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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ギ ア スの小説を書いています。
ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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※「会話」の続きです。

「‥‥‥理解は不幸!無礼が大量!抹殺!滅殺!」
機械の目を怪しく光らせたメカオレンジは、藤堂と四聖剣に一歩近づく。
「するな、と言ったはずだぞ、ジェレミア卿。藤堂は軍事の責任者で、四聖剣はその補佐をしている。わたしにとっても必要だ。判るな?」
ゼロが止め、藤堂と四聖剣が必要だと説明しなおした。
「‥‥‥‥理解はシアワセ」
渋々、メカオレンジは頷いて、下がった。
「よし」
ゼロは、満足気にそれを見た後、C.C.に視線を転じた。

「C.C.。再度言っておく。あまりからかうな」
一段落着くと、ゼロはC.C.に向かって改めて注意した。
「何故だ?お前がからかいたいからか?先にからかい倒したから怒っているのか?」
しかしC.C.は悪びれることなく、言い切った。
「違う。わたしが迷惑すると言っている」
実際に迷惑を蒙ったゼロは簡潔ながらも譲らず切り替えした。
「ん?お前の所有物に手を出すなとでも?」
けれどC.C.にはやっぱり伝わらず、にやにやと笑って言い返すのみ。
「C.C.。冗談事じゃないんだよ?ホントに、ゼロが迷惑してるんだから、少し控えた方が良いと思うけど?」
朝比奈が、気の毒に思って口を挟んだ。
「そうそ。さっきまで耳鳴りと頭痛が酷かったらしくって、それで『耳鳴りを止めに行く』ってここに来たくらいなんだからなぁ?」
卜部も同意して補足する。
「‥‥‥ちょっと待て。なんだそれは。ガウェインにいたのだろう?‥‥‥まさかとは思うが」
「知らん。お前にわからない事が、わたしに判るわけがないだろう?だが、事実だ。だから控えろと言った」
珍しく焦るC.C.の言葉に、ゼロは首を振り、何が「だから」なのかは知らないが、説得を繋げた。
「‥‥‥そうだな、すまん。わかった。暫くは控えておく」
そして、暫く考えていたC.C.が折れた事に、藤堂と四聖剣は純粋に驚いた。
「のぉぉぉおお。理解不能!説明をイタダキマセ!」
そしてやはり理解しなかったらしいメカオレンジもまた、吼えた。
耳に痛いのはともかく、内容はその通りだと思ったので、口を挟まずゼロに視線を向けた。
「お前が言うな、ジェレミア卿。お前が言い争いなんぞしなければ、済む話だろうが、わかったか?オレンジ君‥‥あ。」
本当にポロリ、とゼロはその名前を口にしてしまった。
これまで、事有る毎に散々言ってきたのだから、条件反射になっていたのかもしれないが。
言った張本人であるゼロが固まったのは、流石に面と向かって言う気はなかったからだろう。
「‥‥‥のぉぉぉぉおおおおおお」
散々C.C.にからかわれていたせいか、メカオレンジがキレた。
「ぅわ。ちょッ、どーするんですか、これはッ!」
何処からともなく両手に剣を取り出したメカオレンジに、朝比奈が悲鳴を上げる。
藤堂は固まったゼロを庇って、半ば抱えるように後退する。
「藤堂。そいつを正気に戻して呼びかけさせろ。どうやらゼロの言葉しか聞き入れないようだ」
暴れるメカオレンジが同じ室内にいると言うのに、C.C.だけは変わらずソファに座ったままで、指示を出した。
ブルンブルンと振るわれる、二本の剣先から、四聖剣は藤堂とゼロを庇いつつ避けまくる。
藤堂は腕の中に収まるゼロを見ると、ゼロは再び仮面に手を置いて、というより両手で仮面越しに耳を押さえているようにも見えた。
ドゥン、ドゥンと銃声が二度鳴り、メカオレンジの動きが止まる。
「って千葉さんッ!?」
流石にそこまでは思っていなかった朝比奈は煙の上がる銃を構えた千葉を見た。
「‥‥。中てるつもりだったが、剣で弾かれた。‥‥とんでもない運動能力だな」
焦ると言うよりは呆れた口調で言いながら、千葉は額に汗を浮かべた。
「──ぃい加減にしろ、ジェレミア・ゴットバルトッ!!」
動きが止まったメカオレンジはついでに言い争いも一時的に止まり、その隙を突いたゼロが怒りの声を張り上げた。
再び剣を振り回そうとしていたメカオレンジはピタリ、と止まった。
姿勢はそのままに、ガランガランと手から離れた剣が落ちる。
朝比奈と卜部がそろそろと近づき、落ちた剣を拾って素早く下がる。
「てか、よくこんな重い剣、片手で振り回していられるよな」
卜部が感心しながら言う。
「あ。弾が喰い込んでる。‥‥ホントに剣で受け止めたんだ‥‥。凄いな」
朝比奈もまた、銃弾を剣で受け止めた事に驚きを表してた。

バタバタバタバタバタ
廊下を物凄い勢いで駆けて来る足音が急速に近づいてきた。
バタンッ
扉が勢い良く開き、一人の少女が中に飛び込んで来た。
「ゼロッ!!ご無事ですか!?」
カレンは開口一番そう叫んだ。


ナナリーを生徒会メンバーと咲世子さんの元へ送り届けたカレンは、同じG1の廊下の角で奥の様子を見ている玉城の背中を見た。
「‥‥何してるの?玉城」
ビクッ!!と大袈裟に肩を震わせた玉城は、ガバッと振り返った。
「‥‥ッなんでぇ、カレンか。脅かすなよ」
「勝手に驚いてるの、あんたじゃないの、玉城。で?何してるの?」
「ゼロが藤堂と四聖剣連れて禁句野郎のところに行ったんだけどよ、C.C.が平然と禁句を口にしてるから、避難してきたんだよ」
玉城が説明するのを聞いた途端、カレンは駆け出した。
「あんの、ピザ女~~!!」
と言う、カレンの声だけが、玉城に残された。



───────────
作成 2008.03.18 
アップ 2008.06.14 

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★明日咲様へのリクエスト作品★
(白シ.ュナル.ル/共闘/騎士団内でブラコン発揮)

そこは戦場だった。
黒の騎士団とブリタニア軍とが戦火を交えている場所だった。
黒の騎士団の主力はガウェインと紅蓮弐式、月下が五機。
対するブリタニア軍はランスロットとグロースターが八機。
それぞれの指揮官、ゼロはガウェインに、コーネリアはグロースターに騎乗しつつ指揮を執る。
主戦力だけならば互角だが、兵力の差は歴然の戦場。

そんな両軍に一つの報告が飛び込んできた。

『アヴァロンが接近しています!』

アヴァロンはかなりの攻撃力を有したブリタニアの第二皇子シュナイゼルのご乗艦である。
当然ながらブリタニア軍の将兵は喜び士気を上げ、黒の騎士団は愕然として士気を下げる。
例外はゼロだけだった。
C.C.は驚く素振りすら見せないゼロを見上げて首を傾げた。
「おい。撤退の指示を出さなくて良いのか?」
「しばらく様子を見る」
「何故?」
「そろそろ痺れを切らせる頃だからな」
ゼロの返答にC.C.は「ん?」と更に首を傾げたのだった。

アヴァロンの砲筒が標的を定めるように動き出す。
期待に満ちるブリタニア軍将兵と、逃げ腰になる黒の騎士団は、同時に「あれ?」と思った。
動く砲筒に「照準角度が違うくないか?」と思ったのだ。
照準が固定されるとエネルギーが集束していく様が見え、一部、危険を感じた者達が逃げを打つ。
動いたのはブリタニア軍側だけだった。
枢木スザクも危険を感じたけれど、「まさか‥‥‥‥」と呟くだけで実感が沸かないのか信じられないのか、ただアヴァロンを見上げるだけで。
アヴァロンから放たれた一撃は黒の騎士団には全く被害を与えずにブリタニア軍のランスロットの側近くに大穴を空けていた。

「どういう事だ?」
C.C.が眉をしかめてゼロを見る。

『待たせてしまったかな?ゼロ』
アヴァロンからオープンチャンネルで、シュナイゼルの言葉が発せられる。
『共闘を申し込みたいのだけど、受けてくれるかな?ゼロ』
シュナイゼルの言葉のその内容に、静寂が落ちたのは、咄嗟に理解できなかったからだろう。

『随分と時間がかかったようですが?』
そして、ゼロもまたオープンチャンネルを開いて平然と応じる。
シュナイゼルの声が友好的なものなのに対して、ゼロのそれには冷ややかな響きが乗せられていたが。

『待ちたまえ、ゼロ。これでも可能な限り急いだのだよ。けれど、わたしは宰相と言う役目柄雑務が山のように‥‥‥‥』
シュナイゼルが慌てたように言い訳を始めるに至り、我に返ったコーネリアが割り込む。
『義兄上ッ!何を仰せになっているか、わかっておられるのですかッ!しかも自軍に攻撃を仕掛ける等とッ!第一宰相の仕事を雑務だ等と』
『ゼロに比べれば全てが雑務だ。わたしはゼロと手を組むと言ったのだよ?‥‥ゼロ、遅れた事は謝るから機嫌を直してくれないか?お土産も用意したし』
コーネリアにはサラっと応え、シュナイゼルは再びゼロへと言葉をかける。

『‥‥良いでしょう。貴方が確かにお忙しいのは理解していますし。共闘の申し出、ゼロの名においてお受け致しましょう』
『本当かぃ!?よかった。そうと決まればこの場のケリも付けてしまおうか』
シュナイゼルは声を弾ませ、本当に嬉しそうに言い、ブリタニア軍への攻撃命令を出そうとする。
その様子に慌てたコーネリアはシュナイゼルが命令を口にするより早く叫んでいた。
『ッ全軍、撤退するッ!!』
コーネリアの声にブリタニア軍将兵は、脱兎の如く逃げ去っていった。

