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──「合流と変化」編──
カレンがいつアジトに戻ったのか、実は誰も気づかなかった。
それも当然で、カレンはゼロに抜け道を教えられ、そこを通ったからである。
通りながら「こんな道、いつの間に‥‥」と思わないでもないカレンだったが、途中で着替えを置いた小部屋を見つけたので、「あぁなるほど」と納得した。
だから、出入り口からではなく格納庫へとやってきたカレンとその同行者に、格納庫にいた団員──ほとんどが幹部だったが──は驚いた。
カレンに気づいたのはほぼ同時だったロイドとジェレミアは、しかしその反応は真逆だった。
ジェレミアは喰いつくような勢いでカレンに迫り、逆にロイドはじりじりと後退さっていて、それに気づいた者が「あれ?」と思う。
もう一人、ディートハルトもまた、固まった笑顔を貼り付けたままたらりと汗をかいて逃げ腰だった。
「か、カレン。いつ戻ったんだ?ゼロは一緒じゃないのか?後、その子達は?」
扇が代表してカレンに問いかけるが、カレンの視線はディートハルトに固定されていた。
「紅蓮弐式のパイロットッ!主は何処に!?」
しかし、ジェレミアにそう詰め寄られれば言い返さないわけにもいかず、カレンは怒鳴り返す。
「オレンジ卿ッ!いい加減その呼び方やめてよね。ちょっと紅蓮に負けたからって!」
「へぇ~。オレンジ卿まで入団してたのかぁ~。生オレンジ!初めて見たぜ~」
カレンの後ろに続いていたリヴァルがジェレミアを繁々と見ながら喜んでいる。
「そうねぇ~。これがゼロ命名オレンジ君かぁ~。ていうかぁ『お久しぶり~』って挨拶した方が良いのかしら?」
リヴァルに同意してから、カレンの前に出たミレイがジェレミアに声をかけた。
「‥‥お前ッ!?ミレイ・アッシュフォードかッ!?」
ジェレミアの表情が訝しげなものから驚愕に変わり、数歩下がりながら指差し叫ぶ。
「まぁねー。こっちも落ちぶれちゃってるけどねー。久しぶりなのに、その言い方はないんじゃないのぉ~?‥‥てかそこ!逃げてるんじゃないわよ!プリン伯爵ッ!」
けらけらと笑って肯定したミレイは、踵を返そうとしていたロイドを発見して一転きつい声を投げつけた。
観念したロイドは再び振り返って、「や、やぁ、ミレイ君。久しぶりだねー。元気そうでなによりだよ、うん」と力なく笑って応じる。
「あらぁ、ホント久しぶりねぇ。アッシュフォードのお譲ちゃん。ガニメデは元気にしてた~?」
「お久しぶりです、ラクシャータさん。でも、それおかしくないですか?幾ら落ちぶれたアッシュフォードの価値がガニメデだけだって言っても傷つきますよ?」
「気にしないの~」
「あの、会長?‥‥全員顔見知りなんですか?」
続く挨拶に呆然とする日本人幹部達を見て気の毒に思いながら、カレンもまた唖然とした思いを抱えて尋ねる。
「そうねぇ。後ダールトン将軍も知ってるけどー?ほら、腐っても元大貴族じゃない?アッシュフォードって。そっちのカレンから目の敵にされてた人は知らないわね」
「あ、そうだった。ディートハルトちょっと来て説明してもらうわよッ!」
カレンの言葉に、ディートハルトもまた観念したように近づいてきた。
「カレン?説明って何のだ?」
「団員採用の最終判断はゼロがしているはずだってのに、ゼロが知らない団員が存在してたって事についてです」
カレンの説明に、非難の眼差しがディートハルトに集中し、扇は再びカレンに視線を戻してから尋ねた。
「‥‥それもブリタニア人、なのか?」
「違いますよ。この女性です」
一人無言だった同行者を示してカレンは言う。
