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「‥‥‥‥は?」
ギルフォードは、主であるコーネリアの言葉に、普段は絶対にしないだろう少々間の抜けた返答を返していた。
「だからだな。‥‥明日は公務がないからお前にも休暇をやる、そう言ったのだよ、我が騎士ギルフォード」
コーネリアはギルフォードの様子が可笑しかったのか、笑みを含んで再度告げた。
「ですが、姫様の傍を離れるわけには‥‥」
「明日は久々にユフィと過ごそうと思っている。危ない事はないから安心するが良い」
「そうは仰られましても‥‥」
常にない事に、困惑しているギルフォードは曖昧に応じるだけだ。
「‥‥ではこうしよう。明日、朝食後から休みに入り、夕食前に戻ってくる。半日の休暇だ。その間わたしは外には出ない」
コーネリアはそう妥協して、ギルフォードは少し躊躇った後、首肯した。
これ以上の妥協がコーネリアに存在しない事を、ギルフォードは承知していたからである。
「わかりました。ですが姫様。もしも万が一外出なされる場合は、ダールトン将軍を供にお付けになってくださいね」
「ふっ、わかっておる。たまにはわたしの事など忘れて個人に立ち返って羽目を外して来い」
「また姫様は無茶な事を仰られる」
そんな事が騎士には無理な事など、どちらも承知しているのだ。
仕方がないと言わんばかりのギルフォードの科白は、コーネリアの無理難題をそれでも叶える時のそれだ。
「夜からはまた頼むぞ?我が騎士ギルフォード」
「承知いたしました」
ギルフォードはいつも通り、優雅に頭を下げた。
コーネリアとユーフェミアの姉妹とダールトンに見送られ、政庁を後にしたギルフォードは、ブラリと租界を歩き出した。
コーネリアには言わなかったが、ギルフォードに行く宛は有った。
しかし、真っ直ぐそこへ行く事が躊躇われ、まずは散歩でもしようかと考えたからだ。
「個人に立ち返って」‥‥コーネリアはそう言った。
そう言われてギルフォードが真っ先に思い出したのは、遠い昔の事だった。
ギルフォードがコーネリアから騎士に望まれる前、──いや更に遡り、ギルフォード自身がコーネリアの騎士にと望む前だ。
ナイトメアフレームに騎乗しての、初陣でギルフォードは危機一髪のところを、とある騎士候に助けられたのだ。
戦闘後、お礼を言う為にそのナイトメアフレームから恩人が降りて来るのを待っていると、開いたハッチから珍しい長い黒髪が靡いたのだ。
驚いた事に、恩人は女性で、しかも騎士候とはいえ出は庶民でありながら皇妃になった「閃光」の異名を持つマリアンヌだったのだ。
庶民出とは言え、皇族に名を連ねている事には違いなく、ギルフォードはバッと姿勢を正した。
ところが、驚く事はそれだけではなかった。
降りてくるマリアンヌの腕には、幼子が一人抱かれていたのだから、ギルフォードだけでなくその場に居合わせた全ての者が驚いていた。
「‥‥というか、マリアンヌ皇妃ッ。子連れで戦場に出てくるな~~」とほぼ全員が内心で叫んでいた事だろう。
黒髪の、マリアンヌに良く似た面差しのその幼子が誰かわからぬ者はその場にはいない。
第十一皇子にして、この度第十七皇位継承権を授かる事になったばかりのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに相違ないだろう。
戦闘直後とは思えない程優しい笑みを浮かべるマリアンヌに抱かれたルルーシュは、周囲を一瞥するとギルフォードに視線を固定した。
「ぶじでよかったな。ははうぇにかんしゃしろよ。‥‥なにをされるのですか、ははうぇ」
ギルフォードに話しかけた途端頭をポンと軽く叩かれたルルーシュは、不思議そうにマリアンヌを見上げ苦情を言う。
「感謝とは強制するものではありませんよ?ルルーシュ。そのような事を言ってはどうすれば良いのか逆にわからなくなってしまうでしょう?」
マリアンヌは慈愛に満ちた表情で我が子を見つめながら、諭すようにそう言った。
暫くマリアンヌの言葉を考えていたらしいルルーシュは、こくりと頷いた。