蜘蛛の子を散らせるような見事な退き様に残された騎士団は唖然とする。
『わたし達も撤退する。C.C.、ガウェインは任せた。わたしは今後の共闘の件を話し合う為アヴァロンに向かう』
『なッ!一人で行くなんて危険過ぎます!それに話し合いなら幹部も参加した方が絶対良いですからッ』
カレンが必死に訴える。
『‥‥ならば撤退の指揮は扇に任せる。残りの幹部は各自の判断で撤退の補佐かわたしに同行するか決めろ。‥‥構いませんね?』
『ゼロ!おれは副司令だし話し合いに立ち合いたいと思う』
『ならば、撤退の指揮は玉城、杉山、吉田、南、井上に任せる』
『ゼロの判断に任せるよ。わたし的にはゼロさえ会ってくれるのなら他はいようがいまいがどちらでも』
ブリタニア本国では腕利きな宰相閣下のはずの第二皇子はまるでイエスマンのようにゼロの言葉に頷くばかりで、騎士団を更に唖然とさせていた。

なんとなく危険はなさそうだと思いながらも、藤堂と四聖剣、扇とカレンはゼロに従ってアヴァロンの廊下を歩いていた。
ちなみにゼロは早々にガウェインをC.C.に託すと藤堂の月下隊長機の肩を借りてアヴァロンへの移動を果たしている。
「ゼロ、ホントに良かったんですかー?紅蓮に月下、破壊されちゃうと大変ですよー?」
朝比奈は藤堂と並んで先頭を歩くゼロに向かって声を投げる。
「平気だろう?あれを壊せばどうなるか判っていて、それでも壊そうとする度胸のある奴はいないさ」
ゼロは全く気にする様子を見せずにきっぱりと言い切った。
「‥‥聞くのが怖いんだが、ゼロ。‥‥どうなるんだ?」
扇がそろっと訊ねる。
「まさか宰相閣下を怒らせるような事はしない、という事さ」
扇を見もせずに答えたゼロに、怒りに燃える第二皇子が想像できず、幹部達は首を傾げたのだった。

扉が開くと、満面な笑顔でシュナイゼルがゼロを迎えた。
「良く来たね、ゼロ。待ちかねたよ。‥‥しかしまぁ、ぞろぞろと付いて来たものだな。適当に座りたまえ。ゼロはこっちに」
ゼロと幹部とでは明らかに違う態度でシュナイゼルは言い、いそいそとゼロに近づくと手を取ってソファに案内して座らせ、隣に座る。
「‥‥‥座る位置が違いませんか?」
唖然とする幹部達を気の毒に思ったゼロは、シュナイゼルに物申す。
「えぇ!?少しくらい良いだろう?わたしはゼロさえ来れば良いと言ったはずだし、勝手について来た者達には適当に座らせておけば良いだろう?」
「一応許可を出したのはわたしで、貴方も同意したはずですが。‥‥藤堂、扇。適当に座れ」
結局ゼロもシュナイゼルも動かず、ゼロは溜息と共に幹部達に座るように促し、促された幹部達は本当に適当に座る事になる。
「さて、ゼロ。これでコーネリアから本国へも情報が伝わるだろうから、そちらに移りたいのだけど、構わないかな?」
「構いませんよ。‥‥しかしあっさりと宰相位を捨てましたね。後釜に厄介な輩が納まったらどうするつもりですか?」
「なに、その時は色々と手を回すから心配要らないよ、ゼロ。わたしはゼロの傍にいられるのなら、宰相位なんていらないしねぇ」
シュナイゼルはあっさりと応じ、「ゼロがいなかったからこそなったのだし」と言ってのける。
「‥‥‥あのー‥‥。なんだかお知り合いみたいなんですけどぉー」
朝比奈が躊躇いがちに尋ねるとあっさり双方に頷かれてしまって固まった。
「わたしの最愛の人だからね、ゼロは」
シュナイゼルはそう答えてゼロを抱きしめ、カレンが意味不明な叫びを上げる。
「まだ言ってたんですか?いい加減懲りない人ですね。それより土産とやらを出してください」
「つれないなぁ。そこがまた良いんだけど」と言いながら、シュナイゼルは鈴を鳴らし、間を置かずやってきた者達がお茶菓子を配って去っていった。
かなり偏りまくった配り方に、幹部達は言葉も無く供された茶菓子を見つめる。
紅茶の入ったカップはそれぞれにちゃんと配られていたが、問題はお茶受けの菓子の方だ。
ゼロとシュナイゼルの前にはいちごプリンといちごタルトといちごのたっぷり乗ったショートケーキが置かれている。
残りの幹部達の前には、そのいずれか一つだけが配られていっていた。
「全て君の好物ばかりだろう?これからは毎日お茶の時間には用意させるからね、ゼロ」
甘い声で嬉しそうに語るシュナイゼルに、カレンがキレた。
「ゼロッ!あのッ、いちご‥‥お好きなのですか?」
キレたが向かう先が果てしなく違っている。
「あぁ、好きだな」
「‥‥しかしゼロ。茶菓子が出されたが、仮面をつけたままでは食べられないだろう?」
藤堂が「どうする気だ?」と尋ねると、ゼロはあっさりと仮面を外してしまった。
「相変わらず綺麗だなぁ」
シュナイゼルは目を細めてゼロの素顔に見入った後、再び頬擦りせんばかりに抱きしめる。
「って‥‥るるるるる、るるーしゅぅ!!???」
「‥‥君だったのか。‥‥ある意味納得できたが、コーネリアとかは良かったのか?」
「コーネリアの一番は実妹のユーフェミアだからね。わたしの一番を見せるわけが無いだろう?」
「おれの一番も実妹なんですが?」
「わたしが二番目だろう?君が死んだと聞かされてからも、絶対生きていると信じて待っていた甲斐が有ったよ」
藤堂は正面で展開されている異母兄弟同士の会話を聞いて、シュナイゼルを認める事にした。
カレンはそれどころではなく、名前を叫んでしまった為に、扇や四聖剣から質問攻めに遭っている。
7年前、死んだと聞かされて、藤堂はそれを真実だと思い嘆いた。
だが、シュナイゼルは生きていると信じ、ずっと待っていたのだという。
ならば、シュナイゼルのゼロ=ルルーシュに対する想いはきっと本当なのだろうと思ったからだ。
それに、ルルーシュは「シュナイゼルが二番目」と言う言葉を否定しなかった。
口では、態度では嫌そうな素振りを見せていても、抱きしめるシュナイゼルの腕を振り払う事はしていない。
ならば良いと藤堂は思ったのだ。
「ゼロ。宰相位もなく、騎士団に来れば皇族とはいえ廃嫡される可能性すらある。それでもシュナイゼルを騎士団に入れるんだな?」
「そうだ。その条件下においてさえ、義兄上に逆らおうとする者などブリタニアには皆無に近い。これからはかなり楽になるぞ」
「ルルーシュ。そう言ってくれるのはとても嬉しいけど、素性ばらしてしまっているよ?良いのかぃ?」
さらりと「義兄上」なんて言った義弟に、シュナイゼルはやんわりと注意を促した。
「あ‥‥‥‥。まぁ良いさ。口の堅い連中ばかりだ。それに義兄上がその調子でしたらすぐに知れる事でしょうから」
一瞬固まったものの、開き直ったのか気を取り直したのか、平然と続けたルルーシュにシュナイゼルは満面の笑みを浮かべて抱きしめる。
「好きだよ、ルルーシュ。ずっと君の事だけを想っていた。そしてそれはこれからも変わらない」
「少しは義弟離れをしたらいかがですか?わたしも義兄上は嫌いでは有りませんが」
「ルルーシュ離れなんてとんでもない。君も素直に好きと言ってくれても良いだろう?」
二人はの会話は既に幹部達を完全に無視したものに変わっていて、各自で判断してついて来た幹部達は、ついてきた事を激しく後悔した。
「‥‥ゼロ。‥‥いや、ルルーシュ君。いつになったら話し合いを始めるんだ?」
扇、カレン、四聖剣の視線を受けた藤堂が、ルルーシュに尋ねる。
「ん?‥‥そうだな。食べ終わってから?」
藤堂の問いに、ルルーシュはこてんと首を傾げてちらりとシュナイゼルを見る。
「あぁ、そうだったね。わたしの分も食べて良いからね?ルルーシュ」
「そ、そうですか?」
シュナイゼルの言葉に嬉しそうにいそいそとスプーンとプリンを手に取ったルルーシュ。
そうして、目の前で展開される甘い会話に、胸焼けを起こした幹部達がなんとか出されたデザートを食べ終わるまで、それは続いたのだった。


