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──審査編初期──
その日、ゼロは自室で入団希望者リストを眺めていた。
藤堂と四聖剣が騎士団に合流後、これまでにも増して入団希望者が増えていた。
中にはスパイや明らかに怪しい者も含まれてくるので、審査は何重にも及び、次第に厳しいものになってきている。
そう、例えるなら今玉城辺りが審査を受ければ、まず間違いなく落ちているだろう程、にだ。
最終審査はゼロ自身がおこない、最終的な合否が決まるようにしているのはトップに立つ者の務めだと思っているからだ。
ふと、リストを捲っていた手が止まる。
ブリタニア人。
ディートハルトが入団後、それが知られているはずはないというのに、時々見かけるようになった。
ディートハルト以外にまだ入団許可を出した事はないが、リストを作成している一人であるディートハルトは、それを何故か喜んでいる。
まずは特記事項に視線を向け、唖然とする。
「‥‥なんの冗談だ?」
そのまま顔写真と、氏名に改めて目を向けた。
「‥‥‥‥。見なかった事にするべきだろうか、これは‥‥」
とりあえず保留にして次に進み、ゼロは素で泣きたくなった。
見覚えのある顔が、と言うよりはかつては良く見た顔の乗った書類が四枚。
全てブリタニア人である。
とりあえず、リストから外し、別の場所によけておいて、続きを見る事にした。
幹部だけでおこなわれるミーティングも滞りなく終わり、後はゼロの解散の合図を待つだけとなった時である。
「‥‥。ディートハルト」
ゼロが、思い出したかのように、広報担当の名前を呼んだ。
「はい」
「これは今回の入団希望リストの最終合否だ。処理しておけ」
「承知いたしました」
ディートハルトは席を立つと書類を受け取りに行き、「他には?」と尋ねる。
「‥‥‥この後、話がある。ラクシャータと藤堂もだ。‥‥扇とカレン、四聖剣については任意。残りは解散」
難色を示すのはいつもの如く玉城である。
「はぁあ?半分以上じゃねぇかよ。ならこの場で話したって構わねぇんじゃねぇのか?」
「‥‥‥。ならば変更する。ディートハルト、ラクシャータ、藤堂はわたしの部屋に来い。残りは解散」
ゼロは前言を翻すと、そのまま自室に引き上げていった。
「‥‥玉城ッ、あんたが文句ばっか言うからわたし達まで締め出されたじゃないの」
「そうですよ。おれだって藤堂さんが聞く事知りたかったのに」
任意と言われていて参加する気満々だったカレンと四聖剣が玉城に詰め寄った。
「めんどぉだわぁ」
そんな騒ぎを眺めながら、ラクシャータは盛大な溜息を吐いてからゆうらりと立ち上がる。
無言で立ち上がった藤堂と、キビキビとした動きで早速階段に向かうディートハルトの後を追ったのだった。
「ディートハルト。貴様何を考えている?」
自室に三人を招いたゼロは、椅子を進め、三人がソファに座るのを待って、そう切り出した。
ちなみに長ソファはラクシャータが一人で占領し、藤堂とディートハルトはそれぞれ一人掛けのソファに座っている。
藤堂とラクシャータの視線がディートハルトに向かう。
「わたしには判断がつきかねましたので、ゼロの判断を仰ごうと思った次第ですが?」
ディートハルトは平然と応じる。
「‥‥貴様以外ならば、わたしの元に来る遥か手前で即座に落としていただろうな」
「わたしも一瞬そうしようかと愚考いたしましたが、思い直しまして」
ゼロは黙ったままディートハルトを見ていた。
「‥‥先程ザッと目を通しましたが、合否どちらのリストにも載っておりませんでしたね?」
「ちょっとぉ、ゼロぉ?一体入団希望者とわたし達に何の関係があるってのよぉ?」
要領を得ない二人の会話に痺れを切らせたラクシャータが口を挟んだ。
「入団希望者が技術屋でな。君の意見が聞きたい」
ゼロはそう言うと、テーブルの上に二枚の経歴書を置いた。
ラクシャータはそれに触れる事無く、一瞥しただけで顔を顰めた。
「って‥‥なんでプリン伯爵がぁ?」
「やはり知り合いか。こちらの女性もか?」
「えぇ‥‥プリン伯爵とぉ、セシルちゃんじゃないのぉ」
驚くラクシャータにゼロは二つの経歴書の備考欄を指し示した。
「‥‥‥‥‥ひとっ言も聞いてないわぁ」
『ラクシャータに照会すればぼくの身元はハッキリするよぉ~』
『ラクシャータさん、よろしくお願いしますね』
それぞれ、備考欄にはそう書き込まれていた。
「で?どんな奴等だ?」
