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(「入.団試.験」設定/過去捏造/皇子i.n本.国/セ.シルi.n離宮厨房)
セシルは高い踏み台を持ち込んで手伝いを始めた皇子の料理の腕に感服した。
そして厨房には皇子専用の調理器具が用意されている事に驚いた。
この離宮では料理も皇族の嗜みのようであるのだと少々不思議に思いながら、皇子に見惚れる。
そして自分の料理を思い浮かべて穴があったら入りたくなった。
この皇子の腕の前では、何を出しても納得されないに違いないと、セシルは落ち込んだ。
「‥‥?どぅしたせしるつくらないのか?」
セシルを向いて問いかける皇子の手は休む事無く小さな手で小さな包丁を動かし続けている。
「殿下ッ余所見をしながらでは危ないですわ」
「へぃきだだけどありがとぅせしる。それでつくらなぃのか?」
「あの‥‥実はあまり上手ではないので‥‥」
「ん?ははうぇがいってぃたぞ?」
消え入りそうに俯くセシルを不思議そうに見上げた皇子が首を傾げて言う。
「だれかのためにつくるのがいちばんおぃしぃって。せしるがぼくにつくってくれるといぅからぼくはななりーとせしるにつくるんだ」
にっこりと微笑まれて、セシルは心を込めて一生懸命作る事に決めた。
そしてその日、セシルは皇子から「ふしぎなあじだけどおぃしぃなせしる」とのお言葉を賜ったのだった。
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2008.06.14作成
2008.06.29-2008.07.06up
2008.07.31再録
※「説明Ⅰ」の続きです。
「他に質問は?」
和らいだ空気の中、カレンは幹部達を見回して尋ねる。
「‥‥カレンはゼロの正体を知っているのか?バリバリの敬語だったのが、さっきから、何気にタメ口なんだけど?」
カレンは「さっきも言われた事だったのに」と反省しながらも、頷いた。
「‥‥‥。そ、そうね。だってゼロの大切な人が学園の人だったでしょ?で、その人の事知ってるからわかったって言うか‥‥」
「「「教えろ。‥‥ラクシャータでも良いけど」」」
幹部達は揃ってカレンとラクシャータに詰め寄った。
「あらぁ?わたしは言う気はなくってよぉ。下手な事言って怒られるの嫌だものぉ。知ってると思うけどぉ、怒るとすッごく怖いからねぇ」
「ちょッ‥‥ラクシャータ!?怒られるって、‥‥ゼロに?」
説明しておくようにカレンに指示を出したのはゼロなのに、それで怒られるのかとカレンは驚いた。
「う~ん。そーねぇ。ゼロにもだけどぉ。ゼロの事がとぉっても大切な、ゼロの大切な人にだけは怒られたくないわねぇ」
しみじみと語るラクシャータの顔色はどこかしら悪い。
「え?ちょッ‥‥それって真面目に?」
人物像に当てはまらず、カレンは混乱する。
「もちろんよぉ。お互いに、お互いの事が大切で見ているだけならとぉっても微笑ましいのよねぇ。確かに。‥‥見ているだけならねぇ」
最後にポツリと付け足したラクシャータに、逸らされたその視線に幹部一同慌てる。
「「「「ら、らくしゃあた?」」」」
カレンもまた慌てた。
「ら、ラクシャータ。真偽はすっごく気になるんだけど、それ以上はストップ。ゼロの大切な人よりも先にゼロがキレるわ。今はまずいのよそれも」
仙波と千葉はカレンが止めた理由を正確に把握して、頷く。
メカオレンジがいる以上、ゼロの怒りがそのまま発動に繋がりかねないのだ。
「まずいってぇ?」
「禁句男よ。さっき会って来たんだけど、あれはゼロ至上ね。ゼロの事を悪く言っても、ゼロを怒らせても暴走するわよ」
