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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ギ ア スの小説を書いています。
ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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★臣近様へのリクエスト作品★
(朝ルル/ゼロ&皇族バレ/白主従糾弾)

「義兄上。このような場所まで呼び出して、一体何の御用でしょうか」
神根島のかつてはガウェインが有った場所で、ギルフォードとダールトンを連れたコーネリアはシュナイゼルに尋ねる。
コーネリアに対し、供にその二人を指名したのはシュナイゼルで、ダールトンは特区設立準備によって増えた激務の合間を縫って同行していた。
「わたしもまだ詳しくは聞いていないのだけどね、コーネリア。ガウェインについての情報が有れば、ゼロに対して幾許か有利になるかと思ってね」
シュナイゼルの言葉に、三人はなるほどと納得して先を歩き出したシュナイゼルの後に続いたのだった。


黒の騎士団襲撃の報に、ユーフェミアは困惑した。
今は総督のコーネリアも自分の補佐についていたダールトンも不在だったからで、どうすれば良いのかわからなかったからだ。
当然、コーネリアにしろ、ダールトンにしろ、留守中の指揮の在り処は明確にしていた。
平時の際はユーフェミアに、だが、有事の際には軍のそれぞれの隊長にゆだね、報告を密に、と厳命してあった。
実際には、神根島周辺にはシュナイゼルによる妨害電波が流されていて音信不通だったのだが。
軍の事も、軍人の事も、ほとんど知らないユーフェミアは、唯一とでも言うべき知っている軍人と軍内の組織に連絡を入れる。
そうして特派に連れられてユーフェミアもまた戦場へと向かったのだった。

「ゼロぉ。貴方の読み通りだそうよぉ。今プリンから連絡が有ったわぁ。後30分くらいで現着するってぇ」
ラクシャータの報告を受けて、ゼロは藤堂を振り返った。
藤堂以外の対白兜要員は既にナイトメアの中で待機していてこの場にはいない。
「そちらは任せた。‥‥まぁ、言いたい事が有れば、好きに言って構わないが、朝比奈が暴走しないようにだけ気をつけてくれ」
「わかった。‥‥だが、それが一番難しい。おれで止めきれない場合は、よろしく頼む」
「手が空いていればな」
ゼロは軽く応じて藤堂を送り出した。

ゼロの作戦、藤堂の指示により、白兜から適度に距離を取り、月下と紅蓮二式は白兜の攻撃をかわしまくる。
かわしながら、彼等はオープンチャンネルのままのスザクがある言葉を言うのを、「本当は言わせたくないけれど」と思いながらも待っていた。
そう、待っていたのだ、ゼロが「スザクならば、必ず言うだろう。その意味すら考えずに」と言ったから。
「今回、わたしは参加しなくて良いんだろう?」と言って、ナイトメアにすら乗らず後方でその戦闘を見ていたゼロが「そろそろか‥‥」と呟いた数瞬後。
『──ゼロは間違っているのにッ!』
スザクのそのいつもの言葉が白兜より発せられたのだった。
『あんたは騎士失格よッ!枢木スザクッ!!』
紅蓮弐式からカレンの断罪の声が叫ばれた。
『なんだって!?』
『それからお飾りのユーフェミア!あんたもあんたよね。自分の騎士の言動くらい気を配ったらどうなの?呆れた主従よねあんた達はッ!』
そんな出だしから始まったカレンの言葉に、何のことかわからず、首を傾げるユーフェミアとスザクだが、自分達が非難されていることだけはわかって気分を害した。
『一体何の事を仰っているのですか?呆れられるような事はしていないはずですわ。第一それは皇族批判ですよ』
G1ベースから、ユーフェミアがオープンチャンネルを開いて反論してきたその言葉に、騎士団達は一層呆れる。
『じゃあ聞くけど、お飾り皇女。「特区」に参加するようにってゼロに呼びかけたよね。公共の場で、ゼロに事前に許可を求めもしないで』
朝比奈が冷ややかな声音で確認するかのように尋ねた。
『えぇ。そうですわ。「優しい世界」という共通の目的があるのでしたら、手を組めば、諍いをする必要がなくなるではありませんか』
ユーフェミアは悪びれる事無く、しっかりと頷いて応じる。
『けど、今のあんたの騎士の言葉によると、ゼロは間違っているらしいじゃないか。間違った相手と手を組めるなんて凄いよね、君』
『というより、主が手を組もうとしている相手を「間違っている」という騎士などありえないと思うぞ、わたしは』
朝比奈がユーフェミアを非難すれば、千葉はその騎士のスザクを非難する。
『厚顔無恥というのであったか?ゼロの意向を聞きもせず、宣言をするだけして、そして相手の足場を崩すだけ。「特区」とやらにそれ程の価値があるとでも?』
卜部も参加する。
『価値ならあるではありませんか。堂々と「日本人」を名乗る事が出来るようになるのですよ?』
ユーフェミアの言葉の後、戦場に静寂が訪れる。
後方でその様子を見ていたゼロが、言葉を続ける様子のないユーフェミアに失望した。
「‥‥まさかとは思っていたが、ここまでとはな。ディートハルト、ラクシャータ。我々は『特区』には参加しない。これにはまったく先がないからだ」
ゼロは戦場には出ず傍にいた二人に、そう宣言し、二人は「まったくもってその通り」と頷いた。
名前だけで実が伴わない「日本」に、何の価値があるというのか。
『政務はお遊びで動かしてよいものではないという事すら弁えておらぬとはッ!』
仙波が呆れを通り越して憤りすら滲ませて罵る。
『それの何処が「日本」だと言うのだ!「日本」を!「日本人」を愚弄するのも大概にするが良い!!』
藤堂が怒気も露わに言い捨てた。
白主従からの反論は既にない。
『‥‥って終わりかよ、おい。こっちは準備に手間取ってまだ何にも言ってねってのに!』
どこからか玉城の声が割って入る。
『言いたいことがあるなら、この際だから遠慮なんかしないで全部言ってしまったら良いんじゃないですか?』
朝比奈がさっくりと言い切った。
そして、扇グループをメインにした糾弾をBGMにした白兜対月下+紅蓮弐式の戦闘が再開されたのだった。


戦闘とも言えない作戦が終わってアジトに戻ってきた後、朝比奈はゼロを抱きしめながら、言うのだった。
「まだ気がすまない。ゼロ。無い方が良いに決まってますけど、あいつ等にまた何か言われたらすぐ言ってくださいね。きっちり報復しますから」
「当分は再起不能だろう?ユーフェミアはコーネリアにすら会わないで閉じ籠っているらしいからな」
「ふ~ん?『特区』はどうしたんです?」
「一度皇族として宣言した以上、運営はしなければ体裁が整わないからな。ダールトンが泣く泣く準備をしているらしい」
黒の騎士団は参加しないし、その事を納得させもしたから関係ないのだが、「土台も無きに等しいからダールトンも気の毒だな」とゼロは同情している。
「じゃあ、どこぞのバカは?」
「あの戦闘の後、慰められにやってきてナナリーに撃退されていた。当分来ないだろう」
淡々としたゼロの言葉に、朝比奈は笑い、ゼロもまた仮面の下で笑みを見せた。



───────────
作成 2008.04.18 
アップ 2008.04.22 
 

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★臣近様へのリクエスト作品★
(朝ルル/ゼロ&皇族バレ/白主従糾弾)

