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「‥‥皇族だったとはいえ、既に戸籍上、存在しない者にまで手を掛けるつもりは、わたしにはない」
脱線しかけたロイドとミレイが黙ると、ゼロはそう告げた。
「‥‥相手にするまでもない、って?」
ゼロの言葉にピクリと反応したロイドが、好物のプリンを前にしながら、剣呑な目つきをゼロに向けて言う。
「ブリタニアに戻るつもりがないのならば、敵ではないという事だ。『ランペルージ』は皇族ではなく、唯の学生、子供だろう?」
「それを軽んじてるって言うって知ってる?凄く不愉快なんだけど?」
ゼロは二人に害意を持っていない事を告げようとしただけなのだが、ロイドに反発されてしまった。
反発してボソボソと低音になって反論するロイドに、ミレイは慌てる。
「ちょ‥‥ロイドさん。口調も声音も変わってますから。それに、」
「ミレイくんは少し黙ってて。ぼくはどーしても許せないんだよね。あの方が軽視されるのは我慢できない」
道化師の仮面はなりを潜め、ロイドはゼロをまっすぐに睨みながら言う。
ゼロはそんなロイドを見ながら、息を吐いた。
「‥‥皇女とは交流はなかったが、兄皇子とならば、一度話をした事がある。‥‥その時だな、わたしが『ゼロ』になろうと思ったのは」
ロイドとミレイはきょとんとしてゼロを見、ラクシャータは驚いて軽く目を見開き、藤堂は一人無表情で話を聞いていた。
「‥‥‥‥‥‥。一体どんな話をしたんですか?」
聞いたのはミレイだった。
「あの時、お互いに力がない事を実感していた。‥‥一人では何も出来ない事を痛感していた。足掻いても世界は変わらない。‥‥だから時を待つ事にした」
ゼロの話を、みな静かに聴いていたが、藤堂は少々懸念していた。
バラすつもりがないのならば、下手な事を云って、悟られるのは不味いのではないか、と思ったせいだ。
「十年。或いは十五年。‥‥そうすれば子供だった彼も、何も持たなかったわたしも、世界を変える為の力を手に入れ動き出せるのではないか、と」
「‥‥ちょっと待ちなさいよ、ゼロぉ。それってあんた、第十一皇子と結託してたって事ぉ?」
ラクシャータが待ったをかける。
「‥‥まさか。最初の動機、きっかけに過ぎない。以来、彼とは一度も会わず、連絡さえ取っていなかった。今回、桐原公を介して連絡してきた時は驚いた」
「それってその時の相手がゼロだって事を、知ってらしたって事ですか~?」
「さあな。わたしは随分と前倒しに動き始めてしまったし、このナリだ。気付いてなくても不思議ではない。気付いていたとしても驚かないが」
そう応じたゼロに、ロイドのまなざしがフッと緩んだ。
「わーかーりまーしーたー。実は我が君から今回の件に対しての報酬をお渡しするように託されまして~」
「‥‥不要だ。これは桐原公からの依頼なんだ」
「そうは行きませんよ~。それに、話だけで、実際には受け取りに行ってもらわなくてはなりませんし、少し危険でもありますしー?」
元の口調と声音に戻ったロイドの言葉に、藤堂の表情が険しくなる。
「‥‥それは、どういう事だ?」
「実はー。とある島に、開発途中のナイトメアフレームが一機有りまして~。それをゼロに進呈するようにって話を請けましたー」
「特殊なヤツなのぉ?」
ナイトメアフレームと聞いてラクシャータが反応する。
「そりゃそうさ。諦めの悪いぼくが、いつかを夢見て開発してたんだから~?た~だ~しぃ。現在は第二皇子の管理下に置かれてるけど~?」
「‥‥彼の為、にか?‥‥良いのか?それをわたしに渡しても?‥‥今はその気がなくとも、いつか、彼や彼女に仇なすかも知れないというのに?」
「‥‥‥‥。その時はぼくの全力を持ってお二人をお守りしますともぉ。‥‥例えゼロ。君を殺す事になっても、ね?」
ゼロとロイドはゼロの仮面越しに睨み合う。
「そこまでにしておけ、ゼロ。今、その気がないのならば、後の事は後で考えれば良い話だろう?」
睨み合う二人が、主とその騎士志願だという関係を知っている藤堂が、その光景に耐えきれなくなって止めに入る。
フッとゼロは笑みを零した。
「藤堂の言う通り、か。‥‥良いだろう、そのナイトメア、わたしが戴こう。‥‥代わりに彼にこれを」
