反響と戦慄」編──
ダールトンは黒の騎士団の格納庫にそれを見つけた時、柄にも無く絶句していた。
「あぁれまぁ、グロースターじゃないのぉ。これってぇ、あんたの?」
いつの間にか、隣に来ていたラクシャータがのんびりと驚いた声を上げた。
「わたしの専用機ではあるが、わたしが持参したわけではない。‥‥‥‥何故ここに‥‥?」
グロースターの隣にはサザーランドまで並んでいる。
「わたしが運ばせておいた。次の戦闘には参加して貰おうと思ってな」
ゼロの声にダールトンとラクシャータが振り返ると、ロイドとジェレミアを纏わり付かせたゼロと、軍事責任者の「奇跡の藤堂」がいた。
「貴方が?まさか単独で潜入なさったとは言いますまいな?」
「‥‥‥‥おれも聞きたい、ゼロ」
藤堂が問いに便乗する。
「いや?流石に一人で二機同時は無理だ。短期の臨時協力者を調達して任せた。その際、操縦させたから将軍とオレンジ君は調整に念を入れてくれ」
ゼロは軽くそう答えると、「ラクシャータ、プリン伯も協力してやれ」と技術者二人にも声をかけた。
「いぃわよぉ」「任せてくださ~い、我が君♪」
ラクシャータとロイドはあっさりと快い返事を返したが、主の手を煩わせたとジェレミアは恐縮し、藤堂とダールトンは気にかかる言葉に眉を寄せていた。
「ゼロ。その、『短期の臨時協力者』というのはなんだ?」
「言葉通りだが?藤堂。オレンジ君のナイトメアは紅蓮が壊していたから、そこらのを盗って来たらしいがな」
とぼけているのかホントに分かっていないのか、そう説明するゼロに、藤堂とダールトンは顔を見合わせてからそれ以上の質問は控える事にした。
ダールトンの出奔をイコール黒の騎士団への転向と結びつける事は出来なかった。
既にロイドという前例が有ったからこそ、余計に結びつける事を拒否していたと言うべきだろう。
更にダールトンの人柄というか、人格というか、およそ寝返りをするような人物に見えなかったという事も一因だった。
そうして、捜索という無為な時を過ごしている間に、気付けばジェレミアという三人目が軍病院から消えていた。
ジェレミアはオレンジ疑惑という恨みをゼロに抱いていると広く思われている為、更に騎士団と繋げる声はなかった。
どちらも、騎士団の出動がなかったせいだとも言えたが。
コーネリアは、エリア11に到着したばかりのシュナイゼルに呼ばれ、ギルフォードを連れて彼の執務室に来ていた。
「お呼びと伺いましたが?」
「あぁ、そうだね、コーネリア。まぁ、座りなさい。ギルフォード卿、君もね」
手元の書類から目を離さないまま、書き付ける手を止めないまま、そう言ったシュナイゼルにギルフォードは眉を寄せた。
しかし、コーネリアが気にする事無くソファに沈み、ギルフォードを招いたので、気を落ち着かせたギルフォードもソファに座った。
一段落をつけたシュナイゼルが顔を上げて立ち上がり、コーネリアとギルフォードの正面に座るのに数分。
「‥‥それで、義兄上。お話とは?」
「ロイドが黒の騎士団に下ったと聞いたのでね。相対した君達に直接話を聞こうと思ってね」
シュナイゼルの言葉に、今度はコーネリアも渋面を作る。
「義兄上。今はそれどころではないのですが」
「あぁ。ダールトン将軍が出奔したんだってね。‥‥それにクロヴィスのところにいたジェレミア辺境伯もだね」
「全く。何を考えているのかッ!」
「そう言えば、グロースターとサザーランドが紛失したんだって?盗まれたのかぃ?」
シュナイゼルの言葉に、コーネリアとギルフォードは「昨日の出来事なのに何故知っている!?」と目を剥いた。
「まさかとは思っていたのだけど、二人とも騎士団に下ったのではないかな?」
「そんなッ!ありえません、殿下。ダールトン将軍は真面目実直な方ですし、裏切りをおこなうような人物では‥‥。それにジェレミア卿はゼロを恨んでいます」
ギルフォードが慌ててダールトンの弁明をし、ジェレミアの事情というか私怨すら出して説明する。
弁明しながらもギルフォードにも思い当たる節が有ったので、その勢いはあまり強くはなかった。
「しかしナイトメアを持って行った。ダールトン将軍の専用機とジェレミア辺境伯が乗っていた物と同じ型のがね」
シュナイゼルはそれでも平然としている。
「何が仰りたいのですか義兄上」
「奪ったのは使うからだろう?次の黒の騎士団との戦い、二人が出て来る事を想定しておいた方が良いよ?」