幹部一同がゼロの言葉に頷いたのは、朝比奈の「従わないならおれの敵。絶対容赦しないから」視線を向けられたためである。
但し、扇がなんとか交換条件を提示する事に成功していた。
曰く、「幾つか質問に答えて欲しい。わからないままだとみんな納得し辛い」というもので、ゼロは朝比奈と藤堂、ラクシャータを見てから頷いていた。
「‥‥ゼロ‥‥。あの。ゼロと、朝比奈さんの関係は?」
まず尋ねたのはカレンだった。
「ゼロはおれの恋人ですッ!ゼロを傷つける奴は、それが誰だっておれが黙っていないからそのつもりで!」
キッパリと朝比奈は言い切り、格納庫内に悲鳴が響き渡った。
「待て、朝比奈。何時恋人になった?」
「えぇッ!?おれプロポーズしたでしょ」
「受けた覚えはない」
「ゼロ。それに朝比奈。プロポーズは結婚の申し込みだ。恋人になる前に受けるのは告白だぞ」
千葉が訂正を入れる。
「告白にも応じた覚えはないぞ、朝比奈。貴様の頭は鳥頭か」
ゼロは否定するのだが、抱きしめられたままだと言うのに、気にもせずに否定したところで説得力はない。
「えぇ!?おれが『好きです、ゼロ。ゼロが何者だろうと構いません。おれと付き合ってください』って言ったらOKしてくれたじゃないですか」
「『知らない内から言われても、説得力などあるものか。そんな言葉は、わたしの素性を知った後でもう一度言え』と言っただけだ。勝手に捏造するな」
「だから君がルルーシュ君だって知った後にも同じ事を言っ──」
「朝比奈ッ!!」
朝比奈の言葉を、藤堂が慌てて遮ったが、既にその場にいる者の耳にそれは届いていた。
ラクシャータは「あー‥‥」と無意味に唸り、藤堂は朝比奈を睨んだ後、気遣わしげな視線をゼロに向ける。
ゼロは深々と溜息を吐き、朝比奈はそろっとゼロから身を離した。
「ルルーシュですってぇ!?」
カレンがゼロと朝比奈と、口を挟んだ藤堂とを見ながら声を上げる。
「本ッ気でルルーシュなの?ルルーシュ・ランペルージ。アッシュフォード学園の生徒会副会長の、わたしや枢木スザクとクラスメイトの!?」
確認の為のカレンの言葉に、幹部達は瞠目する。
「その通りだ。‥‥間違いなくそのルルーシュ・ランペルージがゼロだ。黙っていてすまなかったな、カレン」
ゼロは落ち着いた声音で、肯定し、カレンに詫びた。
「まったくだわ。傍にいたのに今まで何のフォローも出来なかったじゃないッ!わたしでさえ何度もキレかかってたのにッ!知ってたら幾らだって中断させたのにッ!」
カレンは憤って声を荒げ、ポロリと涙を零した。
カレンの涙に、旧扇グループだった者達が慌てだす。
「なッ‥‥カレン!?‥‥ゼロ。一体学園で何が‥‥?」
扇の問いかけに、ゼロは肩を竦めた。
「別に。‥‥スザクはいつでもあの調子だからな。学園でもゼロ批判が凄いというだけだ。知らないスザク相手に怒るわけには行かず、といったところだな」
手の早いカレンが、手出しできない針のむしろ状態に置かれていた事に同情し、ゼロ本人が、ゼロ批判を直接言われていた事に気付いた。
「ゼロ!‥‥じゃなくてルルーシュ君。おれは君が好きです。だから付き合ってください!」
正体もバレた事だしと、自分が原因だったというのに、朝比奈はまたもやアタックしはじめた。
藤堂とラクシャータはそれを見て「また断られるな」と、少しだけ朝比奈を不憫に思った。
二人の予想通り、ゼロは朝比奈の告白にそっぽを向いて拒絶を示してから、再び朝比奈を見る。
「朝比奈。一つ確認するが、とっちめる相手は誰だ?」
ゼロが尋ねると、朝比奈は断られたにも関わらず、気落ちする事無く即答する。
「ゼロを苦しめるあの主従。どっちもに決まってるじゃないですか」
「やれやれ。‥‥まぁ、黒の騎士団が出向いた場所に、誘き寄せるのはそう苦ではないが‥‥。二言はないだろうな?」
ゼロは再度念を押す。
「くどいよ、ルルーシュ君。誰にも拒否なんてさせないから」
「強制してどうする。策を練らなければ、お前が特攻するというから考えるが、それを嫌がる者にまで押し付けるな」
ぴしゃりとゼロは言い、朝比奈が不満そうな表情を見せて俯いたが、扇が口を挟んだ。
「大丈夫だ、ゼロ。嫌々じゃない。カレンを泣かせ、君を苦しめ非難する枢木を許せないのは、みんな同じなようだし。どんな作戦でも苦情は言わないから」
「‥‥あー‥‥。おれ様だって、奴は嫌いだし、今回だけはきっちり従ってやらぁ」
みんなの視線を受けた玉城が、そう続けた。
「そうか。‥‥ラクシャータ」
「なぁにぃ?‥‥ていうかぁ。もしかしなくてもプリン、よねぇ?」
場違いな単語に、玉城が思わず声を上げそうになったのを慌てた杉山と南が押さえつけた。
「そうだ、頼んだ。‥‥朝比奈、もう一つ確認するが、とっちめる方法は?口か?手か?」
「「「「口で言い負かした上、白兜をやっつける!!!」」」」
朝比奈の答えに重なるように、何人かが声を揃えた。
「作戦は練るから、白兜は月下と紅蓮弐式で仕留めろよ。指揮は藤堂に任せる」
「わかった」「「「「承知ッ!!」」」」「任せてください、ゼロッ」とそれぞれが応じる。
その良いお返事に、ゼロは頷くと、携帯を取り出して何の説明もなくコールを掛ける。
「あぁ、お久しぶりですね、わたしですよ、義兄上。実は少しばかりお願いしたい事がありまして‥‥」
繋がったらしい早々、ゼロの発した言葉に、藤堂とラクシャータは視線を交わし、他は目を見開き、だけど咄嗟に自分の口を塞いで声を出すのを堪える。
「‥‥‥良くわかりましたね。その通りですが。えぇ、今回、義姉上は邪魔ですので、その騎士ともども足止めをお願いしたいかと」
ディートハルトは、無言でメモ帳を取り出し、新たに知った事実、名前や学生である事、兄がいる事、姉がいる事などをかなりの速度で書き綴っていた。
だが、『姉に騎士がいる』と書いたところで、ペンを動かす手が止まり、ゼロを凝視した。
「騎士を持てる者など、皇族以外に誰がいるというのだろうか?」とディートハルトはゼロを、そして藤堂を見る。
「‥‥‥今、ですか?‥‥仕方がありませんね。一度しか言いませんよ?ではよろしくお願いします、シュナイゼル義兄さま」
爆弾発言をしておいて通話を切ったゼロに、藤堂が声を掛ける。
「‥‥この場で良かったのか?」
「あぁ。わたしの表の事もバレてしまったしな。ディートハルトがいる以上、名前から繋げられる可能性も高い」
ゼロは頷いて、「ならば先にバラしてしまった方が無難だろう」と淋しげな声で言ってから唖然としている幹部達を見渡した。
「表の名と経歴は、カレンが言った事に間違いはない。ただ、素性を隠して学生生活を送っていたに過ぎず、表の名も偽名だ」
「ゼロの素性と本名はぁ。神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。第17皇位継承者だったお方よぉ」
ゼロが前置きのようにそういって言葉を切ると、すかさずラクシャータがバラしてしまった。
「だが、彼は敵ではない。我々以上にブリタニアを憎んでいる。皇位継承権も剥奪され、亡き者とされていたはず。‥‥何故シュナイゼルに?」
藤堂がフォローを入れつつも疑問点を尋ねた。
「義兄上はわたしの死を信じないと思っていた。ならばわたしがゼロであると結びつけるのは容易。案の定、ご存知だったよ」
ゼロは肩を竦めて藤堂の問いに答えた。
玉城が黙っていられたのはここまでだった。
「やいゼロッ!」
そう始まった言葉に、扇を筆頭とした幹部達が肝を冷やし、朝比奈は玉城を睨み据える。
「何故、ラクシャータと藤堂が既にゼロの素性を知っていやがるんだ?説明しろ説明!」
玉城の怒鳴り声に、幹部達は首を傾げ、「「「ツッコミどころはそこなのか!??」」」と悩んだが、朝比奈は「問題なし」と玉城を睨むのをやめた。
「簡単よぉ。ゼロとは昔面識が有ったしぃ。生存を信じていれば、繋げるのは容易だって、今ゼロも言ったばかりよねぇ」
ラクシャータが言い、藤堂も「その通りだ」と頷いた。
「ゼロ!素性もわかったし、それでもおれは君が好きだから、付き合ってください!!」
再び朝比奈がアタックを敢行した。
「‥‥‥。返事をするのと、作戦を説明するのと。どちらが良い?」
ゼロの問いかけに、果敢だった朝比奈が一瞬押し黙る。
「‥‥‥両方だよ。ルルーシュ君。おれは君を諦めないし、だからといってあいつ等をとっちめないと気が治まらないし。第一報復は必須でしょう。だから両方」
そうして発せられた朝比奈の揺ぎ無い言葉に、藤堂とラクシャータはゼロを思って安堵する。
どちらか片方を選んでいたら、ゼロが朝比奈の想いを受ける事がないと知っていたからである。
「朝比奈、今一度問う。‥‥わたしの一番は別にいるし変える気もない。そして裏切りは認めない。それでもそう言うのか?」
「勿論!君が一番だと言うあの子ごと、君を守りたいんだ。おれは絶対裏切ったりなんてしないから、安心してよ」
にこにこと満面の笑みで朝比奈が応えると、ゼロはフッと俯いてから、話題を変えた。
「作戦についてだが‥‥ッ」
にこにこ笑顔のままの朝比奈が、再びゼロに抱きついて、驚いたゼロが言葉を切った。
ゼロが朝比奈を引き剥がすのに時間を取られ、説明が始まった時には二時間が経過していた。

