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──面接「ヴィレッタ」編──
わたしは心配ないとは思いつつも、用心しながらゲットーを歩いていた。
記憶を失っていた間に世話になっていた男が、騎士団の人間だと知った。
記憶がなかった間の事は覚えていて、自分はその男を慕っていたという事も自覚していた。
でも、記憶が戻れば自分は軍人で、騎士団とは敵同士、とても共にはいられない、と黙って出てきた。
軍に戻る前に、記憶がない間の情報を得ようと動き、大きな変化がある事を知った。
特派の白兜を抱えてそこの主任が騎士団へと寝返ったという。
それに続くかのようにダールトン将軍と、そしてあのゼロを目の敵にしていたジェレミア卿までが騎士団側として戦場に立ったという。
その3人に共通する事‥‥と考えていて気付いたのだ。
ゼロの素顔、それは写真を見た時にも思った事では有ったのだが、知っている顔に似ていたのだ、だからこそ特に気になっていた。
でもあの時は、這い上がる事しか考えておらず、何故這い上がろうとしていたのかすら忘れていたのだ。
けれど、今は。
わたしは自らの意思で、騎士団への入団希望届けを投函し、面接だからと呼ばれてのこのことやってきているのだ。
目的地の前まで来ると、ダールトン将軍が出迎えの為なのか待ち構えていた。
「‥‥‥ダールトン将軍」
「ヴィレッタ・ヌゥだな。心変わりがないのであれば、付いてくるが良い」
ダールトン将軍はそう言うと踵を返し中へと入っていく。
わたしは躊躇いもせずにその後に続いた。
どこか別の場所での面接になると思っていたのだが、通ってきた格納庫には騎士団のナイトメアが並んでいてここが既にアジトなのだと知って驚く。
通された場所は会議室のようで、面接というには多すぎる人数が集まっていた。
正面にゼロ。
その右に恐らくは「奇跡の藤堂」、左にはジェレミア卿が座り、ゼロの背後には特派の主任が立っていた。
更には、白衣を着たイレブンでは有り得ない女性が特派主任に「座りなさぁい、プリン伯爵ぅ」と声を掛ける姿も有った。
このような場で「プリン伯爵」などとふざけていると思っていると、ゼロが主任を振り返る。
「場所はそこで構わないから椅子を持ってきて座れプリン伯。でなければ‥‥」「ぅわ、判りました判りました」
ゼロの半ば脅しの文句に主任は慌てて椅子を一つひょいっと運んできて場所を確保していた。
どうやら、主任の名前になっているようだ、とその事についてはスルーする事にして首を巡らした。
「奇跡の藤堂」の更に右に要さんの姿を見つけ、その表情に安堵の色を見つけてホッとする。
更には、ここまで案内してきたダールトン将軍がジェレミア卿の隣に座り、更に隣に視線を移して、そこで固まった。
「なッ、‥‥何故貴様がここにいる?ディートハルト・リート」
思わず鋭く尋ねていた。
当のディートハルトは肩を竦めただけだったが、ジェレミア卿が応じる。
「騎士団の情報・広報担当らしいぞ、ヴィレッタ。我々はどうやらとんでもない男に話を持ちかけていたらしいな」
ジェレミア卿は憤るでもなくそう言い、用意された椅子に座るように手振りで指示を出した。
大人しく椅子に座る間に、一同の視線がディートハルトに注がれ、ディートハルトは居心地悪そうに身動ぐ姿が見られた。
「あー‥‥その。お二人が、ナリタに出掛けるのでととある調査の依頼を持ってきまして‥‥」
ディートハルトはジェレミア卿とわたしを気にしながら説明した。
「なるほど?その情報をそのまま騎士団に流したわけか。入団を引き換えに」
ゼロと要さんが納得して頷き、「奇跡の藤堂」も「それで騎士団はナリタにいたのか‥‥」と納得したようだった。
「ねぇ。『とある調査』ってなにかなー?」
「プリン伯爵」の言葉に、わたしとジェレミア卿が同時に「それはもう良いッ!」と声を上げていた。
この場に、ゼロの素性を知らない者がいては大変だ、というのがその理由である。
けれど再び一同の視線はディートハルトに集まる。
「あー‥‥その、ですね。ゼロの関係者が、アッシュフォード学園にいる、という事なので、調べるように、と‥‥‥ぁあああ!!!!」
言いながらディートハルトの声は段々と小さくなっていき、最後に叫ぶようにしてゼロを見た。
「もしやッ!あの写真の少年ですか?確か名前はルルーシュ・ランペルージと」
ディートハルトの叫ぶような確認の言葉に、わたしとジェレミア卿は身を縮める。
