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ギルフォードは部屋に入るなり、スザクに鋭い一瞥を投げ、気付かないスザクから興味を失ったように視線を外した。
ユーフェミアが立ち上がり、「お姉様ッ」と言ってコーネリアに抱きつく。
コーネリアは普段通りのユーフェミアにほんの少し安堵して妹姫の身体を抱きしめた。
「じゃ、セシル君。後は任せるね。殿下、ぼくはこれで」
ロイドはそう言ってさっさとその場から離れようとするのだが。
「待て。状況も聞きたいし、このまま同席していたまへ」
ギルフォードによって足止めされてしまい、仕方無くセシルの横、壁際に並び立った。
コーネリアはその声で、ユーフェミアを離し、一同を見渡した。
「ダールトンはまだ見つからないのか?」
視線はロイドとセシルに向けられていて、その声音は厳しい。
「‥‥はい」
セシルはロイドをチラリと見たが、返事をする気がなさそうなので、短く応じた。
「ユフィ。‥‥お前は何か知らないか?ダールトンはお前につけた副官だ」
すぐ傍で自分を見上げる妹姫に視線を落とすとコーネリアは声を掛ける。
「‥‥‥‥。知らないわ。だって、ダールトンは邪魔をしたのですよ、お姉様」
表情を曇らせたユーフェミアは、コーネリアから視線を外すように俯いて、そう言った。
「ユフィ。わたしは何でもダールトンと諮って事に当たれ、と言っておいたはずだね?」
溺愛する妹に対するにして少しきつい口調で、コーネリアは確認する。
くしゃり、とユーフェミアの表情が歪んだ。
「だってお姉様。ゼロは‥‥ゼロはクロヴィス義兄様を殺したのですよ?」
「それは分かっている。‥‥だが、クロヴィスの仇はわたしが取る、と言っておいたはずだね?ユフィが手を汚す必要はないのだよ?」
コーネリアは妹のピンクのドレスについた赤いシミを悲しそうに見つめる。
「申し訳ございません。何分にもこのアヴァロンにはユーフェミア様に着ていただける服を載せていなかったものですから‥」
それと察したセシルが項垂れて謝罪する。
ユーフェミアの着替えはG1ベースに置きっ放しなのだ。
「良い。後で何か取り寄せよう。‥‥それよりもユフィ。ゼロと二人きりでどんな話をしたのだ?いや、それ以前に、何故ゼロを招いた?」
「え?えーと‥‥。目的は同じなのですからゼロと黒の騎士団にも『特区』に参加して欲しいと思ったのですわ、お姉様」
「目的が同じ」と言うユーフェミアの言葉に頷いたのは、スザク唯一人。
「‥‥それで?」
「ゼロは確かに式場に来てくれましたけれど、まだしかとは決めかねていたようなのです。だから『話をしよう』といってきたのですわ」
そのくだりはコーネリアも映像で見ているので、先を促す。
「で?ゼロと二人きりでどんな話をしたのだ?」
「えーと。大切なモノの話を。その為に名前を返上したと言ったら、『特区を生かす形で策を練る』と手を取ってくれたの」
初めて聞く内容に、コーネリアとギルフォードは困惑した表情をロイドとセシルに向ける。
ロイドはいつも通りの表情で肩を竦めただけだったが、セシルは同じ困惑顔でそっと首を振った。
「それならば、何故今こんな事になっている?」
「‥‥だって思い出したの。ゼロが、クロヴィス義兄様を殺したって事を。シンジュグゲットーで『虐殺を命じた』、『ブリタニア皇帝の子供』だからという理由でッ」
ユーフェミアは憤ったようにそう言って俯いた。
「少し宜しいでしょうか?ユーフェミア様。‥ゼロがクロヴィス殿下を殺害した理由に『ゲットー虐殺』は以前から言われていましたが、もう一つの方は何処で?」
ギルフォードが疑問点を口にした。
「河口湖のホテルで、です。わたしを助けてくれて‥。その時にそう言って、『そういえば貴女もあの男の子供でしたね』と続けて銃を向けてきた事があります」
大人達の視線が一斉にスザクに向かったのは、そんな報告は受けていなかったからだ。
「あ、スザクが来た時には、ゼロの銃は降ろされていましたから。『他にする事がある』‥‥そう言って人質の人達を救ったのです」
ユーフェミアはそう言うが、ゼロの言うところの「他にする事がある」とは黒の騎士団の宣言である事だと他の者にはわかった。
「‥‥しかし、ゼロはかなりの皇帝嫌いなようですねぇ?」
「ロイドさんッ」
ロイドとセシルの会話はユーフェミア以外の一瞥を受けただけでスルーされる。
「ユフィ。‥‥『大切なモノの話』、とは?名前を返上する事を決めた程の。‥‥ユフィは何が大切だったのだ?」
コーネリアの問いに、スザクとギルフォード、セシルはハッとしてユーフェミアを見た。
ギルフォードとセシルはコーネリアの問いに「確かに‥‥」と思って答えが気になったからだが、スザクは答えを知っているからこそ、だ。
「えーと。大きくて安全な、弱者と呼ばれる方でものびのびと暮らせる場所を作りたいと思ったのです。‥‥ブリタニアの名の下では無理でしょう?」
「ユーフェミア様ッ。それは皇帝批判に繋がりかねません」
あまりの理由に、ギルフォードが口を挟んだ。
「‥‥何故、わたしに相談しなかった?ダールトンにでも、お前の騎士枢木にでも‥‥。何故一人で決めたのだ?」
悔しげに表情を歪めたコーネリアは、ユーフェミアに訊ねる。
「だって。‥‥お姉様はお忙しそうでいらっしゃったし。ダールトンも、わたしの仕事の大半を受け持っていて‥‥」
「ユフィ。お前は何も分かっていないのだね。‥‥枢木、貴様もだ。‥‥名前を返上し、皇族でなくなったのならば、騎士を持つ事は出来なくなる」
コーネリアの言葉に、セシルは沈痛な表情になって俯き、ユーフェミアとスザクはハッとなって顔を見合わせた。
「‥‥‥‥え?‥‥でもスザクは、既にわたくしの騎士ですわ」
「名前の返上と同時に、騎士もまた返上、と言う事になります。枢木は騎士叙任に対する少佐昇級でしたので、准尉に逆戻りもします」
ギルフォードが冷たい声音で告げる。
「‥‥ユ、‥‥ユーフェミア様?」
スザクが茫然とした表情でユーフェミアの名前を呼んだ。
「枢木。一度なりとも騎士としての誓いを立てた相手であるユフィが、何の地位も、権力も失った後も、貴様のユフィへの誓いは変わらないと信じて良いのか?」
冷たい視線を投げられたスザクは直立した。
「はッ、はい。‥‥勿論であります。コーネリア殿下。ぼ‥‥自分はユーフェミア様の、ユフィの剣となり盾となる事を誓約しております」
内心では大いに動揺していたスザクだったが、面と問われれば、そう応じるしか道はない。
反射的に応じてしまったスザクは、それが本心か建前なのか、自分でもわからなくなっていた。
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作成 2008.03.01
アップ 2008.03.15
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「おれを撃て」【11】「アヴァロン」にて特派+姉妹+騎士。
コーネリアとギルフォードが合流しても、やっぱりユーフェミアとスザクに厳しい....。
姉でも庇いきれないか。
ある意味暴露話?