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第二会議室へと移動したのは、箱を持った藤堂を先頭に、朝比奈と扇、そしてゼロの4人。
藤堂は会議机の上にそっと箱を置くと、少し下がり、代わりにゼロが箱に近づいた。
そして無造作に躊躇いなく箱を開けたゼロは、中身をそっと取り出して机の上に並べて行く。
「‥‥‥‥‥‥これって‥‥ひな人形?」
扇が唖然として呟いた。
「そうだ。知人から『かなり傷んでいるが』との注釈つきで譲られてきた。忙しくて修繕する時間が余り取れなくてな。仕方なく持って来たんだ」
ゼロは動じた様子もなく事情を説明した。
「修繕する時間って、自分でするのか?」
「当り前だろう?今は職人もほとんど姿を消しているからな。‥‥これか、壊れたのは‥‥」
そう言うゼロの手には、首と胴が泣き別れになった人形が一つ。
「まぁ、確かにこんな状態のを女性に見せるのはどうかと、おれも思いますね。‥‥ところで、ゼロ。おひな様が二人いる気がするんですけど?」
朝比奈が箱を覗きながら訊ねる。
「二組あるからな。本当は三組有ったんだが、流石にそれは無理だと思って一組はそのまま友人に流した」
ゼロは人形を見る為に俯いたまま、それでも問いには律儀に答えている。
「‥‥どうしたんですか?藤堂さん。さっきから難しい顔してますけど」
朝比奈の言葉に、扇などは「藤堂さんはいつも難しい顔してるだろう?」と思うのだが、見る人が見れば違うらしい。
「‥‥いや。‥‥先程は『手を貸す』‥‥と言ったが、流石にこれは‥‥」
「あ、確かに。小物とかならともかく、人形自体はどうすれば良いのか。ゼロ、ホントに修繕出来るんですか?」
言い淀む藤堂の言葉に、朝比奈も頷く。
扇も他人事ではないながら、思わず人形の修繕をしている藤堂を思い浮かべてしまい笑いを堪えた。
「あぁ。少々手間だが、この程度なら綺麗に直るだろう」
何でもない事のように言うゼロに、三人とも「器用だな‥‥」と思う。
「な、なぁ、ゼロ。‥‥騎士団での仕事を引き受けるから、それで良いだろうか?」
扇もダメだと思ったのだろう、そう提案した。
「‥‥そうだな。ゼロでなければならない事が有れば、ここに聞きに来よう」
「そうですね。すぐ聞けるところにいてくれるだけで随分と助かるし、なんとかなるかな?」
藤堂と朝比奈も扇の提案に賛同した。
「‥‥‥‥。助かる」
ゼロは三人を見渡してからソッポを向くと、ポツリと呟くように言った‥‥ッて、まさかテレたのか!?
「‥‥ッあ、じゃあ早速だけど、ゼロ。仕事持ってるやつでおれ達に出来そうなの、回しなよ」
人形を扱うゼロよりも珍しいモノを見た気になった朝比奈が、慌ててそう尋ねた。
ゼロは持っていた壊れた人形を一旦机に置いた後、箱の中からファイルケースを取り出した。
「こっちが軍事用、作戦概要や訓練メニュー、行動予定ルートなど。これは騎士団の運営、キョウトや他のグループとの連携などに関する情報。‥‥後は、」
それぞれがかなりの枚数をまとめてある、書類を机の上に置きながらゼロは大まかな概略を説明する。
「ち、ちょっと待った、ゼロ。その書類、それぞれ凄いんだけど。一体どれだけ仕事抱えてたのさ」
「さぁ、思いつく限りだが。これでもリーダーだからな。全体もそれぞれの要点も詳細も把握しておく必要がある。目が届かないところから腐敗は始まるモノだ」
速攻でゼロの言葉を止めた朝比奈に、やっぱりゼロは淡々と説明する。
「えっと、こっちが藤堂さんで、こっちは扇さんっと。じゃ、続けて」
「これは今後の大まかな予定表‥‥見込みや展望も含まれているが。後は物資の補給計画とその概算、ナイトメアフレーム関連と、入団希望リスト‥‥だな」
「‥‥予定表はおれと藤堂さんも見た方が良いな。ナイトメア関連はラクシャータに回しておこう。入団希望リストはおれが先に目を通しておくで良いかな?」
「じゃあおれは物資の補給計画?四聖剣とー‥‥。杉山さんとか南さんに手伝って貰っても良いよね、扇さん?」
「‥‥‥‥‥‥。言っておくが、どれもまだ煮詰まっていないからな。下の者に開示する時には気をつけてくれ」
3人がそれなりに張り切って分担しようとしているのを見て、ゼロは注意点としてそれだけを口にした。
「承知した。‥‥それで、ゼロは当分表には戻らないのか?」
藤堂が書類を受け取りながら、要点を確認する。
「‥‥そうだな‥‥。夜はいつも通りの時間に戻る事になるだろう。来るのが‥‥早くなる。昼下がりから遅くとも夕方くらいには着けるだろう」
ゼロは予定を思い浮かべながら、そう告げる。
「ならば来た後、一時間程、報告と指示に時間を割いてくれ。後は随時、と言う事でどうだろうか?」
「あぁ。それで良い。‥‥すまないな、藤堂。それに扇、朝比奈。‥‥世話を掛ける」
「たまには良いさ」
藤堂は珍しく笑って応じる。
「ですよね。もうずっと、ひな壇も、鯉のぼりも見てないんですから。ここにも飾るんですよね?ゼロ」
朝比奈もまた楽しそうにそう言って、まだ痛んだままの人形に目をやった。
「あぁ、カレンにも言ったからな。‥‥一つはここに飾ろうと思う」
「あれ?ゼロ。二組とも別のところに飾る予定が有ったんじゃないのか?」
「最初はその予定だったのだが、一組譲った先が、その内の一つに飾る!と張り切っていたから任せる事にした」
首を傾げる扇に応えたゼロは、「それもあって持って来たんだ」と言った。
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作成 2008.02.21
アップ 2008.02.26
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ひな祭り 【2】始動。騎士団にて(ゼロ、藤堂、朝比奈、扇)
ひな人形登場。
ボロボロ(一部ホラー有りw)なのでゼロが修繕します、あら器用。
ひな人形を前に、躊躇いがちに前言を翻す藤堂とか、
扇が「人形の修繕をしている藤堂」を思い浮かべてしまうところが良いかなw
率先して作業を割り振る朝比奈(藤堂にも遠慮なし)、とかも。