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ダールトン入団の後、ディートハルトはゼロから「当分の間、ブリタニア人が希望してきたとしても、わたしの元まで回さずに落としまくれ」と言われていた。
ディートハルトはその時、「承知いたしました」と二つ返事で頷いたものだった。
その後は、ダールトンの時のような事故を防ぐ為に、必ず部屋の施錠を確認してもいる。
「だがしかし、‥‥」と手の中の経歴書を前にして、ディートハルトは一人固まっていた。
ロイドの時も、それなりに混乱していた団員達だったが、今度はその時の比ではなかった。
ロイドは、ブリタニア人で、軍属で、だけど七年前の戦争には参加していない事はハッキリしていた。
だが、ダールトン(通称は将軍だが、これまた一部しか呼ぶ者はいない)はハッキリと七年前の戦争に参加している事が確認されていた。
団員の中で、直接戦火を交えたのは、藤堂と四聖剣だけとは言え、その戦争で国を奪われ、名を奪われ、親しい人を奪われているのだ。
簡単に納得できる者の方が少なくて当たり前だった。
更に言えば、ダールトンは何処にいようと威風堂々とした将であり、大抵の団員は傍によると位負けしてしまうので、敬遠したいという事もあった。
ダールトンに位負けしないのは、リーダーのゼロと軍事の責任者である藤堂、四聖剣の仙波、何故かC.C.、後はロイドとラクシャータくらいである。
七年前の戦争で敵味方に分かれていたはずの藤堂が面接に同席しておいて、「何故!?」と言う声も一部上がっているが、藤堂は気にしていない。
一度、四聖剣に尋ねられた時に、「裏切らないのならば、問題はなかろう」と言ってのけたという話も流れている。
「‥‥ッて、自軍を裏切って来てるんだぜ?また裏切らないって何故言いきれるんですか?中佐」
卜部が驚いて尋ねた言葉に対しても「ゼロの顔の広さには恐れ入る」とだけ答えたという。
そりゃ顔が広いってのには、誰もが賛成するだろう。
何処からともなく列車一杯のナイトメアを用意したり、最初のアジトであるトレーラーを放蕩貴族から譲り受けたり。
キョウトの桐原公と旧知である事を知った時には魂消る程に驚いたし。
そうこうしている内に、ゼロを「我が君」と呼んで白兜を抱えたブリタニアの貴族で軍でも中佐の一組織の主任がやってきた。
今度は将軍だ、広いにも程があるってなものだろう。
幹部会議の間中何故か大人しかったディートハルトが、ゼロが解散の合図をした途端、「ゼロ‥‥」と声を掛けた。
厭な予感を覚えたのは、ゼロと藤堂、ロイドと、ダールトンの四人のみ。
ちなみにこの場にロイドがいるのは、みんなが諦めたせいだし、ダールトンがいるのはゼロと藤堂が希望したからである。
当然、ゼロから希望されたという事に、ロイドは拗ねたのだが、誰も取り合いはしなかった。
「わたしにまで回すな。そう言っておいたはずだぞ、ディートハルト」
ゼロはディートハルトに話の内容を尋ねすらせずに、そう突っぱねてみた。
「はい、伺っておりますが。それでも一人だけ、見て頂きたいと‥‥」
「少し待て、ディートハルト。一人だけ、という事は、他にもいたのか?」
眉を寄せて藤堂が尋ねるとディートハルトは黙然と首肯した。
この日、ゼロの横に座っていたのは、カレンと扇だったが、二人だけはゼロの小さな呟きを聞き取っていた。
曰く、「これだからブリタニアはッ」である。
ゼロはその呟き以外無言でディートハルトを見据え、ディートハルトはゼロの返事をじっと待っていた。
「‥‥ゼロは解散と言ったはずだ。仙波、卜部、千葉、朝比奈。お前達も先に戻っていろ」
藤堂が溜息を吐いた後、とりあえず自分の部下に声を掛けた。
四聖剣はすぐに立ち上がり、揃って「承知」と言った後、後ろ髪引かれる思いでそれでもその場を離れていく。