「お、おい。敵になるんじゃなかったのか?」
「それは禁句を言った時だけ。実際さっきも暴走してたけど、一部屋滅茶苦茶にしてたわよ」
「あらぁ~。それは大変ねぇ。ゼロとゼロの大切な人に対する言動にはかぁなぁりぃ、気をつけた方が良いって事ねぇ」
「あなたもよ、ラクシャータ。ゼロの大切な人がラクシャータの言うとおりなら、ゼロは気付いてないわよ、確実に。暴露したなんて知られたら‥‥」
「ゼロってばぁ、まぁだ気づいてなかったのねぇ。昔から少し鈍いところがあるとは思っていたけどぉ。それとも大切な人の方が一枚上手なのかしらぁ?」
ラクシャータは顔色が少し悪い以外は変わらず、口調もいつもどおりのんびりとしたものだったが、カレンの口調は固い。
仙波と千葉はその「ゼロの大切な人」を藤堂が運んだ事を朝比奈からも聞いていたので、少し蒼褪めた。
幹部達は「ゼロは一体、どんな相手に引っかかってるんだ!?」と困惑を隠せない。
そこへ足取りの覚束ない様子でディートハルトがやってきた。
「なっ。ディートハルト、なんでここに?さっきからフラフラと。任せてたはずよね?」
目敏く見つけたカレンは、ディートハルトに抗議する。
「紅月君。頼みますから代わってくれませんか?‥‥わたしには‥‥あれ以上あの場所に留まるのは、無理です!」
全面降伏する勢いで、ディートハルトはカレンに縋る目を向けた。
さっきまで聞いていた話が話だっただけに、幹部達はディートハルトから少し距離を置く。
「ディートハルト‥‥。あんた、一体誰に何を言って誰を怒らせたのぉ?」
ラクシャータは呆れた様子でディートハルトを見る。
「わたしはッ!‥‥ゼロがジェレミア卿のところへ行った事と、ゼロの頭痛と耳鳴りが彼のせいだと言っただけですッ!」
「それは仕方ないわねぇ。どうせ、『オレンジの分際で、ゼロを苦しめているなんて』とかってぇ流れになったんでしょぉ?」
ラクシャータの言葉に、ディートハルトは目を見張ってラクシャータを凝視する。
「で、出だしは一言一句その通りですが、何故それをッ」
「お嬢ちゃん。ゼロがここに来てないのってぇ、てっきり会いに行ったんだと思ってたけどぉ?どぉこ行ってるのぉ?」
「‥‥枢木のところ、よ。閉じ込めて放置したって聞いたら、『まずはそちらか』って」
「あららぁ。知らないわよぉ。ゼロの大切な人から、敵と見做されたわねぇ、オレンジと枢木はぁ?」
「え!?どうして?」
「『まずは』って事はぁ。ゼロは大切な人のところへ行く予定だったってぇ事よねぇ。その予定がずらされたんだから当然でしょぉ」
ケラケラと笑うラクシャータの顔色はやっぱり少し悪く、最早笑うしかないとでも言う感じに見えた。
「‥‥‥‥そ、そんなに危険なのか?その、『ゼロの大切な人』とやらは‥‥」
千葉がなんとか声を絞り出すように疑問を口にする。
「‥‥‥‥‥‥それは、知らない方が幸せになれるわよぉ」
ラクシャータはさりげなく視線を逸らして遠い目をしながらポツリと呟いた。
「え、えーと。質問が終わりならわたしは‥‥『ゼロの大切な人』のところへ行くけど。‥‥勿論一緒に行きますよね?仙波さん、千葉さん」
キッとディートハルトを睨んでから、幹部を一瞥し、最後に仙波と千葉を顧みてカレンは言う。
藤堂からカレンと同行するように言われている二人には、是と答えるしかなく、揃って頷いたのだった。
了
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作成 2008.04.30
アップ 2008.07.25
(「災厄は突然に」設定/藤ル.ル/C.C.)
