04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
二月の下旬。
いつものように騎士団のアジトに顔を見せたリーダーのゼロは両手でかなり大きな箱を抱えていた。
下っ端の団員は、好奇心に満ちた視線を向けたものの、声をかけられないまま見送った。
その後、幹部だけがいる場所をゼロが通りかかった時、玉城が行く手に立ち塞がった。
その場には他に扇とカレン、藤堂と朝比奈がいる。
「‥‥‥‥邪魔だ」
立ち止まらざるを得なかったゼロは不機嫌そうに言う。
「それ、なんだ?」
玉城はゼロの抱える箱を指して尋ねる。
「‥‥何故教えなければならない?」
ゼロの声に、不機嫌に訝しさも加わったようだ。
「‥‥んと。‥‥‥‥もしかして、私物?」
朝比奈が「まさかねぇ」と思いながら尋ねると、ゼロはあっさり頷いた。
「時間的都合上を考慮した結果だ。空き時間が多少取れても表に戻る程はない状況が、しばらく続きそうなんでな」
移動時間が勿体ないとゼロは言う。
「‥‥じゃあ、着替え‥‥とかか?」
扇が躊躇いがちに尋ねる。
「いや?それは既に用意している。今までだって泊まった事は何度もあるだろう?」
「‥‥抱え難そうだから運んでやるよ」
何を思ったのか、いきなり玉城はそういうと、ゼロの持つ箱に手を伸ばした。
「よせッ」
咄嗟にゼロは後ろに引いてその手を避けた。
避けられた事で玉城はムキになった。
「ちょッ‥‥玉城!いい加減にしときなさいよ」
避けるゼロに更に手を伸ばす玉城にカレンが声を掛ける。
「乱暴に扱いそうな奴に持たせる気はない。中に入っているのは壊れ物ッ‥‥!」
言葉を重ねなからも玉城の手を避けていたゼロは、それでも箱を奪われるようにして取り上げられ、更には勢い余って箱ごと倒れた玉城に言葉をなくした。
玉城の呻き声と箱の中で何かのぶつかる音に、一同固まった。
「‥‥‥‥あちゃー。もしかして、壊れた?」
朝比奈の渇いた声が虚しく響く。
我に返った藤堂が未だ倒れたままの玉城から箱を持ち上げた。
向きを正位置にそっと戻す間にもカチャカチャと音が聞こえ、藤堂は眉を寄せた。
カレンはゼロが固まったままなのを気にしている。
「ゼロ。ここで中を確認してみるか?」
藤堂は箱を持ったままゼロに声をかけた。
「‥‥‥‥ここで、だと?」
ギギギィ‥‥とゼロの仮面の正面が玉城から藤堂に移動する。
そのロボットのような動きに玉城は背中を伝う冷たいモノを感じた。
そんな動きで見られた藤堂もまた一瞬固まった。
「‥‥ゼロ。表の事でも、手伝える事なら手を貸す。だから無理はするな。というかしないで欲しい」
気を取り直してそう言った藤堂は、それなりに重い箱を側の机の上に置いた。
藤堂はこれをゼロが一人でこのアジトまで運んで来たのかと思うと、彼の体力のなさは周知の事実なので驚いていた。
玉城が足止めした事でゼロが不機嫌になったのは、荷物の重さにも一因があるに違いないと藤堂は思う。
ゼロが藤堂の言葉に一同(当然ながら玉城は除く)を見返すと、それぞれがしっかりと肯いた。
「そうか‥‥。カレン」
「はい、ゼロ」
真っ先に呼ばれたカレンは、喜んで返事をする。
「女性団員に『当面第二会議室への入室を禁じる』と伝えて来てくれ」
元から第三までは幹部しか入れない為、該当者はカレン、井上、千葉にラクシャータだけだ。
意味がわからずカレンは戸惑った表情で固まる。
「藤堂、この箱は第二に運んでくれ。‥‥そこで壊れ具合を確認する」
上体を起こして床に座り込んだ姿勢のままゼロを見た玉城が、「へっ」と笑う。
「なんだぁ?ゼロ。その中身、女に見られたくないもんなのかぁ?」
締め出しを喰らった事と、玉城の言葉に、カレンはショックを受けた。
「貴様も入るな、玉城。‥‥これ以上壊されたくはないからな」
キッパリ冷やかに言い切るゼロは、カレンがまだ残っている事に気づいた。
「‥‥どうした?カレン。‥‥四人の場所がわからないか?ラクシャータと千葉は格納庫にいるはずだし、井上は」
「そうじゃないです、ゼロッ。‥‥あの、‥‥その箱の中身は‥‥わたし達には教えてくれないのですか?」
見当違いな事を言うゼロの言葉を遮って、カレンは決死の覚悟で訊ねていた。
「‥‥そうではない。‥‥いや、壊れていたり、出来あがっていない物を見せる気にはならないだけだ。‥‥そうだな、出来たら見せよう」
カレンはゼロの言葉に、玉城が言ったような事ではないと察して、ホッと息を吐いた。
「わかりました、ゼロ。それまで待っています。‥‥じゃあ、伝えてきますね。‥‥あれ?四人って‥‥?」
カレンはそう応じて、立ち去り掛けたが、ゼロの言葉に引っかかりを覚えて聞き返した。
「ここにいないのは、井上とラクシャータ、千葉さんと‥‥?」
扇が指折り数えて名を挙げるが、四人目が出て来ず首を傾げる。
「‥‥C.C.だ」
ゼロは少しの間を置いてから、ボソリと答える。
「‥‥‥‥C.C.ね‥‥。わ、‥‥わかったわ」
カレンは「確かに、あの人だけ入るなんて許さないわ」と内心で思って頷くと、よろよろと出ていく。
とある件に関してのみ、カレンとC.C.は仲が悪い事を、ゼロだけは知らないので、その様子を不思議そうに見ていた。
藤堂はカレンの背中を見送った後、再び箱を抱えると第二会議室に向かって歩いて行った。
その後ろを朝比奈が追いかけ、中身が気になる扇が続く。
ゼロは立ち上がる玉城に「貴様は来るなよ」ともう一度念を押してから、後に続いた。
───────────
作成 2008.02.20
アップ 2008.02.25
───────────
ひな祭り 【1】発端。騎士団にて(ゼロ、藤堂、朝比奈、扇、カレン、玉城)
あ、案の定、長くなったのでぶつ切りにしました。
バレンタインの時で懲りたので....(汗
何故か纏まりません、てか本題に入るまでが長いな相変わらず。
本番より準備が楽しい性質だから.....(汗
そして締めが来なくてグダグダに.....がパターンだな(汗
しかも何気に騎士団だけで終わらない気満々だし(滝汗