★零夜様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ騎士(カレン、藤堂)話でスザク糾弾?)
ドンッ!
突然の荒い音に、幹部はその発生源に目を向けて、驚く。
それまで大人しく座っていたゼロが、突然拳を机に叩きつけた音だったのだ。
一同が驚きから覚める間もなく再びゼロの手が動き、ドンッと音がする程拳を叩きつける。
「やめろゼロ。‥‥どうした?相談になら乗る。だから自分を傷つけるのはよせ」
藤堂が鋭い声をかけてその動きを制止する。
しかしそれでもゼロは拳を振り上げ、「ダメッ」と叫んで駆け寄ったカレンに止められた。
「‥‥‥‥離せ、カレン」
低い、それは低いゼロの声に、藤堂とカレンを除いた幹部達は固まった。
カレンはそれどころではなく、激しく首を振って反論した。
「ダメです、今は。貴方が何故こんな事をするのか、その理由がわからないから‥‥。だからまだ自分を傷つけようとする以上離せません」
「‥‥わたしは離せ、と言った。聞こえなかったのか?」
「聞こえていました。ですがッ」
「ゼロ。一人で抱え込むのはもうよせ。まるで出口のない迷路にいるようだぞ。自分を傷つける前に、おれ達に相談してみろ。突破口が開けるかも知れん」
想いがこみ上げすぎて言葉にならないカレンに代わって藤堂が静かな声で諭すように言葉を掛ける。
「‥‥‥‥相談する事などない。‥‥唯、単に、再確認しただけの話なのだから」
藤堂とカレンは顔を見合わせる。
他の幹部達は、勘気のとばっちりを喰らわないように、いつの間にか少しばかり遠ざかっていたからだ。
「「再認識?」」
期せずして言葉が重なる。
ゼロはカレンに掴まれていない左手を持ち上げ掌を見る。
カレンは思わずそちらの手も押さえようかと思って様子を窺っていたが、叩きつけるのが目的ではないと詰めていた息を吐く。
「‥‥望んだものが手に入らないという事を、だ」
ゼロのその言葉に、藤堂とカレンだけではなく、その場にいた幹部一同がハッとしてゼロの仮面を凝視する。
「‥‥‥良くわからないな。‥‥例えば?」
藤堂が問いかける。
「初めに望んだのは力だった。これ以上奪われない為の。これ以上なくさない為の」
掌を見ながら、ゼロは言葉を紡ぐ。
「‥‥その力は‥‥?」
そっとカレンが尋ね先を促す。
「手に入れた。そしてわたしは計画を前倒しにして事を起こし、『ゼロ』となった。‥‥だが、それでも掌からは変わらず零れ落ちて行く」
「だが、ゼロ。この黒の騎士団も君の望んだものだろう?」
藤堂は周囲を見渡して言う。
「‥‥そうだな。騎士団は目的を達成する為にわたしが作った。だが、それはまだ叶ってはいない」
「ッ何だってんだよ。お前の目的ってのは!?」
玉城が流石に気になったのか、離れた位置から声を投げて来た。
「‥‥ブリタニアの崩壊。それと優しい世界を作る事だ」
ヒュッと息を呑む音が幾つか聞こえたが、反応としてはそれだけだった。
「一つ、言っても良いか?ゼロ。‥‥『計画を前倒しにした』と言ったな?‥‥その事に感謝しよう」
藤堂が、ゼロに向かって言う。
「‥‥どうしたんだ?急に」
「ナリタの一件がなければ、おれは捕まらなかったかも知れない。だが、君が現れたからこそ時は動き出したのだ。だから感謝する」
藤堂の言葉に、ゼロは首を傾げる。
「君が、ゼロが現れるまで、漫然とした日々を送るだけだったこの7年。おれはきっと生きていなかったのだと思う」
藤堂が続けた言葉に、ゼロはハッとする。
「君が計画を前倒しにしなければ、それが動き出すまでの間、おれはずっと生きていなかったのだと思う。君が手を差し伸べた時、初めて生き返ったのだ」
藤堂の言葉に、四聖剣もまたこの7年を振り返った。
くすり、とゼロが笑みを零す。
「おかしなものだ。わたしも思っていたよ。『生きてなどいない』と言われた時から、存在を否定されたわたしは死せる者なのだと」
「ちょっ‥‥。ゼロ!それに藤堂さんも。誰が何と言ったかなんて関係ないです、二人とも生きてるんですから!」
