★レイシア様へのリクエスト作品★
(枢.機.卿とル.ルーシュ/依存兄弟/二人に優しい話)
数日後、ルルーシュは扇に泣き付かれて、渋々ゼロになってアジトに顔を出していた。
当然ながらゼロの機嫌は最悪で、扇は少し後悔しながらも、ゼロの判断が必要なあれこれを報告、相談していた。
話の合間を縫うように、他の幹部達もやって来ては相談を持ち込む。
側にいる扇はその度に更にゼロの機嫌が悪くなるのがわかって、泣きたくなっていた。
「ゼロッ、扇さんッ!外部監視員から、今ブリアニア人が近付いて来てるって連絡がッ!」
団員が扉をどんどんと叩いてから慌てた口調で報告してきたのを聞いたゼロはガタンと立ち上がった。
「攻撃は待て。すぐに向かう」
扇には一言もなく、ゼロは歩きだし、扇もまた慌ててその後を追い掛けた。
カレンは近付いて来た人物が誰かに気付いて、「なんだってあいつがッ!?」と額に青筋が浮かぶのを知覚した。
そこにゼロに報告しに行っていた団員が駆け戻って来て、「攻撃は待てとゼロがッ!」と告げる。
ゼロと扇はそのすぐ後に姿を見せた。
カレンは「もしかしてつけられてたのかも!?」と焦りまくる。
わたわたと慌てるカレンに訝し気な視線を向ける者もいる中、ゼロはスタスタと無警戒に接近者に近付いて行った。
「‥‥‥‥ゼロッ!会いたかったッ‥‥‥‥」
そう言ってゼロを抱きしめた相手に、周囲から驚愕の叫びがあがり、カレンがキレた。
「ちょっ‥‥いきなりやって来てゼロになんて事してるのよ!離れなさいルルーシュ!」
カレンの出した名前に藤堂とラクシャータが目を見開いて驚き、他はカレンを見た。
「やめろ、カレン。人違いだ。‥‥わたしは事前に連絡を寄越せと言わなかったか?」
ゼロはカレンに間違いを指摘して制止し、抱きついた相手に対して問い質す。
「聞いたさ、もちろん。わたしが君の言葉を聞き逃すわけがない。ただ頑張って説得して早く来たんだから少しくらい手順省いても良いだろ?」
カレンはゼロに懐きながらそう言う「ルルーシュにしか見えない」乱入者に「マジに別人!?」と混乱する。
「「‥‥‥‥なら(ぁ)、ゼロがルルーシュ(君/様)なの(か/ねぇ)‥‥‥‥」」
どこか納得したような台詞が藤堂とラクシャータから同時に出て来てカレン含めた幹部達はパニックに陥った。
「あれ?ラクシャータじゃないか。失踪したって聞いてたから心配してたんだ。元気そうで安心したよ」
ゼロを抱きしめたままラクシャータに声をかけた「ルルーシュに似た」乱入者は、あまりというかまったく心配していた風には見えない。
「気にかけて頂けていたなんて光栄だわぁ。でもぉだぁれが失踪なんてお耳に入れたんですかぁ、アラン様ぁ?」
それでもラクシャータは嬉しそうに受け答えしていた。
「お土産にプリン持って行ったら換わりに彼女がね。さぁゼロ、話を始めよう」
ハグをといた「アラン様」はそのまま自然にゼロの背中に手を添えて歩きだそうとする。
「「「‥‥‥‥ちょっと待ったあ~ぁ!!!」」」
その周りを無視した動きに幹部達の焦りを含みまくった大合唱が巻き起こった。
「アラン様」が煩そうに幹部一同を冷たい視線で見渡し叫ばなかった三人以外の背筋が冷えた。
「ゼロ、こんな連中しかいなくて良く今まで勝ってこれたな‥‥。これからは君にだけ苦労させたりしないからな」
馬鹿にしたようなこれ見よがしの溜息を吐いた後、ゼロに向き直った時には優しい雰囲気に一変して労う。
「これでも言う程悪くはないんだがな。時々羽目を外すだけだろう」
「優しいな、君は。けど他の奴らにまで優しくする必要ないだろ?」
ゼロは相手の変わらない言葉に、「この人にはこの件で何を言っても時間の無駄なのだ」と諦めて妥協案を提示する事にした。
「‥‥‥‥わかった。部屋に軽食の用意はしている。それで手を打て」
「そうしよう。‥‥‥‥さっき叫ばなかった三人なら煩くなさそうだな」
「あーはいはい。藤堂、カレン、ラクシャータ。一緒に来い。聞いた話は後で適当に他の幹部に伝えて貰う。わたしはそこまで暇ではないからな」
「軽食付きなら行きますけどぉ?」
ラクシャータは心得たように、笑みを見せて応じる。
「心配するな、ラクシャータ。想定済みだ」
「ほらみろ。連絡入れなくってもちゃんと準備して待ってるじゃないか」
得意がる「アラン様」と「今日は突発に呼び出されてやって来たハズだろ?」と驚く幹部達。
「‥‥わたしが声を聞きたかったとは思わなかった、と?」
「‥‥‥‥あ‥‥。すまないゼロ。そうだな、わたしが間違っていた」
「アラン様」はそう言って再びゼロを抱きしめる。
「今日は当然、帰ってくるのだろうな?泊まる時間は?」
「君の許す限り」
抱きしめられたまま平然と尋ねるゼロと抱きしめたまま甘く応じる「アラン様」。
「‥‥ゼロ。おれ達がいる事を忘れているのではないか?」
藤堂が呆れたように口を挟んだ。
「忘れてはいないが。久しぶりなのだから多少大目に見ろ、藤堂」
呆れる藤堂に対して平然と言い返すゼロに「おいおい」と内心でツッコミを入れつつ、「ゼロ壊れてるか?」と幹部達は思う。
「麗しい兄弟愛よねぇ。ホント、兄弟の事しか念頭にないんだものぉ、変わらないわねぇ」
ラクシャータは懐かしそうに目を細めて二人を見てそう評し、「こいつが例の電話のゼロの兄貴かッ?」と更に驚いた。
「‥‥て事は、ホントのホントにゼロが‥‥ルルーシュなわけぇ!?」
カレンにとってはそれよりも驚く事があり、思わず声を上げてしまっていたが。
「カレン。軽食にありつきたいなら、部屋の前で待っていろ。兄が離れない事には歩けない」
「て、引き剥がしなさいよ、そんなの」
「何故だ?」
「へ?‥‥何故って、部屋に移動して軽食食べながら説明してくれるってさっき言ったわよね?それが先じゃないの?」
「兄のしたい事が優先されるに決まっているだろう?次に『そんなの』呼ばわりすればカレンと言えど赦さないからな」
ゼロの言葉に、「ルルーシュ」を知らない幹部は絶句し、藤堂とカレンは「シスコンだけでなくブラコンも凄まじい(な/わね)」とどこか納得する。
ラクシャータは一人、「懐かしいわねぇ」と微笑んで二人を見ていた。
後編に続く。
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作成 2008.05.16
アップ 2008.06.03
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