★さな様へのリクエスト作品★
(藤.ル.ル/同居(ナナ含)/騎士団に見つかって質問攻め)
扇が恐縮しつつ持って来た報告にゼロは久しぶりに怒りに燃えた。
表面的には変わらないその変化に、それなりの付き合いになる扇は気付いて震えた。
そう、黒の騎士団を結成してから既に二年、「合衆国日本」が独立国として正式に機能し始めてからでさえ半年になるのだ。
騎士団は幹部の大半が新政府に組み入れられ、残りの有志が規模を大幅に縮小させた黒の騎士団のまま、側面からのサポートに徹していた。
この時でさえ、ゼロは仮面を外す事を厭い、またしても桐原がそれを認め、だから扇以下誰もが未だにゼロの素性を知らないで来ている。
桐原が認めるに当たって出したたった一つの条件、それが「何らかの形で『合衆国日本』の運営に関わる事」だったのだ。
ゼロは暫く迷い、結局C.C.の「別に良いんじゃないか?わたしは反対なんぞしないぞ」と言う言葉で決めたようだった。
桐原に向かい「良いでしょう、素性がバレないでいる間は側面よりの助言を致しましょう」との言葉を用いて引き受けていた。
だから黒の騎士団は未だにゼロの組織であり、ゼロの指示を正確に実行するのがその活動内容の全てだった。
扇は教師に戻りつつも騎士団から離れがたくて残った。
カレンも大学に通いながらもやって来ている。
「藤堂を呼べ。‥‥扇?どうした?」
「あ‥‥いや。藤堂さんだな、わかった」
ゼロの不機嫌全開の声に慌てて応じると扇は一旦下がって行った。
扇が不思議に思った事は、藤堂が騎士団残留を決めた事だった。
四聖剣もまた驚いていたから藤堂の独断だったのだろう事にも驚いた。
元が軍人で桐原やキョウトとも交流が有ったのだから、絶対表で活躍するだろうと思っていたし、実際打診も有ったらしい。
なのに、「表に出る気はない」と言って藤堂は断ったのだ。
これまた桐原が「‥‥ならば」(以下同文)を条件に認めた為、藤堂は騎士団に残り、離れる気のない四聖剣も残った。
もちろん、ゼロはこの時「素性がバレた後まで続ける気はないんだぞ?それから表に参画するのは難しいだろう。それでも良いのか?」と聞いている。
残留を決めた幹部達はそれこそ全員一致で頷いたのだ。
朝比奈と話をしていた藤堂を見つけて、「ゼロが呼んで来いと言っているんだけど‥‥」と告げる。
藤堂はあっさりと、朝比奈との話を中断させて扇に頷いた。
朝比奈もまた、それに文句はないようで、扇は藤堂を伴ってゼロの部屋へと引き返した。
ブリタニアからの使節団が来るからと合衆国日本政府、つまるところ桐原から連絡が有ったのだ。
使節団のメンバー表を見て、ゼロの仮面を被るルルーシュは怒りに燃え上がった。
団長の欄に神聖ブリタニア帝国、皇帝シュナイゼル・エル・ブリタニア陛下。
副団長の欄には宰相、コーネリア・リ・ブリタニア皇妹殿下。
更には平や警備のあちこちに、ロイド・アスプルンド公爵、アンドレアス・ダールトン大将軍、ギルバート・G・P・ギルフォードの名前まであった。
ギルフォードの地位が上がっていないのは、「自分がお仕えするのはコーネリア殿下のみ」と言い切り、筆頭騎士に専念しているからだ。
使節団と銘打てば、合衆国日本に大手を振って入れるとでも思ったのだろう。
実際にその思惑の通り、本来の肩書では色々と規制されるであろう許可が、すんなりとは言わないまでも下りているのだから。
本来の肩書のままであれば、事前にゼロに一報があるべきなのだが、それが事後報告となっているところからもそれは明らかだった。
『すまぬ、ゼロ。少々油断しておったようだ』
桐原からの手紙にはそう有った。
ルルーシュが皇族の来日に過敏になっている事を承知している桐原としては詫びる以外ないのだろう。