後編に続く。

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作成 2008.04.18 
アップ 2008.04.21 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(朝ルル/ゼロ&皇族バレ/白主従糾弾)

ずんずんと肩を怒らせて近づいてきたカレンを見たとき、その場にいた四聖剣の三人はげんなりとした表情を浮かべた。
カレンは四聖剣の傍で立ち止まると、ビシィッとトレーラーを指して言った。
「同じ四聖剣として、あの人を何とかしてくださいッ!」
「「「無理だから諦めろ、紅月」」」
仙波、卜部、千葉は声を揃えてそれこそ間髪入れずに即答した。
あまりの速さと息の合った返答に、思わずカレンは絶句する。
「‥‥じ、状況も聞かないで、無理って即答なんですかッ!?」
「何とかできるくらいなら、今頃は奴もここでメンテナンスをしている。無理だったからさっき追い出したところだ」
気力を奮い起こして再度尋ねるカレンに、千葉がトレーラーを見ながら応じて溜息を吐いた。
「ッなら、部屋に戻るように言ってくださいよ。人が来るところであんな落ち込まれ方したら周りがすっごく迷惑しますッ!」
「悪いな、紅月。それも言ったんだが、無理だったんだ。諦めてくれ」
カレンはめげずに代案を提示するが、それもまた卜部によって一蹴されてしまった。
「と、とにかく何とかしてくださいよー」
カレンの声に泣きが入る。
「‥‥そんなに酷いのか?朝比奈の奴は」
仙波が流石に悪いと思って声を掛けた。
「最悪です。落ち込んでいるのはわかるのに、ずっと入り口付近を睨んでて、どんどん殺気が増していくんです。もう誰も近寄れません」
三人は顔を見合わせてから、「そこまでか‥‥」と思って少し離れた位置でやりとりを見守っていた藤堂を振り返った。
三人の目には縋るような色合いが浮かんでいて、藤堂に要求している事柄は明白だった。
藤堂はラクシャータと視線を見交わし、二人して溜息を吐いた。
「わたしはぁ。何も言わないわよぉ。‥‥ここまで来れば反対もしないけどぉ。だけど藤堂、覚えておきなさいねぇ」
「わかっている。そんな事にはならないから心配するな」
ラクシャータの言葉に、藤堂は真剣な表情で頷くと、携帯を取り出した。
短縮と思われるボタン操作の後、携帯を耳に当てる事かなりして、藤堂は少し表情を動かしてから話し始めた。
「‥‥おれだ。すまないな、こんな時に‥‥」
相手の声は届かず、藤堂が耳を傾ける姿だけをただジッと見る。
「‥‥あぁ。変わりは‥‥一点だけだ。朝比奈が殺気を振りまいて手をつけられない状況になっているようだ」
言いながら藤堂はカレンに視線を向け、視線を感じたカレンはキッパリと頷く。
「‥‥それは。今おれが顔を見せると、悪化しそうなのでな。あぁ、それも同じだろう?」
その言葉に「うむ」と頷いたのは四聖剣の面々だった。
「あぁ。無理でないのならば、頼む」
藤堂はその言葉を最後に、相手が先だったのかもしれないが通話を切った。
藤堂が携帯をしまうのを待って、カレンが尋ねる。
「藤堂さん?『悪化する』って!?それに今のってもしかしてゼロですか?」
「‥‥現状の朝比奈がおれを見ると火に油状態になりかねなくてな。仙波達にさえ無理だというのならば、後はゼロに頼むしかない」
藤堂の言葉にカレンは訝しげな表情を向けた。
「何故ゼロなんですか?そりゃあ、ゼロは騎士団のリーダーですけど、四聖剣は藤堂さんの言う事しか聞かないって‥‥」
「紅月、勘違いするな。別に中佐以外の指示にまったく従わないというわけではない」
カレンの思い違いを千葉が指摘したが、カレンの疑問ははれなかった。

ゼロがアジトにやって来た時、扇と藤堂の指示で、平団員達はトレーラー付近からは退けられていて、幹部だけがトレーラーの周囲でゼロを待っていた。
「藤堂」
ゼロはそんな幹部を見渡してから、藤堂を呼ばわる。
「すまない、ゼロ。‥‥平気か?」
「わたしは‥‥平気だ。それで?」
何の説明もされていない扇達は藤堂とゼロの会話を唯黙って聞いているしかない。
もっとも、事情を知っているラクシャータやある程度は知っている四聖剣にしてもそれは同じだったが。
藤堂が「朝比奈は」と言いかけたところで、トレーラーからバタバタと音がして朝比奈が顔を見せた。
入り口のわりと近くにいた幹部達は、ズザザザザと後退った。
未だに殺気を振りまいたままの朝比奈に、ゼロは仮面の下で眉を寄せ、冷ややかな声を出す。
「‥‥朝比奈」
途端に、朝比奈の殺気が萎れ、「ぅわ、ゼロのが怖ぇ‥‥」と思う者が数名。
完全に殺気が消えた朝比奈は、俯き加減にずんずんとゼロに向かって歩いてくると、止まりもせずにゼロを抱きしめた。
「‥‥ッてゼロに何してるんですかッ!朝比奈さん!?」
ゼロの傍にいたカレンが当然ながら叫ぶ。
「我慢出来ないッ」
朝比奈はカレンの叫びを無視して、唸るように言い、その体勢からR指定方面に思った者が慌てる。
「「「「‥‥ッちょっと待てぇ~~~!!!」」」」
ディートハルトとカレンと井上と玉城の声が重なった。
「‥‥何もお前がそんなに憤る事はないだろう?朝比奈。しかも仕事に影響が出ているそうだな」
「こんな時に仕事なんて出来ないですよ、おれは。戦場でなら200%くらいは発揮できる自信はありますけど」
待てと言われても待つ様子はなく、ゼロと朝比奈の会話は始まる。
「それは近々発揮してもらうが。‥‥」
「どうして止めるんですか。ゼロの事でしょ?あいつ等がゼロを苦しめているのは、おれにだってわかるってのにッ!」
朝比奈はゼロを抱きしめる腕に少しだけ力を込め、キッと藤堂とラクシャータを見た。
「おれ、間違ってますか?藤堂さんッ!あいつ等が考えなしでお気楽で無計画に発言だけでゼロを苦しめているって事にまったく気付いてないんでしょう!?」
「あぁ、まぁそんな感じかもぉ。二言目には『君の為』らしいしぃ。その相手の事をまぁったく見てないものねぇ、二人とも。似た者同士気が合うのかしらねぇ」
憤る朝比奈に、黙る藤堂に代わってラクシャータが応じた。
「『君の為』ぇ!?どの面下げて?ゼロッ!やっぱりおれ、とっちめないと気がすまないです。策練らないって言うなら、これから特攻しますからね?」
朝比奈が言い、「さぁどうする!?」と腕の中のゼロに問う。
「‥‥ラクシャータ」
ゼロが疲れた口調でラクシャータを責めるが、「言っちゃったものは仕方ないでしょぉ。諦めてねぇ」とラクシャータは悪びれなかった。
「‥‥‥朝比奈。特攻はするな」
「なら作戦」
譲らない朝比奈に、とうとうゼロは、「どんな作戦だろうが誰も苦情を言わないのならば練ってやろう」と折れたのだった。

