※「対決と救出」の続きです。
ガウェインのコックピットが閉まるのを見てから、ゼロはカレンに向き直る。
ちなみに、忘れ去られた感のある枢木スザクは、まだ意識を飛ばしたまま車椅子の上に簀巻き状態で転がっている。
「‥‥‥黙っていた事、すまなく思う。‥‥だが、良いのか?」
素性を知ったと言うのに、変わらないカレンに、ゼロは戸惑う。
「良いの。貴方が何故戦場を離れてここに来たのか、それも理解できたし。‥‥第一発端はあの場所を守るように言われていた騎士団の落ち度でしょう?」
カレンはそう応じ、「だったら騎士団の誰に対しても文句は言わせないわ」と笑った。
「‥‥そうか。ならば、租界の戦闘にキリがつき次第、生徒会のメンバーと咲世子さんを連れてきて欲しい。ナナリーを頼みたいから」
「‥‥一緒にいてあげないの?‥‥ってか、まだ勝てると思っているの?これだけ長く『ゼロ』が離れているのに?」
ゼロが離れてから短い時間しか租界にいなかったカレンだが、それでもかなりガタガタとなった騎士団を見ていたので、思わず尋ねていた。
「藤堂とディートハルトに任せてきたからな。まぁ後方は扇ではなく南だったが、それでも容易く崩させたりはしないだろう?」
「‥‥‥その言葉。みんなに聞かせてあげたいわね」
ゼロの言葉が無意識の信頼の現われのように感じられたカレンは、ポツリと呟いた。
「それに、今は『オレンジ君』も租界に戻っている」
「あッ、それさっきも言ってたけど、あんな怪物が租界に戻ったんじゃ、それこそみんな全滅してるんじゃ‥‥」
カレンは思い至った可能性に青くなる。
「あぁ。一応『間違っても騎士団には攻撃するな』とは言ってある。騎士団がヘマをしない限りは平気だろう」
「‥‥‥言ってあるって?‥‥それに、ヘマって?」
「一応味方につけた。半分な。『オレンジ』の言葉で暴走するが‥‥それさえ言わなければ、騎士団を襲ったりはしないはずだが?」
「オレンジ卿を味方につけたんですか?ゼロが?‥‥あんなにゼロを追い掛け回していたのに!?」
ゼロは頷きつつも、「その言い回しはどうかと思うぞ、カレン」と内心で呟く。
「巧くいけば、租界に戻る頃には、騎士団の勝利で戦闘に幕が下りているかも知れないな」
『おい。何時までお喋りしているつもりだ?いい加減戻らないのか?』
痺れを切らしたらしいC.C.が回線を開いて声を掛けてきた。
「そうだったな。スザクは紅蓮に乗せてくれ。流石に四人は乗らないからな。それとエナジーフィラーの交換を」
「わかりました。ゼロ♪」
カレンは元気良くそう言って満面の笑みを見せた。
「‥‥ぅ‥‥こ、こは‥‥」
枢木スザクの呻き声に、カレンは顔を顰めた。
どうせなら租界に着くまで気を失ったままだったら良かったのに、と思う。
「き、君は、カレン、か?」
「そうね。暴れないでね、枢木。狭いんだから」
カレンがそう言った端から枢木スザクは縄を解こうと足掻く。
「暴れるなって言ったでしょ。落ちたいの?」
「き、君は騙されているんだ。ゼロにッ!」
「その話なら聞く耳持たないわ。‥‥あんたの言葉に一貫性というか、筋の通った主張が出来たら聞くくらいしても良いかもしれないけど、今はないものね」
「ゼロは間──」
「間違ってる?相手を否定しているだけ、って言うのよそれ。否定も批判も主張とは言わないでしょ?反論って言うんだと思うけど?」
カレンはスザクの言葉を引き継ぎ、冷ややかな声を投げた。
「あんたの中には否定と批判と反論と、後は何?自己弁護かしら?自分は正しいって?それだけなんでしょ?」
「違うッ!おれはッ!」
「ねえ、『虎の威を借る狐』って知ってる?あんたの事よね?『ブリタニアと軍の威を借りてる枢木スザク』」
「違うッ!」
カレンは「スザクは気付いていないのだろうか、今もまた否定しかしていないということに‥‥」と思って溜息を吐いた。
「‥‥さっきの話、わたしも一つして良いかしら?」
「‥‥‥‥。さっきの?」
「そ。『過程と結果の境界線』の話よ」
「‥‥聞いてたのか?てか君かッ!おれを殴ったのは」
スザクの非難の眼差しも口調も、カレンは全て無視してのける。
「ねぇ。『結果』って最終目的地、最終目標の事だと思わない?」
「‥‥‥そうだな。それが?」
「ブリタニアがどこまで行こうとしているのか、知ってる?」
「‥‥‥‥どこまで?」
「あちこち占領してエリアという名前にして統治して、それが『結果』だとでも?全て『過程』よ。現在進行形の。さて、この『過程』は間違ってないのかしら?」
「‥‥過程?これが?全部?」
「だって、ブリタニアは全世界の統治が目的だもの。EUも中華連邦も、全てをエリアとして支配する‥‥その『過程』よ、今って。で、正しいのかしら?」
「‥‥‥‥」
「都合が悪くなるとだんまり?あんたって、ほんっと目の前の事しか見えてないのね。てか目の前の事すら見えてないわ」
「‥‥どういう意味?それに見えてないのは君じゃないの?‥‥ゼロの──」
「正体‥‥とか?知ってるわよ。そしてわたしはこの場所。零番隊隊長紅月カレンとしてここにいるの。おわかり?」
カレンはスザクのこの問いが今で良かったと思った。
これが洞窟内で言われていれば、ナナリーを見る前に言われていれば、ぐら付いただろう自分を知っているから。
「‥‥あんたこそ、知ってるのね。それでよくもまぁあれだけ否定して来れたものね。親友の主張を否定し、非難し続けて」
カレンは、少々狭くなろうともスザクを紅蓮に乗せたのは正解、と身柄を預かった自分を褒める。
これをガウェインの中でやられた日には、と考えただけでゾッとする。
スザクが動く気配を察したカレンは慌てて言う。
「で、都合が悪くなると暴力に訴えるのよね。流石名誉ね。ブリタニアの法に殉じてるって褒めるべきなのかしら?」
スザクが一瞬動きを止めた隙に、カレンは懇親の力を込めて拳を振るった。
カレンは自分が暴力に訴えた事については「レジスタンスだし、良いわよね、このくらい」と開き直っていた。
了
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作成 2008.03.07
アップ 2008.03.20
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対決と帰還 租界に戻る前。スザクv.s.カレン。
あははははは....対決編は諦めた。
神根島から租界に戻る途中の紅蓮弐式内で、
スザク断罪の第二段(Ver.カレン)。
断罪が、書いても書いても出て来るのは何故でしょう?
オレンジ君名前だけ~。
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