「あらぁ?やぁあっとわかったみたいねぇ?バレちゃったわよぉ、ゼロぉ」
キセルを揺らしながら女性がゼロに「どぅするぅ」と笑みを向ける。
要さんが驚いたように突然叫んだディートハルト・リートとゼロとを見比べている。
どうやらこの場で知らなかったのはこの二人だけだったのだと知る。
「‥‥‥写真?」
ゼロがディートハルト・リートに仮面を向けてから、ジェレミア卿とわたしに仮面を巡らした。
「‥‥その。シンジュク事変の折にわたしからナイトメアを奪った、その時の関係者と思い、ならばゼロと関連があると‥‥」
「写真はどうやって手に入れた?」
「それは‥‥ナリタでの事後処理中にその写真を持っている女生徒の手帳から‥‥」
説明をしている途中でゼロから息を呑む気配が伝わってきて、わたしは口を噤んだ。
「‥‥それ以上は良い。‥‥話は繋がったからな。一応聞いておく。‥‥入団を希望した動機を」
「ぇえ!?繋がったって、我が君。我が君の事を調べていたんでしょう?良いんですかー?放置で」
「プリン伯爵」が不満の声を上げる。
「良いんだ。唯、そうだな。お前に怪我を負わせた相手に対して報復しようとするなら‥‥その時は別とするが」
「‥ゼロッ!?君は彼女に怪我を負わせた相手を知っているのか?」
ゼロの言葉に真っ先に反応したのは要さんで、半ば腰を浮かせてゼロを見ていた。
「今気付いたと言うべきだな。‥‥血溜まりと銃の落ちた現場を見た。『人を殺した』のだと嘆いていた者を知っている。怪我はもう良さそうだな?」
ゼロのその沈んだ声音に、扇はストンと椅子に座り直した。
人を傷つけた事すらない素人なのだと気付いたからだろう。
「分かっている。それに関してはわたしが悪かったのだから恨んではいない」
「‥‥そうか。ならば改めて入団を希望した動機を尋ねたい」
「動機は三つある。一つにはジェレミア卿がここに来ている事。一つには扇要に受けた恩を返したい事」
「恩ってぇ、扇ぃ。なぁにしたのぉ?」
「ッ‥‥怪我をして倒れていたから‥‥手当てを‥‥その。無事で良かった」
「ヴィレッタ。彼はお前が急にいなくなったからとずっと心配して塞ぎこんでいたぞ」
説明した後、わたしに優しい笑みを向ける要さんに、ジェレミア卿が補足を入れ、わたしは戸惑った。
「それでぇ?後の一つは何かなー?」
「プリン伯爵」はその辺りには興味がないのか、さくっと先に進めようと話を促した。
「‥‥後の一つ、は。‥‥ゼロ。貴方が誰かを思い出しこれまでの非礼を詫び、赦されるならばジェレミア卿と共にお仕えしたい、と‥‥」
ヴィレッタの言葉に。
ロイドとダールトンとジェレミアは揃って嘆息した。
「まぁねー。そーいう展開だと思ってたけどさー」
「そうですな。この調子では、今後の展開も予想できると言うものですな」
「次は誰か、賭ける気も起きぬわ」
「‥‥‥それは同感ですが、わたしの合否はどうなっているのでしょうか?」
「採用する。これから宜しく頼む。ヴィレッタ。それとも『千草』と呼んだ方が良いか?なぁ、扇?」
ゼロの口から入団の許可を聞いてホッとしたのも束の間、要さんに振られた言葉に驚く。
振られた要さんもわたわたと慌ててから、小さく「‥‥あー‥おれ、は『千草』‥‥と呼びたいと、思う、けど‥‥」と言うのでわたしは驚いて要さんを凝視した。
「そうか。ならば、ヴィレッタの呼び名を『千草』にしよう」
あっさりと頷いたゼロはさらっとそう決定してしまった。
「‥‥とりあえず、ようこそ、黒の騎士団へ。‥‥と言うべきなのだろうな」
「奇跡の藤堂」が疲れたようにそう声をかけてきた。
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作成 2008.07.29
アップ 2008.08.25
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黒の騎士団入団試験 【13】審査「ヴィレッタ」編 ゼロ:「採用する。これから宜しく頼む。」
面接編です。会場はアジトの会議室。
とうとうディートハルトにゼロバレしてしまいました。(後、扇と)
そろそろみんな、諦めが入って来ている模様。....藤堂とか。
まぁ、これだけ続けばいい加減うんざりするよなぁ、みんな。
特に最初っから付き合ってる(てか付き合わされてる)藤堂とか。
とりあえず、ヴィレッタ編も終わった事だし、後は野となれ山となれ。