中編に続く。

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作成 2008.04.18 
アップ 2008.04.20 
 

お陰さまで、No.1にて50000HIT致しました。

今回も、優先問題がありませんので、完全な先着順としまして、ここで募集いたします。

条件1:先着5名様と致します。
条件2:時間がかかる事が予想されます。いつまででも待ってくださる方のみとさせていただきます。
(前回分のアップが終わるまでアップしないので、本当に時間がかかります!!)
条件3:短くても構いませんので、No.1内についての感想もお願いします。
条件4:今回もメールフォームではなく、コメントでの募集と致します。

注意1:スザルルなんて絶対に書きませんし、書けません!!(むしろ出したくない)
注意2:R2設定およびキャラは書けません。
注意3:R2を見ているので、引きずられないとは言い切れません。
注意4:「糾弾」、「白主従」のお話は現在食傷気味で書けない恐れがあります。
注意5:×になりきらず、+どまりになる可能性は大です。

上記、条件と注意をご確認の上、ご応募ください。
(条件は前回と同じです)

よろしくお願いします。

※締め切りました。

ゼロは、無頼を完全に壊される前に、コックピットを射出することに成功した。
枢木スザクの騎乗する白兜──もといランスロット──は間髪の差で無頼のみを粉砕した後、ゼロの身柄を確保する為に、追跡を開始した。

ギルフォード及び親衛隊の相手をしていた藤堂と四聖剣だったが、藤堂の合図で一斉に距離を取りそのまま後退した。
コーネリア第一のギルフォードが後を追うハズもなく合わせて双方退く形になった。
『しかし、よろしかったのですか?藤堂中佐』
仙波が気遣わし気に尋ねる。
「黒の騎士団の動きが解せない。これ以上は無意味だ。‥‥あちらで不測の事態でも起きたのかも知れんな」
藤堂は戦場に流れる空気から、そう読み取ったのだ。
ならば混乱に乗じて退くのが吉である。

『中佐ッ。何か来ます!』
飛来音に気付いた千葉が注意を促す。
それぞれ無頼改を進ませた仙波と卜部が左右の前方を固め、千葉と朝比奈は後ろを含めた周囲に警戒を向ける。
藤堂は音のする空へ視線を向けた。
「‥‥脱出したコックピット‥‥」
『どこのでしょうか‥‥』
『どうしますか?中佐』
尋ねている間にも、高度を下げていた飛来物は、無頼改の前方に墜落して破片を撒き散らしながら更に接近して来た。
それを凝視していた藤堂は、仙波と卜部の間を抜けて無頼改を前に出した。
『中佐ッ!?』
千葉の慌てた声が響く中、藤堂は飛んで来た黒い塊を無頼改の片腕で受け止め、もう片方で他の破片から庇うようにしながら反転した。
藤堂の無頼改を襲う破片を、慌てて仙波と卜部が叩き落とした。
『どうしたんですか、藤堂さん?』
朝比奈が無頼改を寄せて問い掛け、千葉はその動きに渋面を作りながらも周囲の警戒を継続した。
破片を全て叩き落とした二人は、やれやれと息を吐き出す。
『中佐ー。いきなりだとフォローするのが大変だって』
卜部が明るい口調で言う。
いつもなら、何かしらの反応があるのだが今回はなかった。
『あれ?藤堂さん。それってもしかして、‥‥ゼロ?』
朝比奈は藤堂の無頼改の手の平に乗っているモノが人である事に気づき、それがゼロだと当たりをつけた。
藤堂は無頼改のコックピットを開いて外に出ると、無頼改の肩と腕とを伝って手の平まで身軽に移動した。
朝比奈がゼロだと推測した人物に対して無頼改の銃口を向け、何か有ればいつでも放てるように警戒する。
藤堂はそっとその肩に触れる、と「うっ」と唸って身動いだ。
『動かないでくださいよ』
「お前は‥‥ッく‥‥。は、早くここを離れろ。‥‥白兜が追って来る」
どこか怪我をしているのか、苦痛の息の下、藤堂に向かって警告を発する。
『中佐、本当です。ナイトメアが一機こちらに向かっています』
「掴まれ。大人しくしているのならば、安全な所まで連れて行ってやる」
藤堂の言葉に、四聖剣は驚き、藤堂とゼロは暫く無言で(多分)睨み合った後、ゼロは藤堂に片手を差し出した。

───────────
作成 2008.02.29 
アップ 2008.04.19 

「あ、卜部さん。藤堂さんは?知りませんか?」
主に藤堂と四聖剣が集まる彼等の部屋に一番近い休憩室に入った朝比奈は、出てこようとしていたらしい卜部を見つけて声をかけた。
「‥‥藤堂中佐に何の用なんだ?」
卜部は歯切れも悪く、朝比奈に問い返す。
「さっき、扇さんがゼロからの連絡を受けて、今日は来られなくなったって言うから、藤堂さんに構って貰おうと思って♪」
朝比奈の言葉に、卜部は肺が空になるまで盛大に息を吐き出した。
「‥‥‥‥卜部さん?」
いつにないリアクションの大きさに、朝比奈は目を白黒させて卜部に問いかける。
「あー‥‥。中佐は仙波さんと出かけている。‥‥その、急な予定だ」
声を落とした卜部は、言いにくそうにそう説明した。
「‥‥って何時の間に!?‥‥当然、ゼロにも何も言ってないですよね?その反応だと」
「そうなんだ‥‥。今日は来る日だってわかっていたんだが‥‥。仙波さんに誤魔化せと言われててどうしようかと」
肩の荷が降りたと言わんばかりの卜部に、朝比奈は笑顔を向ける。
「良かったじゃないですか。次来るの五日後ですよ♪」
「‥‥そうだな。千葉にも伝えてくれ」
「わっかりました。行ってきます」
目当ての藤堂はいなかったが、それなりに退屈はしなさそうだと朝比奈は千葉の元へと駆けて行った。

ディートハルトが、ゼロ欠席の報を受けたのは、騎士団のアジトに向かう為に仕事場を出た暫く後の事だった。
ゼロが来ないからと言って、今更仕事場に戻るわけにも行かず、かといってまっすぐアジトに向かう気も失せたディートハルトは散歩をする事にした。
普段は通らない地区へと足を踏み入れ、何らかの有意義な情報でもないかと精神を研ぎ澄ますのは何時もの事。
特にゼロを知ってからこの方、ゼロと騎士団とに役立つ情報に敏感になって来ていると自覚するディートハルトである。
だがこの日、ディートハルトは自分の感覚を少々疑いたくなってしまった。
目に留まったのは、ブリタニアの子供だったからだ。
年の頃は十代半ばから二十歳まで。
珍しい黒髪の、白い肌の、薄い色のサングラスをかけていたとしても隠し切れないその美貌の、細身の、麗しい少女だったのだ。
これは恋?いや、わたしにはゼロだけが‥‥だがこの胸の高鳴りは‥‥と心の中での葛藤とは裏腹に、身体は勝手に動くのだ。
ディートハルトの瞳はファインダー越しに少女を捉えているし、指はシャッターを切っているし、足は少女を追っているのだから。
ゼロに続いて、二人目の被写体だと、早々にディートハルトは思い定めていた。

異様な気配に、藤堂のすぐ後ろを歩いていた仙波は視線を巡らせて、それを見つけてしまった。
「藤堂中佐。‥‥あちらを」
前を行く藤堂に注意を促すと、藤堂は立ち止ったが振り返りも、そちらを見る事もしなかった。
「‥‥見るな。忘れておけ」
低い、それは低い声で、藤堂は仙波に命じた。
それに心底同意したいと思っていた仙波だが、一点だけ気になる事が有ったので、言及してみる。
「ですが‥‥、カメラを向けている場所が問題ですので」
「‥‥わかっている。裏から入るぞ」
「承知」
気付いているのならば、忘れる事に否やはなく、仙波は返事をすると行き先を若干変えた藤堂に従った。

