★臣近様へのリクエスト作品★
(朝ルル/ゼロ&皇族バレ/白主従糾弾)
幹部一同がゼロの言葉に頷いたのは、朝比奈の「従わないならおれの敵。絶対容赦しないから」視線を向けられたためである。
但し、扇がなんとか交換条件を提示する事に成功していた。
曰く、「幾つか質問に答えて欲しい。わからないままだとみんな納得し辛い」というもので、ゼロは朝比奈と藤堂、ラクシャータを見てから頷いていた。
「‥‥ゼロ‥‥。あの。ゼロと、朝比奈さんの関係は?」
まず尋ねたのはカレンだった。
「ゼロはおれの恋人ですッ!ゼロを傷つける奴は、それが誰だっておれが黙っていないからそのつもりで!」
キッパリと朝比奈は言い切り、格納庫内に悲鳴が響き渡った。
「待て、朝比奈。何時恋人になった?」
「えぇッ!?おれプロポーズしたでしょ」
「受けた覚えはない」
「ゼロ。それに朝比奈。プロポーズは結婚の申し込みだ。恋人になる前に受けるのは告白だぞ」
千葉が訂正を入れる。
「告白にも応じた覚えはないぞ、朝比奈。貴様の頭は鳥頭か」
ゼロは否定するのだが、抱きしめられたままだと言うのに、気にもせずに否定したところで説得力はない。
「えぇ!?おれが『好きです、ゼロ。ゼロが何者だろうと構いません。おれと付き合ってください』って言ったらOKしてくれたじゃないですか」
「『知らない内から言われても、説得力などあるものか。そんな言葉は、わたしの素性を知った後でもう一度言え』と言っただけだ。勝手に捏造するな」
「だから君がルルーシュ君だって知った後にも同じ事を言っ──」
「朝比奈ッ!!」
朝比奈の言葉を、藤堂が慌てて遮ったが、既にその場にいる者の耳にそれは届いていた。
ラクシャータは「あー‥‥」と無意味に唸り、藤堂は朝比奈を睨んだ後、気遣わしげな視線をゼロに向ける。
ゼロは深々と溜息を吐き、朝比奈はそろっとゼロから身を離した。
「ルルーシュですってぇ!?」
カレンがゼロと朝比奈と、口を挟んだ藤堂とを見ながら声を上げる。
「本ッ気でルルーシュなの?ルルーシュ・ランペルージ。アッシュフォード学園の生徒会副会長の、わたしや枢木スザクとクラスメイトの!?」
確認の為のカレンの言葉に、幹部達は瞠目する。
「その通りだ。‥‥間違いなくそのルルーシュ・ランペルージがゼロだ。黙っていてすまなかったな、カレン」
ゼロは落ち着いた声音で、肯定し、カレンに詫びた。
「まったくだわ。傍にいたのに今まで何のフォローも出来なかったじゃないッ!わたしでさえ何度もキレかかってたのにッ!知ってたら幾らだって中断させたのにッ!」
カレンは憤って声を荒げ、ポロリと涙を零した。
カレンの涙に、旧扇グループだった者達が慌てだす。
「なッ‥‥カレン!?‥‥ゼロ。一体学園で何が‥‥?」
扇の問いかけに、ゼロは肩を竦めた。
「別に。‥‥スザクはいつでもあの調子だからな。学園でもゼロ批判が凄いというだけだ。知らないスザク相手に怒るわけには行かず、といったところだな」
手の早いカレンが、手出しできない針のむしろ状態に置かれていた事に同情し、ゼロ本人が、ゼロ批判を直接言われていた事に気付いた。
「ゼロ!‥‥じゃなくてルルーシュ君。おれは君が好きです。だから付き合ってください!」
正体もバレた事だしと、自分が原因だったというのに、朝比奈はまたもやアタックしはじめた。
藤堂とラクシャータはそれを見て「また断られるな」と、少しだけ朝比奈を不憫に思った。
二人の予想通り、ゼロは朝比奈の告白にそっぽを向いて拒絶を示してから、再び朝比奈を見る。
「朝比奈。一つ確認するが、とっちめる相手は誰だ?」
ゼロが尋ねると、朝比奈は断られたにも関わらず、気落ちする事無く即答する。
「ゼロを苦しめるあの主従。どっちもに決まってるじゃないですか」
「やれやれ。‥‥まぁ、黒の騎士団が出向いた場所に、誘き寄せるのはそう苦ではないが‥‥。二言はないだろうな?」
ゼロは再度念を押す。
「くどいよ、ルルーシュ君。誰にも拒否なんてさせないから」
「強制してどうする。策を練らなければ、お前が特攻するというから考えるが、それを嫌がる者にまで押し付けるな」
ぴしゃりとゼロは言い、朝比奈が不満そうな表情を見せて俯いたが、扇が口を挟んだ。
「大丈夫だ、ゼロ。嫌々じゃない。カレンを泣かせ、君を苦しめ非難する枢木を許せないのは、みんな同じなようだし。どんな作戦でも苦情は言わないから」
「‥‥あー‥‥。おれ様だって、奴は嫌いだし、今回だけはきっちり従ってやらぁ」
みんなの視線を受けた玉城が、そう続けた。
「そうか。‥‥ラクシャータ」
「なぁにぃ?‥‥ていうかぁ。もしかしなくてもプリン、よねぇ?」
場違いな単語に、玉城が思わず声を上げそうになったのを慌てた杉山と南が押さえつけた。
「そうだ、頼んだ。‥‥朝比奈、もう一つ確認するが、とっちめる方法は?口か?手か?」
