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念の為にと、ラクシャータは半ば強引に包帯を取り換えた。
「‥‥ちょっ、ゼロあんた、ホントにジッとしてたわけ~?」
傷口を見たラクシャータはかなり憤慨していたが、技術屋らしくその手付きは繊細だった。
なので、手当が終わるとゼロは「すまない。‥‥助かった」と仮面なのにも関わらずソッポを向いて礼を言ったくらいだ。
「‥‥あんたさ~。もしかして仮面の中身、結構若くてハンサムだったりする~?それでもって少々照れ屋かな~?」
ラクシャータはジーっとゼロの仮面を凝視して、そんな感想を述べた。
「ぶっ‥‥」
ゴホゴホとC.C.がむせて咳き込んでいる。
「‥‥どーでもい~けど~。どーして、藤堂まで反応してるのかね~?」
藤堂は胡乱な視線をラクシャータから受けて思わず視線を逸らせてしまう。
「そうイジメるな、ラクシャータ。藤堂はわたしの顔を知っているからな。‥‥それよりC.C.。貴様、そんなに笑うな」
あっさりゼロは藤堂を評し、笑いを堪えているC.C.に声を投げた。
「あっはっは。その仮面のどこをどうみたらそうなるのか、考えると笑わずにはいられるか」
C.C.はゼロに向き直ると、堪えるのをやめて盛大に笑い飛ばしてそう応酬する。
「ん~。やっぱりそーなのかぁ。結構告白され慣れてるでしょぉ?でも、照れが出る年頃だから高校生か大学生くらい~」
「なるほど?慣れる程告白されるならハンサムで、高校や大学なら十分若いと言うわけか。良かったな、ルル‥‥っと、ゼロ‥‥」
C.C.は素顔の話をしていたせいで、思わず名前を呼び掛け、慌てて言い直して口に手を持って行った。
室内に流れる重い沈黙。
C.C.が、藤堂が、そしてゼロがラクシャータを見ていた。
「‥‥若くて、ハンサムで、統率力が有って、頭も良くて、ナイトメアフレームの知識にも詳しくて、‥‥そして、ブリタニアを憎んでいる‥‥」
ボソボソと、形容詞を述べて行くラクシャータにいつもの口調はそげ落ちていた。
「‥‥もしかしなくても、ルルーシュ様ですか?」
藤堂とC.C.はそろりと視線をゼロに向ける。
「‥‥‥‥‥‥。後で覚えていろよ、‥‥C.C.」
地の底から響いていそうな低い声音で、己の共犯者を恫喝するゼロに、C.C.は項垂れる。
「すまない。今のはわたしの失態だ」
己の過失を全面的に認めてC.C.は珍しくも謝った。
「‥‥なら、やっぱり。‥‥」
姿勢を変えようとしてラクシャータは藤堂とC.C.に視線だけを向けた。
「‥‥心配ない。二人とも知っている。‥‥おれが、誰なのかも。‥‥C.C.」
ゼロは一転威厳のある声になってそう告げてから、C.C.を呼ばわった。
溜息を吐いたC.C.はゼロの後ろに回ってその仮面を外した。
現れたのは漆黒の髪と白い肌と紫の輝きが──鋭く一つ。
「‥‥生きて、‥‥生きておられたのですね。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下」
ポロリと、ラクシャータの瞳から涙が零れ落ちる。
相変わらず、黒いバンダナをしたルルーシュを見て、藤堂は顔を顰めていた。
「その名は既に死んでいる。廃嫡もされているし、意味もない。‥‥表ではルルーシュ・ランペルージを名乗っていた。ここではゼロだ」
「そんな事は関係ありません。わたし達技術屋にとっては『閃光の』マリアンヌ様と、ルルーシュ様、ナナリー様は絶対のお方」
切々と語るラクシャータに普段とのギャップが有りすぎて、藤堂は頭痛を覚えた。
「‥‥ひとつ言っておく。団員や他の人の目のある場所で、今まで以外の態度は取るなよ。お前がそれを見せたらみな驚く」
こめかみに手を置く藤堂の気持ちを察したのか、ゼロがそう言った。
「はい。‥‥ところで、殿下」
「それはやめろ。呼び方は今まで通りゼロだ。‥‥もしも万が一、ゼロでない時に会ったとしてもそれは許さない。話し方も戻せ」