「あの。これってもしかしてこれからずっと続くんですか?」
朝比奈の悲壮な言葉に、藤堂は黙然と頷いていた。



───────────
作成 2008.05.29 
アップ 2008.06.13 
 

騎士団幹部達は、格納庫で作業をこなしつつ、消えたゼロと藤堂、四聖剣とラクシャータが戻ってくるのを待っていた。
どのくらい経った頃か、戻ってきたのはラクシャータとゼロ、それに四聖剣の内の千葉と朝比奈だった。
声を掛ける事も出来ずに幹部達が凝視する中、あっさりと素通りした一行は、月下隊長機の傍で立ち止まる。
それはすなわち月下隊長機をゼロに合わせて調整するという事に他ならず‥‥。
「なッ‥‥ゼロ乗せたら月下まで壊されちまうってのに良いのかよ、おい」
思わず玉城が叫んだのも無理からぬ事だと、事情を知らされていない一同は思う。
千葉と朝比奈は顔を見合わせ、玉城の声など気にせずに早速作業を始めたラクシャータとゼロ(中身藤堂)を見てから、玉城の方へと近寄ってきた。
「な、なんだよ」
玉城は思わず及び腰になりながらも突っかかる。
「あのさ。今度の一件については藤堂さんもおれ達もラクシャータも納得した事だから、暫く黙って見ててくれないかな?」
「暫くだけだ。その内、また中佐が乗る事になる。それまでは‥‥口出しは無用に願う」
朝比奈と千葉が立て続けに説明し、「口出し無用」と言い切った。
「ちょっと待ってくれ。なら藤堂さんがゼロの無頼に乗るのか?」
扇が慌てて声を掛ける。
「‥‥いや。中佐は暫く戦場には出ない」
本当は今日のように、ゼロ(外見藤堂)は無頼に乗って戦場に出る気だったのだが、四聖剣が一致団結して却下したのだ。
今日のように「無頼を壊して、万が一にでも怪我をしたら大変だ!気になって戦闘に集中できないから、出てくれるな」と誠心誠意説得したのだ。
藤堂の身体を理由にされては、ゼロとて強硬に出るわけにはいかず、押し切られる形で折れたのだった。
「怪我!?」
驚く扇の疑問形の叫びに千葉と朝比奈は揃って首を横に振って否定した。
「そうではないが‥‥。ゼロは中佐が復帰するまでの間、月下に乗る事になったのだ。説明は以上。ではな」
千葉は話を強引に終わらせると踵を返して月下に向かっていった。
朝比奈もそのまま後を追い、腑に落ちない顔の他の幹部が残されたのだった。


一方、ゼロ(外見藤堂)は仙波、卜部とゼロの自室にいた。
流石に藤堂の姿で頻繁にここに来る訳には行かないので、必要な物を取りに来たのだ。
「なあ、一つ聞いて良いか?中佐はいつゼロの事知ったんだ?今回の件でか?」
卜部が藤堂(中身ゼロ)から受け取った書物や書類を仙波に渡しながら尋ねる。
「‥‥いや。藤堂を助けて、騎士団に入って、わりとすぐだったな」
ゼロ(外見藤堂)は四聖剣の前では取りつくろおうとする事すらやめたようで、藤堂の姿のままで平然と「藤堂」と呼び話題にする。
「へ?‥‥会って早々?何故なんだ?元からいた幹部達にだって教えてねぇんだろ?」
「‥‥藤堂は顔を隠したままの相手と手を組む事に納得しないだろう?」
卜部から受け取った書物をテーブルに乗せようとしていた手を止めて仙波は藤堂(中身ゼロ)を見た。
「確かにその通りだとわしも思いますが、‥‥藤堂中佐の事を良くわかっているようですな、ゼロ」
「‥‥確か、武士の鑑と言ったか?‥‥武人だったかな?」
そう答えて藤堂(中身ゼロ)は首を傾げて見せた。
ある意味視界の暴力に仙波と卜部は揃って視線をそらせていた。

プルル‥‥と着信音が響いたのは、そんななんとも言えない空間にだった。

「すまない、わたしだ」
そういってゼロ(外見藤堂)は携帯を取り出し相手を確認する。
藤堂(中身ゼロ)の表情が困惑に彩られて、仙波と卜部は戸惑った。
「どうしたんだ?中佐‥‥じゃなくてゼロ」
卜部が尋ねるがゼロ(外見藤堂)はそれには答えず携帯を耳にあてた。

留守メッセージが流れた後、ミレイの声がゼロの耳に入って来た。
『また留守電~?全然捕まらないんだから~。あんまり休んでばっかだと留年しちゃうわよー』
明るい声での前置きの後、本題に入るのがミレイのいつものやり方だ。
『‥‥ナナちゃんとの約束、破ったんですって?心配してるわよ?何かあるなら力になるし‥‥連絡待ってるわねー』
そう言うと、通話は切れた。

「携帯は交換してるんだな?声違うと取れないんじゃないか?今みたいに」
「藤堂中佐にはあまりかかって来る事は有りませんが‥‥ゼロは表の付き合いも有りますからな」
「メールを入れておくさ。不可抗力とは言え、約束を破ってしまったからな」
「ゼロ!落ち込み中すまぬが、藤堂中佐にそのような表情をさせるのは、どうかやめていただきたい」
「てか中佐の表情ってちゃんと動くんだなー。ゼロ、とにかくさ。辛いなら辛い、心配なら心配だって口に出して言いな。聞いてやるからよ」
仙波、卜部の言葉に藤堂(中身ゼロ)の顔からすっと表情が消えた。
普段の藤堂がまだ表情豊かに見える程完璧な藤堂(中身ゼロ)の無表情振りに、二人は慌てた。
「ゼロ違うッ!隠せっとも消せっとも言ってねぇ。あんな表情になる原因をさくっと解決しろって言ってるんだ。その為の相談には乗るからって」
「すまぬゼロ。わしの言い方が悪かったようだ。押し隠した表情を知っていては、その無表情を見る方が辛い」
慌てて対応策を述べる卜部に、平謝る仙波を見たゼロ(外見藤堂)は、無表情はやめて苦笑を浮かべたが、それでもクレームは飛んできた。
「‥‥それって、作り笑いって言わねぇか?ゼロ。無理に笑えっとも言ってねぇからな」
「藤堂中佐は普段あまり笑う事をなさらないから、その不自然さは余計に目に付くのだ」
「そんなにおかしいか?‥‥まぁ、表に戻れないのが少々痛いと思っているだけだから、あまり気にするな」
ゼロ(外見藤堂)は書類の選定に戻り、仙波と卜部の心配そうな視線に気付かない振りをした。

───────────
作成 2008.04.24 
アップ 2008.06.12 

★陸様へのリクエスト作品★
(命の危険が迫ったゼロを藤堂が身を挺して庇い、二人の距離が縮まる)

作戦を終了させて参加していた団員が騎士団アジトに帰還してきた。
今回は待機組だったディートハルトが数名の団員を従えて格納庫で出迎えていた。
ナイトメアを所定の位置に納め、順次パイロットも降りて来る。
カレンと藤堂は降りるなり片腕を失ったゼロの無頼に近付いた。
その頃になってゼロが姿を見せ、降りて来る。
「大丈夫ですか?ゼロ」
カレンが心配そうに尋ねる。
「‥‥ぁあ、問題ない」
ゼロのしっかりした言葉にカレンはホッとし、しかし藤堂は眉間の皺を深くする。
「ゼロ、怪我をした時くらい強がるのはよせ。すぐにちゃんとした手当てを受けて来い」
藤堂の声は別段大きかったわけではなかったが、低く通る言葉を聞いた者はそれなりにいた。
ディートハルトもその一人で、ゼロが負傷した事実に衝撃を受けた。
タイミングとしては、最悪と言って良いだろう。
カレンが驚いて「早く手当てしてきてください!!」と悲鳴に近い声を上げる。
藤堂も「渋るようならば抱えてでも連れて行くぞ」と半ば威すように指示を出す。
ゼロは「抱えられては威厳が‥‥」とぶつぶつと呟いてから「‥‥わかった」と折れた。
踵を返して歩きだすゼロを案じて見送るが、その動きは確かなもので怪我自体は対したものではなさそうだと思うのだ。
ディートハルトはホッと息を吐いて、それからハッとして振り返り慌てた。
振り返った先で、ゼロが帰るなり相談し許可を得ようとしていた問題視している団員が動いているのを見たからだ。
既にゼロに向けて銃を構えていて、動きを止める事は出来そうに無いと悟ったディートハルトは叫ぶ。
「ゼロッ!!伏せてくださいッ!!!」
ディートハルトの声に、動いたのは3人だった。
ゼロは怪我の為か、意味を掴み損ねて足を止め振り返ろうとした。
銃を構えた団員は、引き金に添えた指に力を入れた。
藤堂は立ち止まったゼロに驚き、地面に伏せさせる為に突進した。

一発の銃声が鳴り響き、ドサッと言う倒れる音が続いた。

驚いた幹部達が見たのは、折り重なるように倒れるゼロと藤堂、それから煙を上げる銃を構えたままの団員だ。
「ゼロッ!!」「藤堂さんッ!」「中佐ッ!」
「逃がすなッ!」「捕まえろッ!」
幾つもの声が交差する。
そんな声を遠くに聞きながら、ゼロは自分に覆いかぶさる相手に声を掛けた。
「藤堂‥‥「怪我はないか?」ゼロ」
ゼロの声に重なるようにして、藤堂もまたゼロを案じて声を掛ける。
「‥‥新たに痛くなったところは、ない。藤堂、お前は?」
ゼロが先にそう応じていると、藤堂は身を起こした。
ポタリ、と滴る音が聞こえ、藤堂の肩が赤く染まっているのにゼロは気付いて慌てる。
「なッ、怪我をしているではないかッ。他人の心配をしている場合か!?」
「掠めただけだ。大したことじゃない」
「藤堂ッ!『怪我をした時くらい強がるのはよせ』と言ったのは貴様だろうがッ!それもつい今しがたッ!」
ゼロは怒鳴ると少し乱暴にスカーフを引き抜いて藤堂の肩に巻いて止血する。
「おい」
「替えくらいある。‥‥ラクシャータッ」
「わかってるわよぉ。ゼロ、あんたも診たげるから、一緒に来なさぁい」
ラクシャータはそれだけ言うと手も貸さずに医務室に足を向ける。
先に立ち上がったのは藤堂で、次いでゼロも立ち上がる。
それぞれ手を借りずに立った事に、その場にいた者達は安堵する。
「カレン。この場を任せる。狙撃犯は捕えろ。ディートハルトには背後関係を調査するように。それとこれ以上の被害は出すな」
「わッ、わかりました、ゼロ。‥‥‥‥あの、本当に平気ですか?」
「わたしは平気だ」
「おれもだ。すまんが紅月。後は頼む」
「はい」
カレンが頷くと、ゼロと藤堂はまだ騒がしい格納庫を離れて医務室へと向かって行った。