通された部屋で、藤堂と仙波は戸惑っていた。
目の前に桐原が座っている、それは良いのだ、彼に会いに来たのだから。
では桐原の後ろにそっと控える少女はどうなのだろうか?と訝しげに思うのも無理はない話だと思う。
まるで祖父に着き添う孫のような様子だが、彼女はどうみても日本人には見えず、二人の関わりが説明できないのも戸惑う原因の一つだ。
桐原への挨拶の言葉も、その為にまだ発せられていない。
部屋の中には、当然いるものと思っていた護衛の姿も、一人もおらず、桐原とその少女と、二人だけだったのだ。
「久しいな、藤堂。‥‥それに、仙波も。掛けるが良い」
促されて藤堂と仙波はぎこちなく桐原の対面に並んで座った。
「ん?あぁ、この者か?案じるな。わしに縁ある者でな。今回はわしの身を案じて付き添って来ている。害はない」
桐原の保証を受けて、藤堂と仙波は警戒を一応解いた。
「急な連絡には驚きました。一体‥‥何が‥‥」
藤堂は桐原に尋ねる。
「別に。所用で近くまで来たモノでな。近況を聞いておきたいと来て貰っただけじゃな」
そう応じる桐原は悪びれない。
「それならばそうと、言って頂きたかった。‥‥突然『近くまで来ている。出て来い』では慌てるしかないので」
少女はそっと桐原の傍を離れ、何かを持って戻ってくる。
ブリタニアの少女が湯のみと急須を盆に載せて来たと知って、藤堂と仙波は少し驚いた。
サイドテーブルに置いた盆の上で、急須を傾ける姿は堂に入っていた。
「ふッ。どうやら気に入られたようじゃな?どうじゃ?わし等捨て置いて付いて行くか?」
桐原と藤堂、仙波にお茶を出した少女に、桐原がそう尋ねる。
「御冗談を仰らないでください、おじい様」
少女は少し怒った様子で桐原に応じた。
「桐原公。失礼だが、お孫さんには見えないが‥‥、縁、というのは?」
「‥‥惚れたのか?藤堂?」
くつくつと桐原は笑って藤堂を揶揄する。
「おじい様。お客様がお困りになっているではありませんか。そうおからかいになるものではありませんわ」
少女はそう言って桐原を諫めてから、藤堂に向きなおった。
「‥‥桐原様はわたしの祖父のご友人なのですわ。‥‥『おじい様』と呼ばせて頂いておりますが」
「‥‥名を、聞いても構わぬでしょうか?」
訊ねたのは仙波の方だった。
これ以上藤堂に尋ねさせれば、またも桐原からのからかいの言葉がかからないとも限らないと思って割って入ったのだ。
「エルと申します」
「わしは仙波と申す。こちらは‥‥」
「藤堂だ」
藤堂は桐原の言葉を気にしてか、言葉少なに応じた。
「存じておりますわ。『奇跡の藤堂』様と、四聖剣の方ですね。お噂は良くお聞きしておりました」
にっこりと笑って言う少女に、藤堂と仙波は思わず見惚れた。
「えー、それは桐原公、からですかな?」
ごほんッと咳払いをした後、仙波が尋ねる。
「ええ、おじい様からもそうですが、他にも色々な方から‥‥。有名でいらっしゃるようですね」
「なんじゃ、やはり気に入っておるのではないか。別に老体に気を使わずとも良いのじゃぞ?」
にやにやと桐原は人の悪い笑みを、主に藤堂と仙波に向けながらそんな良い方をする。
「‥‥おじい様?わたしに黒の騎士団に行って何をしろ、と仰るのですか?」
少女はそんな桐原にまたも怒った様子で抗議した。
確かに華奢で儚げにも見える少女がテログループに来たところで、何も出来ないだろうと藤堂と仙波は思う。
「ゼロに会ってみるのもまた一興だと思うぞ?なぁ、藤堂、仙波。お主等から見てゼロをどう思う?」
桐原は少女に笑って見せてから、真顔になって藤堂達に尋ねたのだった。

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作成 2008.02.20 
アップ 2008.04.18 

★零夜様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ騎士(カレン、藤堂)話でスザク糾弾?)

最後に千葉が一礼をして去って行くのを見届けてから、カレンと藤堂はゼロを振り返り、視線を合わせるためにその前に膝をついた。
「ゼロ。手は痛まないか?かなり派手な音がしていたが」
藤堂が尋ねると、ハッとしたカレンが問題の腕に手を伸ばす。
「平気ですか?ゼロ。‥‥まったくあんの体力バカのせいでッ。次会った時はギッタギタにやっちゃって良いですか?ゼロ」
「カレン。‥‥猫を被っている場所でやるのは難しいだろう?一応病弱設定なんだから大人しくしていろ」
「紅月が病弱設定‥‥ボロ出してないのか?」
そのそぐわない設定に、藤堂は唖然として尋ねる。
「あ、藤堂さんバカにしてるわね?これでも見破られた事は‥‥ゼロにしかないわ」
「いや‥‥。生徒会のメンバーはみんな気付いていると思うぞ?わたしの猫を見慣れているからな。もう少し気をつけて被った方が良い」
「ぅ‥‥そりゃ‥‥貴方には敵わないのは認めるけど‥‥そんなにバレバレでしたか?」
「少なくとも会長とリヴァルにはバレてると思うな」
ミレイとリヴァルの会話を思い出して、「バレているのだが」と思いながらも控え目に言って苦笑した。
「‥‥それでも!それでも良いんです。病弱じゃない事が他のみんなにバレたってそんな事は気にしないわ。スザクは許せないから!」
自分の病弱が偽りだとバレる事と、ルルーシュの現状とを秤にかけたカレンは即座にルルーシュの現状改善を取って言う。
ゼロは仮面の下で目を見開いて固まった。
「ゼロ。スザク君が君を選ばなかったからといって君の存在が否定されたわけではない。スザク君に君という存在を理解する努力が足りなかったからだ」
「藤堂さん。それ、違いますよ。枢木スザクは初めから理解しようとなんてしてないもの。彼の事をきちんと考えようとしていればわかったはずなんだもの」
「‥‥そうか。努力すらしなかったか、スザク君は‥‥。何も見ようとはせず、流されて、惰性で現在に辿り着いたのか‥‥彼は」
そう呟くように言う藤堂の声音には憤りと遣る瀬無さと諦めが混じっているようにゼロには感じられた。
「少しでも考えているのならば、お飾りの騎士にならなかったか、なったらなったでスッパリと学園から身を引くべきだったんです」
カレンは言い切り、「だけどあいつはそんな事考えもしないで残ったんです。絶対に許さないわ!」と声を荒げた。
ゼロはカレンと藤堂が自分の為に憤っているのを感じて、なんだか笑いたくなって仮面の下で少しだけ笑う。
「ゼロ。君は自分を『死せる者』と言った。だが、騎士団は『君と共に生きるか、君と共に死ぬか』なのだろう?おれ達も生きていないと思うか?」
急に変わった話題に、ハッとしてゼロは藤堂に視線を向けた。
「ゼロ。貴方もわたし達騎士団も生きています!貴方が生きているって事を認めない人なんて放っておけば良いんです。そっちが間違っているんだから」
「君は生きている。おれ達も。そしてここでならば君の望むモノは手に入るだろう。おれ達はその為にいる。違うか?」
カレンと藤堂の言葉は、ゆっくりとゼロの、ルルーシュの心に沁みて行く。
「‥‥ち、が‥‥わな、い」
心の中にわだかまっていた何かが溶けて消えて行くような感覚に戸惑いながらも、巧く綴れない言葉をもどかしげにルルーシュは紡ぐ。
「おれには、君が必要だ。君だからこそ必要なんだ」
「藤堂さんッ、そこ、『おれ』じゃなくて『おれ達』って言ってくださいね。わたしにだって、みんなにだって必要なんだから」
「おれの素直な気持ちだ。紅月達にも必要かも知れないが、おれにはゼロもだが彼自身も必要だ」
「だからッ。それはわたしも同じだって言ってるじゃないですかッ。大体さっきは『みな』って言ってたのにどうして?」
何故違うのかがわからないカレンが盛大にハテナマークを飛ばして喚く。
「‥‥今、ここには、わたしの正体を知る者しかいないから、だろう?藤堂」
「そうだ。今まで、気付かなくてすまない。これからは以前の約束通り、君と君の妹君を守ろう」
「‥‥覚えていたのか?7年前の約束まで?」
驚いたゼロの声。
「覚えている。あの時は悔やんだ。君の真意に気付かなかったおれ自身に。だが、こうして再会した今、おれは君を守ろう」
「ゼロッ!藤堂さん?一体どんな約束をしたんですか?」
「‥‥藤堂の言葉を聞いた時、『再び会う事が有れば』と、それを条件にしたのはわたしだった。それが7年前、最後に会った時の言葉だ」
「おれは‥‥『君を。君達を守る。おれに守らせてくれないか?』と言ったんだ。だから今、ここに改めて誓いを」
「なッ‥‥!ゼロの騎士はわたしよ。零番隊隊長のこの紅月カレンよ!?」
藤堂の言葉に、カレンは驚いて反論する。
今までゼロの騎士は自分だけだと自負してきたのだ、おいそれと負けてはいられない。
「喧嘩はするなよ。お前達がわたしの騎士だと認められなくなるだろう?」
からかいの口調でゼロは言うが、その声は晴れ晴れとしていた。
「藤堂鏡志朗、紅月カレン。お前達の存在は、言葉は、おれの心を癒してくれるものらしい。一度しか聞かないぞ?おれの騎士にと望むか?」
ゼロの言葉は、最早一片の疑いもない確信に満ちたものだった。
藤堂とカレンはそれに満足し、一瞬視線を見交わしてからゼロに向きなおり言った。
「「勿論!!」」
ゼロの心から光が消える事がなくなったのは、この瞬間からだった。