ラクシャータの話の腰を折って、ゼロはそう命じた。
「‥‥その目をどうなされたのか、お答えくだされば考えましょう?」
「‥‥。そうだな。ラクシャータ。お前、眼帯を作れないか?‥‥どんな光も通さない、漆黒の」
ゼロの言葉に、ラクシャータと藤堂は首を傾げてしまった。
「‥‥ゼロ。視力を失っているわけではないのか?」
藤堂が訊ねる。
「ん?‥‥あぁ。見えるぞ、ちゃんと。見せる気がないだけで。作れるか?ラクシャータ。‥‥他にもつけたい注文はあるが‥‥」
「‥‥‥‥。作れる事は作れるけど~。他の注文って~?」
「装着者、つまりおれの意思でスライド出来ればもっと良い」
言葉づかいを元に戻したラクシャータに応じたゼロの言葉に、C.C.はゼロの仮面を被った。
「つまり、こう言う具合に、だ」
シュッとごくごく軽い音と共に、仮面の一部が消え、仮面をつけたままのC.C.の左目が見えた。
シュッシュッとC.C.はそれを何度か繰り返した後、仮面を外す。
「仮面を被っている時には、連動できれば更に良い。だろう?ルルーシュ」
「‥‥C.C.。騎士団内で名前を呼ぶのは止せ。また間違える気か」
C.C.の呼んだ名前に、嫌そうな表情を浮かべたゼロは言い返す。
「いつまでも過去の話を持ち出すな。男らしくないぞ」
「貴様はもっと女らしい言動を取った方が良いぞ、C.C.」
取り合わない様子でC.C.が応じると、ゼロはそれに即座に言い返す。
「えっとぉ、ゼロ?‥‥前々から噂には有ったけどもぉ。‥‥C.C.が愛人ってのは本当ですかぁ?」
ラクシャータが尋ねた途端、ゼロは再び嫌そうな表情を浮かべた。
「愛人?このピザ女が?‥‥‥誰だそんな根も葉もない噂をバラ撒いているのは」
「わたしにだって選ぶ権利はある。こんな軟弱者はお断りだ」
「愛人か」と問われた時、二人はほとんど同じ台詞を吐く。
お陰で藤堂は何度目かの台詞を耳にしたわけだが。
「‥‥いつも、否定するだけだが‥‥。では、どういう関係なんだ?」
流石に訝しんで、藤堂は疑問を口にしていた。
「なんだ、藤堂。お前も気になっていたのか?‥‥『共犯者』。以前にもそう答えたはずだが?」
「何に対する、『共犯者』なんだ?」
苦笑して応じるゼロに、藤堂は突っ込む。
「‥‥‥C.C.はゼロのきっかけの一つだ。C.C.がいたからこそ、反逆の計画を前倒しに進めてこれた。その代価はまだ支払っていないがな」
「‥そうだな。わたしは代価を受け取るまでは『共犯者』として傍にいる。外野の意見は受け付けない」
それは藤堂の問いからはズレた答え。
ゼロとC.C.の両方が、わざとズラした答えを返しているのならば、これ以上は何を聞いても無駄なのだろうと藤堂は諦めの溜息を吐いた。
「‥‥代価が何か、聞いても良いだろうか?」
「‥‥‥‥‥。知って良いのは、契約を交わした相手だけだ。他に教える気はないし、教えさせる気もない。諦めろ」
「えーとぉ?仮面と連動するとかしないとかって話だったかなぁ?」
固まった空気を払拭させるかのように、ラクシャータが話を戻したのは、少したった後。
「‥‥あぁ、出来るならば、頼みたい」
「まかせて~。ゼロの頼みだしぃ~。張り切ってあげるわ~」
ラクシャータは二つ返事で頷いたのだった。
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作成 2008.01.28
アップ 2008.07.31
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「おれを撃て」【9x】ボツネタ。9のゼロの私室から派生。あまりにも壊れたのでボツに。
【9】を書いていた時に、続きが書けなくなりそうだったので、バッサリ切ったボツネタ。
ここでラクシャータにゼロバレしていたのだけど、ごっそり取り除きました。
絶対収拾つかなくなる事が予想できたので。
代わりにC.C.とのやりとりが加算される事に......orz