04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
★小柳様へのリクエスト作品★
(藤.ル.ル/手料理/藤堂のみバレ済み)
「あッ、ゼロ~」
格納庫にやって来たゼロを見つけて朝比奈が声をかけたのは午後に入ってすぐの事だった。
藤堂がギロッと朝比奈を睨み、仙波と卜部がそんな藤堂を宥め、千葉は朝比奈をとめようと動く。
「ん?なんだ、朝比奈」
「おれもゼロの手料理が食べてみたいんですけどー。作ってくれませんか?」
朝比奈は別に殊更声を落としたりしなかった為、その内容は、格納庫内に響き渡り、ピキリと空気が固まった。
ゼロも数秒固まったが誰よりも早く我に返ると活動外と判断して朝比奈を無視した。
「藤堂、次の作戦についてなんだが、幾つか確認してもらいたい箇所がある。手が空いたらわたしの部屋に来てくれ」
「‥‥承知した」
「えぇえ!?おれ無視されたの?なんで?」
一瞬迷ってゼロ同様朝比奈を無視する事にした藤堂の返事に重なるような形で、朝比奈の嘆きが再び響く。
「‥‥藤堂、朝比奈が煩いようだが、何か有ったのか?まさか反抗期でもないだろう?」
再び朝比奈を無視してゼロは藤堂に問いかけた。
「‥‥それに近いモノがあるな」
疲れた様子で応じる藤堂に、ゼロは「そうか‥‥」と納得してから、取り出した携帯が震えてるのを確認すると一言断って繋げる。
「すまない。‥‥わたしだ、何故‥‥なに?やめろ馬鹿ッ。すぐに離れろッ!‥‥ちッ」
ゼロは訝しげに聞き返したかと思ったら慌てた声で罵って指示しながら走り出した。
向かう先は自室のようで、「ならば電話の相手はC.C.なのか?」とか「一体何が?」とか思いながらも幹部達も後に続いた。
ゼロを先頭に目的地であるゼロの自室の前まで来た時、ぼんッと音がしたかと思うと扉が開いて煙とC.C.が出てきた。
「C.C.!怪我は!?」
「なッごほッ、い。ごほッごほッ。少し煙を吸っただけだ。火は出てない」
「わかった。扇、C.C.をラクシャータのところに運んでやってくれ」
ゼロはそれだけ言うと、まだ煙が出てきている部屋に入っていった。
元から仮面をしているので、煙を吸う事はないだろう。
「‥‥あぁ、平気だな。お前達、入るなよ。それと、すまないが煙が外に漏れないように手を打ってくれ」
中からゼロの指示が飛び、入ろうとしていた藤堂やカレンは踏み止まる。
確かにこれ程真っ黒い煙が外に漏れれば、すわ火事か!とかで消防か軍が踏み込んでくる可能性はある。
それに思い至った幹部達は手分けして煙の対応に追われ始めた。
ゼロがやっと煙を出さなくなった部屋から出てきた時、部屋の前には藤堂だけがいた。
「何が有った?」
元から真っ黒い装束だったのが幸いして、ゼロの襟が黒ずんでいるだけに見える。
藤堂は手拭いを取り出すと、仮面の表面を擦って煤を落とした。
「ありがとう。‥‥すまない。C.C.が調理中の料理にチーズと油を足し込んだらしい。台所がかなり悲惨な状態になっている」
藤堂の短い問いに続いたゼロの謝罪が、台所の惨状のせいで料理がポシャッた事を指しているのだと気づく。
「煙は吸わなかっただろうな?」
だが藤堂にとってはゼロ自身の方が大事だ。
火が見えたら即座にゼロを助けに向かう気満々だった藤堂は自然にゼロの安否を尋ねる。
「当たり前だ。‥‥仕方が無い。食堂の台所を使うか‥‥」
「ゼロ?」
藤堂は少し引き気味に尋ねる。
「藤堂、少し遅くなっても良いだろうか?」
「それは‥‥構わないが。だが、ゼロ。あれ程、食堂では作らない、と‥‥。無理をする必要は無いんだぞ?」
「わたしは無理はしていない。これ以上恐れられるのもどうかと思っていただけだが、藤堂は離れたりしないだろう?」
「当たり前だ」
「ならば良いんだ。少し待っててくれ」
「わかった」
藤堂はゼロの言い回しに少し引っかかりを覚えたものの、しっかりと頷いたのだった。
その日、食事当番に当たっていた団員が数名、扇の元へと転がり込んできた。
その慌て振りに扇だけでなく、周囲にいた幹部達も驚く。
「何が有ったッ!!」
「「ゼロが料理し始めました!!」」
反応は大きく分けると三つだった。
カレンを除いた旧扇グループとラクシャータが目を点にして絶句した。
カレンとディートハルトは「ゼロが料理‥‥」とうっとりと呟いて悶えている。
残り、四聖剣は即座に駆け出して食堂へと向かった。
その行動に我に返った残りの幹部達が続き、ただ一人残ったラクシャータは「あぁまぁ、自室のC.C.が壊しちゃったみたいだしねぇ」と納得していた。
食堂の台所、というよりは厨房の入り口で、幹部達はゼロによって刻々と出来上がる料理の数々を呆然と眺めていた。
手際が実に良い。
というよりそれ以前に、マントを外して何故かピンクのエプロンをつけたゼロが、くるくると動く様が可愛く見えてしまっている事に衝撃を受けて固まっていたのだ。