「わかりました、ははうぇ。‥‥すまなかった、‥‥えーと、‥‥ギルフォードきょぉ、だったな?」
ギルフォードに向かって頭を下げて、その上名前まで呼んだルルーシュに、ギルフォードは目を見開いて驚いた。
面識もないナイトメアフレームにさえ騎乗したばかりのギルフォードの名前まで覚えているなんて思ってもいなかったからだ。
「‥‥‥‥。おこったのか?」
返事をしないギルフォードに、ルルーシュはどうすれば許して貰えるのかわからず途方にくれてしまう。
憂いを見せるルルーシュにギルフォードは我に返って慌てる。
「怒っておりません、殿下。助けて頂き感謝しているのは本当ですから。‥‥ありがとうございました。マリアンヌ様、ルルーシュ様」
ギルフォードの言葉に、ルルーシュはホッと息を吐く。
「礼を言われる事は何もしていないわ。それと、貴方の事は、コーネリア殿下から伺って知っていたの」
「ですが‥‥」
「そうですね。宜しければ少しお話をしましょう?」
マリアンヌの言葉に、恐る恐る頷いたギルフォード。
「では、付いておいでなさい」
マリアンヌは微笑を浮かべて言うと、再びルルーシュを連れてナイトメアフレームガニメデに颯爽と騎乗した。
ギルフォードは慌てて自身のナイトメアフレームに騎乗すると、既に移動を始めていたガニメデの後を追った。
陣からは少し離れた他に誰もいない場所まで来たマリアンヌはガニメデを止めると再び外に出てきた。
ギルフォードもナイトメアフレームを近くに止めて慌てて降りる。
その様子をマリアンヌはくすくすと可笑しそうに見ていた。
「本当に、貴方はコーネリア殿下の仰ってらした通りの方のようね、ギルフォード卿」
ギルフォードは途端にやはり面識のない第二皇女に何と言われていたのかと不安になる。
「‥‥あの。‥‥わたくしはコーネリア皇女殿下とも面識はございませんが‥‥」
「そのようね、まだ今は。『真面目過ぎるキライは有るけれど、とても優秀な男が入って来たとダールトンが喜んでいた』と仰っていたわ」
「ダァルトンがひとをほめるのはめずらしいからおぼえていたんだ。‥‥でもやっぱりダァルトンのいったとおりだったな」
ギルフォードは、マリアンヌの言葉に納得し、ルルーシュの言葉に戸惑う。
「‥‥ルルーシュ殿下。危機を救って頂いた立場としては、褒められるような状態ではなかったはずですが」
「ははうぇにむかってもらっているあいだに、ておくれかもしれないともおもったんだ。なのにまにあったのはもちこたえたものがゆぅしゅぅだったからだろう?」
「はい、良く言えたわね、ルルーシュ。‥‥貴方の配置場所が手薄だと、そう気づいたのはルルーシュなの。だから取って返したのよ」
マリアンヌはそう言って、「本当に間に合って良かったわ」と笑った。
あの時、ギルフォードは確かにマリアンヌとルルーシュのいずれかの騎士になりたいと思った事を覚えている。
しかしマリアンヌからはやんわりと断られ、ルルーシュにも当面言い出す事を止められて、そのままだったのだ。
ギルフォードがコーネリアの騎士を望んだのは、その後任務でコーネリアの隊に配属された後の事だ。
コーネリアは、実妹であるユーフェミアと、憧れのマリアンヌ、その子供であるルルーシュの為に戦っているのだと言った。
ならば、コーネリアに仕え、護り、助ける事が、間接的にマリアンヌとルルーシュを守る事にもなるのだと思い至ったからだ。
その後、目覚しい活躍をするギルフォードをコーネリアが騎士にと指名し、ギルフォードはそれを受けたのだった。
了
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作成 2008.02.13
アップ 2008.02.17
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休暇と思い出 コーネリアとギルフォード。ギルフォードの回想。
あ、あははははははは.........笑って誤魔化す!!!(汗
良いのかこれで!!とか思っちゃいましたよ。
この場合、ギルフォードはどっちを取るのかなぁ~...(汗
ま、休暇は半日だしぃ?