ゼロはそう言って、懐から取り出した小さな箱をロイドの前、プリンの横に置いた。
「「‥‥これは?」」
ロイドとミレイの問いが同時に発せられる。
「渡せば判るだろう。‥‥約束の品、そう言えば、伝わるはずだ。‥‥彼が覚えていれば、な」
一人芝居を続けるゼロに、藤堂は寂しさを感じてしまう。
何故、そこまで別人である事を示さなければならないのか、と。
「了解した。‥‥責任を持って我が君にお渡しするまで預かりますよ。‥‥で、場所は神根島ね。機体の名前はガウェインって言うんだけど」
「ふぅん?あんた、その話、好きだったっけぇ?白兜のランスロットも、今度のガウェインもアーサー王伝説の円卓の騎士の名前じゃないのさ」
「良ーだろ、別に。そんなのぼくの勝手だね。それよりも、近々第二皇子もエリア11に来る予定だから、取りに行くのなら早目の方が良いよー?」
ラクシャータが首を傾げながら問いかけると、不貞腐れたように応じたロイドは、ゼロに第二皇子来訪を告げた。
「‥‥そうか、わかった」
ゼロはそう言うと、立ち上がる。
「ガウェインについては、有りがたく奪取させて戴く。具合の悪い者の部屋に押し掛けて長々とすまなかった。大人しく休んでくれ。失礼する」
そう暇の挨拶をしたゼロに従い、藤堂とラクシャータも立ち上がった。
「お嬢ちゃん。プリン伯爵をちゃんと休ませてあげてねぇ?プリン食べたって良くなったりしないんだしぃ?」
「わかりました。‥‥重ね重ねありがとう‥‥、ラクシャータさん」
ミレイの言葉を受けて、三人はロイドとミレイを残して部屋を出た。
「じゃ、わたしはナイトメアの整備に戻るしぃ?藤堂、あんたの月下の調整、後でするからねぇ?」
ラクシャータはそう言うと、肯く藤堂を見てから煙管を持った手をヒラつかせて歩いて行った。
「‥‥ゼロ、話がある」
「‥‥‥‥。良いだろう。付いて来い」
藤堂の言葉に頷いたゼロが自室に向かって歩き出すと、藤堂もその後に続いた。
その言葉を聞いた時、脳裏に映し出されたのは、あの時の光景。
わたしの瞳は何も映さないと言うのに、それでもあの時の光景は、いつまでも鮮明に見えてしまう。
その度に、わたしはお兄様を悲しませてしまう。
驚いたお兄様の顔、重く圧し掛かるお母様の身体、広がって行く赤い色、濡れる身体、痛む身体。
熱い血の海の中、徐々に冷えて行くお母様の身体。
重さも、色も、匂いも、音も、全てが最早有り得ないはずの情報を、身体は勝手に作りだし、わたしを悩ませるのだ。
『‥‥‥‥は、母上ッ‥‥ナナリーッ』
悲痛な、お兄様の声が、今もまだ耳に残っていた。
『ロイド、ミレイ。今回は我ながら急だったと思うが、かなりの無理を聞いて貰って感謝する。
桐原公とは連絡をつけた。この手紙と荷物も彼の好意で騎士団に向けて送って貰う事にした。
みんながそちらを出る前にと思い少々強引に出発直前の荷に紛れ込ませて貰いもした。
‥‥桐原公が全面的にゼロと騎士団を支援していると聞いた。
わたしも賭けに出たいと思う。
ロイド。以前話していたナイトメアフレームは出来ただろうか?
ロイドが見極め、ゼロを認めたのならば、それを回しても良いと、わたしは思っている。
判断はロイド、君に任せたい。‥‥頼んだ、ロイド。
追記。荷物の中にロイドの好きなプリンも入れてある。ミレイも好きだったな?
その他については日持ちするだろうから適当に食べてくれ』
それはロイドとミレイ、‥‥おもにロイドに向けられた彼等の主からの手紙だった。
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作成 2008.02.16
アップ 2008.04.11
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ナナリーin騎士団【9】騎士団客室。五人の会話の続き。ナナリーの独白?
※引き続き、あとがきその時で書いてません(汗
前半はゼロとロイドの駆け引き?ゼロ、ある意味やりたい放題?
藤堂は仲裁役ッぽくなってますね。
ガウェインはやっぱりゼロに乗って欲しいしぃ、奪取計画練ります。
やっとこさナナリー登場.....短い(汗