ゼロと藤堂の手当をしたラクシャータは、治療に使った道具をしまいながら呆れた声を出した。
「あんたらねぇ。もう少し自分を労わりなさぁい。良くもまぁそれで『平気だ』なんて言ってられるわねぇ」
「わたしは本当に平気だと思ったからそう言ったまでだ」
「なぁんですってぇ?ゼロ、あんた本気でそう言っているんだったら、もうあんたの『平気だ』はアテになんてしないわよぉ」
ゼロの返答に、ラクシャータは眦吊り上げて言い返し、藤堂を見る。
「おれは平気だっただろう?ゼロの止血もしっかりしたものだったし」
「ゼロの止血はたいしたもんだったけどねぇ。掠めるって言うには傷口広かったじゃないの」
「「‥‥だが」」
「問答無用!あんた達は当分絶対安静。ここで大人しくしてなさぁい」
ラクシャータの珍しく怒った口調に、ゼロと藤堂は押し切られてしまった。

ラクシャータがナイトメアのメンテナンスに出て行くと医務室にはゼロと藤堂の二人だけが残される。
「‥‥先程は助かった。礼を言う、藤堂」
「いや‥‥」
藤堂の方を見ずに礼を口にするゼロに、藤堂は曖昧に応じる。
「だが、‥‥何故助けた?自分が怪我を負ってまで。四聖剣だって蒼白になっていたぞ」
「ゼロ。狙われている時に立ち止まっては格好の的になるだけだ。君を失うわけにはいかないからな」
藤堂はそう答えてから、「この言い方では誤解を招きかねない」と少し焦る。
「‥‥そうだな。まだわたしは『奇跡』と言う夢を『正夢』にしていないからな。藤堂が困るのは判った」
ゼロは誤解せずに藤堂の言いたい事を汲んだが、その事に、藤堂は一抹の寂しさを覚えてしまい更に内心でうろたえる。
「君が無事で‥‥良かった」
更にポロッと口を衝いて出た言葉に、藤堂は真っ白になっていた。
ゼロはと言うと、本当に心底ホッとしたように言われて、仮面の下で思わず頬を染めていた。
身を挺して庇われたり、「君を失うわけにはいかない」と真面目な口調で言われたりと、慣れない事が続いていたせいもある。
「‥‥ッわ、たしが無事でも助けたお前が怪我をしていたのでは話にならないな。‥‥もし次も同じ事をする気ならば今度は怪我をするなよ」
ゼロは火照った頬を気にしていた為か、ついそんな事を言ってしまい、「しまった、これでは次も助けろと言っているようではないか」と慌てる。
急にわたわたと慌て始めたゼロに、藤堂は苦笑した。
「そうだな。次はおれも君も無傷で切り抜けられるように力を尽くそう」
ゼロはそう言って藤堂が見せた笑顔に、慌てていた事も忘れて見入ってしまった。
急に大人しくなったゼロに、藤堂が心配顔になって見返す。

そんな二人の見つめ合いは、狙撃犯を確保し事後処理を終わらせた四聖剣とカレンが見舞いに来るまで続いたのだった。



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作成 2008.05.25 
アップ 2008.06.11 
 

──「親展と感想」編──

【特派】
宛名は『黒の騎士団総司令ゼロ様へ』とあり、親展の判が押されていて、それを初めに見た時、軽い眩暈を覚えた。
よくもまぁ、これで届いたものだと感心すると同時に、検閲に合うとは思わなかったのだろうか?と差出人に対して呆れてしまったのだ。
差出人の名前は無く、少し躊躇った後、開封して中身を取り出した。
『こんにちわ、ルルーシュ殿下。セシル・クルーミーと申します』
そんな始まりに、本当に気が遠くなるのを感じた程だ。
『上司のロイドさんがご迷惑をおかけしてませんか?
ホントにあの人ッたら、ランスロットだけ持ち逃げして、わたし達を置いていくなんて酷いと思いません?殿下』
自然におれの名前や「殿下」と書いてくる辺りが凶悪だった。
第一プリン伯が事後処理をキチンとやって来ないのが悪い。
説得するなりなんなりとしているものとばかり思っていたというのに、まさか何も言わず、白兜だけ持ち逃げ同然にしていたとは。
『入団申請書類を送付したと思うのですが、お手元に届いておりませんか?』
それなら今頃不採用通知が届いているはずだぞ、と思う。
ディートハルトにそのように指示を出したのだからな。
『特派一同、黒の騎士団に身を寄せたいと思い、書類を送付したのですが、まだ何の音沙汰も無いんですよね』
なら、行き違ったんだな、と思いつつ特派と聞いて思い浮かべた体力馬鹿に、まさかあいつまで出してたんじゃないだろうな、とげんなりする。
『あ。念の為言っておきますが、元ランスロットのパーツには何も言っていません。
ですから、殿下。わたし達特派一同も騎士団に置いてくださいな。
快いお返事をお待ちしておりますね♪』
「‥‥セシルと言えば、プリン伯やラクシャータと同じ研究所にいた女性だな‥‥。パワフルな人だったから覚えているなぁ」
更に続いた特派の技術者達からの親展の手紙は気力が追いつかず斜め読みしてセシルの手紙と一まとめにしておいた。


【グラストンナイツ】
宛名書きは『黒の騎士団』と『ゼロ』だけのシンプルなもので、それよりもでかでかと『親展』と書かれている。
少々乱暴な表書きに、嫌々ながらも開封して中を見た。
『ゼロッ!!貴方は一体ダールトン将軍に何をしたんですかッ!!!』
この出だしに、こいつ等、まさか気づいていないのか?と思わず呆れてしまった、いや知られている方がダメなのだから良いはずだというのに。
『何も無くダールトン将軍が敵に寝返るなんて有り得ない!!一体、何をしたんだッ!!』
おいおい、将軍。お前もか?お前もなのか?
お前に傾倒しまくっているグラストンナイツを丸ごと無視して、何の説明もなく来ているなんて思わないだろ?普通。
段々とやさぐれていくのを感じながら先を読む。
『良いか、見ていろよ、ゼロ。ダールトン将軍は必ず取り戻すからな!!!』
そうか、将軍にしか目が行っていないから、ゼロの素性にまで気が回らなかったか、こいつらは。
まぁ、それが普通だから、こいつらに腹は立たないが、‥‥将軍には一言言ってやら無いと気が治まらないな、これは。
おれは五人全員から来ていたこいつらの手紙を残りは斜め読みして纏めて置いた。
バラバラに出してきておきながら、内容はほとんど一緒なのだから一種の嫌がらせなのだろう、これは。


【キョウト】
宛名は『黒の騎士団総司令殿』となっていて差出人がないが、これはどこから来たかすぐにわかった。
キョウトだ、間違いなく。
なんと言っても達筆過ぎる筆遣いからそれが判る。
やはり開けたくは無かったのだが、本当に渋々開封し、中身を取り出した。
『ゼロ、その後いかが過ごしておるかの?』
き、桐原の奴、なんのつもりだ?
『あれ以来事務的な連絡を団員を通してしか寄越して来ぬから少々物足りなくての?
たまには年寄りの相手もするもんじゃよ。
今度キョウトに参られよ。
美味い茶菓子を用意して待っていよう』
何の誘いだ?一体。
わたしは何か?茶飲み友達か?そうなのか?
『藤堂や四聖剣も貸しておるのだし、ナイトメアや資金援助もおこなっておるのだし、たまには良いのではないかと思うておるのだがの?』
‥‥‥それとこれとは話が別だろう?
第一わたしは忙しいし、キョウトに行っている暇など有りはしない。
‥‥‥よし、放っておこう。

次の手紙に移り、再び固まる。
宛名書きが、『愛しい未来の旦那様』と親展の印。‥‥なんだ?これは。
てか何故それでここに届くのだ?
『ゼロ様!?早くお会いしたいと思いますわ。旦那様』
ハイテンション過ぎる文面と踊る文体に、眩暈が酷くなって行く。
『お忙しいのは判っています。神楽耶も何かお手伝いが出来たらと思うのですが‥‥』
き、気持ちだけで十分だ。
今はあまりあちこちで動かれても対処なんぞ出来るものか。
『この間、入団希望の書類をしたためておりましたら、桐原に邪魔をされてしまいました』
良くやった、桐原。それだけは褒めてやる。
ディートハルトとて神楽耶の名前くらい知っているだろうが、日本人でもある事だし万が一にでも通過してはやばい。
『ですから、騎士団の活躍をこころよりお祈りいたしますわ。
そして、勝利を収めてわたくしを迎えに来てくださいまし、未来の旦那様』
‥‥‥迎え、か。
というか、確定なのか?その「未来の旦那様」とやらは?
同意は一度もした事がないのだが‥‥。
‥‥‥それも後回しだ、返事なんぞはいるまいな、これも。
キョウトからの手紙もまた束ねて置いた。


【皇族】
これまでの固まり方はマシだったのだな、とその宛名書きを見て完全無欠に固まりながら思う。
『愛しのヴィ家の長子へ』‥‥‥‥。何故これで届くんだ?ここに?
ふざけてるのか?ふざけてるだろう?あんの甘やかし宰相はッ!!
『やぁ、ルルーシュ。元気そうでなによりの朗報だよ』


ぶちッとキレて立ち上がったおれは、扉に向かうとバタンッ‥‥と力任せに扉を開けたのだった。

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作成 2008.05.28 
アップ 2008.06.10 

★小柳様へのリクエスト作品★
(藤.ル.ル/手料理/藤堂のみバレ済み)

