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★陸様へのリクエスト作品★
(命の危険が迫ったゼロを藤堂が身を挺して庇い、二人の距離が縮まる)
作戦を終了させて参加していた団員が騎士団アジトに帰還してきた。
今回は待機組だったディートハルトが数名の団員を従えて格納庫で出迎えていた。
ナイトメアを所定の位置に納め、順次パイロットも降りて来る。
カレンと藤堂は降りるなり片腕を失ったゼロの無頼に近付いた。
その頃になってゼロが姿を見せ、降りて来る。
「大丈夫ですか?ゼロ」
カレンが心配そうに尋ねる。
「‥‥ぁあ、問題ない」
ゼロのしっかりした言葉にカレンはホッとし、しかし藤堂は眉間の皺を深くする。
「ゼロ、怪我をした時くらい強がるのはよせ。すぐにちゃんとした手当てを受けて来い」
藤堂の声は別段大きかったわけではなかったが、低く通る言葉を聞いた者はそれなりにいた。
ディートハルトもその一人で、ゼロが負傷した事実に衝撃を受けた。
タイミングとしては、最悪と言って良いだろう。
カレンが驚いて「早く手当てしてきてください!!」と悲鳴に近い声を上げる。
藤堂も「渋るようならば抱えてでも連れて行くぞ」と半ば威すように指示を出す。
ゼロは「抱えられては威厳が‥‥」とぶつぶつと呟いてから「‥‥わかった」と折れた。
踵を返して歩きだすゼロを案じて見送るが、その動きは確かなもので怪我自体は対したものではなさそうだと思うのだ。
ディートハルトはホッと息を吐いて、それからハッとして振り返り慌てた。
振り返った先で、ゼロが帰るなり相談し許可を得ようとしていた問題視している団員が動いているのを見たからだ。
既にゼロに向けて銃を構えていて、動きを止める事は出来そうに無いと悟ったディートハルトは叫ぶ。
「ゼロッ!!伏せてくださいッ!!!」
ディートハルトの声に、動いたのは3人だった。
ゼロは怪我の為か、意味を掴み損ねて足を止め振り返ろうとした。
銃を構えた団員は、引き金に添えた指に力を入れた。
藤堂は立ち止まったゼロに驚き、地面に伏せさせる為に突進した。
一発の銃声が鳴り響き、ドサッと言う倒れる音が続いた。
驚いた幹部達が見たのは、折り重なるように倒れるゼロと藤堂、それから煙を上げる銃を構えたままの団員だ。
「ゼロッ!!」「藤堂さんッ!」「中佐ッ!」
「逃がすなッ!」「捕まえろッ!」
幾つもの声が交差する。
そんな声を遠くに聞きながら、ゼロは自分に覆いかぶさる相手に声を掛けた。
「藤堂‥‥「怪我はないか?」ゼロ」
ゼロの声に重なるようにして、藤堂もまたゼロを案じて声を掛ける。
「‥‥新たに痛くなったところは、ない。藤堂、お前は?」
ゼロが先にそう応じていると、藤堂は身を起こした。
ポタリ、と滴る音が聞こえ、藤堂の肩が赤く染まっているのにゼロは気付いて慌てる。
「なッ、怪我をしているではないかッ。他人の心配をしている場合か!?」
「掠めただけだ。大したことじゃない」
「藤堂ッ!『怪我をした時くらい強がるのはよせ』と言ったのは貴様だろうがッ!それもつい今しがたッ!」
ゼロは怒鳴ると少し乱暴にスカーフを引き抜いて藤堂の肩に巻いて止血する。
「おい」
「替えくらいある。‥‥ラクシャータッ」
「わかってるわよぉ。ゼロ、あんたも診たげるから、一緒に来なさぁい」
ラクシャータはそれだけ言うと手も貸さずに医務室に足を向ける。
先に立ち上がったのは藤堂で、次いでゼロも立ち上がる。
それぞれ手を借りずに立った事に、その場にいた者達は安堵する。
「カレン。この場を任せる。狙撃犯は捕えろ。ディートハルトには背後関係を調査するように。それとこれ以上の被害は出すな」