‥‥‥‥暇だ。
溜息が一つ、二つ、‥‥そして三つ。
最近、あちこちで順調に事を運ぶ「共犯者」殿のお陰で、わたしは退屈で仕方がない。
なのに、あいつときたら、退屈しのぎも兼ねてピザを食べていれば怒る。
チーズ君で遊んでいれば小言を言う。
もう嫌だ。
退屈で、暇で、わたしは死にそうだぞ。
こうなったら娯楽を提供して貰おう。
今なら少しくらい騒動が起こったって大事になんてならないだろうし、そうしよう。
わたしは色々と計画を考えながらにんまりと笑ったのだった。
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2008.06.10作成
2008.07.05-2008.07.11up
2008.07.29再録
(「ナナリーi.n騎.士団」設定/ゼロ+桐原)
『折り入って相談がありまして』
唐突に連絡を寄越したと思えば、前置きも無くこれだ、と桐原は苦笑する。
「相談?」
『えぇ。実は二、三お力をお借りしたい事が出来ました』
「‥‥何か言うてみよ」
『ルルーシュ・ランペルージを抹殺します。ナナリー・ランペルージの保護をキョウトにお頼みしたい』
相手から出た言葉に、桐原は眉を顰める。
「表で何か有ったと?」
『‥‥表での居場所が崩壊に直面致しまして。早急に安全を確保したいのですが‥‥。足が付きそうでして』
自嘲気味な声音で相手が言うのを聞いて、桐原はますます眉を寄せる。
「‥‥良かろう。妹姫の安全はキョウトが保証いたそう。兄についても必要な事は手配しよう。‥‥構わぬのだな?」
『はい。ついてはキョウトまでは騎士団を経由しようかと考えていますので、その許可と、護衛に四聖剣を』
相手の既に決意した声音に、桐原はくつくつと嗤う。
「修羅の道を行くか?」と以前桐原が聞いたその通りに、歩む相手に我ながら酷い事を言ったものだと言う自嘲を込めて。
「良かろう。受入れの準備に少し掛かるが、いつなりと参るが良い。‥‥神楽耶様も喜ばれよう」
『‥‥感謝します、桐原公』
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2008.06.18作成
2008.06.28-2008.07.05up
2008.07.26再録
ルルーシュは、エルとして笑顔を見せながら、内心苦虫を噛み潰して桐原を睨むのを何とか堪えていた。
全く、碌な事を言わない。
確かに、相手が藤堂と仙波だと聞いて好奇心が疼いたのがいけなかったのだろうが。(というか「どいつもこいつもゼロに無断で」と思った為だが)
そんな思わせ振りな言い方をする桐原に乗ったのが間違いだったのだろう。
桐原から「ゼロに会う為に黒の騎士団に行ってみるのも一興だぞ」なんて言われたところで、会えるわけがないのだ。
しかも桐原や二人だけならばともかく、この姿を全団員に見せるとなると抵抗もかなりある。
「ゼロ、か‥‥」
桐原の「ゼロをどう思う?」という問いに、藤堂はそう呟いたきり思案に耽る。
「桐原公は如何様に思うておられるのですか?」
その間に仙波が逆に桐原に尋ねる。
それには藤堂も興味を覚えたのか、考えを中断したように、桐原に視線を向けた。
「わし、か?‥‥そうじゃな。‥‥わしは期待しておるよ。あやつがブリタニアを倒す日を、な。待ち望んでおると言えば良いか?」
「ゼロに、それが出来る、と桐原公は信じておられる、と?」
目を見張りながら、仙波は再度尋ねる。
「そう、さな。あやつがその気でおる限り、いずれその日が来ると思うておる。‥‥その為にも大事なものはきちんと守っていて欲しいと願ってもいる」
藤堂と仙波は顔を見合わせる。
「ゼロの、大事なもの‥‥?」
「左様。‥‥あやつがゼロになっておるのも、日本の為に戦っておるのも、全てはその大事なものの為。それが無くなれば、ゼロは唯の復讐鬼になるであろう」
「‥‥唯の、復讐鬼‥‥?」
少女が、驚いたのか、桐原の言葉を復唱する。
「どうした?エルや。‥‥話が怖かったか?」
案じるように桐原は少女に声を掛けるが、少女はゆっくりと首を横に振った。
「いいえ。ですが、大切なものを失ったとすれば全ては色褪せてしまうでしょう。‥‥もしもそれが奪われたとすれば復讐に動くのは自然だと思いますわ」
少女は儚げな外見には似合わず、はっきりと言い、「それのどこがいけないのでしょうか?」と首を傾げた。
桐原は笑う。
「いけなくはないぞ。唯、わしら日本人や騎士団にすれば、ゼロが復讐鬼になってしまい、指導者を失うのは痛手、という話じゃよ」