「「「「口で言い負かした上、白兜をやっつける!!!」」」」
朝比奈の答えに重なるように、何人かが声を揃えた。
「作戦は練るから、白兜は月下と紅蓮弐式で仕留めろよ。指揮は藤堂に任せる」
「わかった」「「「「承知ッ!!」」」」「任せてください、ゼロッ」とそれぞれが応じる。
その良いお返事に、ゼロは頷くと、携帯を取り出して何の説明もなくコールを掛ける。
「あぁ、お久しぶりですね、わたしですよ、義兄上。実は少しばかりお願いしたい事がありまして‥‥」
繋がったらしい早々、ゼロの発した言葉に、藤堂とラクシャータは視線を交わし、他は目を見開き、だけど咄嗟に自分の口を塞いで声を出すのを堪える。
「‥‥‥良くわかりましたね。その通りですが。えぇ、今回、義姉上は邪魔ですので、その騎士ともども足止めをお願いしたいかと」
ディートハルトは、無言でメモ帳を取り出し、新たに知った事実、名前や学生である事、兄がいる事、姉がいる事などをかなりの速度で書き綴っていた。
だが、『姉に騎士がいる』と書いたところで、ペンを動かす手が止まり、ゼロを凝視した。
「騎士を持てる者など、皇族以外に誰がいるというのだろうか?」とディートハルトはゼロを、そして藤堂を見る。
「‥‥‥今、ですか?‥‥仕方がありませんね。一度しか言いませんよ?ではよろしくお願いします、シュナイゼル義兄さま」
爆弾発言をしておいて通話を切ったゼロに、藤堂が声を掛ける。
「‥‥この場で良かったのか?」
「あぁ。わたしの表の事もバレてしまったしな。ディートハルトがいる以上、名前から繋げられる可能性も高い」
ゼロは頷いて、「ならば先にバラしてしまった方が無難だろう」と淋しげな声で言ってから唖然としている幹部達を見渡した。
「表の名と経歴は、カレンが言った事に間違いはない。ただ、素性を隠して学生生活を送っていたに過ぎず、表の名も偽名だ」
「ゼロの素性と本名はぁ。神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。第17皇位継承者だったお方よぉ」
ゼロが前置きのようにそういって言葉を切ると、すかさずラクシャータがバラしてしまった。
「だが、彼は敵ではない。我々以上にブリタニアを憎んでいる。皇位継承権も剥奪され、亡き者とされていたはず。‥‥何故シュナイゼルに?」
藤堂がフォローを入れつつも疑問点を尋ねた。
「義兄上はわたしの死を信じないと思っていた。ならばわたしがゼロであると結びつけるのは容易。案の定、ご存知だったよ」
ゼロは肩を竦めて藤堂の問いに答えた。
玉城が黙っていられたのはここまでだった。
「やいゼロッ!」
そう始まった言葉に、扇を筆頭とした幹部達が肝を冷やし、朝比奈は玉城を睨み据える。
「何故、ラクシャータと藤堂が既にゼロの素性を知っていやがるんだ?説明しろ説明!」
玉城の怒鳴り声に、幹部達は首を傾げ、「「「ツッコミどころはそこなのか!??」」」と悩んだが、朝比奈は「問題なし」と玉城を睨むのをやめた。
「簡単よぉ。ゼロとは昔面識が有ったしぃ。生存を信じていれば、繋げるのは容易だって、今ゼロも言ったばかりよねぇ」
ラクシャータが言い、藤堂も「その通りだ」と頷いた。
「ゼロ!素性もわかったし、それでもおれは君が好きだから、付き合ってください!!」
再び朝比奈がアタックを敢行した。
「‥‥‥。返事をするのと、作戦を説明するのと。どちらが良い?」
ゼロの問いかけに、果敢だった朝比奈が一瞬押し黙る。
「‥‥‥両方だよ。ルルーシュ君。おれは君を諦めないし、だからといってあいつ等をとっちめないと気が治まらないし。第一報復は必須でしょう。だから両方」
そうして発せられた朝比奈の揺ぎ無い言葉に、藤堂とラクシャータはゼロを思って安堵する。
どちらか片方を選んでいたら、ゼロが朝比奈の想いを受ける事がないと知っていたからである。
「朝比奈、今一度問う。‥‥わたしの一番は別にいるし変える気もない。そして裏切りは認めない。それでもそう言うのか?」
「勿論!君が一番だと言うあの子ごと、君を守りたいんだ。おれは絶対裏切ったりなんてしないから、安心してよ」
にこにこと満面の笑みで朝比奈が応えると、ゼロはフッと俯いてから、話題を変えた。
「作戦についてだが‥‥ッ」
にこにこ笑顔のままの朝比奈が、再びゼロに抱きついて、驚いたゼロが言葉を切った。
ゼロが朝比奈を引き剥がすのに時間を取られ、説明が始まった時には二時間が経過していた。
後編に続く。
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作成 2008.04.18
アップ 2008.04.21
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