食堂では藤堂が一人腕を組んで座って目を閉じている。
まるで厨房の騒ぎには我関せず、と言った具合に、だ。
最初に動いたのは玉城だった。
玉城の後ろで、「ホントに美味いのか?」「手際は良いし」「でもとても良い匂いですよ?」「美味そうだ」と四聖剣がヒソヒソと話していたからだ。
そろりと厨房に入ると、玉城は料理に手を伸ばす。
その様子をハラハラと見ていた幹部たちの中で、扇がハッとして玉城に声をかけた。
「玉城、避けろッ!」
扇の声に驚いた玉城は反射的に伸ばしていた手を引っ込めた。
直前まで玉城の手が有った空間を裂いて、フォークが通り過ぎて行き、壁に突き刺さる。
「‥‥ッぶねぇ~‥‥」
「‥‥ん?どうやらこの厨房にはねずみがいるようだな。後で退治しておくか」
ゼロは玉城の方を見る事無くそう呟くと、止まった手を再び動かし始めた。
何気ないその言葉に、恐怖を覚えた玉城は、いつもならば突っかかるところを何もせずにすごすごと引き下がった。
入り口付近で屯していた幹部たちと共に食堂まで来た時、藤堂が目を開く。
「ゼロが料理をしている時に近づくのはあまり勧めない。摘み喰いをする者には容赦するなと言う教えを受けているらしい」
運動神経はあまり宜しくないゼロ。
但しフォーク投げとナイフ投げ、ついでに包丁投げの腕は天下一品だった。
幹部達、特に玉城は「知ってるんなら、最初に言え最初に!!」と内心藤堂にツッコミを入れまくる。
それでは収まらない玉城が口を開いた時、ゼロが膳を持って現れた。
「待たせた、藤堂。‥‥ん?どうした、お前達も今から食事か?」
普段は食堂に現れないゼロは「遅いんだな」と気に止めないで藤堂の前に膳を置いた。
「すまない、材料が思った程無かったから有り合せになってしまった。口に合えば良いんだが‥‥」
「心配はしていない。君の料理はいつも美味いからな」
「そうか?しかし、食費は十分充てていたはずなんだが‥‥」
「あぁ。‥‥質より量で、購入しているとか言っていたが」
「ん?量の計算を間違えたか?」
「‥‥君を基準にしたらみなたちまち腹を空かせると思うぞ。君はもっと食べた方が良い」
「そうか、わかった。食費にもう少し充てるようにしよう。‥‥それより藤堂、食べてくれ。冷めると美味しくなくなる」
「‥‥そうだな。いただこう」
藤堂は外野を気にしたが、それも一瞬だけで箸を持って食べ始めた。
「ちょッ‥‥‥っとゼロ!藤堂さん!!!な、なんで、ゼロが料理してそれを藤堂さんだけが食べてるんですか!!?」
カレンがやっとの事で叫ぶ。
「ん?わたしが藤堂の為に作ったからだが?」
「ですから、何故藤堂だけに作るのですか?わたしも頂きたい!」
ディートハルトもまた懇願に近い状態で訴え、幹部達は「うんうん」と頷いた。
「‥‥‥この人数に作れ、だと?ふざけるな。わたしにここに来ている間、調理に終始しろとでも?」
ゼロの言い分はもっともだった。
表での生活もあるゼロが、この人数の食事を作っていたら騎士団としての活動が出来なくなってしまいそうだ。
藤堂は一人、我関せずと言った様子で箸を動かしている。
「藤堂さん、ずるいです。昼もお弁当を作って貰っていたのにー」
朝比奈が本当に最近には珍しく美味しそうに食べる藤堂に羨ましそうな視線を向けた。
「‥‥はぁ。朝比奈。時々持ち回りで四聖剣の内の一人ずつ藤堂の許可を得て誘って貰え」
朝比奈の萎れる様子に、ゼロは溜息を吐いた。
「良いの!?やった。藤堂さん!おれ明日!!」
「てか四聖剣だけかよ?おれも喰ってみてぇ」
「‥‥‥藤堂に許可を取れ。一度に3人以上作る気はないし、わたしが不在の時は言うに及ばず、忙しい時も作れない」
「「藤堂(さん)ッ。明日はわたしを招待してください!!」」
即座にカレンとディートハルトが立候補しながら藤堂に詰め寄った。
「‥‥ゼロ」
ピタリと箸を止めた藤堂が非難するようにゼロを呼ぶ。
「別に藤堂が誘いたくなければ誘わなければ良いだけの話だろう?わたしは三人分以上作る気はないだけだ。後は‥‥」
思案気に止められたゼロの言葉の続きを幹部達は固唾を呑んで待つ。
「メインは藤堂だからな。藤堂が食べない時も作らない」
ゼロのその言葉に、幹部一同の嫉妬の眼差しが藤堂に向けられた。
その後、藤堂と四聖剣、藤堂と幹部の熾烈な攻防が繰り広げられる事になるが、現在のところ、藤堂の許可を取り付けた者はまだいない‥‥。
了
───────────
作成 2008.05.20
アップ 2008.06.09
───────────
小柳様へ。
お気に召していただけましたでしょうか?
リクエスト内容に合致しているかはいまいち不明ですが、
どうぞ、お受け取りください。
すみません、途中C.C.が無意味に騒動を起こしました。