まだ納得しきれていない少女に向かい桐原は続ける。
「エルや。主はゼロと気が合いそうじゃな。どうじゃ?直接話をしてみれば為になるやも知れぬぞ」
少女は溜息を吐いた。
「おじい様。‥‥わたくしとてナイトメアに騎乗出来るようでしたら自ら騎士団を訪ねたかも知れません。‥‥ですが‥‥」
それだけ言うと、少女は口を閉ざしてしまった。
俯いて、藤堂と仙波に見えない角度で桐原を睨むが、それを承知で桐原は笑った。
「わしの使い、と言う事で、行ってみぬか?そこな藤堂と仙波が一緒ならば手を出す輩もいるまいよ?」
面白い事を思いついたとばかりに、桐原は話を進めたがった。
行ったとしても、ゼロには確実に会えないのを承知している桐原の、それは過ぎた悪ふざけである。
「‥‥おじい様‥‥」
困った風情で、少女は桐原を呼ぶが、桐原はただ笑うだけだ。
「わしからゼロに手紙を用意しよう。それを渡せばゼロとて無碍にはするまい」
そこまで桐原に言わせてしまえば、少女はともかく、藤堂と仙波に断る術はなかった。
あくまでも控えめに拒否していた少女をよそに、こうして、少女エルの騎士団訪問が決まってしまったのだった。
桐原は書状を渡すと言って少女を伴い一度、奥へと引っ込んだ。
「‥‥宜しかったのですか?藤堂中佐。彼女も、あまり乗り気ではなかった様子ですが」
「桐原公としては、内部調査のつもりなのかもしれない。あのような少女を使うのはどうかと思うが‥‥」
二人だけになったその部屋で、仙波と藤堂はそれでも声を低めて会話をする。
「桐原公の意思が変わらぬのならば、連れて行く事になるだろうな。‥‥その時は仙波、彼女から離れるな」
「承知いたしました、藤堂中佐」
桐原の遣いとはいえ、あの少女はブリタニア人で、或いは団員の反感を買いかねない事を二人は理解していた。
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作成 2008.04.20
アップ 2008.07.24
コーネリアはユーフェミアとその騎士とをセシルに任せ、ロイドについてくるように言ってギルフォードを従え部屋を出た。
「義兄上はなんと仰っている?」
「シュナイゼル殿下はですねー。コーネリア殿下が合流した後はコーネリア殿下の指示に従うようにーっと仰ってましたよー」
「‥‥ユフィの名前返上の件については?」
「う~ん。それについては殿下も参っているみたいですねー。『直接皇帝に話を通されてしまっては白紙に戻す事も出来ない』って蒼い顔してましたー」
そう言うロイド自身は全然顔色を変えたりしていないので、信憑性に欠けるものはあるが、コーネリアは「そうか‥‥」と頷いた。
「コーネリア殿下はゼロが宣言した『合衆国』をどうされるおつもりですかー?」
「独立国など認めない。ゼロを抑えて廃止させるか『行政特区』にまで引きずり落としてくれる」
ギッと宙を睨みすえて、コーネリアはそう宣言した。
「‥‥それー、やめておいた方が良いですよー?」
「貴様。姫様に意見する気か?」
「ですがねー、ギルフォード卿?日本人達は今回の件で、『行政特区』が持つ欠点を数多く見つけてしまってますよねー。成功しませんって」
「ならば『合衆国日本』など潰すまでだな」
「ですからー。それをしたら、ユーフェミア殿下の宣言しようとした『行政特区』まで否定する事になりますよー?」
ロイドの言葉はあくまでものんびりとしていて、その実内容は辛辣だった。
「‥‥ならばアスプルンド伯はどうせよ、というつもりか?」
「まずは騎士団との講和、ですかねー?あちらは既に独立宣言しちゃってますから、今後はテロリストとしてじゃなくて一国として扱う必要があるかなーって」
意見を求められたロイドはそう言ってへらりと笑う。
「馬鹿なッ!黒の騎士団のこの暴挙と共にこれまでの事まで不問にしろとでも言うつもりか?」
「ですがねー。『行政特区』としてとはいえ、『日本』を認めるような発言を皇族の立場でしちゃってますからねー。まずは話し合いしないとまずくないですかねー?」
コーネリアとギルフォードはロイドの言葉が正しい事を認めてしまい押し黙る。
「それに、ほらー。黒の騎士団とゼロに呼びかけておいて、やってきたら騙まし討ち~って件も残ってますしー。謝罪も必要なんじゃないですかー?」
続けるロイドの言葉はそれもまた正論だった。
確かに、騙まし討ちがまかり通ると思われたままではこの先、ブリタニアとしての外交全体に大きな影響を及ぼしかねない。