「あッ、ゼロ~」
格納庫にやって来たゼロを見つけて朝比奈が声をかけたのは午後に入ってすぐの事だった。
藤堂がギロッと朝比奈を睨み、仙波と卜部がそんな藤堂を宥め、千葉は朝比奈をとめようと動く。
「ん?なんだ、朝比奈」
「おれもゼロの手料理が食べてみたいんですけどー。作ってくれませんか?」
朝比奈は別に殊更声を落としたりしなかった為、その内容は、格納庫内に響き渡り、ピキリと空気が固まった。
ゼロも数秒固まったが誰よりも早く我に返ると活動外と判断して朝比奈を無視した。
「藤堂、次の作戦についてなんだが、幾つか確認してもらいたい箇所がある。手が空いたらわたしの部屋に来てくれ」
「‥‥承知した」
「えぇえ!?おれ無視されたの?なんで?」
一瞬迷ってゼロ同様朝比奈を無視する事にした藤堂の返事に重なるような形で、朝比奈の嘆きが再び響く。
「‥‥藤堂、朝比奈が煩いようだが、何か有ったのか?まさか反抗期でもないだろう?」
再び朝比奈を無視してゼロは藤堂に問いかけた。
「‥‥それに近いモノがあるな」
疲れた様子で応じる藤堂に、ゼロは「そうか‥‥」と納得してから、取り出した携帯が震えてるのを確認すると一言断って繋げる。
「すまない。‥‥わたしだ、何故‥‥なに?やめろ馬鹿ッ。すぐに離れろッ!‥‥ちッ」
ゼロは訝しげに聞き返したかと思ったら慌てた声で罵って指示しながら走り出した。
向かう先は自室のようで、「ならば電話の相手はC.C.なのか?」とか「一体何が?」とか思いながらも幹部達も後に続いた。

ゼロを先頭に目的地であるゼロの自室の前まで来た時、ぼんッと音がしたかと思うと扉が開いて煙とC.C.が出てきた。
「C.C.!怪我は!?」
「なッごほッ、い。ごほッごほッ。少し煙を吸っただけだ。火は出てない」
「わかった。扇、C.C.をラクシャータのところに運んでやってくれ」
ゼロはそれだけ言うと、まだ煙が出てきている部屋に入っていった。
元から仮面をしているので、煙を吸う事はないだろう。
「‥‥あぁ、平気だな。お前達、入るなよ。それと、すまないが煙が外に漏れないように手を打ってくれ」
中からゼロの指示が飛び、入ろうとしていた藤堂やカレンは踏み止まる。
確かにこれ程真っ黒い煙が外に漏れれば、すわ火事か!とかで消防か軍が踏み込んでくる可能性はある。
それに思い至った幹部達は手分けして煙の対応に追われ始めた。

ゼロがやっと煙を出さなくなった部屋から出てきた時、部屋の前には藤堂だけがいた。
「何が有った?」
元から真っ黒い装束だったのが幸いして、ゼロの襟が黒ずんでいるだけに見える。
藤堂は手拭いを取り出すと、仮面の表面を擦って煤を落とした。
「ありがとう。‥‥すまない。C.C.が調理中の料理にチーズと油を足し込んだらしい。台所がかなり悲惨な状態になっている」
藤堂の短い問いに続いたゼロの謝罪が、台所の惨状のせいで料理がポシャッた事を指しているのだと気づく。
「煙は吸わなかっただろうな?」
だが藤堂にとってはゼロ自身の方が大事だ。
火が見えたら即座にゼロを助けに向かう気満々だった藤堂は自然にゼロの安否を尋ねる。
「当たり前だ。‥‥仕方が無い。食堂の台所を使うか‥‥」
「ゼロ?」
藤堂は少し引き気味に尋ねる。
「藤堂、少し遅くなっても良いだろうか?」
「それは‥‥構わないが。だが、ゼロ。あれ程、食堂では作らない、と‥‥。無理をする必要は無いんだぞ?」
「わたしは無理はしていない。これ以上恐れられるのもどうかと思っていただけだが、藤堂は離れたりしないだろう?」
「当たり前だ」
「ならば良いんだ。少し待っててくれ」
「わかった」
藤堂はゼロの言い回しに少し引っかかりを覚えたものの、しっかりと頷いたのだった。

その日、食事当番に当たっていた団員が数名、扇の元へと転がり込んできた。
その慌て振りに扇だけでなく、周囲にいた幹部達も驚く。
「何が有ったッ!!」
「「ゼロが料理し始めました!!」」
反応は大きく分けると三つだった。
カレンを除いた旧扇グループとラクシャータが目を点にして絶句した。
カレンとディートハルトは「ゼロが料理‥‥」とうっとりと呟いて悶えている。
残り、四聖剣は即座に駆け出して食堂へと向かった。
その行動に我に返った残りの幹部達が続き、ただ一人残ったラクシャータは「あぁまぁ、自室のC.C.が壊しちゃったみたいだしねぇ」と納得していた。

食堂の台所、というよりは厨房の入り口で、幹部達はゼロによって刻々と出来上がる料理の数々を呆然と眺めていた。
手際が実に良い。
というよりそれ以前に、マントを外して何故かピンクのエプロンをつけたゼロが、くるくると動く様が可愛く見えてしまっている事に衝撃を受けて固まっていたのだ。
食堂では藤堂が一人腕を組んで座って目を閉じている。
まるで厨房の騒ぎには我関せず、と言った具合に、だ。
最初に動いたのは玉城だった。
玉城の後ろで、「ホントに美味いのか?」「手際は良いし」「でもとても良い匂いですよ?」「美味そうだ」と四聖剣がヒソヒソと話していたからだ。
そろりと厨房に入ると、玉城は料理に手を伸ばす。
その様子をハラハラと見ていた幹部たちの中で、扇がハッとして玉城に声をかけた。
「玉城、避けろッ!」
扇の声に驚いた玉城は反射的に伸ばしていた手を引っ込めた。
直前まで玉城の手が有った空間を裂いて、フォークが通り過ぎて行き、壁に突き刺さる。
「‥‥ッぶねぇ~‥‥」
「‥‥ん?どうやらこの厨房にはねずみがいるようだな。後で退治しておくか」
ゼロは玉城の方を見る事無くそう呟くと、止まった手を再び動かし始めた。
何気ないその言葉に、恐怖を覚えた玉城は、いつもならば突っかかるところを何もせずにすごすごと引き下がった。
入り口付近で屯していた幹部たちと共に食堂まで来た時、藤堂が目を開く。
「ゼロが料理をしている時に近づくのはあまり勧めない。摘み喰いをする者には容赦するなと言う教えを受けているらしい」
運動神経はあまり宜しくないゼロ。
但しフォーク投げとナイフ投げ、ついでに包丁投げの腕は天下一品だった。
幹部達、特に玉城は「知ってるんなら、最初に言え最初に!!」と内心藤堂にツッコミを入れまくる。
それでは収まらない玉城が口を開いた時、ゼロが膳を持って現れた。
「待たせた、藤堂。‥‥ん?どうした、お前達も今から食事か?」
普段は食堂に現れないゼロは「遅いんだな」と気に止めないで藤堂の前に膳を置いた。
「すまない、材料が思った程無かったから有り合せになってしまった。口に合えば良いんだが‥‥」
「心配はしていない。君の料理はいつも美味いからな」
「そうか?しかし、食費は十分充てていたはずなんだが‥‥」
「あぁ。‥‥質より量で、購入しているとか言っていたが」
「ん?量の計算を間違えたか?」
「‥‥君を基準にしたらみなたちまち腹を空かせると思うぞ。君はもっと食べた方が良い」
「そうか、わかった。食費にもう少し充てるようにしよう。‥‥それより藤堂、食べてくれ。冷めると美味しくなくなる」
「‥‥そうだな。いただこう」
藤堂は外野を気にしたが、それも一瞬だけで箸を持って食べ始めた。
「ちょッ‥‥‥っとゼロ!藤堂さん!!!な、なんで、ゼロが料理してそれを藤堂さんだけが食べてるんですか!!?」
カレンがやっとの事で叫ぶ。
「ん?わたしが藤堂の為に作ったからだが?」
「ですから、何故藤堂だけに作るのですか?わたしも頂きたい!」
ディートハルトもまた懇願に近い状態で訴え、幹部達は「うんうん」と頷いた。
「‥‥‥この人数に作れ、だと?ふざけるな。わたしにここに来ている間、調理に終始しろとでも?」
ゼロの言い分はもっともだった。
表での生活もあるゼロが、この人数の食事を作っていたら騎士団としての活動が出来なくなってしまいそうだ。
藤堂は一人、我関せずと言った様子で箸を動かしている。
「藤堂さん、ずるいです。昼もお弁当を作って貰っていたのにー」
朝比奈が本当に最近には珍しく美味しそうに食べる藤堂に羨ましそうな視線を向けた。
「‥‥はぁ。朝比奈。時々持ち回りで四聖剣の内の一人ずつ藤堂の許可を得て誘って貰え」
朝比奈の萎れる様子に、ゼロは溜息を吐いた。
「良いの!?やった。藤堂さん!おれ明日!!」
「てか四聖剣だけかよ?おれも喰ってみてぇ」
「‥‥‥藤堂に許可を取れ。一度に3人以上作る気はないし、わたしが不在の時は言うに及ばず、忙しい時も作れない」
「「藤堂(さん)ッ。明日はわたしを招待してください!!」」
即座にカレンとディートハルトが立候補しながら藤堂に詰め寄った。
「‥‥ゼロ」
ピタリと箸を止めた藤堂が非難するようにゼロを呼ぶ。
「別に藤堂が誘いたくなければ誘わなければ良いだけの話だろう?わたしは三人分以上作る気はないだけだ。後は‥‥」
思案気に止められたゼロの言葉の続きを幹部達は固唾を呑んで待つ。
「メインは藤堂だからな。藤堂が食べない時も作らない」
ゼロのその言葉に、幹部一同の嫉妬の眼差しが藤堂に向けられた。


