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第二会議室の中で、部屋の隅に置かれた椅子に座ったまま、ディートハルトは室内を見渡していた。
別の隅には階段状に組み立てられた枠組みがあり、会議机の上には大量の人形や小物が所狭しと並べられている。
それはバラバラに引かれた椅子の上にも言える事だった。
連絡を受けて説明もそこそこ駆け付けた扇は、まさにそれらに手を伸ばそうとしていたディートハルトをすんでのところで制止するのに成功していた。
団員の一人に、まだ外にいるだろう朝比奈を呼びに行かせ、扇自身はディートハルトを人形から離した隅に座らせて監視していた。
唯でさえ、ゼロが来なくて不安に思っているところへ、除外リストに載っているディートハルトが第二に入ったと知られたらと思うと、と扇はゾッとする。
今度は自主的にどのくらい顔を見せなくなるか知れないからだ。
ディートハルトが第二を覗くことを諦めていない事は知っていたというのに、隙を作ったのは扇達なのだから弁解のしようもない。
それでも不用意に触られて壊されなかった事にのみ、少しだけ安堵する扇だった。
軽いノックに続いて扉が開き、藤堂と朝比奈、仙波、卜部が入って来る。
扉から見えた廊下には見張りしかいないようだった。
扇は藤堂の姿を見ていつも通りなのにホッとする。
「‥‥ホントに入ったんだ。‥‥しぶといというか、執念深いよね、大概」
ディートハルトの姿を確認するなり、朝比奈がボソリと呟いた。
「なんとでも。‥‥しかし、これは?ゼロの表の顔が人形屋だとでも?」
ディートハルトは開き直り、室内を見渡しながら問いかける。
扇と朝比奈は顔を見合わせ、「人形屋‥‥?」と同時に呟く。
改めて室内に並ぶ人形を見回せば、八割がた綺麗になった人形の中に、まだ痛んだままの人形が見える。
どう見てもここで修繕しているとしか思えないし、その為の道具も材料も見られるので、そう思うのは確かに無理はないかもしれないと思う。
実際、最初に箱から出て来た時の惨状を知っているだけに、扇も朝比奈も思わず頷きそうになってしまった。
「今問題なのは、ゼロの表の姿ではないはずだな?ディートハルト。何故入った?」
藤堂がディートハルトに向かって冷たく言い放つ。
「隙が有れば突入する。それがジャーナリストですから」
笑って答えるディートハルトは全く悪びれない、どころか、隙を作る方が悪いと言わんばかりである。
「こやつ、ぬけぬけと。‥‥どうなさいますか、藤堂中佐」
仙波が忌々しげにディートハルトを睨みつけ、視線を藤堂に向けてから問いかける。
「‥‥口を閉ざす気があるなら、不問にしても良い」
藤堂の言葉に、ディートハルトを含めた一同が驚きの顔で藤堂を見た。
「藤堂さん?‥‥一体どうして‥‥」
朝比奈が訝しげに問いかけるが、藤堂の視線はディートハルトに固定されたまま返事がない。
「‥‥‥‥良いですよ。ゼロに黙っていてくださると言うのならば、沈黙を守っても良いですが、何故?」
「その言葉、忘れるなよ。‥‥少なくとも二日。ゼロが来ない。順序は逆になるが、ディートハルトの侵入のせいにする」
「‥‥って待って下さい。それは‥‥」
藤堂の言葉に、ディートハルトは慌てる。
そんな事になれば、女性陣からどんな目に遭わされるか、いやそれよりもそれでは絶対ゼロの耳にも入るではないか。
しかし、藤堂が直接ゼロの耳に入れないのであれば「黙っている事になるなぁ」‥‥と扇と四聖剣の三人はディートハルトの苦情を聞き流す。
「藤堂さん?ゼロに何か有ったのか?それに少なくともって‥‥」
扇はディートハルトの慌て振りを無視して、こちらも慌てて藤堂に尋ねる。
「‥‥わからん。C.C.は他には『表でトラブル』としか言わず、そのまま駆け去って行った。後を追ったが見失ってしまったし‥‥」
「あ、それであんなところで立ち尽くしてたんですね、藤堂さん。‥‥でも、あそこ、行き止まりでしたよね?」
「てか、二日もゼロいなくて良いのか?三月入っちまうぞ?」
「だから『トラブル』なんでしょ?卜部さん。‥‥とりあえず幹部だけで良いですか?藤堂さん。ゼロの不在はディートハルトの所業が原因って伝えるのは」
「ですから、待って下さいと申し上げているでしょう」
「‥‥あぁそうだな。頼む」
「判りました~。行きましょう、仙波さん、卜部さん」
ディートハルトの声は無視して、会話を成立させると、朝比奈は仙波と卜部を連れて外に出て行った。
「‥‥えーっと。ホントに良かったのか?ディートハルトの事‥‥」
扇は躊躇いがちに、流石にどうかなと藤堂に尋ねる。
「流石に、ゼロの不在の原因にはなりたくないのですが」
「しかし、先に言ってあったはずだな。除外リストの誰か一人でも入ればゼロが表に戻るという事は。前後していても内容は変わらないだろう」
ディートハルトの苦情を一蹴する藤堂はかなり機嫌が悪いらしい。
「ですが‥‥」
「‥‥責められるのが嫌なら、謹慎を喰らったとでも言って、留守にしているか?‥‥情報は流して貰わなければ困るが」
それでも食い下がる相手に対して、溜息を零した藤堂の提案に、ディートハルトは飛び乗った。
「ではそうしましょう。‥‥ほとぼりが冷める‥‥頃合いは何時頃でしょう?」
「3月5日か6日くらい、かな?」
「そうだな。そのくらいまで来るな」
扇と藤堂は顔を見合せてそう応じた。
ディートハルトがひな祭りを知らないのならば、知らないままでいた方が、周囲の、ひいては日本の為のような気がしたからだ。
その日、幹部に対し、ゼロの数日の不在が告げられ、その原因として挙げられたディートハルトもまた姿を消していた。
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作成 2008.02.25
アップ 2008.02.29
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ひな祭り 【5】不在。騎士団にて(藤堂、四聖剣、扇、ディートハルト)
そしてゼロ不在が続きます......(汗
ひな祭り出来るのか、不安になって来た....。
第二に入ったディートハルトはどうやらひな祭りを知らないらしい。
修繕間に合うのかも不安ですね~。
ぶつ切りにするのが早すぎたせいで、どんどん長くなっている気がします(滝汗