『‥‥詫びついでに、「ゼロの同席を」と有っての。‥‥来ては貰えぬだろうか?』
これでは怒るな、という方が間違いなのだと言い聞かせ、ルルーシュは怒りを抑える事はしなかったのだ。
来日が来週で多少の時間があるという事がまだ救いだろう。
ノックがして『ゼロ?扇だ。藤堂さんを連れて来た』と扇の声がする。
立ち上がって扉を開けに行く。
「入れ」
怒りのオーラもそのままに、扉を開けるなりくいと仮面を動かして中に入るように促し、二人が入った後、再び扉を閉ざした。
二人が並んで座るソファの前にどっかといつもの優雅さを損なわせるような座り方で腰をおろしたゼロに、藤堂は訝しげな視線を扇に向ける。
「あー‥‥その、政府の桐原翁から連絡が‥‥あって」
「‥‥また無理難題を吹っかけてきたのか?」
この半年、桐原経由で来るかなり難易度の高かった依頼を思い浮かべた藤堂が渋面を作る。
「──あぁ、難題だともっ!そこで、だ。藤堂」
まるでやけになったようなゼロの言葉に、藤堂は真顔でゼロを見返し続きを待つ。
「藤堂、お前にはこれをやっておいて貰う。わたしは準備に忙しく、今日は手一杯だ」
数枚の書類を手渡すゼロに、「一体桐原翁は何を言って来たんだ?」と訝りながらも受け取って視線を落とした。
一枚、二枚と頷きながらも読み進め、最後の一枚になったところで、藤堂は危うく吹き出しそうになりつつも、扇の手前我慢した。
「り、‥‥了解した。‥‥詳しい話は‥‥明日以降に時間を取って聞かせてくれるか?」
「当然だ。それ以外の事は、当面、扇で事足りるだろう。‥‥それから、桐原翁に『二度はない』と伝えておけ」
きっぱりと言い切るゼロに、「本当に桐原翁は何を言って来たんだ?」と藤堂はやっぱり訝りつつ頷いたのだった。
扇がゼロの部屋から出てくると、先に出ていたはずの藤堂の姿はなかった。
四聖剣が団員達に指示をしている姿はあったが、それを伝えたはずの藤堂がいない事に扇は首を傾げた。
「えっと、藤堂さん、知らないか?」
近くにいた卜部に尋ねる。
「んぁ?中佐なら、用事があるからってここをおれ等に任せて出てったぞ」
扇は首を傾げる。
用事というからにはゼロの用なのだろうが、アジト内で済ませられるものだと思っていたからだ。
大体、合衆国日本になったからといっても、いや、だからこそ藤堂のように顔の知れた者には外での用事はあまり回さなかったのに、と。
「あれ?扇さん?藤堂さんなら帰りましたよ?直帰するから結果は来た時に聞くって言ってましたー」
通りがかった朝比奈が扇に気づいて横から口を挟む。
扇はますます首を傾げたくなった。
「えーっと。用事ってゼロの用事、だよな?」
扇は「あの恐ろしい様子のゼロに頼まれた用事をまさか四聖剣に丸投げなんて事は‥‥」と思いつつもそろっと尋ねる。
「そのはずですよー?おれ達に仕事を割り振った後も一枚、藤堂さんの手元に残ってましたしー」
「あぁ、そうだな。それを見ながら、『用事が有る、後は任せた』って言ってたしなぁ?」
「ですねー‥‥。すっごく眉間の皺が増えてましたけどー」
「そうそう。それで、声も普段より低かったかなぁ?」
朝比奈と卜部は藤堂の様子を思い浮かべながらもそれぞれ違う点を挙げていく。
それからくるりと同時に扇を振り返った。
「「‥‥で?ゼロの用事って何だったん(だ/ですか)?」」
卜部と朝比奈は声を揃えて扇に尋ねたのだった。
中編に続く
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作成 2008.07.27
アップ 2008.09.02
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