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カレンは苛立たしい気分を病弱と言う仮面の下に押しやりながら、楚々とした動作で教科書を鞄にしまう。
今、最後の授業が終わって残すは終礼だけなのだ、と言うのにである。
終礼が終わると同時に生徒会にも寄らずに帰って、アジトに向かう気満々だったカレンだが、朝の内に邪魔が入ってしまったのだ。
自席に着いた時、机に手紙が入っている事に気づき、開いたのがいけなかった。
中も見ずに捨てていれば‥‥と本気で後悔した。
チラと差出人を見れば、いつもは朝一番から眠りの体勢に入っているのに、今日はすぐに視線が合い、途端にアイツは口の端を持ち上げて笑ったのだ。
逃げそうになった猫を必死に縛り付け、貼り付けた後、最悪な気分でその日の授業を受ける羽目に陥った。
終礼も終わると、嫌な事はすぐに終わらせようと、立ち上がった途端、声が掛かる。
「カレ~ン。行こッ。ほら、早く早く」
お元気娘のシャーリーがサクッとカレンの鞄を取り上げて、片腕を掴んで引っ張って急かす。
これもアイツの差し金かと振り返ってみれば、その姿は既に消えていた。
同じ生徒会のリヴァルの姿も見えない。
「ちょッ‥‥、あのッ‥‥」
今日もまた「病弱設定にするんじゃなかったッ」と後悔しながら、カレンは反論らしい反論一つ出来ずに生徒会室へと連行されたのだった。
準備をしながらくすくすと笑うルルーシュを見て、こちらも楽しそうに手を動かすリヴァルが声を掛ける。
「楽しそーだな、ルルーシュ。ナナリーちゃんも呼んだからか?」
「そうだな」と返したルルーシュだが、実際のところは、今頃カレンはどんな表情でシャーリーに連行されているか、を想像していたからである。
「しっかし、こういう事はタフだよな、ルルも。完璧主義も程ほどにしとけよぉ。始まる前に顔洗って来いよ。目の下に熊飼ってるぞ?」
呆れた様子で、しかし心配そうにリヴァルはルルーシュの綺麗な顔、眼の下に出来た隈を揶揄る。
「洗ったくらいで逃げる熊じゃないんでな。‥‥全く、会長ももっと早くから言ってくれていれば良いものを。ねぇ、会長」
肩を竦めてリヴァルに応じた後、やってきたミレイに苦情を述べた。
「あー‥‥、今回はホント悪かったと思ってるのよ~、ルルちゃん。もしかしてそっち、終わらなかった?」
苦笑を浮かべながら謝るミレイに、ルルーシュは溜息を一つ。
「何とか朝には飾りつけまで終わらせましたよ。お陰で熊が棲み付き始めたみたいですが。当分、残業なんてしませんよ?」
「良い良い。それはリヴァルがちゃ~んとルルちゃんの分までやってくれるから、ねぇ?リヴァル」
「う~ん、しゃーない。あくまで暫く、だからな、ルルーシュ。さっさと熊を追い払えよ?」
当然の如く話と仕事を振ってくるミレイと、隈が痛々しいルルーシュを見比べて、リヴァルは折れた。
「助かるよ、リヴァル」
「あーーッ。会長、もう始めてるんですかぁ?」
カレンを引っ張って飛び込んできたシャーリーは慌てた様子でミレイに声を掛けた。
「まぁだ。これからよ、これから。ニーナとナナちゃんが来たら生徒会長室に移動よ」
ミレイの言葉を聴いてホッとしたシャーリーは、そこでやっとカレンの腕を解放した。
シャーリーが深呼吸するのに対して、病弱設定のカレンが息一つ乱していない事に気づいたのはルルーシュだけのようだったが、気を逸らすを出す事にした。
「飾りつけは?」
「咲世子さんにも手伝って貰って完璧よ」
「なら後は運び込むだけですよ」
「え‥‥っと。これは、一体‥?」
「あれ?カレン知らない?日本のお祭りよ、お祭り。ひな祭りっていうの。珍しく家の中で祝う、しかも女の子が対象のね」