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作成 2008.04.14 
アップ 2008.04.17 
 

★零夜様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ騎士(カレン、藤堂)話でスザク糾弾?)

ドンッ!
突然の荒い音に、幹部はその発生源に目を向けて、驚く。
それまで大人しく座っていたゼロが、突然拳を机に叩きつけた音だったのだ。
一同が驚きから覚める間もなく再びゼロの手が動き、ドンッと音がする程拳を叩きつける。
「やめろゼロ。‥‥どうした?相談になら乗る。だから自分を傷つけるのはよせ」
藤堂が鋭い声をかけてその動きを制止する。
しかしそれでもゼロは拳を振り上げ、「ダメッ」と叫んで駆け寄ったカレンに止められた。
「‥‥‥‥離せ、カレン」
低い、それは低いゼロの声に、藤堂とカレンを除いた幹部達は固まった。
カレンはそれどころではなく、激しく首を振って反論した。
「ダメです、今は。貴方が何故こんな事をするのか、その理由がわからないから‥‥。だからまだ自分を傷つけようとする以上離せません」
「‥‥わたしは離せ、と言った。聞こえなかったのか?」
「聞こえていました。ですがッ」
「ゼロ。一人で抱え込むのはもうよせ。まるで出口のない迷路にいるようだぞ。自分を傷つける前に、おれ達に相談してみろ。突破口が開けるかも知れん」
想いがこみ上げすぎて言葉にならないカレンに代わって藤堂が静かな声で諭すように言葉を掛ける。
「‥‥‥‥相談する事などない。‥‥唯、単に、再確認しただけの話なのだから」

藤堂とカレンは顔を見合わせる。
他の幹部達は、勘気のとばっちりを喰らわないように、いつの間にか少しばかり遠ざかっていたからだ。

「「再認識?」」
期せずして言葉が重なる。

ゼロはカレンに掴まれていない左手を持ち上げ掌を見る。
カレンは思わずそちらの手も押さえようかと思って様子を窺っていたが、叩きつけるのが目的ではないと詰めていた息を吐く。
「‥‥望んだものが手に入らないという事を、だ」
ゼロのその言葉に、藤堂とカレンだけではなく、その場にいた幹部一同がハッとしてゼロの仮面を凝視する。
「‥‥‥良くわからないな。‥‥例えば?」
藤堂が問いかける。
「初めに望んだのは力だった。これ以上奪われない為の。これ以上なくさない為の」
掌を見ながら、ゼロは言葉を紡ぐ。
「‥‥その力は‥‥?」
そっとカレンが尋ね先を促す。
「手に入れた。そしてわたしは計画を前倒しにして事を起こし、『ゼロ』となった。‥‥だが、それでも掌からは変わらず零れ落ちて行く」
「だが、ゼロ。この黒の騎士団も君の望んだものだろう?」
藤堂は周囲を見渡して言う。
「‥‥そうだな。騎士団は目的を達成する為にわたしが作った。だが、それはまだ叶ってはいない」
「ッ何だってんだよ。お前の目的ってのは!?」
玉城が流石に気になったのか、離れた位置から声を投げて来た。
「‥‥ブリタニアの崩壊。それと優しい世界を作る事だ」
ヒュッと息を呑む音が幾つか聞こえたが、反応としてはそれだけだった。
「一つ、言っても良いか?ゼロ。‥‥『計画を前倒しにした』と言ったな?‥‥その事に感謝しよう」
藤堂が、ゼロに向かって言う。
「‥‥どうしたんだ?急に」
「ナリタの一件がなければ、おれは捕まらなかったかも知れない。だが、君が現れたからこそ時は動き出したのだ。だから感謝する」
藤堂の言葉に、ゼロは首を傾げる。
「君が、ゼロが現れるまで、漫然とした日々を送るだけだったこの7年。おれはきっと生きていなかったのだと思う」
藤堂が続けた言葉に、ゼロはハッとする。
「君が計画を前倒しにしなければ、それが動き出すまでの間、おれはずっと生きていなかったのだと思う。君が手を差し伸べた時、初めて生き返ったのだ」
藤堂の言葉に、四聖剣もまたこの7年を振り返った。
くすり、とゼロが笑みを零す。
「おかしなものだ。わたしも思っていたよ。『生きてなどいない』と言われた時から、存在を否定されたわたしは死せる者なのだと」
「ちょっ‥‥。ゼロ!それに藤堂さんも。誰が何と言ったかなんて関係ないです、二人とも生きてるんですから!」
カレンが慌てて割って入る。
「全く。藤堂さんも。それでも7年生きて来たから、ゼロに会えたんじゃないですかッ。ゼロだって!ここには貴方を否定する人なんていないからッ」
チラと一瞬玉城に視線を流したカレンだったが、それでもそう言いきった。
「ゼロ。君の居場所はここにあるようだぞ。‥‥みな、君を必要としている。みな、君を案じている。君の平穏を願っている」
カレンの言葉に頷いて、藤堂が言葉を紡ぐ。
「‥‥それは違うのではないか?ここはレジスタントのアジトで有って、平穏を望むべくもない場所だぞ?」
「そうか?いつもいつも気を張っていたのでは身が持たない。どこかに落ち着ける場所がないのでは、早晩参るぞ?」
「以前は有ったさ。表に、箱庭とも言うべき仮初の平和な場所が。今は崩壊しかけていて最早安息の地足り得なくなっているがな」
自嘲気味に笑うゼロに、カレンは思い当たる節が有って、思わず声を出していた。
「‥‥‥‥それって、枢木スザクのせいですか?あいつがお飾り皇女の騎士になったりしたから?なのにそのままで留まっているから?」
遠巻きで様子を見守っていた幹部達は、そこで何故枢木スザクの名前が出るのか判らずカレンとゼロとを見比べる。
カレンは、初め疑いでも違って気にしなくなったのに、いつの間にかまた疑問に思っていて、違っていますようにと願った事だった為、否定の言葉が欲しかったのだ。
それはゼロがルルーシュだと嫌だからではなく、ルルーシュがゼロなのだとしたらスザクの言葉が行動がどんなに堪えたかと言う事に思い至ったからである。
けれど、ゼロの言う箱庭とは学園の事としか思えず、カレンは黙っている事が出来なくなったのだ。
スザクの名前に、藤堂の視線が一瞬鋭くなり、すぐに優しい眼差しになってゼロに向けられた。
「そうか。‥‥ゼロ。その箱庭とやらが安息の地ではなくなったというのなら、ここに居を移せば良い。‥‥妹君を連れて」
藤堂の言葉に、カレンの時以上の驚愕が巻き起こる。
「‥‥妹ッて‥‥藤堂さん、知って‥‥?」
カレンが上擦った声を上げる。
「昔に会った事があるからな。‥‥ピースが有れば繋げるのは簡単だ。‥‥違っているか?ゼロ」
「‥‥やれやれ。少々失言が過ぎたようだな。‥‥カレン、藤堂。他の者にも、わたしの正体を、素性をバラすか?」
「君が許すならば。だが、嫌がっている間はバラさないと誓おう。そして、おれは君の素性を知った上で君に従う。‥‥今ならば全てが納得できるからな」
「わたしも言いません。それに枢木スザクだって貴方に近づけさせないわ。貴方がゼロだって納得したし、何の為にゼロになったのかも判ったもの」
ゼロと、カレンと、藤堂と。
三人だけで進んでいく話に、外野の幹部達が我に返って声を上げる。
「ちょッ‥‥カレン、それに藤堂も。ゼロの正体わかったんだろ?教えろよ。ずりぃぞ二人だけなんて」
玉城の言葉に、藤堂とカレンはすっくと立ち上がって玉城を振り返った。
「今の、聞いてなかったの?話さない、ってそう言ったばかりよね?次言ったら、容赦なく沈めるからそのつもりで」
カレンの言葉に、玉城はうろたえて視線を藤堂に移す。
「おれも話す気はない。それに今はゼロのケアを優先するべきときだ。少し席を外してもらえればありがたいが?」
藤堂は玉城を見据えてそう応じ、チラと四聖剣に視線を向けた。
当然ながら乗り出す四聖剣。
「てことで、今日はここまでで~す。みなさん行きましょ~。ホラ、ホラ急いで」
朝比奈が軽いノリで幹部達を促し、他の三人が鋭い視線で幹部達を見据えるので、扇を初めとする幹部達は押されるままにその場から追い出されていった。

