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空が茜色に染まりだした頃、ルルーシュはミレイに声を掛けた。
「会長。そろそろお開きにしませんか?暗くなる前に行きたいところがあるので」
「お?デート?」
「違いますって。人形屋に挨拶に。明日から暫く休むそうなので、お礼を兼ねてもう少し修繕について聞いて置きたいかと」
勿論嘘だが、足はつかないようにしてあるから、ルルーシュの言葉に迷いはない。
「それじゃぁ仕方ないわね~。ま、ここの片付けはリヴァルがやってくれるだろうし?人形は明日まで飾っておくわ」
「あ‥‥」
「明日までと言わず、今週くらい出して置いたらどうですか?どうせ、この部屋で作業する事はあまりないですよね、会長は」
「そうなさったらいかがですか?お部屋の人形さん達も、昨日出したばかりなので、暫く飾って置いてくださるってお兄様が」
ルルーシュに続いてナナリーまで言うので、ミレイはその気になってくる。
「‥‥‥確信犯‥」
ポソリと呟かれたカレンの言葉を拾ったのは、生憎とルルーシュだけだった。
こうして誰よりも早く生徒会室を出たルルーシュだったが、ゼロとなってアジトに着いた時には既にカレンは到着していたようだった。
相変わらずの素早い行動に呆れていると、扇が近づいてきた。
「ゼロ」
「扇か。‥‥準備はどうだ?」
「ほぼ完了してる。食事当番にもちゃんと説明したし、食堂の椅子も増やしておいた」
「そうか。‥‥そうだな。わたしの準備が二時間程かかる。その後、放送をかけるから、それまでに今日の作業を終わらせておけ」
「わ、わかった。みんなにも伝えておく。しかし、‥‥ホントにあの条件で、カレン達が参加すると思うのか?」
「気になるのは千葉くらいだが‥‥朝比奈が是が非でも説得するだろう。条件は全てクリア、だ。楽しみにしていろ」
そう言うゼロ自身が珍しくなんだか楽しそうである。
「‥‥なんていうか、一番楽しんでないか?」
「‥‥‥‥。そうかもしれないな。修繕での鬱屈が溜まっているのかも知れない。‥‥たまには良いだろう?」
ゼロの言葉に、この数日の間にゼロの苦労の程が身に沁みた扇はあっさりと頷いたのだった。
ゼロが第二会議室に入ると、そこは「日本」だった。
部屋の端には紅のひな壇に並んだひな人形が桃の花と和装で着飾った女性陣に囲まれている。
逆側には所在無気な男性陣が、こちらも白の袴姿でそんな女性達を見守っていた。
滅多に見る事はないだろうその姿に、ある者は眩しげに、ある者は軽く頬を染め、ある者は感慨深げに‥‥。
一人、ラクシャータだけが和装をしておらず、そんな様子を楽しそうに見ている。
ゼロは、というと普段通りの姿であるから、こちらも浮いているだろう自覚はあった。
「ゼロッ。先に始めていろって事だったんだが、みんな君を待つって言うから‥‥待っていたんだが‥‥」
最初にゼロに気づいた扇がホッとした様子でそう声を掛けたのだが、尻つぼみに声は消えていった。
扇の声に室内の視線が一斉にゼロに向けられる。
「‥‥どうした?」
「‥‥ゼロは着替えなかったんですね。そのままですか?‥‥それと、C.C.は?」
「仮面を取る気はないから変だろう?流石に。‥‥C.C.なら今来る」
ゼロが言った途端、扉が開いてC.C.が入ってくる‥‥着物姿で。
「かッ‥‥わいぃ~~。どうしたの?それ。‥‥まさかとは思うけど、‥‥着付けはゼロが?」
井上が真っ先に声を上げる。
自分自身とカレンと千葉の着付けをした井上だからこそ気になったのかも知れない。
「着せろ、と言うので仕方なく、な。ご苦労だったな、井上。大変だっただろう?」
「暫く振りだったから、結構忘れていただけね。出来てホッとしてるわ。ゼロこそ、どうして着付けなんて出来るわけ?」
井上が満面の笑みを見せて応じてから問いかける。
「女性用の和服は華やかな物が多いからな。いつか着せてやりたいと思って習った後、練習していた」