その後、藤堂と四聖剣、藤堂と幹部の熾烈な攻防が繰り広げられる事になるが、現在のところ、藤堂の許可を取り付けた者はまだいない‥‥。



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作成 2008.05.20 
アップ 2008.06.09 
 

★小柳様へのリクエスト作品★
(藤.ル.ル/手料理/藤堂のみバレ済み)

それは、とある昼休みの事だった。

「飯だ飯だ~」
一際煩い玉城の声に少し遅れて時報が鳴るのはいつもの事。
仕事にキリをつけた者から食堂へ向かって行く。
「藤堂さん、行きましょう」
朝比奈もまたいつものように藤堂に声をかけ、そこに仕事を終わらせた四聖剣も集まって藤堂を待った。
だが‥‥。
「すまないが、今日は四人で行ってくれ」
藤堂は作業中の手を止めて上げた顔で四聖剣を見て言った。
「珍しいですね、中佐の作業が終わっていないのは」
「待ちますよ、藤堂さん。おれ、藤堂さんと一緒の方が良いですし」
千葉は軽く驚き、朝比奈は真面目に提案する。
「‥‥‥‥いや、今日は食堂へは行かないから、お前達だけで行って来い」
藤堂はどこか困ったように首を振って言った。
「藤堂中佐。どこか具合でもお悪いのですか?‥‥食欲がないとか‥‥?」
仙波が気遣わし気に尋ねる。
「‥‥そうじゃない。ただ弁当を貰ったから、食堂に行く必要がないだけだ」
藤堂は言葉にはそう言ったが、実際には質問責めに合う事が予想されるので行きたくなかったと言う本音を自覚している。
「べっ弁当ぉ!?」とかなりの音量で叫びそうになっていた朝比奈の口は卜部が塞いで止めた。
「中佐、どなたから弁当等を?」
千葉の問いに藤堂は「やはりか‥‥」と思い溜息をついた。
「各自食堂で自分の分を調達して来い。‥‥部屋で話す」
藤堂の言葉に四人は顔を見合わせてからそれぞれ返事をして食堂に向かった。
四人の姿が見えなくなるまでを見送った藤堂は「嬉しいが説明に困るな‥‥」と呟くと作業を終わらせて部屋に向かった。

仙波と卜部が日替わり定食、千葉と朝比奈がA定食を手に藤堂の部屋にやって来たのは、藤堂が部屋に入ったすぐ後だった。
「早かったな‥‥」
扉を開けて迎え入れた藤堂は、疲れた口調でそう評した。
長ソファに二人ずつ定食のトレイを前に座った四人の視線は、自然と斜めに座る藤堂の前に置かれた弁当の包みに注がれてた。
「‥‥‥‥開けないんですか?藤堂さん」
中身が気になる朝比奈が尋ねる。
「お前達、内容については何も言うなよ」
藤堂はそう念を押し、四人が躊躇いがちながらも頷くのを待ってから包みを解いて中身を広げた。
藤堂の念押しがなければ、声を上げていた自信のある朝比奈は息を呑んだ。
千葉は「中佐、何か祝い事でも?」と赤飯を見て言いかけたが堪える。
仙波と卜部も和食な煮魚や和え物や玉子焼きやら別に取り出された湯気のたつみそ汁を目の当たりにして絶句した。
「‥‥それで、どなたから?」
気を取り直し千葉が尋ねる。
「‥‥‥‥ゼロ、だ」
四聖剣は思わず己の耳を疑った。
視線をかわし合い、確認しあう。
数瞬の後、四人は一斉に驚きの声をあげていた。
「ゼロぉ~!?ゼロが料理?見た目は良いけどホントにそれ美味いの?」
「てかあの仮面で料理するのか?」
「ゼロが料理をするのはともかく、それで何故中佐に弁当を?」
「‥‥ゼロが弁当‥‥‥‥」
それそれ驚きのポイントがズレているのはご愛嬌であろう。
「馬鹿を言うな、朝比奈。味は今までで一番美味い。料理の種類も驚く程多い、卜部。以前作戦の話をした後に口を滑らせたら用意してくれたんだ、千葉」
藤堂は順に答えた後「‥‥何に驚いているのかわからんぞ、仙波」と呆れた視線を向けた。
「一口!藤堂さん一口下さい!」
「ダメだ、朝比奈」
藤堂はそう来ると分かっていたのか即座に却下してのけた。
考えた形跡さえない藤堂の即答に四聖剣は驚いた。
「‥‥あの、中佐?」
「やらんぞ、千葉」
「いや、あの、だからさ、中佐」
「やらんと言ってるだろう、卜部。聞こえなかったのか?」
「藤堂中佐、弁当の事ではなく、」
「やらんと‥‥‥‥ん?なんだ?仙波」
やっと会話が成り立つ事に、四聖剣は安堵しつつも「この人は、本当に藤堂鏡志朗なのだろうか?」と思う。
ここまで物(しかも弁当)に執着する藤堂を見るのは、四聖剣ですら初めてだった。
執着心がないとは言わない。
勝利への執念は凄まじいし、一途なところがあるから気に入った人へも執着しそうではある。
「藤堂中佐がわし等に対してまでそれ程頑なになられる理由が知りたいかと思いまして」
「‥‥‥‥‥‥」
押し黙る藤堂に、仙波は折れて「あー‥無理に聞き出そうとは思いませんが」と付け足した。
「てか、おいしいって既に知ってるって事は、これが初めてじゃないんですか?藤堂さん!?」
朝比奈の疑問に、三人の同僚は「あッ」と声を上げ、藤堂は「失言は何処だ?」と内心呻く。
「と、とにかく冷めるから、食べるぞ」
箸を持つ藤堂に、朝比奈は「答えてくれてませんけどッ」と抗議をするものの、確かにいつまでも昼休みが続くわけでもないので渋々頷いたのだった。

後編に続く。

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作成 2008.05.18 
アップ 2008.06.08 
 

★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(藤.ル.ル or 朝.ル.ル or ナ.ナル.ル/女性陣に守られる)

その日、生徒会室には見事に女性陣しかいなかった。
ルルーシュとリヴァルはミレイ会長の命令で買い出しに出かけており、スザクは軍務で朝から来ていない。
やる事も無く、みんなでお茶をしていると、扉が開いて車椅子でナナリーがやってきた。
「あら、ナナちゃん。ルルーシュなら今ちょっと買い出しにだしちゃってるんだけど‥‥」
「はい、先程連絡を頂きました。ですから来たんです。みなさんにお願いが有って‥‥」
「あ、とにかくナナちゃん、入って入って。一緒にお茶しましょ」
シャーリーがナナリーに声を掛け、みんなして場所を確保する。
ナナリーが輪に入り、カップを渡してから、ミレイが尋ねる。
「‥‥えっと、ナナちゃん、それで?早速だけど、お願いって聞いて良い?」
「はい、あの。‥‥スザクさんの事なんです」
ナナリーの口から出てきた名前に、ナナリーの目が見えないのを良い事にそれぞれ顰めた顔を見合わせた。
「‥‥スザク君がどうかしたの?」
そろっと尋ねたのはシャーリーだ。
「あの。あまり、お兄様の傍に近づけないで欲しいんです」
「「‥‥へ?」」
カレンとシャーリーの声が重なる。
ニーナは意味が分からず首を傾げ、ミレイは一人納得顔になって頷いた。
「それは良いんだけど、ルルちゃんに何か有ったの?」
「会長、良いんですか?そんな安請け合いしちゃって」
「いーからいーから。それで?」
「実は、お兄様に恋人が出来たんです。それをスザクさんが知ったら、祝福してくださるかどうか心配で‥‥」
「「「「‥‥恋人ッ!!?」」」」
「はい。ここ数日とても幸せそうなんです、お兄様。わたしはずっとあんなお兄様だと嬉しいのですけど」
「あぁ、そう言われてみればここ数日ルル機嫌良かったわよね」
「てっきり枢木君が来ていないからだと思ってたけど」
「今日もミレイちゃんの用事をそんなに嫌そうにせずに引き受けてたし」
「てかあっさり引き受けてリヴァル引きずって出てッたわよね」
「恐らく、買い出しが終わった後、荷物をリヴァルさんに預けてデートするんですわ、お兄様」
「「‥‥はぁ~あ!!?」」
「ちょッ‥‥。ナナちゃん?ルルーシュの相手って学外の人なの?」
「はい。学園の方でしたら、お付き合いを始める前に分かると思うんです。『今度紹介してくださいね』ってお願いしたら、お兄様テレてました」
ナナリーの言葉に4人が4人とも「まだ教えてもいない身内にいきなりそんな事言われたら驚くだろうな‥‥」と少しルルーシュに同情する。
「良いわ。じゃあ、これからスザクとルルの間を徹底的に邪魔する方向で行きましょう」
「賛成~!二人っきりとかにさせないようにすれば良いんですよね?会長」
「そうそう、シャーリー。そんな感じね」「もし迫るような素振り見せたら引き剥がせば良いのかしら?」
「なんなら殴っちゃっても良いわよ、カレン。生徒会長のわたしが認めちゃうから」
「分かりました。ではその方向で」
「‥‥わたし、薬作っても良い?」
「そーねぇ。彼、あんまり効かなさそうだからちょっと強めに作ってくれる?ニーナ」
「わかった、ミレイちゃん。強めで作るね」
「後は~。女生徒達にだけ、伝達しましょうかぁ?『騎士様は主以外に惚れるべきではないわよねぇ~』って?」
「あ、それ良いですね」
「うん、それ賛成。じゃないとユーフェミア様もお可哀想だし」
ミレイの提案に賛成して盛り上がるシャーリーとニーナ。
「ありがとうございます、みなさん。お願いしに来て良かったですわ。テレたお兄様がとっても可愛くて、もっと愛でていたかったんですよね、助かります♪」
ナナリーはそんな様子に嬉しそうに礼を述べていた。