コーネリアはシュナイゼルの忠告めいた言葉に、気分が重くなるのを感じていた。
ブリタニア軍は驚愕していた。
コーネリアとギルフォードは、シュナイゼルに可能性を示唆されていただけ驚きは少なかったがそれでも愕然としたのだ。
ゼロのナイトメアと思われる無頼の隣に、赤い最精鋭紅蓮弐式と、「奇跡の藤堂」の乗る月下隊長機がその存在を主張している。
その周囲に、元特派の主任ロイド・アスプルンドが乗っていると判明しているランスロットが今度は最初から姿を見せていた。
更にはダールトン専用機のはずのグロースターと、サザーランドが一機、どちらも先日盗まれたナイトメアが控えているのだ。
『ま、まさかダールトンだと言うのかッ!!?』
コーネリアは思わずオープンチャンネルでそう叫ぶように訊ねていた。
『その通りですよ、コーネリア皇女殿下。この度、採用させて頂きました。そうそう、騎乗するナイトメアがないと不便だと思い徴収させて頂きましたよ?』
応じたのはゼロで、人を喰ったような言いように、ブリタニア軍将兵は呆れ、ダールトンは慌てる。
『ゼロッ。その、もう少し穏便な言い方をして戴きたいのですが』
『穏便?‥‥グロースターとサザーランドは有り難く受け取りました、で良いか?』
『ダールトンッ!!何故そこにいる?わたしに愛想をつかせたのか?そんなに至らない主だったというのか!?』
『いいえ、姫様。わたしは姫様にお仕えする事が出来て幸せでございました。ですが、ゼロを敵にする事だけは出来ません』
『何を言っている!?』
『‥‥お気持ちは変わりませんか?ダールトン将軍』
コーネリアの焦る声とは異なり、ギルフォードは何かを悟ったような、冷静な声音でダールトンに問いかけた。
『変わらぬ。姫様には申し訳ないと思いますが、わたしは今後、ゼロにお仕えする所存です』
『くッ‥‥。わたしはそんなにゼロに劣ると言うのかッ!答えろッ、ダールトン!!』
「ぅわぁー。コーネリア皇女殿下ってば気づいてないんですねぇ~」
騎士団内の回線でロイドがポツリと呟くように言う。
「‥‥確かに気づいておられなければ、この反応は致し方ないとは思われますが‥‥」
それを受けてジェレミアが応じる。
「その点、ギルフォードは気づいているようだが?」
そう割り込んだのは、オープンチャンネルを切ったゼロだった。
「彼はコーネリア殿下の選任騎士だからねー。先に将軍が来ちゃった事も手伝って身動きできないんじゃないかなぁー、逆に?」
「身動き‥‥って、別に気づいたからと言って必ず寝返るとは限らないだろう?」
「「限るから申し上げてるんです(よー)。我が(君/主)」」
ロイドとジェレミアに同時に言われて、ゼロは「そ、そうなのか‥‥」と曖昧に頷いた。
『劣りはしません。ですが‥‥』
『ダールトン将軍。貴方がそちらに付く事にしたと言い切った以上、最早覆りはしないと判断し、今後はブリタニアの敵として扱います』
ダールトンの言葉を遮るように、ギルフォードはダールトンに対して宣告を下し、言葉を切ってそれを聞いたダールトンは笑みを見せた。
『‥‥それで良い。ギルフォード卿。‥‥ゼロ、ご命令を』
『なッ‥‥ギルフォードッ、何故!?』
慌てたのはコーネリアで、ダールトンを切り捨てるような事を言ったギルフォードに抗議した。
『藤堂、カレン、‥‥‥ロイド、ダールトン、ジェレミア。仙波、卜部、千葉、朝比奈。作戦を開始する』
ゼロは暫く迷った後、オープンチャンネルで言う事でもないか、と愛称を言うのを控えて命じた。
これに若干二名程が狂喜乱舞したのはいうまでも無く。
「ハイテンションな白兜とサザーランドがこれまで以上の活躍を披露した」とだけ記しておく事にする。
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作成 2008.05.28
アップ 2008.10.04
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黒の騎士団入団試験 【挿話7.5】反響と戦慄編 ゼロ:「必ず寝返るとは限らないだろう?」
オレンジ君入団後にダールトンと一緒に戦場にてお披露目しました。
なので、タイトルはロイドの戦場お披露目と似せてみました。
一緒に戦場に出て来ているはずのグラ騎士の反応がありませんでした。
いやぁ、ネリ様が大暴走していたので割り込めなかったんでしょうねぇ~。
........て事にしておきます。