※「休暇と思い出」の続きです。
もしも万が一素行調査や実態調査などの名目の尾行が存在したとしても、十分撒いたと思った頃。
ギルフォードは目的の場所へと足を向けた。
ピ~ンポ~ン
『授業中ですが。生徒会長及び副会長は至急理事長室へ出頭してください』
放送は唐突だった。
しかし、それを聞いた教師も、生徒達も驚いたりはしない。
それどころか、「またか~」「大変だな~ルルーシュ~」等と呼び出されたクラスメイトに労わりの言葉までかける。
呼び出された対象の片割れである副会長のルルーシュは、溜息を吐くと立ち上がった。
「すみませんが、行ってきます」
「あぁ、毎度毎度大変だな、生徒会も」
「いえ‥‥では、失礼します」
教師からも呆れ混じりに同情されて居心地の悪くなったルルーシュは、言葉少なに返事をすると教室を出て行った。
そう、既に二桁の大台にはとっくに乗っている事なのだった。
理事長室に繋がる廊下に入る前にルルーシュは会長のミレイと合流した。
「‥‥で?今日は何ですか?会長」
ルルーシュが眇めた目でミレイを見ながら訊ねると、ミレイは乾いた笑いを浮かべた。
「あはは‥‥。それがね、ルルちゃん。わたしも知らないのよ。今朝は何も言ってなかったから」
ルルーシュは更に目を細める。
「‥‥帰って良いですか?会長。何だか嫌な予感がするんですが」
「珍しいわね。おじい様の呼び出しを断ろうとするなんて」
ミレイは驚いた様子で応じる。
「‥‥冗談です。さ、行きましょう、会長」
「ルルちゃん?嫌なら良いのよ?おじい様の我が儘に付き合わなくっても」
「理事長も別に我が儘で呼び出しているわけではないでしょう?」
「そこんところはちょっと~。孫娘のわたしにも良くわかんないのよね~」
言い合いながら、二人の足は理事長室へと向かっていた。
中に入ってミレイは、ルルーシュをそのまま帰してしまわなかった事を後悔した。
ルルーシュもまた、冗談に紛らわさずに予感に従って帰っていればと後悔していた。
理事長室には、ミレイの祖父ルーベンがいた。
だが、一人だけではなかったのだ。
第二皇女コーネリアの騎士、ギルバート・G・P・ギルフォードが、何故か私服姿でそこにいた。
「‥‥彼等が、この学園の生徒会長と副会長、です」
ルーベンがギルフォードにそう紹介した。
紹介されたからには名乗らないわけにはいかない。
「‥‥‥‥。生徒会長のミレイ・アッシュフォードですわ。‥‥彼は副会長のランペルージ」
ミレイは最後の悪足掻きに出てみる。
ギルフォードはまっすぐにルルーシュを見つめた。
「‥‥やはり、生きておいででしたか、殿下」
ルルーシュとミレイの肩が、同時に強張る。
「‥‥『やはり』?最初から知っていた、と?」
これ以上の誤魔化しは無意味と、ルルーシュは息を吐いた後、そう尋ねた。
「‥‥‥‥。誰も殿下と妹姫の御遺体を確認した者がおりませんでしたから。‥‥それは、『亡くなられた』ではなく、『行方不明』と言うのですよ」
「なるほど?‥‥それで、わたしの存命を知って、どうするつもりだ?ギルバート・G・P・ギルフォード」
ルルーシュは慌てたりせず、静かに相手に確認を取る。
「‥‥お戻りになるおつもりはないのですか?既に七年。‥‥いえ、本国を離れてより八年になられるのですよ?」
「異な事を。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは既に死んでいる。戸籍も記憶も。そうなっているのだろう?今更戻っても居場所など在りはしない」
ルルーシュは笑みさえ浮かべて、そう応じた。
「コーネリア姫様が保護してくださいます。殿下のご無事な姿をご覧になられたら、きっと温かくお迎えくださいます」
ギルフォードはルルーシュの言葉に即座に返す。