「もしもし、藤堂さんですか?ナナリーです」
『‥‥何か有ったのか?』
「いえ。学園でのスザクさん対策は完璧ですとお伝えしたくて‥‥」
『そうか。ありがとう。助かった。流石にそちらには手が出せないからな』
「そんな‥‥。わたしの方こそ、騎士団での事は何も出来ていません」
『気にするな。ここでなら、おれが守るから』
「藤堂さん‥‥。お兄様を、よろしくお願いします」
『わかった』


「千葉、少し良いだろうか?」
珍しく千葉が一人でいると、敬愛する藤堂が話しかけてきて、千葉は慌てて立ち上がる。
「何でしょうか、中佐」
千葉に座るように指示し、藤堂は向かいに座るとすぐに話を切り出した。
「千葉は、ゼロをどう思っている?」
「‥‥は?あの、中佐。それを尋ねられるのは、中佐がゼロと付き合い始めた事と関係がありますか?」
唐突だったと自覚のある藤堂の問いに、しかし千葉は面喰らいながらもそう切り替えした。
「なッ‥‥」
藤堂は二の句が継げないままに、千葉を見返した。
「やはり、ですか。最近の中佐の様子を見ていてそうではないかと。‥‥それで、中佐は一体何を懸念しておいでなのですか?」
「‥‥‥‥ゼロを目の敵にしている、白兜に乗るスザク君だ」
「中佐。幾らかつては弟子だったからとはいえ、今現在敵であるのですから、その呼び方は改めた方が良いかと思いますが」
「‥‥そうだな」
「枢木がゼロに仇なす事を案じておいででしたら、わたしが何とかしますが?」
納得顔になって頷く藤堂に、千葉はさらっとそんな事を言い切った。
「‥‥何とかとは?こう言ってはなんだが、枢木は強いぞ?」
「判っておりますが、ゼロを討たれては中佐にダメージが出る以上、わたしはゼロも守りますよ」
千葉はそう言ってくすりと笑った。
「紅月はゼロを案じているし、井上やラクシャータも協力してくれるでしょう」
「千葉、一つ尋ねるが、何故女性ばかりの名が挙がる?」
首を捻る藤堂は、千葉が名を挙げるのなら同じ四聖剣だと思っていたから不思議だったのだ。
千葉はそれについては沈黙を通した。
まさか藤堂に言えるハズがなかったのだが、千葉が藤堂とゼロが付き合いだしたと知ったのは、本当は女性陣だけでの会話からだったのだ。
ラクシャータと井上がそう言い合っているのを、千葉とカレンが聞く羽目になり、千葉は一瞬、カレンはかなり茫然とした後開き直ったのだ。
曰く、藤堂とゼロを祝福しよう、と。
カレンは「似たような話があちこちにあるわね‥‥」と思うものの、繋げることはなかった。
こうして当人達が知らぬ間に、女性陣達を味方につけていたのだ。
藤堂はそうとは知らずに、最良の相談相手を選んだ事になる、と千葉は内心で笑う。
「とにかく、白兜からゼロを守れば良い、と言う事ですね。‥‥C.C.にも手を借りて、万全を期します、中佐」
藤堂は結局どういう事かわからなかったが、「よろしく頼む」と千葉に頭を下げた。

千葉から話を聞いた女性陣は「そう言う事なら」とはりきり完璧に計画を練り、実行に移したのだった。




枢木スザクはここ数日、かなりストレスを溜めまくっていた。
学園に行っても、何故かルルーシュの傍に行けないから、癒されたいと思いながらもそれが果たされず。
ランスロットに乗って出動してもゼロを倒そうにもゼロのナイトメアに近づく事すら出来ずに終わってしまう。
オープンチャンネルを開いてストレス発散させる為にゼロを思いっきり非難しようとしても何故か妨害電波がでまくり自分の耳が痛くなるだけに終わる。
かと言って、他のナイトメアのオープンチャンネルは無事らしく、訳がわからないのだ。
癒されず、ストレスは溜まる一方のスザクはランスロットとの適合率も右肩下がりにどんどんと低下の一途を辿っているのが現状だ。
まさかそれが全て女性陣がルルーシュをゼロを守る為に故意にやっているとは思わないスザクは、最後の手段に出る事にした。

「ルルーシュがダメならナナリーに癒して貰おう‥‥」そう思ってスザクはクラブハウスを訪れたのだ。
最悪の相手を選んでしまったスザクは、満面の笑顔のナナリーからルルーシュに恋人が出来た事を知らされたのだった。

枢木スザク───再起不能。



───────────
作成 2008.05.23 
アップ 2008.06.06 
 

──「合流と変化」編──

カレンがいつアジトに戻ったのか、実は誰も気づかなかった。
それも当然で、カレンはゼロに抜け道を教えられ、そこを通ったからである。
通りながら「こんな道、いつの間に‥‥」と思わないでもないカレンだったが、途中で着替えを置いた小部屋を見つけたので、「あぁなるほど」と納得した。
だから、出入り口からではなく格納庫へとやってきたカレンとその同行者に、格納庫にいた団員──ほとんどが幹部だったが──は驚いた。
カレンに気づいたのはほぼ同時だったロイドとジェレミアは、しかしその反応は真逆だった。
ジェレミアは喰いつくような勢いでカレンに迫り、逆にロイドはじりじりと後退さっていて、それに気づいた者が「あれ?」と思う。
もう一人、ディートハルトもまた、固まった笑顔を貼り付けたままたらりと汗をかいて逃げ腰だった。
「か、カレン。いつ戻ったんだ?ゼロは一緒じゃないのか?後、その子達は?」
扇が代表してカレンに問いかけるが、カレンの視線はディートハルトに固定されていた。
「紅蓮弐式のパイロットッ!主は何処に!?」
しかし、ジェレミアにそう詰め寄られれば言い返さないわけにもいかず、カレンは怒鳴り返す。
「オレンジ卿ッ!いい加減その呼び方やめてよね。ちょっと紅蓮に負けたからって!」
「へぇ~。オレンジ卿まで入団してたのかぁ~。生オレンジ!初めて見たぜ~」
カレンの後ろに続いていたリヴァルがジェレミアを繁々と見ながら喜んでいる。
「そうねぇ~。これがゼロ命名オレンジ君かぁ~。ていうかぁ『お久しぶり~』って挨拶した方が良いのかしら?」
リヴァルに同意してから、カレンの前に出たミレイがジェレミアに声をかけた。
「‥‥お前ッ!?ミレイ・アッシュフォードかッ!?」
ジェレミアの表情が訝しげなものから驚愕に変わり、数歩下がりながら指差し叫ぶ。
「まぁねー。こっちも落ちぶれちゃってるけどねー。久しぶりなのに、その言い方はないんじゃないのぉ~?‥‥てかそこ!逃げてるんじゃないわよ!プリン伯爵ッ!」
けらけらと笑って肯定したミレイは、踵を返そうとしていたロイドを発見して一転きつい声を投げつけた。
観念したロイドは再び振り返って、「や、やぁ、ミレイ君。久しぶりだねー。元気そうでなによりだよ、うん」と力なく笑って応じる。
「あらぁ、ホント久しぶりねぇ。アッシュフォードのお譲ちゃん。ガニメデは元気にしてた~?」
「お久しぶりです、ラクシャータさん。でも、それおかしくないですか?幾ら落ちぶれたアッシュフォードの価値がガニメデだけだって言っても傷つきますよ?」
「気にしないの~」
「あの、会長?‥‥全員顔見知りなんですか?」
続く挨拶に呆然とする日本人幹部達を見て気の毒に思いながら、カレンもまた唖然とした思いを抱えて尋ねる。
「そうねぇ。後ダールトン将軍も知ってるけどー?ほら、腐っても元大貴族じゃない?アッシュフォードって。そっちのカレンから目の敵にされてた人は知らないわね」
「あ、そうだった。ディートハルトちょっと来て説明してもらうわよッ!」
カレンの言葉に、ディートハルトもまた観念したように近づいてきた。
「カレン?説明って何のだ?」
「団員採用の最終判断はゼロがしているはずだってのに、ゼロが知らない団員が存在してたって事についてです」
カレンの説明に、非難の眼差しがディートハルトに集中し、扇は再びカレンに視線を戻してから尋ねた。
「‥‥それもブリタニア人、なのか?」
「違いますよ。この女性です」
一人無言だった同行者を示してカレンは言う。
副指令である扇も初めて見る女性に、再びディートハルトへと視線を向けた。
「どういう事か説明してもらえるか?ディートハルト」
「はぁ。その。というか、何故発覚したのでしょうか?」
「聞いてなかったの?この人が名乗ったでしょう?『ミレイ・アッシュフォード』だって。そう言えばわかるんじゃないの?」
カレンの言葉に、ディートハルトの目が見開かれる。
「‥‥まさかッ。あの、今回の面接場所がアッシュフォード学園だったなどとは‥‥」
「言うわよ。何の為にわたしが同行したと思ってるの?ゼロを生徒会室まで案内する為よ」
「‥‥では」
「今回の入団希望者で採用になったミレイ・アッシュフォードとリヴァル・カルデモンドね。愛称は多分『会長』と『悪友』になると思うわよ」
「へ?マジッすか?決定なのそれ」
「多分ね。なんたって、プリン伯爵に将軍にオレンジ卿と来てるもの。‥‥じゃなくて説明しなさいよね、ディートハルト」
「‥‥あの、ゼロはどうなさったのでしょうか?」
「‥‥戻りがけにC.C.に遭遇したから先に来ただけよ。‥‥『落ち込んでるみたいで気になる』って」
「あの。まさかとは思うのですが、ゼロもアッシュフォード学園の関係者なのですか?」
ディートハルトの問いに、ミレイとリヴァルは顔を見合わせ、既に知っているメンツは無言を通し、カレンは藤堂を見てから頷いた。
「そうよ。アッシュフォード学園でわたしの同級生よ」
カレンが認めた事に、ゼロが学生だったという事に、驚いた幹部達が驚愕の声を上げる。
「会長とリヴァルともう一人はゼロの素性に気付いて共に戦いたいって入団を希望したの」
友人想いな動機に驚愕の声が収まって行く。
「カレン。もう一人、というのは、彼女の事か?」
「え?咲世子さんは既に団員だっていうから数には含めてないわよ。こんな煩いところに連れて来る気なかったからゼロの部屋にいるわ」
扇の問いに対する、カレンの答えは何気ない一言、だったはずだ。
にも拘らず、反応は面白い程に分かれた。
ダールトンは表情を引き攣らせ、ロイドとジェレミアは青褪め、ラクシャータは嬉しそうな笑みを浮かべる。
藤堂は「あれはこう言う事だったのか」と納得し、四聖剣はそんな藤堂に問いた気な視線を向け、残りの幹部は驚いていた。
リヴァルは「騎士団って思ったより面白いのな」と率直な感想を述べ、「ゼロも色々大変なのねぇ」とミレイは溜息を零した。