それはエリアの総督としては見過ごしてはならない事だとコーネリアは「くッ」と喉を鳴らす。
「‥‥それは貴様の意見か?それとも義兄上の?」
「シュナイゼル殿下は何も仰って無かったですよー。ユーフェミア殿下の名前返上の件が相当堪えてらしたみたいでしたしー」
ロイドは腐れ縁というべき学友を思って嘆息する。
基本的に弟妹に優しい兄なシュナイゼルは、弟妹に降りかかる災いの報せには弱いのだ。
クロヴィス殿下暗殺の時には顔を見る機会はなかったが、やっぱり蒼い顔をしていただろうとロイドは思っている。
「‥‥しかしッ。ゼロが義弟クロヴィスを暗殺しているのは事実。それまで不問にせよと言うつもりか?」
そして目の前にいるコーネリアもまた、弟妹には優しい姉であり、仇をなす者には当然厳しくなるのだ。
「それはー。交渉で何とかするしかないんだと思いますけどー?こちらにだって報復しようとして周囲巻き込んだ弱みがありますしー?」
コーネリアの考える案はことごとくユーフェミアのおこないによってロイドに却下されまくる。
厄介な事だとは思っていたコーネリアだったが、事ここに至ってその度合いがかなり重いのだとの実感を伴った。
「くッ‥‥しかし。講和ともなるとわたしの一存では決められない。‥‥義兄上にも相談し、場合によっては皇帝へも話を通す必要が生じよう‥‥」
「大変ですねー。殿下でしたら、ユーフェミア様の『特区宣言』が危ないものだと理解されておいでだったはずですよー?何故許可を?」
ロイドに問われて、コーネリアは己の甘さを呪う。
確かに穴は色々とあるとは思っていたし、ダールトンにも早急に詰めるようには言っていた。
だが、まさか開始の日に、宣言すら出来ずに終わるとはコーネリアにすら予想できない事だったのだ。
もしも総督として許可をしなければ、コーネリアは「副総督であるユーフェミアを罰しなければならない」と言う心理が働いたのも事実だが。
「一度皇族として宣言して希望を持たせ、すぐに撤回するなんて人心を惑わすにも程がある」との非難を受けさせるには忍びないとも思ったかもしれない。
しかし、「或いはその方がマシだったのではないか」とコーネリアは今更ながらに思うのだった。
「‥‥どうするにしろ、ゼロにはそれなりの罰を受けてもらうぞ」
コーネリアの宣言には自嘲の色が混じっていた。
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作成 2008.06.27
アップ 2008.07.22
(「入.団試.験」設定/過去捏造/皇子i.n本.国/セ.シルi.n離宮)
セシルはすぐに皇子と皇女に打ち解けて貰えた。
皇女にせがまれて一緒に遊びながら、何か有れば困るとどこか気を張っていた。
セシルはだからすぐに気づいたのだろう。
皇族の住まう場所にしては人が少ないという事に。
「殿下。‥‥あの、使用人とか、いらっしゃらないのですか?」
セシルが尋ねた相手は皇子で、「もしかしたら聞いても判らないかも知れない」とも少し不安に思いながらだったけれど。
「いない。ははうぇがいないときにはひとはいないことになってる。でもせしるはははうぇがつれてきたからすきなだけいるといぃ」
幼い皇子の一生懸命な言葉を聞いて、セシルは「普通は逆じゃなかろうか?」と首を傾げる。
「あの、ロイドさ、‥伯爵とかは?」
「ろぃどはくるぞ?きょぅはははうぇがつれてぃくとぃってたからきてなぃけど。ぅんだれかきてる」
なるほど、とセシルは納得した。
今回は様子を見にやってくる人達がみんな都合がつかなかったから自分に白羽の矢が立ったのだという事を理解した。
「‥‥えーと、そうすると料理の仕度をした方が良いのかしら?」
にっこりとセシルは幼い皇子に微笑みかける。
皇子はこっくりと頷いてから一言、「てつだぅ!」と告げた。
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2008.06.14作成
2008.06.24-2008.07.02up
2008.07.28再録
(「災厄は突然に」設定/藤ル.ル/藤堂)
何故こんな事に‥‥。
困惑するおれをそのままに、おれ‥‥じゃなくてルルーシュ君は鏡の前から離れる。
「藤堂。ゼロの服、着方判るのか?」
すぐにそんな声が届くのだが、何故平気なんだ?ルルーシュ君‥‥。
おれは鏡に映る「ルルーシュ」に向かって口の中で呟いた。
普通はもっとこう‥‥、そう、おれのように驚かないか?
