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なんとか宥めたカレンを穏便に帰した後、未だに機嫌の悪い藤堂に四聖剣の視線は集中する。
「‥‥藤堂中佐。先程、紅月の言っておった少年の事を、ご存知なのですか?」
ゴホンと咳払いをした後、口を開いたのは、仙波だった。
一番、今回の事情に疎かったせいもある。
「えーと。昨日の散歩中に、助けてるところを見たんだよ。おれと藤堂さんと千葉さんとで」
黙ったままの藤堂に代わって朝比奈が答える。
「‥‥日本人をか?」
仙波が首を捻って尋ねるが、千葉が首を振って否定した。
「いえ、‥‥‥猫です」
「「‥‥‥猫ぉ~!?」」
仙波と卜部の訝しげな声が重なった。
「容姿についてはさっき言った通りだし、紅月さんが言うように口は悪くなかったし。あ。猫語までわかるんだよ、彼」
にこにこと朝比奈が答える。
「‥‥‥‥猫語‥‥?あの、にゃーにゃーとかってやつか?」
訝しげに眉を寄せ、卜部が猫の鳴き真似をしてみるが、はっきりいってミスマッチである。
「いや、彼は鳴き真似しなかったよ。猫の鳴き声を聞いて、普通に話をしてただけで」
「‥‥それって、単なる思い込みってやつじゃないのか?」
「え?そうかなー?だっておれ、聞いてて納得しちゃったし。ねぇ千葉さんもそうでしょう?」
朝比奈は首を振って千葉に同意を求めた。
「‥‥そうだな、わたしも判っているように感じた。‥‥猫を助けた彼が落ちそうになったところを、中佐が助けておられた」
「そうそう。急に飛び出して声を掛ける暇もなかったんだよね。‥‥でも藤堂さん?彼の足場が崩れたの、その後だったと思うんですけど」
千葉と朝比奈の言葉に、再び四聖剣の視線は藤堂に集中した。
「‥‥昔。似たような状況を見た事が有ったから、気付いたら身体が動いていた。‥‥その時は間に合わなかったのでな」
沈んだ声音で飛び出した理由を語る藤堂に、四聖剣は戸惑いを浮かべる。
もう少し詳しく、そう思いもしたが、尋ねて良いのかどうかを迷ってしまって言葉が出ないのだ。
「‥‥藤堂中佐。『間に合わなかった』‥‥というのはもしや」
仙波が意を決して尋ねたのは暫く沈黙が続いてからだった。
「いや。‥‥軽い脳震盪で気を失っていただけだ。‥‥目を覚ますまで、少々肝が冷えた」
藤堂は苦笑して四聖剣の懸念を拭ったので、そこは四聖剣もホッと息を吐く。
「‥‥中佐。昨夕の、『ルルーシュ』という少年を助けた時、驚いておられたようですが。仙波大尉の言われたとおり、お知り合いだったのですか?」
千葉が藤堂からの答えの得られていない問いを蒸し返して尋ねた。
「‥‥随分と会っていなかったし、また会えるとも思っていなかったが面識はある。‥‥彼は覚えていないようだったが、まだ小さかったから無理もない」
藤堂の声音に寂しさが混じっている事に気付いた四人は慌てた。
千葉と朝比奈は、礼を言うとさくっと帰っていった少年の様子を思い出し、朝比奈は「確かに覚えてなかったかもね~」と少年に対する評価を少しだけ下げた。
「小さかった‥‥とは、中佐は彼といつお会いに?」
「‥‥戦前、だな。戦後は‥‥一度見かけただけだ」
その言葉に、朝比奈は下げた評価を白紙にした。
攻めている敵地で、親がいたかもしれないが子どもが乗り切るのがいかに大変であるか、わからない者は四聖剣にはいないからだ。
例えその期間が短かったとしても、戦後に見かけたというのならば、無事に乗り切ったということだ。
「だがその後、姿が見えなくなり、日本人に殺されたのでは、との噂が立った。見かけたあの時、保護しておけば、とおれは悔やんだ」
だがそう続いた藤堂の言葉に、空白の七年を彼がどう過ごしたのかを思う。
「藤堂さんッ。そんな事情があるなら、もう一度ちゃんと会って話をした方が良いと思います」
「中佐。わたしも朝比奈に賛成です。紅月に言って彼に連絡を取って貰うべきです」
「ダメだ。これ以上紅月をこの件に関わらせる気はない。良いな」
有無を言わせぬ藤堂の強い口調に、四聖剣は反射的に「「「「承知ッ!」」」」と応えてしまっていた。
その後、藤堂は「暫く一人になりたい」と四聖剣に言い、四人は揃って頷くと部屋を出て行く。
静かになった部屋で、藤堂は再び昨夕の事を思い出す。
「ルルーシュ君‥‥。まさかこんなに近くにいたとは‥‥な」
藤堂の呟きは勿論誰にも届く事はなかった。
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作成 2008.06.27
アップ 2008.08.21
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Ⅲ.ばったり遭遇「藤堂+α」編 【4】藤堂+四聖剣。
カレンお引き取り後の藤堂と四聖剣です。
四聖剣の掛け合いと、藤堂の昔語り(?)って感じでしょうか?