後編に続く。

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作成 2008.04.14 
アップ 2008.04.16 
 

★零夜様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ騎士(カレン、藤堂)話でスザク糾弾?)

「おめでとう、スザク」
ナナリー主催の騎士就任パーティの会場で、ルルーシュはスザクにそう言った。
「ありがとう、ルルーシュ」
スザクははにかみながら嬉しそうに応じた。

「‥‥これからは会えなくなるだろうけど、頑張れよ、スザク」
しかし、続けられたルルーシュのその言葉に、スザクの表情が笑顔のままで固まる。
「‥‥‥‥‥‥‥‥え?」
何故そんな事を言われるのか判らないと言った様子で訊ね返したスザクに、近くにいた生徒会メンバーが呆れた。
「『え?』じゃないだろー?スザクさんよぉ」
リヴァルが呆れ口調のままで言うが、スザクはやっぱりわかっていない様子で戸惑いを見せている。
「あー、リヴァル。そんな事をここで言うもんじゃないわよ。他の目も有る事だし?場所変えてからにしなさいね」
ミレイが人の目を憚ってこっそりと注意し、生徒会メンバーはそれに頷いた。

それでもやっぱり戸惑ったままのスザクにルルーシュは軽く溜息をついてから、身振りで移動するようにと伝え先に立って歩き出した。
ルルーシュに続き、スザクが、そしてリヴァルとカレンとニーナが続く。
近くにいなかったシャーリーを探し出したミレイは「シャーリー、ちょっとここ頼むわね~」と声をかけてから後を追った。

「さてっと、スザク。本当にわからないのか?おれの言った事」
結局会場を離れ、生徒会室に戻って来てから、ルルーシュはスザクにそう尋ねた。
「う、うん。どうしてもう会えないなんて‥‥」
「だってスザク君、ユーフェミア様の騎士になったのでしょう?」
戸惑いつつも頷くスザクに、ニーナが言う。
「うん、そうだよ」
「お前さ?それがどういう事なのか、わかってるよな?勿論」
今度はキッパリとスザクは頷くがそれに呆れたリヴァルが確認を入れる。
「うん、わかってるよ」
「悪いけど、わたしにはそうは思えないわ。本当に分かっているのなら、ルルーシュの言った事がわからないなんてはずないもの」
決意を込めて頷くスザクに、カレンは侮蔑の眼差しを向けつつも病弱設定の声音で評価した。
カレンはスザクの覚悟と自覚の無さを軽蔑し、親友との別れを覚悟するルルーシュの気持ちをわからないスザクに呆れたのだ。
皇族付きともなれば、一般人とそうそう会えないという事を、一般人のルルーシュが理解し、騎士になる当のスザクが理解していない事にみな呆れるのだ。
「あのさ。ナナちゃんがどういうつもりだったのかは置いとくとして、おれがこのパーティに賛成したのって送別会の意味も込めて、なんだよな」
リヴァルが言い、ルルーシュとニーナが頷いた。
「これからは、ユーフェミア様の傍であの方を守ってくださるのでしょう?だからわたしは‥‥」
ニーナはそう言って俯いた。

「‥‥で、でも、ユーフェミア様が学校に行って来いって‥‥」
「それで、ほいほいと主の傍離れてやって来るわけだ?スザクさんは。へぇ?‥‥なぁ、カレンさんならどうする?たとえば誰かの騎士になったとしたら?」
リヴァルはふむふむと頷いた後、話をカレンに振った。
「‥‥‥‥。わたしなら、断るわ。騎士になったのなら、全ては主の為に、でしょう?それなのに離れて学校へ、だなんて、その間に主に何か有ったら大変だもの」
「さっすが、シュタットフェルト家の御令嬢、よっくわかってらっしゃる。‥‥てかおれもそうだけど。ミレイ会長は?」
「そーねぇ~。主の傍が一番!かしら?少なくとも他に現を抜かしたりなんて事はしないかしらねぇ?」
「‥‥でもそれって、命令無視って事じゃないですか?学校へ、そう仰ったのはユーフェミア様だし‥‥」
「ふ~ん?じゃあさぁ。スザクは主のユーフェミア様が『死ね』って言っても黙って従うんだ?たとえばここにいる誰かを『殺せ』って言っても?」
リヴァルが試すように問いかける。
「‥‥‥‥‥‥。ユーフェミア様は、そんな事仰ったりしないから」
「あら、それはわからないわよ~。皇族ってぇ、どんなシガラミ持ってるかわからないじゃない?」
スザクの言葉に、ミレイはチラとルルーシュを見てから言った。
「‥‥でもッ。ユーフェミア様はお優しいからそんな事を仰る方じゃないよ」
「なら、そのお優しい皇女様はご自分の命を狙う相手が目の前にいても、その相手を『倒せ』とは仰らないって事かしら?」
「それは‥‥別だよ?ユーフェミア様を守るのが騎士の役目なんだから。ぼくがその相手を倒すよ」
「それにしては今この時、その『相手』とやらが皇女様の前に現れているかもとは考えないんだな、お前。ここに来るって事はそう言う事だぜ?」
「‥‥‥‥だけど、ユーフェミア様は安全な政庁にいるわけだし、『学校へ行ってらっしゃい』と仰ったのは彼女だし‥‥」
「ま、いっけどさー、おれは。ユーフェミア様とは面識もないしぃ?」
リヴァルはそういうと、「シャーリー、一人じゃ大変だろうから、手伝ってくらぁ」と言って出て行ってしまった。
「ユーフェミア様をそんな風に使うなんて、‥‥スザク君酷い‥‥」
「‥‥どのみち、学園に来れる時間は少なくなるだろうな。だから、さよならなんだよ、スザク」
ルルーシュもそれだけ言うとリヴァルに続いて立ち尽くすニーナを連れて生徒会室から出て行った。
追いかけようとしたスザクをカレンとミレイが留める。
「あのさ。ルルーシュもあぁ言ってる事だし、とりあえず休学って事にでもしとく?当分忙しいのは確かでしょう?」
「そうね。わたしが言うのもなんだけれど、出席日数が不足すると留年するわよ?」
「騎士様が留年なんて主に恥をかかせるような事はしない方が良くてよ?」
二人はそう言うと、肯き合ってスザクを残して部屋を出て行った。

一人残ったスザクは、「何故みんな、ぼくを追い出したがるんだ?ルルーシュまで‥‥」と首を傾げていた。

中編に続く。

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作成 2008.04.14 
アップ 2008.04.15 
 