副指令である扇も初めて見る女性に、再びディートハルトへと視線を向けた。
「どういう事か説明してもらえるか?ディートハルト」
「はぁ。その。というか、何故発覚したのでしょうか?」
「聞いてなかったの?この人が名乗ったでしょう?『ミレイ・アッシュフォード』だって。そう言えばわかるんじゃないの?」
カレンの言葉に、ディートハルトの目が見開かれる。
「‥‥まさかッ。あの、今回の面接場所がアッシュフォード学園だったなどとは‥‥」
「言うわよ。何の為にわたしが同行したと思ってるの?ゼロを生徒会室まで案内する為よ」
「‥‥では」
「今回の入団希望者で採用になったミレイ・アッシュフォードとリヴァル・カルデモンドね。愛称は多分『会長』と『悪友』になると思うわよ」
「へ?マジッすか?決定なのそれ」
「多分ね。なんたって、プリン伯爵に将軍にオレンジ卿と来てるもの。‥‥じゃなくて説明しなさいよね、ディートハルト」
「‥‥あの、ゼロはどうなさったのでしょうか?」
「‥‥戻りがけにC.C.に遭遇したから先に来ただけよ。‥‥『落ち込んでるみたいで気になる』って」
「あの。まさかとは思うのですが、ゼロもアッシュフォード学園の関係者なのですか?」
ディートハルトの問いに、ミレイとリヴァルは顔を見合わせ、既に知っているメンツは無言を通し、カレンは藤堂を見てから頷いた。
「そうよ。アッシュフォード学園でわたしの同級生よ」
カレンが認めた事に、ゼロが学生だったという事に、驚いた幹部達が驚愕の声を上げる。
「会長とリヴァルともう一人はゼロの素性に気付いて共に戦いたいって入団を希望したの」
友人想いな動機に驚愕の声が収まって行く。
「カレン。もう一人、というのは、彼女の事か?」
「え?咲世子さんは既に団員だっていうから数には含めてないわよ。こんな煩いところに連れて来る気なかったからゼロの部屋にいるわ」
扇の問いに対する、カレンの答えは何気ない一言、だったはずだ。
にも拘らず、反応は面白い程に分かれた。
ダールトンは表情を引き攣らせ、ロイドとジェレミアは青褪め、ラクシャータは嬉しそうな笑みを浮かべる。
藤堂は「あれはこう言う事だったのか」と納得し、四聖剣はそんな藤堂に問いた気な視線を向け、残りの幹部は驚いていた。
リヴァルは「騎士団って思ったより面白いのな」と率直な感想を述べ、「ゼロも色々大変なのねぇ」とミレイは溜息を零した。
C.C.と連れ立って戻ってきたゼロは、ディートハルトに対して厭味に近い叱責を浴びせた後、「今回のみ不問にしてやろう」と言って咲世子の件は終わらせた。
「会長。例の件は技術班と相談の上、万全を期してください。お前もしっかり聞いていろよ?我が悪友どの?」
「判ったわ、ラクシャータさんと相談すれば良いわよね」「う~ん。唯の『悪友』よりは良いかなー?」
ゼロの指示に二人はそれぞれ頷いた。
「咲世子さん。お願いできますか?」
「お任せ下さいませ、ゼロ様。さぁ、参りましょう、C.C.さん」
咲世子とC.C.はゼロの部屋の方へと平然と去って行き、幹部達は「さん付け!??」「敬語!?」と驚いた。
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作成 2008.05.25
アップ 2008.06.05
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黒の騎士団入団試験 【11】合流と変化編 ゼロ:「今回のみ不問にしてやろう」
学園組がアジトに到着しました。
当然ながら一悶着あります。
この一悶着辺りが入団試験シリーズらしいと言うべきでしょうかねぇ?
入団者同士の悶着を古株団員達が驚きながら見ている、ッて感じなので。