「プリン伯爵はぁ、ナイトメア以外一切興味のないオタクの変人よぉ。今はオモチャがあるからこんな気なんて起こさないと思ってたけどぉ?」
「‥‥オモチャ?」
「そ。騎士団じゃ、『白兜』って呼んでるナイトメア。あれの開発担当じゃないかしらぁ?」
「ふぅん?‥‥つまりこちらのナイトメアの情報を手に入れる為のスパイ、と言うことも有りか?」
「プリン伯爵に限ってそれはないわねぇ。セシルなら有りかも知れないけど、プリン伯爵が一緒となると可能性は低いわぁ」
「ナイトメアを破壊する為の工作要員と言う事は?」
「それも有り得ないわぁ。わたし達は技術屋だからねぇ」
「では次だ。今度は藤堂とディートハルトにも意見が聞きたい」
次にテーブルの上に置かれた経歴書は三枚。
既に知っているディートハルトは口の端を上げただけだったが、流石の藤堂とラクシャータでさえ絶句した。
ユーフェミア・リ・ブリタニア、アンドレアス・ダールトン、そして‥‥。
「スザク君‥‥」
枢木スザクだった。
「信じる道を行け」‥‥そう言って敵と味方に別れたはずのかつての弟子の経歴書を、藤堂は半ば唖然と見つめる。
「ユーフェミアとその補佐、騎士、及び白兜関連がごっそりだな。ディートハルト。ダールトンとはどんな奴だ?」
「真面目で実直。仕える者が道を踏み外そうとしていれば、身体を張ってでも止めようとする男だと思っておりましたが」
「面倒だな。‥‥一人採れば全員採用しなければならない勢いだろうな、これは」
「ん~?ゼロ、あんたこの中に誰か欲しい人いるわけぇ?」
「‥‥枢木はわたしの手を何度も拒み敵となっていたはずだな?‥‥このアスプルンド、クルーミー、それにダールトンは評価しても良いかと思っているが‥‥」
「あー‥‥曲がりなりにも騎士ですし、主である皇女殿下のお付、だったのではないでしょうか?」
「‥‥ならばユーフェミアと枢木を不採用とし、残りの三人を採用、と言うのはどうだ?」
ゼロはそう言い、「その場合、白兜はどっちに転ぶかな?」と呟いた。
「どーせならぁ、デヴァイサーである枢木も取り込んじゃえばぁ?皇女殿下がいれば軍も手荒な事出来ないかも知れないしぃ?」
「‥‥まぁ、コーネリアに対する何らかの手にはなるかもしれないが‥‥。下手をすると今以上に凶暴化するぞ?」
「あぁ、それ、わかるわぁ‥‥。てか、ゼロ、あんた、結構皇室に詳しい?」
「わたしの目的の一つに『皇族を倒す』と言うものがあるからな。かなり調べたのさ」
藤堂の指が動いて、ユーフェミアとダールトンの経歴書の備考欄を相次いで指した。
「‥‥ゼロ。これは?」
『ゼロ。貴方の力になりたいと思います。貴方がそちらで頑張るのでしたら、わたしがそちらに参りましょう』
『今回は、ユーフェミア姫様のお言葉に従いたく存じます。‥‥コーネリア姫様には申し訳ありませんが、ゼロ、貴殿にお味方したく存じ上げる』
「あらぁ?熱烈ねぇ、ゼロ。あんたさぁ。もしかして個人的な知り合い?そんでもって正体バレてたりするのぉ?」
ラクシャータはにやにやとゼロの返事を待っている。
「‥‥全く。あのおしゃべり皇女は‥‥。恐らく口を滑らせたか何かしたのだろうな‥‥」
「て事はぁ。‥‥わかっちゃったかもぉ?あんたの正体ぃ」
「だ、ろうな。ダールトンがコーネリアよりもと思う相手は限られている」
「それはピンクのお姫さまにしてもそーなんじゃなぁい?」
「‥‥ゼロ。君は‥‥」
「‥‥なんだ、藤堂も気づいたのか?」
「あ、あぁ。‥‥可能性を考えれば、それしかないからな。‥‥また会えて、嬉しく思う」
「面識有りなのぉ?ホントあちこちと顔広いわよねぇ?」
「‥‥あの‥‥」
「へぇ?あんたはわからないんだ?ディートハルト。残念ねぇ。教えるつもりはなくってよぉ」
「‥‥悪いが、おれも口を割る気はない」
ディートハルトがごねた為に、その日、彼等の合否は決まらなかった。
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作成 2008.02.29
アップ 2008.04.04
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黒の騎士団入団試験 【ボツ】審査編初期 ゼロ:「‥‥なんだ、藤堂も気づいたのか?」
初めはドバッと一時に入団希望の書類が届いてました。
そして、この設定だと、藤堂とラクシャータが同時にゼロの素性に気づいてます。
もう少し、手前で、収拾つかなくなると思って一人ずつに切り替えましたのでボツ。
違いを見るのは楽しいかも知れません。