「わッ、わかりました、ゼロ。‥‥‥‥あの、本当に平気ですか?」
「わたしは平気だ」
「おれもだ。すまんが紅月。後は頼む」
「はい」
カレンが頷くと、ゼロと藤堂はまだ騒がしい格納庫を離れて医務室へと向かって行った。
ゼロと藤堂の手当をしたラクシャータは、治療に使った道具をしまいながら呆れた声を出した。
「あんたらねぇ。もう少し自分を労わりなさぁい。良くもまぁそれで『平気だ』なんて言ってられるわねぇ」
「わたしは本当に平気だと思ったからそう言ったまでだ」
「なぁんですってぇ?ゼロ、あんた本気でそう言っているんだったら、もうあんたの『平気だ』はアテになんてしないわよぉ」
ゼロの返答に、ラクシャータは眦吊り上げて言い返し、藤堂を見る。
「おれは平気だっただろう?ゼロの止血もしっかりしたものだったし」
「ゼロの止血はたいしたもんだったけどねぇ。掠めるって言うには傷口広かったじゃないの」
「「‥‥だが」」
「問答無用!あんた達は当分絶対安静。ここで大人しくしてなさぁい」
ラクシャータの珍しく怒った口調に、ゼロと藤堂は押し切られてしまった。
ラクシャータがナイトメアのメンテナンスに出て行くと医務室にはゼロと藤堂の二人だけが残される。
「‥‥先程は助かった。礼を言う、藤堂」
「いや‥‥」
藤堂の方を見ずに礼を口にするゼロに、藤堂は曖昧に応じる。
「だが、‥‥何故助けた?自分が怪我を負ってまで。四聖剣だって蒼白になっていたぞ」
「ゼロ。狙われている時に立ち止まっては格好の的になるだけだ。君を失うわけにはいかないからな」
藤堂はそう答えてから、「この言い方では誤解を招きかねない」と少し焦る。
「‥‥そうだな。まだわたしは『奇跡』と言う夢を『正夢』にしていないからな。藤堂が困るのは判った」
ゼロは誤解せずに藤堂の言いたい事を汲んだが、その事に、藤堂は一抹の寂しさを覚えてしまい更に内心でうろたえる。
「君が無事で‥‥良かった」
更にポロッと口を衝いて出た言葉に、藤堂は真っ白になっていた。
ゼロはと言うと、本当に心底ホッとしたように言われて、仮面の下で思わず頬を染めていた。
身を挺して庇われたり、「君を失うわけにはいかない」と真面目な口調で言われたりと、慣れない事が続いていたせいもある。
「‥‥ッわ、たしが無事でも助けたお前が怪我をしていたのでは話にならないな。‥‥もし次も同じ事をする気ならば今度は怪我をするなよ」
ゼロは火照った頬を気にしていた為か、ついそんな事を言ってしまい、「しまった、これでは次も助けろと言っているようではないか」と慌てる。
急にわたわたと慌て始めたゼロに、藤堂は苦笑した。
「そうだな。次はおれも君も無傷で切り抜けられるように力を尽くそう」
ゼロはそう言って藤堂が見せた笑顔に、慌てていた事も忘れて見入ってしまった。
急に大人しくなったゼロに、藤堂が心配顔になって見返す。
そんな二人の見つめ合いは、狙撃犯を確保し事後処理を終わらせた四聖剣とカレンが見舞いに来るまで続いたのだった。
了
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作成 2008.05.25
アップ 2008.06.11
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陸様へ。
お気に召していただけましたでしょうか?
リクエスト内容に合致しているかはいまいち不明ですが、
どうぞ、お受け取りください。
すみません、本当に距離が縮まったところで終わらせてしまいました。
色々と置いてきぼりにした感が否めない一品になってしまった気がしますorz