「あ。‥‥今日、3月3日ですね。そっか、」
「ッほらそこ。参加したいなら隣の部屋から桃の花を取って来い。早くしないとナナリーが来るだろう」
ルルーシュの声にカレンは言葉を切ったが、よくよく思い返してみて助かったと、この時ばかりはルルーシュに(ほんの少し)感謝した。
危うく「今日は桃の節句だったわね‥‥」なんて言いそうになっていたからだ。
「‥‥申し訳ございません。少し、早かったでしょうか?」
控えめな咲世子の声がして、扉を振り返ると、車椅子に座ったナナリーと、その後ろに続く咲世子と廊下で一緒になったと思われるニーナの姿もあった。
「ごめん、ミレイちゃん、遅れちゃった?」
「今からよ、今から。丁度良かったわ。今呼びに行こうと思っていたところだったから。貴女も入っていきなさいね、咲世子さん」
「それでは、お邪魔致します」
「どーしたんですか?これ‥‥。こんな立派なひな壇なんて‥‥」
カレンは驚きに目を見開いている。
昔、まだほんの小さかった頃。
これ程ではない、もっと質素なモノにしろ、ひな壇を飾ってお祝いをした覚えが、カレンにもあったのだ。
「ん~。知り合いの人形屋がねぇ。随分痛んでるけどいるなら譲るって言うから、貰ったのよ。で、結果的に言うと、ルルちゃんが綺麗にしたのよ」
「会長命令で仕方なく。次はしませんよ?綺麗にしまってくださいね」
「当然よぉ。保存状態には気を使うわよ。だから来年は楽できてよ」
永久保存しかねない勢いでミレイは断言してみせた。
「‥‥お兄様、わたしの部屋に飾ってくださったひな人形も確か修繕なさってくださったと聞いたのですが。‥‥無理をなさったのでは?」
「あれは咲世子さんにもかなり手伝って貰ったからね。それに、会長のところの程、痛んでいたわけでもないから、無理なんてしてないよ、ナナリー」
ルルーシュはナナリーの髪を撫でながら、桃の枝を手渡してやる。
「見えないのは残念かも知れないけど、桃の香りとかナナリーでも楽しめると思うんだが‥‥」
「はい。とても良い香りです、お兄様。ありがとうございます」
ミレイは二人の世界に突入した兄妹を放っておく事にして他のメンバーに声をかけた。
「さぁ~て。始めましょうか?当然、今日の給仕はリヴァルだって事はわかってるでしょうねぇ?」
ミレイがリヴァルに意味深な視線を向ける。
「え?‥‥あーーーッ。しまった。くっそー、さっさと準備して逃げれば良かったぜ」
一瞬ドキッとしたリヴァルだったが、その場にいるメンバーを見返して悲鳴を上げた。
ミレイ、シャーリー、ニーナにカレン、ナナリーと付き添いの咲世子さんとみんな女性だらけだ。
そしてリヴァル以外ただ一人の男性であるところのルルーシュは熊を飼ってる上にナナリーに付き添っていて離すのは可哀想だ。
スザクが(軍務の為)来ていない以上、リヴァル以外に使える男手はなかった。
「勿論、今更逃がすわけないって判ってるわよね~?」
「ぅ‥‥は~い。会長。んじゃ、飲み物もってきま~す」
二重の意味で逃げられなくなったリヴァルは、気持ちを切り替えると飲み物を取りに部屋を出て行った。
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作成 2008.02.28
アップ 2008.03.03
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ひな祭り 【8】節句。生徒会にて(生徒会(-1)、ナナリー、咲世子)
あはははは、この期に及んで準備とかそこに至るまでで終わりかよ...;;
玉砕ですねぇ~....これは。
しかもここにきて生徒会って(汗
スザクは出てきませんし、シャーリーは普通にbeforeだし。
生徒会編は以上。