カレンが慌てて割って入る。
「全く。藤堂さんも。それでも7年生きて来たから、ゼロに会えたんじゃないですかッ。ゼロだって!ここには貴方を否定する人なんていないからッ」
チラと一瞬玉城に視線を流したカレンだったが、それでもそう言いきった。
「ゼロ。君の居場所はここにあるようだぞ。‥‥みな、君を必要としている。みな、君を案じている。君の平穏を願っている」
カレンの言葉に頷いて、藤堂が言葉を紡ぐ。
「‥‥それは違うのではないか?ここはレジスタントのアジトで有って、平穏を望むべくもない場所だぞ?」
「そうか?いつもいつも気を張っていたのでは身が持たない。どこかに落ち着ける場所がないのでは、早晩参るぞ?」
「以前は有ったさ。表に、箱庭とも言うべき仮初の平和な場所が。今は崩壊しかけていて最早安息の地足り得なくなっているがな」
自嘲気味に笑うゼロに、カレンは思い当たる節が有って、思わず声を出していた。
「‥‥‥‥それって、枢木スザクのせいですか?あいつがお飾り皇女の騎士になったりしたから?なのにそのままで留まっているから?」
遠巻きで様子を見守っていた幹部達は、そこで何故枢木スザクの名前が出るのか判らずカレンとゼロとを見比べる。
カレンは、初め疑いでも違って気にしなくなったのに、いつの間にかまた疑問に思っていて、違っていますようにと願った事だった為、否定の言葉が欲しかったのだ。
それはゼロがルルーシュだと嫌だからではなく、ルルーシュがゼロなのだとしたらスザクの言葉が行動がどんなに堪えたかと言う事に思い至ったからである。
けれど、ゼロの言う箱庭とは学園の事としか思えず、カレンは黙っている事が出来なくなったのだ。
スザクの名前に、藤堂の視線が一瞬鋭くなり、すぐに優しい眼差しになってゼロに向けられた。
「そうか。‥‥ゼロ。その箱庭とやらが安息の地ではなくなったというのなら、ここに居を移せば良い。‥‥妹君を連れて」
藤堂の言葉に、カレンの時以上の驚愕が巻き起こる。
「‥‥妹ッて‥‥藤堂さん、知って‥‥?」
カレンが上擦った声を上げる。
「昔に会った事があるからな。‥‥ピースが有れば繋げるのは簡単だ。‥‥違っているか?ゼロ」
「‥‥やれやれ。少々失言が過ぎたようだな。‥‥カレン、藤堂。他の者にも、わたしの正体を、素性をバラすか?」
「君が許すならば。だが、嫌がっている間はバラさないと誓おう。そして、おれは君の素性を知った上で君に従う。‥‥今ならば全てが納得できるからな」
「わたしも言いません。それに枢木スザクだって貴方に近づけさせないわ。貴方がゼロだって納得したし、何の為にゼロになったのかも判ったもの」
ゼロと、カレンと、藤堂と。
三人だけで進んでいく話に、外野の幹部達が我に返って声を上げる。
「ちょッ‥‥カレン、それに藤堂も。ゼロの正体わかったんだろ?教えろよ。ずりぃぞ二人だけなんて」
玉城の言葉に、藤堂とカレンはすっくと立ち上がって玉城を振り返った。
「今の、聞いてなかったの?話さない、ってそう言ったばかりよね?次言ったら、容赦なく沈めるからそのつもりで」
カレンの言葉に、玉城はうろたえて視線を藤堂に移す。
「おれも話す気はない。それに今はゼロのケアを優先するべきときだ。少し席を外してもらえればありがたいが?」
藤堂は玉城を見据えてそう応じ、チラと四聖剣に視線を向けた。
当然ながら乗り出す四聖剣。
「てことで、今日はここまでで~す。みなさん行きましょ~。ホラ、ホラ急いで」
朝比奈が軽いノリで幹部達を促し、他の三人が鋭い視線で幹部達を見据えるので、扇を初めとする幹部達は押されるままにその場から追い出されていった。
後編に続く。
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作成 2008.04.14
アップ 2008.04.16
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