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※「一つの解答」の続きです。
藤堂がカレンに近づいた時、みな少し期待したのだ。
「後で」と言いながら、説明を始めないカレンに痺れを切らせて抗議に向かったのではないか、と。
だが実際は、何事か話をした後、カレンは紅蓮に駆け込み、藤堂はスルスルとガウェインを昇って、そのコックピットに収まってしまったのだ。
「‥‥ッて、良いのかおい」
玉城がガウェインのコックピット辺りを指差しながら、他の幹部を振り返る。
「良いんですよ。藤堂さん、ゼロに呼ばれてましたから」
答えたのは朝比奈で、月下に乗ったまま近づいてきていた。
「って、朝比奈さん!?なんで月下?」
紅蓮に乗ったままのカレンが月下を運んでくる朝比奈に驚く。
「ん?藤堂さんのお手伝いをしようかとー」
「ゼロに頼まれたからそれは紅蓮でやるわ。朝比奈さんは少しみんなを退けておいて」
「‥‥てさぁ。ゼロが降りてくるってだけで、そんなに警戒するもん?まさか仮面してないとか言わないよね?」
朝比奈の言葉にみんな驚いて紅蓮のカレンを見上げる。
注目を浴びたカレンはここで初めて動揺した。
「‥‥‥‥‥え?‥‥さぁ。あ、でも藤堂さんが入っていったんだから、仮面はしてると‥‥思うけど?」
「じゃあ何故?‥‥それに、あの車椅子、まさかゼロが使うなんて事はないよねぇ?」
「違います。あれはッ‥‥。てか話してる場合じゃないでしょ。何故藤堂さんだったのか知らないけど、人呼んだ以上降りてくるんだから」
カレンが話を打ち切り、藤堂の名前が出たので朝比奈も突っ込むのをやめる。
二人のやり取りを見上げていた幹部達は、「そのまま勢いで暴露話とかしないかな」とか思っていたので落胆した。
ガウェインのハッチが開き、藤堂が顔を出した。
「藤堂さん。下まで運びます。‥‥えっと、二人、ですか?」
カレンが紅蓮の手のひらをコックピットに近づけながら言う。
「紅月か。あぁ、頼む」
藤堂がゆっくり立ち上がると、黒い布が広がった。
それはどうみてもゼロのマントで、誰もが、「藤堂さんがゼロを抱えている!?」と目を疑ったのは言うまでもない。
だが藤堂が紅蓮の手によって移動している間に、コックピットから出て来たゼロがマントをつけていない事に気付いて何故かホッとした。
ホッとしてから、「ではゼロがマントを貸し、わざわざ藤堂を呼んでまで運ばせたのは誰だ?」と言う疑問が浮上する。
「‥‥ん?朝比奈か。丁度良い。それの手を貸せ」
ゼロのその言葉に、過剰に反応した者が二人いた。
ナナリーを抱えた藤堂を無事地面に降ろしたばかりのカレンと、地面に降り立ったばかりの藤堂が、バッとゼロを振り仰ぐ。
二人はやはりどこか具合が悪いのかと思ったが、ナナリーがいるところで、迂闊な事を言えば、余計な心配をさせたと怒らせるだけなので言えなかった。
「朝比奈、貸してやれ」
代わりに藤堂は己の部下に指示を出した。
そこでやっと朝比奈が月下を動かした。
その間に藤堂はそっとナナリーを車椅子に座らせると、カレンを見上げた。
「‥‥頼めるか?」
「勿論よ」
カレンは言われるまでもない事だと思いながら返事をすると、今度は紅蓮の姿勢もそのままでコックピットから下りて来た。
カレンが車椅子を押してその場を離れるのを見ながら、ゼロは藤堂の前に降り立った。
「怪我をしているのか?それとも具合が悪いのか?」
先に藤堂が尋ねた。
「‥‥怪我をしているのはお前だろう、藤堂」
「なら、具合が悪いのか?」
ゼロが左手で仮面の上から頭を押さえているのを気にして藤堂は問いを続ける。
「‥‥耳鳴りがするだけだ。‥‥今から止めて来るさ」
ゼロの回答に、「はぃい??」と幹部達が意味を図りかねて思わず声を出す。
「何処に?」
「『オレンジ君』のところだが?今C.C.と口論になって敵に傾きかけているようなんでな。煩くて敵わない」
さも当然の事のように言うゼロは、耳鳴り(言い争い)が煩すぎて自分にしか聞こえていない事を失念していた。
さらっと「オレンジ君」と言ったゼロに、一同恐怖を覚える中、藤堂がゼロの腕を取った。
「付き合おう。万が一の場合、あっさり君を殺されるわけにはいかないからな」
「‥‥良いのか?『オレンジ君』の戦闘能力はかなり高いぞ?」
「あぁ、平気だ。が出来ればその禁句は口にしないで欲しいものだな」
抵抗なく頷く藤堂に、慌てたのは朝比奈である。
「ぅわ、藤堂さん、怪我してるって事忘れないでくださいって。おれも行きますよ?行きますからね」
かなり慌てて、月下から駆け下り、既に歩き始めているゼロと藤堂の後を追いかけた。
コンコンと扉をノックすると、内側から開いて咲世子が顔を出す。
「お嬢様ッ。よくご無事で‥‥」
「じゃあ、咲世子さん、後はお願いできますか?」
カレンは車椅子を咲世子に託し、自分はさっきまでナナリーにかけていたゼロのマントだけをその手に持って言う。
「はい。お任せください。‥‥ありがとうございました、カレンさん」
頭を下げる咲世子を見て頷いてから、カレンはそのまま踵を返した。
了
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作成 2008.03.12
アップ 2008.04.05
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難解な君 ゼロ登場。藤堂とカレン(と朝比奈)。
色々進行中。
もう、なんか諦めの境地。