今日は厄日なのか?
朝から体力を使ったと思ったが、気力も既になくなりそうだ。
「藤堂、食べるだろう?」
再びおれの声でのルルーシュ君の言葉が届き、体力と気力を補充する為にも、おれは動き出した。
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2008.06.10作成
2008.06.30-2008.07.07up
2008.07.25再録
五機の無頼改が白兜を振り切って、洞窟に身を隠す事に成功した時、藤堂と四聖剣は、安堵から同時に息を吐き出していた。
そして、あの人外魔境としか言いようのない白兜を相手にして藤堂達の元に辿り着いたゼロを称賛する。
彼等とて一対一ならば逃げおおせる事は出来なかったと思うからだ。
仙波、卜部、千葉と相次いで無頼改から降りると、念のためにと銃を手にまだ姿を見せない藤堂の無頼改に近づいた。
朝比奈は無頼改から降りず、周囲の警戒。
何も言わずともそんな役割分担は出来ていた。
万が一傍受される恐れのある通信は使えないので、降りて来るのを待たなくてはならない。
じりじりと焦りながら四聖剣は藤堂が姿を見せるのを待っていた。
無頼改の中でモニターを通して四聖剣の動きを見ながら、藤堂は「さて‥‥」と思う。
腕の中には、気を失ったゼロがいて、今降りて行けば仮面を取ると言う流れになりそうで躊躇われたのだ。
テレビや雑誌で見て思っていたよりも随分と小柄で華奢にさえ思え、軽い身体に、まだ子供なのだと驚きを隠せない。
「ん‥‥ッ」
低く唸る声が藤堂の耳を打ち、ゼロが身じろぎしたのが伝わって来た。
「気がついたようだな。どこか痛むところはないか?」
藤堂の声にゼロはハッとして身を起こし、それから右腕を押さえて呻いた。
「急に動くからだ。今から降りる。下で手当てをしよう」
藤堂はそう言うと、ハッチの開閉スイッチに手を伸ばした。
「待てッ」
ゼロは掠れたものの、鋭い制止を発して左手を重ねた。
振り切る事は簡単だったが、藤堂は実行せずに動きを止めた。
「‥‥何故だ?」
問い掛け。
何についてかの言及はない。
「‥‥‥‥何の事だ?」
藤堂は思い当たる節があったがあえて尋ね返した。
「何故仮面を取らなかった?」
ゼロの再度の問いは藤堂の思った通りのもの。
「傷ついて意識のない者のか?そんな事はしない」
「今なら意識はあるぞ?」
「‥‥取って欲しいのか?」
「まさか」
「敵でもない者に、無理強いしたりはしないさ。‥‥もう降りて良いか?部下が外で心配しているのだが」
藤堂の言葉にゼロはハッとして手を引っ込めた。
「すまないッ」
律義に謝るゼロに藤堂は苦笑を返しながら、ハッチを開いた。
藤堂はひょいと、ゼロを抱き上げると「ぉいッ」と慌てた声を上げたゼロを無視してコックピットから降りて来た。
「無理はするな。千葉、手当てをしてやってくれ」
「‥‥承知」
ゼロを胡散臭く思いながらも藤堂の指示だからと頷き、治療キットを取りに無頼改へ向かおうとする千葉をゼロが止めた。
「手当ては不要だ。裂傷があるわけでもない。ただの打ち身や打撲程度のものだからな」
「それでも、スプレーや湿布をして固定して置いた方が良いだろう?」
藤堂が眉間の皺を深くして諌める。
「ッそれに、‥‥女性の前で服を脱ぐのは失礼だろう?」
藤堂に抱え上げられた状態でフェミニスト発言をするゼロに四聖剣は唖然となって絶句した。
千葉は確かに女性だが並の男よりも漢前なので、余り女性扱いをする者が周りにいないせいもあったが。
「ならおれがしてやる。千葉には他所を向かせておくし、だから大人しく手当てを受けろ」
藤堂が妥協して言う。
「‥‥‥‥‥‥‥‥頼む。済まない」
ゼロは暫く藤堂を見上げた後、ゆっくりと頷いて頭を下げた。
と、そこでまだ抱えられた状態だった事に気付いたのか少し慌てた声を出す。