C.C.と連れ立って戻ってきたゼロは、ディートハルトに対して厭味に近い叱責を浴びせた後、「今回のみ不問にしてやろう」と言って咲世子の件は終わらせた。
「会長。例の件は技術班と相談の上、万全を期してください。お前もしっかり聞いていろよ?我が悪友どの?」
「判ったわ、ラクシャータさんと相談すれば良いわよね」「う~ん。唯の『悪友』よりは良いかなー?」
ゼロの指示に二人はそれぞれ頷いた。
「咲世子さん。お願いできますか?」
「お任せ下さいませ、ゼロ様。さぁ、参りましょう、C.C.さん」
咲世子とC.C.はゼロの部屋の方へと平然と去って行き、幹部達は「さん付け!??」「敬語!?」と驚いた。

───────────
作成 2008.05.25 
アップ 2008.06.05 

★レイシア様へのリクエスト作品★
(枢.機.卿とル.ルーシュ/依存兄弟/二人に優しい話)

「アラン様ぁ、部屋に行ってからにしませんかぁ?部屋でなら不粋な仮面も取ってくれますよぉ」
「‥‥‥‥そうだが、そのつもりだったのに呼び止められたからな。わたしがどこで何をしようが苦情は受け付けない」
「‥‥‥‥ていうか、仮面してる意味がないって思うの、わたしだけ?同じ顔じゃないの」
カレンがなんだか悩むのも馬鹿らしくなって疲れた声を出す。
「何を言ってるんだ?こんな騒がしい男どもにゼロの顔を曝すなど二度と言うなよ。そんな事、兄であるわたしが認めないからな」
ゼロの兄であると自ら認めた「アラン様」は、そう難色を示し更に強くゼロを抱きしめる。
「‥‥‥‥扇、良いからみんなを作業に戻せ。わたしはこの後、すり合わせもあるから何もしないぞ」
「わ、‥‥わかった」
扇は引き攣りながらも頷き、幹部や団員に解散と再開の指示を出して行った。
井上に引きずられる玉城と千葉に引っ張られる朝比奈はいつもの事なので、他は苦笑しながら散っていった。
(残ろうとしたディートハルトはカレンに沈められて扇の指揮で、団員に運ばれて行った。)


残ったのはゼロの部屋に向かう事になっていたゼロと「アラン様」、藤堂、カレン、ラクシャータの5人だけとなる。
「‥‥どうなさったのです?兄上。いつまでもこのままでは妹に会うのも遅くなってしまいますよ?」
敬語を使う優しい声音のゼロに、驚いたのはカレンだけで、それも束の間の内に、納得の色を帯びて、黙って見守る。
「判ってる。唯、苦労をかけていたかと思うと、兄だというのに不甲斐無くて‥‥」
「だから連絡を入れなかったと?まったく。兄上が一つも苦労なさっていないなんて誰も思っていません」
「だけど‥‥」
「そうですね。今度わたし達の前から姿を消すような事が有れば、その時は赦さないかもしれませんね」
「絶対離れないから。もう、二度と離れたりしないから。これからはずっと‥‥。連絡だって欠かさないと約束する。出来る事は何でもしよう」
「そうですか。‥‥では8年離れていた間の積もり積もった話も交えて今後の事を検討致しましょう、アラン兄上」
「わかった。義兄上が来るまで最低4日有るから、それまでに色々と手段を講じておこうな」
「‥‥って、待って。ゼロの兄弟ってそのアランてお兄さんと妹だけなんでしょう?どうして更に『兄』が出て来るわけ?」
「はいはい、お嬢ちゃんは少し黙ってなさいねぇ。その辺りの事は部屋で話しましょぉ。やっと移動する気になってるんだからさぁ」
言葉じりを捉えて驚くカレンをラクシャータが宥めながらゼロの部屋に向かう。
その後を、ゼロから離れたアランとゼロが並んで続き、更に藤堂が動いた。


ゼロの自室についた後、ゼロはすぐに仮面を外し、自分がルルーシュ・ランペルージである事を明かす。
ルルーシュとアランが隣り合って立ったのを見て、先程のアランの言葉にカレンは納得した。
アランだけを見るとルルーシュにしか見えなかったが、並んで立っていると違いがはっきりしたからだ。
「‥‥えっと、妹がナナリーちゃんなのは間違いないのよね?」
「あぁ。唯、おれとナナリーは素性を偽って学園に住んでいた。‥‥アッシュフォードに匿って貰っていたと言うべきだな」
自嘲気味に笑うルルーシュに、カレンは眉を寄せる。
「素性?‥‥って、藤堂さんもラクシャータも知っているんですか?」
「勿論よぉ。なんたってわたしはアラン様の事も知ってるしぃ、お母様とも面識あったくらいですものぉ」
「おれはルルーシュ君とナナリー君の事しか知らなかったが、素性は知っていた。彼等が日本に来た頃の知り合いだからな」
「つまり、わたしがアラン・ヴィ・ブリタニアだと言えば、はっきりするだろう?ちなみに第九皇子で第十四位皇位継承者だったよ」
アランの言葉には真っ先にルルーシュが反応した。
「ん?だった、とは?」
「別の地位に就いたから、皇位継承からは外されたんだ。清々しているけどね」
「‥‥‥‥皇族!?」
遅ればせながらカレンが驚いて目を見開いた。
「そうだ。おれはルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。第十一皇子で、かつては第十七皇位継承者だった。剥奪されて久しいがな」
ルルーシュもまた清々したと言わんばかりに皇族を歯牙にもかけない。
「ちなみにナナリー・ヴィ・ブリタニアは第七皇女だったよ。皇位継承は‥‥辛うじて二桁の辺りだったけれどね」
「あの、アラン様ぁ?別の地位に就いたってぇ?別に皇位継承から外されるなんて事はなかったと思うんですけどぉ?」
説明が一区切りついたと判断したラクシャータが疑問点を尋ねる。
「一つだけあるだろう?俗世に属する皇帝とは別系統になる地位がさ。今度、わたしは枢機卿になってね?」
「えぇ?‥‥良く出て来れましたねぇ?確かに枢機卿なんてやってらしたら今更皇帝になる必要なんてないでしょうけどぉ」
「監視の事を言ってるのかな?当然撒いたよ。弟と妹に会うのを邪魔されたくなかったし?」
ルルーシュはアランの言葉に溜息を吐いてから、話を本題に乗せた。
「そんな事よりも。枢機卿の権限で出来る範囲の援護はして貰いますよ」
「勿論。手に入れられるだけの情報はここに。後は色々と手を回しておいたから順次物資も提供されてくるよ」
「助かります、兄上。妨害が出来るのは皇帝と宰相くらいと考えて宜しいですね?」
「そうだね。ただ、シュナイゼル義兄上はお願いすれば妨害はしないと思うけど?」
「お断りします。義兄上直属の部隊にしてやられていますし。おれがあちらに泊まる事になれば、兄上の機嫌が悪くなるでしょう?」
それまで黙っていた藤堂がここで口を挟む。
「ちょっと良いだろうか?君達と第二皇子の関係と言うのは?」
「シュナイゼル義兄上はわたし達ヴィ家の兄弟にはこの上なく優しいのだけどね。ルルーシュに対しては特に猫可愛がりをして引きはがすのに一苦労するんだ」
「他人事だと思っていませんか??兄上。騎士団にも場所を作ります。なんでしたら、一緒にゼロの仮面を被りますか?」
「「「いや、それだけはやめて」くれない(か/ぃ)?」」
カレンと藤堂とラクシャータが同時に拒絶を示した。
「いらないよ。仮面は。わたしはずっと君の傍にいるから。団員達が従わないって言うのならちゃんと説得もしてあげる」
「アラン兄上‥‥」
アランの言葉に感動するルルーシュを他所に、「説得」と言ったアランに冷たい物を感じた三人は無言を通した。
「兄上が傍にいてくださるのなら、出来ない事はない気がします」
「わたしもルルーシュの傍にいれば怖い事なんて全然ないよ」
「「一緒に、ブリタニアをぶっ壊(しましょう/そうね)」」
「麗しの兄弟愛」、そう言ったのはラクシャータだったな、と藤堂とカレンはチラとラクシャータを見る。
ラクシャータは最早遠い目をしながら笑うしかないという表情で笑っていた。
藤堂とカレンは「なるほど、あれが正しい処し方か‥‥」と納得した。

これ以降、ゼロの傍には美貌のそれはそれは恐ろしいパートナーが傍にいる事になるが、何故か映像は流れる事はなかった。
更にこの時を境に、騎士団の補給物資は質も量も格段に跳ね上がり、ブリタニアとの戦いを有利に進めて行く事になった。



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作成 2008.05.18 
アップ 2008.06.04 
 

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