「それって彼女!?奥様?それとも‥‥お子さん??」
井上が即座に喰いつき、発想が卜部と同じだった事が受けたのか、男性陣が一斉に吹き出した。
「‥‥わたしはまだ独身で、従って子供もいないし、ついでに彼女もいない。だいたい『いつか』だと言っただろう?」
「じゃあ未来の!?」
カレンが驚いて尋ねる。
「未来の」とか「まだ見ぬ」とかつけたら何でも有りな気がしたのだ。
「わたしの為だと素直に言ってしまえばどうだ?」
C.C.が更に混乱を招く言葉を吐く。
「誰がそのような嘘を吐けるか。そんな格好をしている時くらい少しは大人しく出来ないのか?C.C.」
「‥‥‥‥。そうだな、良いだろう。この服に免じて今日は大人しくしておこう」
C.C.はフッとゼロから視線を外すと、ひな壇に近づいていった。
「「ぅお、折れた?‥‥あのC.C.がピザ以外で!?」」と何人かが驚く。
「‥‥さて。写真を撮って構わないだろうか?人形を譲ってくれた人が、是非『日本』が見たい‥と言っていたのでな」
レジスタンスなのに記念写真?と思わないでもないが、それよりも気になる事が有り、視線が藤堂に向けられた。
「‥‥‥‥誰か聞いても構わないだろうか?」
無言の圧力を感じた藤堂が、渋々口を開く。
「桐原公だ。‥‥最終的には皇の、らしいな」
「‥‥ッて、これ、天皇家縁のひな壇ですかッ。え?でもそしたら今年は飾ってないの?」
「いや、これは当代の物ではない。皇は姫が生まれるたびに作らせていたはずだし、これは随分と古いからな」
応じてからゼロは息を吐き出した。
「質問ばかりでは何時まで経っても始まらない。ほら、和装の者は並べ。写すぞ」
ゼロの急きたてるような言葉に、藤堂達男性陣もひな壇に近づいた。
赤いひな壇と華やかな和装の女性陣の周囲に白の袴姿の男性陣が並ぶ姿はかなり絵になった。
「ふ~ん。良いわねぇ。これが『日本』かぁ」
楽しそうに感心するラクシャータの隣で、ゼロがカメラのシャッターを何度か切った。
「ゼロッ。‥‥あの、一緒に写りませんか?」
「いや、‥‥わたしは‥‥」
カレンの誘いにゼロは渋る。
「桐原公への写真はもう撮ったんでしょ?なら入りなさいな、ゼロ。わたしが写してあげるから」
「そうそう。今回一番の功労者なんだし?凄いんですよ、ふぐッ」
「ストップ。それをここで言うなよなぁ朝比奈よぉ」
「藤堂中佐。朝比奈を追い出しますか?」
卜部に口を塞がれ、脅しかけられ、仙波が藤堂にお伺いを立てる段になって、朝比奈はブンブンと首を激しく横に振る。
「す、すみません、もう言いませんから、追い出さないでください~」
卜部に手を放して貰った朝比奈は、平身低頭で詫びを入れた。
それを見て井上がまず笑い、すぐにみんなに伝染する。
笑いながらラクシャータはまだ隣にいたゼロの背中をドンと押し、ひな壇にぶつかりそうになるゼロを藤堂が慌てて支える。
カシャッとジャストタイムでラクシャータによってシャッターが切られた。
ゼロの手が触れて一枝落ちた桃の花を、ゼロはそっと掲げた。
「さて、始めるか」
「「「「「はいッ」」」」」
ぼんぼりに灯りが入り、宴が始まる。
了
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作成 2008.02.29
アップ 2008.03.03
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ひな祭り 【10】雛祭。騎士団にて(ゼロ、女性陣、藤堂、四聖剣、扇)
い、一応、終わりです。
やっぱり宴が始まるところまででしたねぇ~...(汗
当日が三部作になってしまいました(汗
和装の幹部を書きたかったのですが、それらしい記述が少ないし、
考えてみれば絵も描けないのであまり意味が......(汗々
と、とりあえずでも終わってホッとしています。