十回にも及ぶ反復行動の指示を終えたスザクは、ホッと息を吐いてから、出発点の中庭を目指していた。
ここでルルーシュと落ち合う約束をしていたのだが、十回の行き来の間その姿を見る事はなく、心配になっていたからだ。
「う~ん。やっぱりゼロの誰かに何かの指示を貰ったのかなぁ」
もしもそのゼロが7番ならば、無理難題を言われていないとも限らないのだと、7番が誰かを知らないスザクは不安だったのだ。
中庭に着いてもいなかったら連絡を入れてみようと決めたスザクは、早足だった速度をかけ足に変更した。

藤堂は騎士団に出撃の命令を出した。
ナイトメアフレームが一斉に飛び出す。
藤堂の月下に続き四聖剣の月下が付き従い、更に無頼やサザーランド、グラスゴーが続く。
ヨコハマのブリタニア軍基地に、黒の騎士団が襲いかかった。

中庭に到着したスザクは、その途端声をかけられた。
「そこの団員。‥‥ん?さっきの126番か‥‥」
スザクはハッとして振りかえる。
「‥‥7番のゼロ‥‥」
スザクは呻くように呟いた。
「そう‥‥7番のゼロが指示を伝える。126番は携帯を切った後、講堂へ向かえ」
「ッ待ってくれ、7番。講堂に向かうのは良いが、携帯を切る必要は感じられない」
スザクは携帯を切るように指示された事に対して難色を示す。
ルルーシュに連絡を取ろうとしてたところだったのだ、慌てるなと言う方が無理だった。
「‥‥指示に従わないつもりか?」
「そうじゃない。だけど‥‥」
「126番。理不尽だからと指示に従わず、末端が自分勝手に動いていれば、組織は成り立たない。それはわかっているな?」
7番のゼロは諭すような口調で言い、スザクはそれは事実だと納得してしまう。
「‥‥あぁ」
「‥‥ならば。指示に従い、行動しろ」
「了解した。‥‥すぐに講堂に向かう」
スザクはそれでも渋々頷くと、携帯を切って踵を返した。

カレンはそのやり取りを一番近くで傍観しながら、仮面の下で眉を寄せる。
スザクの頭には、既に最優秀を取ると言う目的が失われているとしか思えなかった。
こうも立て続けに反抗していれば、どう頑張っても採点結果は下がる一方なのに、それがわかっていないらしい。
中途半端に訊ねる事が反抗と取られ、自身に都合の良い返答だと思う回答を得られれば、それ以上は訊こうとしないで突っ走る。
「‥‥馬とか犬とか‥‥、もしかして、合ってる?」
以前、ゼロと藤堂がスザクを評して言った例えを思い出して、カレンはポツリと呟いた。
それから、まだ仕事が残っていた事を思い出し、再び新たなる獲物(団員に扮した生徒)を求めて移動を始めた。

ミレイ扮する1番のゼロは、ふと立ち止まって首を傾げた。
「おかしーわね~。さっきから団員に一人も行き合わないじゃないの。一体みんな、何所へ行ったのかしら」
ミレイのいる場所はB校舎とC校舎を結ぶ渡り廊下。
最初に、カレン扮する7番のゼロの先制攻撃で団員は全員校舎から追い出されているのでその周りをうろついていたのだけど。
「まぁったく。最初に何人かにグランド走らせただけじゃな~い。カレンったら、張り切りすぎよ、あれは~」
声音まで本物のゼロに近いところまで変えていたカレンはノリにノッているとミレイは苦笑する。
「あ、そこのゼロに扮した人」
後ろから声を掛けられて、ミレイは振り返る。
グランド方面から歩いて来たのは二人のゼロに扮した生徒、番号は3番と6番。
「どうしたの?」
「その声、ミレイ会長ですか?‥‥団員に扮した生徒達ってどこに行ったんですか?さっきから全然‥‥」
「そーなんですよ。最初は7番が外に出してたから、外回るだけで結構指示出せてたんですけど、段々誰にも会わなくなってきて‥‥」
3番が男子。6番は女子のようだけど、二人して苦情を訴える。
「それ、わたしも聞きたいくらいなのよ。‥‥ちょっと審査員のところに顔を出して来るわね」
ミレイは困り顔(仮面の下なので二人にはわからないが)で、そう言って二人を宥めた。
「「お願いします、会長」」
3番と6番のゼロは揃って1番のゼロに頭を下げた。

ピーーーと、軍の緊急通知音が鳴り響く。
『緊急連絡。黒の騎士団がヨコハマ基地を襲撃しているとの情報を受信。繰り返す、黒の騎士団が──』
放送が裏返りまくった通信兵の声を垂れ流しにしていた。
「あはー?どうやら黒の騎士団はイベントなんか眼中になかったようだね~?」
ロイドはそうコメントし、「どうやらラクシャータに一杯喰わされてしまったかなー?」と内心付け足した。
「笑い事じゃないでしょう?ロイドさん。すぐにスザク君に連絡しないと」
「え~。それはないでしょー?彼には是非、『豪華賞品』を持ち帰って貰わないと~」
「ロイドさん?わたし達の職業、ちゃんとわかってます?」
「判ってるけどね~。パーツが戻っても、ランスロットが起動できなければ同じだしー?」
「もぅ。それが判ってるんでしたら、さっさと起動できるまでに直してくださいね?」
腰に両手を当てて、セシルはロイドに向かって笑顔で角を立てる。
しかし、今のロイドにとっては、騎士団にいるラクシャータとの取り決めの方が優先される事柄だったので、「は~い」と返事をするだけである。
いつにも増して腰の重いロイドに、セシルは訝しみながらも再び笑顔を向けるのだった。

ルルーシュは、イベント開始後から、一歩も動いてはいなかった。
カレンが扮する7番のゼロと、スザクが扮する126番の団員、それから騎士団の動きを音だけで追いながら、口元の笑みは絶えない。
「ふッ、予定通りか。‥‥とすると、そろそろ藤堂から連絡が──」
ルルーシュが言い差したところで、微かな通信音が鼓膜を打つ。
「わたしだ。予定通りのようだな?藤堂」
『あぁ。‥‥今のところ全て予定通りだ。警備も君の読み通り手薄になっている』
「良し。ならば目的を達成の後、速やかに撤退を。‥‥万が一白兜が動くような事が有れば、こちらから連絡する」
『‥‥わかった。頼む』
「‥‥今、学園の周辺に展開するブリタニア軍に、ヨコハマ基地襲撃が伝わった。一時間以内に目的を達成させられるな?」
『それは問題ない。撤退のルートも理に適っているから、逃げ切れるだろう。‥‥ではアジトで』
短いやり取りの後、藤堂からの通信は途切れる。
「‥‥‥‥流石だな、藤堂鏡志朗」
ルルーシュはそう呟くと笑みを深くしたのだった。

「会長ッ。脅かさないでくださいよ。会長と言えどもここは立入禁止だって言ったはずですよ」
突然現れた「ゼロ」に驚いたシャーリーは、1番のゼッケンを見てから、相手に文句を言う。
「悪いって。ちょっと聞きたい事が有ったのよね。わたしも思ってた事なんだけど、3番と6番からも団員を見かけなくなったって言われたから様子見よ、様子見」
ミレイの言葉に、シャーリーとニーナは顔を見合わせる。
「えーと‥‥」
「番号は言いませんけど、ゼロの一人が団員に指示を出した‥‥結果?ですよ」
「うん、そう。‥‥たぶん、どこかにはうじゃうじゃ~って集まってるハズ。‥‥どこかは言えないけど」
二人の言葉にミレイは頷いて、聞いてみた。
「あらぁ。そう言う事?‥‥ふぅ~ん。て事はやっぱり7番かしらねぇ~?」
ミレイのカマかけに引っかかったのは、シャーリーだった。
「え!?ど、どうしてそれを?会長知ってたんですか?」
「へぇ~。やっぱりかぁ~」
「シャーリー‥‥」
「‥‥‥‥あ。引っかけましたね、会長ッ」
「‥‥って、もしかして会長、7番が誰か知ってるんですか?」
「ふっふ~ん。それは~。ひ・み・つよ~。そう言う事なら続行ね。だから、もう行くわ」
ミレイのゼロはそう言うと片手をヒラヒラと振って立ち去って行った。
‥‥‥‥どうでも良いけど、ゼロの姿で女声の女言葉‥‥凄く不気味、と思ったシャーリーとニーナだった。

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作成 2008.02.14 
アップ 2008.04.14 

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