「ッと、藤堂。とにかく降ろしてくれないか?」
今更と思いながらも藤堂は従おうとして、はたと動きを止めた。
「‥‥‥‥何故おれの名前を知っている?」
まだ名乗ってもいないのにと藤堂は訝しく思い尋ねた。
「‥‥『厳島の奇跡』藤堂鏡志朗は有名だからな。今回、わたしの策を読んでコーネリアの騎士を待ち伏せしたのもお前だろう、藤堂」
「‥‥そうだな」
「こちらの不手際まで察して退いたタイミングも評価に値する。‥‥迷惑をかけた事は詫びる。すまなかった」
藤堂達もまた確実に想定外の要素だっただろうし、示し合わせたわけでもないと言うのに、素直に非を認めて頭を下げるゼロへの評価は上がる。
「‥‥不手際と言うが、あんなのを相手にしては分が悪すぎるだろう」
仙波が慰めの言葉をかける。
「‥‥あぁ、確かにな。だがッ、わたしはいつも奴に‥‥ッ!‥‥すまない。愚痴を聞かせる気はなかったのだが‥‥」
憤りを見せた事が気恥ずかしいのか、ゼロの言葉には勢いが欠けていた。
「中佐、これを。‥‥朝比奈、代わろう」
千葉は治療キットを藤堂の前に置くと、唯一起動中の無頼改を振り返って言葉を投げた。
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作成 2008.04.16
アップ 2008.07.16
(「入.団試.験」設定/過去捏造/皇子i.n本.国/特.派の前身たる研究所+皇.妃)
「実は、頼みたい事があるのですが、みんな忙しそうだからどうしましょうか、迷っているのです」
「勿論、お引き受けいたしますともぉ。なんっでも仰ってください、マリアンヌ様ぁ」
ラクシャータばかりが受け答えしているのは、男性陣は見惚れるのに忙しく、残る1人は畏まってしまっているからだ。
作業に没頭しているロイドは論外である。
「お願いしたい事は二つ有るのです」
そう前置きを入れたマリアンヌは大人しく耳を傾ける一同に先を続けた。
「一つはナイトメアに関する事なので、ラクシャータとアスプルンド伯爵にと思っているのですけど‥‥」
マリアンヌの言葉にラクシャータはチラと同僚を顧みてから頷いた。
「プリン伯爵ならわたしが責任持って同行させますからご心配には及びませんよぉ」
「ではお願いしますね、ラクシャータ」
「‥‥それで、今ひとつの依頼というのはぁ‥‥?」
「実はその関連で数日、アリエスを留守にする事になったのですけど、子供達が心配で‥‥」
がばっとロイドが顔を上げて数歩で近付いてくる。
「留守番でしたらこのぼくが」
「あんたは既にマリアンヌ様と同行する事が決まってるのよぉ。あしからずぅ」
「なッ‥‥きみ、ラクシャータ。横暴すぎるよー最近特にー」
「ごめんなさいね、アスプルンド伯爵」
マリアンヌはまず、そう謝罪してから先を続ける。
「ルルーシュもナイトメアの新しいデータが欲しいと言っていたので今度遊びに行ってあげてくれるかしら」
「勿論ですよー。最新のデータを満載にしてお伺い致しますーとお伝え下さい」
不機嫌だったロイドは一瞬の内に上機嫌になっていそいそと戻っていった。
「セシルぅ。あんた数日アリエスの離宮に出張ねぇ。留守番してきなさぁい。皇子様方に無体な事をしちゃあだめよぉ」
「なッラクシャータさんッ‥‥‥。あ、あの。その」
「畏まらないで?二人とも優しい子達だから貴女もきっと気に入ってくれると思うのだけれど‥‥どうかしら?」
「よッよろこんでお引き受けいたします!」
「良かったわ。よろしくお願いしますね。セシル」
マリアンヌはにっこりと微笑み、こうしてセシルの離宮での留守番生活が始まる事になったのだった。
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2008.06.14作成
2008.06.19-2008.06.28up
2008.07.24再録