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──面接「ダールトン」編──
とうとう、ゼロは特例として異例の決断をした。
何しろ、ディートハルトがそれを見るなりゴミ箱行きにしたような経歴書なので、当然ながら正規の試験を通していないからだ。
ディートハルトが密かに人を介してその旨の通知を届けた。
よって、入団希望者アンドレアス・ダールトンの面接がおこなわれる事になった。
ちなみに面接官は、事情を知る藤堂とロイドをつれたゼロ本人である。
ついでに言えば、面接場所はゲットーでは有るが、騎士団とは関係のない場所が選ばれていた。
特派の主任が出奔したと聞いた時、まさか、と思った。
だがそれ以外に奴が消え失せるとは考えられず、わたしは進退を迫られていた。
特派とは第二皇子が奴の為に作ったと言っても過言ではなく、それを全て投げ出す程の「理由」など、わたしはほかに知らないのだ。
一緒に消えたランスロットが騎士団にて確認できた時、わたしは確信した。
即座に身辺を整理し、さり気なく引継ぎをおこない、心中で姫様に頭を下げた。
経歴書を作成し、何度も漏れがないか確認して、投函した。
「ホントに来たんだ~?ダールトン将軍」
ダールトンがその部屋に入るなり、特派の主任の声がダールトンの耳に届いた。
しかし、ダールトンの視線は真っ直ぐとゼロに向けられていた。
「何故、とお尋ねしても宜しゅうございますか?」
ダールトンは用意されていた椅子にも座らず、ゼロに問いかける。
途端に、スチャッとロイドは銃を取り出して照準をダールトンに向けた。
「否定とかぁ、非難とかぁ。そー言う事の為に来たんなら即座に撃つけど~?」
「その気はない。ただ‥‥。本人の口からお聞きしたいと望む事も許されませんか?」
「何故。そう尋ねたいのはわたしの方だな。コーネリアを見限ったのか?ユーフェミアを見放したのか?」
「‥‥そう取られたとしても仕方ありますまいな。‥‥唯、わたしは貴方にこそお仕えしたい、と望むのみでございます」
「ダ~メ。騎士にはぼくがなるんだからぁ~」
「‥‥藤堂。プリン伯爵を追い出すか?」
ゼロの言葉に続き、組んでいた腕を解いた藤堂が立ち上がろうとしたのを見たロイドは慌てた。
「むぅ。大人しくしてますぅ~」
「‥‥わたしの望むもの。それは、『優しい世界』。それと『母の死の真相』だ。クロヴィスは言った。『真相はシュナイゼルかコーネリアが知っている』とな」
ゼロはそう言い、「お前は何か知っているか?」とダールトンに尋ねた。
「ん~?それって暗殺しに行った時にですかぁ~?苦し紛れとかじゃ~?死にたくない為のぉー」
ロイドが首を傾げる。
「ないな。クロヴィスは『やってもいないし、やらせてもいない』と断言した。‥‥つまり奴は無関係だ」
「‥‥‥。珍しいな。君がそこまで信を置くと言うのは」
藤堂が苦笑混じりに言った。
「あぁ。‥‥クロヴィスが嘘をつく時は、かなり判りやすいからな。‥‥そう、少しも、‥‥変わっていなかったな」
声音を変えて、懐かしむようにゼロは言った。
「‥‥‥。我が君ぃ?前々からお尋ねしたかったんですけどぉ~?もしかして『奇跡の藤堂』って我が君の事知ってらっしゃるんですかぁ~?」
「ん?あぁ。バレてるな。でなければこんな話できないだろう?」
「ぼくの努力はぁ~?」
「バレてるのは藤堂にのみだからな。その点助かっているのは確かだが?」
「‥‥話がズレたぞ」
「あぁ。そうか。クロヴィスの言葉に嘘はない。ならば次はシュナイゼルかコーネリアに尋ねるだけだ。‥‥もっとも」
キッパリ言い切ったゼロは、そこで言葉を切った。
「‥‥もっとも、クロヴィスが知らないだけで他にも知っている者はいるかも知れないがな。確実なのはクロヴィスが無関係だと言う事だけだ」
断言するゼロに全く疑う様子がない事に、戸惑った藤堂が躊躇った後問う。
「‥‥‥昔、クロヴィスとは仲が良かったのか?」
その問いに答えたのは、ゼロではなくダールトンとロイドだった。
「良く、チェスをしておいででした。‥‥ほとんどクロヴィス殿下は負けてばかりでしたが、それでも足繁くお通いになられておりましたな」
「ほ~んとぉに邪魔だったなぁ~。突然やってきて我が君連れてっちゃうんだもん。ぼくは約束まで取り付けてたってのにさ~」
「それは‥‥仕方ないだろう。クロヴィス殿下は高位の継承権を有しておいででしたし、無碍にもできますまい」
昔話に話を弾ませる二人のブリタニア人に、ゼロは「これだからブリタニアはッ」と頭痛を覚えた。
「あー‥‥おれの問いのせいだが、話がまたズレたな」
藤堂もまた頭痛を覚えたのか、軌道修正を試みる。
「今一度尋ねる。ダールトン、お前は何か知っているか?」
「‥‥いえ。姫様がお調べになられていたのは知っておりますが、単独で動かれておいででして、わたしは詳しくは聞いておりませぬ」
ダールトンは首を振ってそう答えた。
ゼロは「そうか‥‥」と小さく呟くと、気持ちを切り替える為に小さく息を吐いた。
「‥‥‥ダールトン。他に軍内でわたしの素性を知る者はいるのか?」
「わたしはアスプルンド伯の出奔とランスロットの騎士団加入で気付きました。アスプルンド伯を知る者の半数は遅かれ早かれ気付くかと」
ダールトンの言葉に、ロイドは藤堂から睨まれてしまった。
「‥‥シュナイゼルとセシル、特派の連中もか。‥‥これにダールトンの出奔も重なればコーネリアとギルフォード、それにユーフェミアも気付くな」
「コーネリア姫様はその前にお怒りになられるでしょうな」
「当然だな。コーネリアは裏切りを許さないからな。特にダールトンとギルフォードには絶対の信を置いていたはずだろう?」
「ですが、貴方だけは裏切る事は出来ません。それと知って敵対を続ける事も‥‥」
「‥‥何故だ?わたしの何処を見て、そう思う?」
ゼロは訝しげな声をダールトンに投げる。
「わたしは、貴方から何度か声をかけて頂きました。初めは偶々だと思いましたが、その後も他に気づいた者はおりませんでした」
ダールトンは変わらず真っ直ぐとゼロを見ながら言い、「貴方だけです。コーネリア姫様さえ気づかなかったというのに」と重ねた。
「あ、それわかる~。けど、何度かって、そんなに体調不良するなんて軍人も大変だねぇ~」
ロイドは明るく応じ、「でもそんなに声掛けられてたなんて羨ましいなぁ~」と呟いた。
「お前の立ち位置はコーネリアの後ろだからな。‥‥しかし他にも気づいた者はいただろう?」
「いえ、全く」
「そうか?お前とプリン伯爵、それにオレンジ卿は特にわかりやすかったが」
平然と言ったゼロを見て、藤堂は「ダールトンの入団も確定か‥‥」と思い、嘆息した。
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作成 2008.03.08
アップ 2008.03.22
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黒の騎士団入団試験 【3】面接「ダールトン」編 ゼロ:「お前は何か知っているか?」
2人目の面接とか言いながら、話がそれまくりました...。
何故か故クロヴィスが出張ってますが。
ダールトンの入団の動機は.....、
自分の不調を唯一人気づいたルルに仕えたかったから、のようです。