その為、藤堂もまた下がるべきだった事に気づく者はいなかった。
次いで扇が立ち上がり、残りの者に声を掛けつつ、自ら下がっていった。
カレンもまた、渋る玉城を引っ張るようにして後に続き、一人、また一人と人が減っていった。
残ったのは、ゼロとディートハルトの他には、藤堂、ロイド、ダールトンだけとなる。
「ゼロ。そんなに見たくないのか?」
何故日本人組織として名を馳せているはずの場所で、一人取り残されているのだろうと藤堂は内心不思議に思いながら、口を開いた。
不思議といえば、この中で日本人は藤堂だけだが、ゼロの素性を知らないのはディートハルトだけか、と別な事まで考えてしまう。
「‥‥予想がついて厭なんだ。なんなら見てみるか?藤堂。確実に後悔するから」
名指しされた以上、見たくないとは最早言えず、藤堂はディートハルトに手を伸ばした。
渡された経歴書を見て、藤堂はゼロの言った通り後悔した。
「‥‥‥‥それで?『オレンジ君』はなんと言ってきている?」
結局、ゼロは経歴書を見もせずに、そう尋ねた。
目を見張ったロイドとダールトンだが、それでも何となく予想は立てられたので自失する事はなかった。
「備考欄に『オレンジ疑惑について理解した』と書いているが‥‥」
藤堂が困惑した様子で読み上げた。
「そういえば、ゼロ。いつかお伺いしようと思っていたのですが、結局公表するという『オレンジ』とは何だったのですか?」
ゼロはディートハルトの問いには答えなかった。
「ほぉ?『理解した』‥‥か。面白い。その言い分、聞いてやらないでもないな」
くつくつとゼロはさも面白そうに笑って言ったのだ。
「あれぇ?だけどさー?『オレンジ卿』って、確かナリタ以来、療養中じゃなかったでしたっけ~?」
「その通りだ。勝手に持ち場を離れ、ゼロに向かって行って赤い新型のナイトメアにやられたのでな」
ロイドの疑問にダールトンが答える。
「‥‥そう言えば、あの時は何時になくあっさりと脱出していたようだが、ナイトメアの不具合だったのか?」
紅蓮弐式の輻射波動の影響がナイトメア全体に及ぶ遥か前に、コックピットが飛んでいってしまったのを見た時、ゼロは一瞬固まる程驚いたのだ。
「はい、左様で。自らの意思でしたら、降格モノと調べてみたのですが、確かにナイトメアの脱出機能の接触不良でした」
「ふむ、輻射波動で誤作動を起こしたか。『オレンジ君』なら無駄に粘るかと思っていたが、逆にそのせいで助かったようだな」
「‥‥‥ゼロ。『オレンジの彼』が助かったのを喜んでいるように見えるのだが‥‥?」
ナリタの戦いの時には解放戦線の一人として参加していた藤堂は、ゼロの様子を不思議そうに見た。
「フッ‥‥。『オレンジ君』は素直で反応が面白いものでな。見ていて飽きない」
楽しそうに言うゼロは、やはり喜んでいるようだ、と藤堂は思った。
「‥‥‥やはり、人が悪くなられたようですな」
そんなゼロを見て、ダールトンはポツリと呟いていた。
──審査「ジェレミア」編──
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作成 2008.03.12
アップ 2008.03.31
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黒の騎士団入団試験 【5】3人目審査編 ゼロ:「わたしにまで回すな。そう言っておいたはずだぞ、」
「メカオレンジ」は別で書いているので、「オレンジ」を書こうとか思って少し救済を.....。
そしてやはり前半は2人目の話が入って来ました。
ちなみに伏線を入れた時には、「誰それは何番目で~」とか指折り数えてましたね....。
今は少し今後の展開が伏線を入れた頃よりも変わっているかも知れませんが。