「‥‥。この学園はブリタニアから隠れる為の箱庭だった。かなり自由に振る舞えるところが気に入っている。‥‥義姉上は我々をどこに閉じ込めるおつもりか?」
ルルーシュは遠まわしに言葉を綴る。
気に入っている場所を追い出し、不自由などこに幽閉するのか、と。
ブリタニアに戻る、と言う事はそう言う事なのだと暗に言ったのだ、ルルーシュは。
ギルフォードは静かに首を振って答える。
「‥‥姫様はまだ、存じ上げません。‥‥この姿を見ていただければ判るかと存じますが、現在、休暇中でして」
「ほぉ?真面目なお前らしくないな?ギルフォード卿。主に無断で、わたしに会いに‥‥いや、わたしがここにいると踏んだ時点で何故主に知らせなかった?」
ルルーシュが訝しげに眉を寄せて尋ねるのを、ルーベンとミレイは不思議な思いで見つめていた。
ルルーシュが、ギルフォードと親しかったとは終ぞ聞いた事がなかったからである。
ギルフォードの主で有り、ルルーシュの義姉であるコーネリアが妹共々、ルルーシュの住まうアリエスの離宮を良く訪ねていた事は知っていたが。
「ご承知の通り、姫様は実妹であるユーフェミア様と殿下のご一家をこよなく愛しておられました。不確かな情報をお教えする事は出来ませんでしたから」
ギルフォードは当時を思い出して、苦いモノを感じながらも、そう答えた。
「‥‥‥‥。義姉上には黙っていて欲しい、‥‥そう言ったとしても、既にわたしを確認しているのだから、無理な相談か?」
ルルーシュの諦めたような言葉に、ギルフォードは瞬間沸騰した。
「ッ‥‥何故ですか?‥‥何故殿下はッ‥‥」
「落ち着け、ギルフォード卿。わたしには、あの表面のみが華やかな、忌わしい場所に戻る気がないだけだ。‥‥アレがテロでなかった事は知っているだろう?」
突然憤りを見せたギルフォードに、ルルーシュはやはり動揺する事無く、言い聞かせるように話す。
「‥‥それはッ‥‥。ですが、今はこのエリア11も何かと物騒です。イレブンが活気づいておりますし。皇室とまでは申さずとも、本国に一旦お戻りになられた上で」
「ダメだ。本国にも戻るつもりはない。‥‥わたしに、顔を隠して行動しろとでも言うつもりか?」
「ちょ‥‥。何故かは知らないけれど、彼は貴方の事を考えて言ってるみたいなのに、もう少し言い方を考えてあげたら如何ですか?」
ルルーシュの口調がきつくなったのを感じて、ミレイが口を挟んだ。
「ミレイ。お前は黙っていなさい。‥‥殿下。隣に部屋がございます。ギルフォード卿と、そちらでお話になられますか?」
ルーベンが孫を叱責した後、ルルーシュに提案する。
「‥‥良いだろう。借りるぞ、ルーベン」
ギルフォードが微かに頷いたのを見たルルーシュは、そう応じて隣に移動していった。
「おじい様ッ」
ミレイは二人の姿が隣室に消えるなり、祖父に抗議する。
「ミレイ。ギルフォード卿は、殿下を悪いようにはなさらないだろう。大人しく待っていなさい」
確信に満ちたルーベンの言葉に、ミレイは渋々頷いて、隣室に繋がる扉を見つめ続けた。
了
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作成 2008.02.15
アップ 2008.03.11
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再会 休暇を利用してギルフォードがやってきた先は....?
ギルフォード学園に登場。
初めとはやっぱり違ってます。
最初はアッシュフォード家を盾に~とかって感じだったのに、全然なくなってる(汗
なので、ルーベンとミレイは何のためにいるのやらって感じに....。
しかもこれで「了」てのも、「思いっきり続いてるじゃん!!」て感じですしね~(汗
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