★咲様へのリクエスト作品★
(藤堂ルル←メカオレンジ君)
『おはようございました』
目覚めたジェレミアは、バトレーが率いる研究者や軍人を振り払う。
ナイトメアにすら見えないのに何故か知っているマシンに乗り込みその場を飛び出して行った。
「祖界に攻め込むぞ」とゼロが言った時、誰もが無謀だと声をあげた。
いや、藤堂が黙っていた為、四聖剣も声をあげ損ねたが、内心は他と似たりよったりであった。
祖界の外苑部がそこに展開していたコーネリアの軍を巻き込んで崩壊するさまを、騎士団の団員もまた唖然として見ていた。
「‥‥ではこれより、作戦通り進撃する。右翼は朝比奈、左翼は仙波、中央本陣は藤堂と卜部に千葉。カレンは側面に。指揮は藤堂に任せる」
藤堂は『了解した』、四聖剣は『承知ッ!』、カレンは『任せてください、ゼロ!』とそれぞれ返事をして自分に割り当てられた部隊を率いて突入した。
「わたしはガウェインで先行して、コーネリアを抑える」
『ゼロ、無茶はするなよ?』
「わかっている。藤堂こそ、気をつけろ」
ゼロは藤堂と短い会話を交わした後、ガウェインで戦場の上空を駆ける。
しかし、ガウェインの前に立ちはだかる形で見慣れないマシンが割り込んできてC.C.はガウェインを停止させた。
『貴方様はゼロ~~!』
「その声は‥‥オレンジ君か。どうした?こんなところまでやってきて。それに、そのマシンはなんだ?とてもナイトメアには見えないぞ」
『ゼロッ!相手は未知だ。一旦下がれ』
「そうだな。本陣の手前を突っ切れ」
「無茶を言ってくれる」
割り込んで来た藤堂の言葉に、ゼロはあっさり同意し、見慣れぬオレンジの機体を置いてガウェインを急降下させた。
急に目の前から消え失せたゼロの乗る機体、ガウェインに、ジェレミアは一瞬呆然と何もなくなった空間を見詰めた。
『のおおおおおおおおおお』
オレンジの機体から叫び声が上がったかと思うと、その機体はずんぐりな外見からは想像出来ない程俊敏な動きでもって急降下を始めた。
「ガウェインを追ってる!!」と誰の目にも見えたのだが、実際には違っていた。
急降下の後、地面すれすれの戦場の鼻先を掠めたガウェインが急上昇に入ったのもお構い無しに、急降下しながら前方に向かって攻撃を仕掛けたのだ。
攻撃は唯、月下隊長機だけを狙っているようで、『卜部、千葉。隊を任せるッ』と言い置いた藤堂は月下を突出させた。
当然のように後を追う攻撃に、藤堂は内心で焦る。
『『攻撃相手が違う(だろ)!なんだって中佐が狙われるんだ!?』』
卜部と千葉は隊を任されたために、藤堂を追って突出するわけには行かず、訳がわからないままに叫んだ。
藤堂の月下隊長機は単独でブリタニア陣営を駆け巡り、その攻撃を避けながら、追ってくる攻撃を誤爆させていく。
「おい。何故藤堂が狙われているんだ?『オレンジ』と言ったのはお前だろう?」
「‥‥あー‥‥。考えられる事は、一つ、だけかな。‥‥あれは止めた方が良いと思うか?」
「そうだろう?流石の藤堂でもそういつまでも持たないんじゃないか?」
「だが、ブリタニアのナイトメアが確実に減っていっている。もう少し様子を見るわけには行かないかな?」
『って、ゼロッ!理由判ってて止められるんだったらさっさと止めてくださいッ!』
『その通り。このままでは藤堂中佐の身がッ!』
『『ゼロッ!!』』
四聖剣の抗議に、ゼロは溜息を吐くと、オレンジのマシンに呼びかけた。
「ジェレミア・ゴットバルト。‥‥それ以上、月下への攻撃を続けるようならば、わたしにも考えがある。今すぐ攻撃を中止しろ」
そう、それはただの呼びかけにしか過ぎず、「ゼロに恨みがあるオレンジが言う事聞いて攻撃やめるなんて思えないッ」と敵味方問わず思った。
だが、実際にはオレンジのマシンはピタリと攻撃をやめ、いや、動き自体すら止めたのだ。
藤堂は丁度ブリタニア陣営から離れたところだったので、これ幸いにと本陣の卜部と千葉の元へと戻る。
『何故!確保が絶対、空席が必須、排除がナイデシタ!』
戦場に響くオレンジの言葉、だがその意味は誰もが図りかねて首を傾げる。
「ならば‥‥。攻撃相手が違うだろ!そう思うのならば、まずはブリタニア軍を排除しろ。それ以前に月下に手を出すというのならば、わたしは」
しかしゼロは驚く事に理解したのか、嗾けるようにオレンジに対して一喝して言い募る。
『‥‥‥違いマシタカ!?デスガ、邪魔が最大デシタ。理解は不幸。ワタシガ最大』
「何故そんな無茶苦茶な文法になっているか知らないが、わたしと敵対したいというのならば遠慮はいらんぞ?オレンジ君。相手になってやるから向かって来い」
『ってッ、危険ですゼロッ!今の動き見た限りじゃかなり性能良いですよ!?もしかしたら白兜よりも上かも知れないのにッ』
カレンの声が飛び込んでくる。
それ以前に、「敵対したいも何も敵だろう?」と誰しもが思わないでもない。
「心配ない、カレン。‥‥ジェレミア・ゴットバルト。わたしに従いたいと言うのならばわたしのモノに手を出すな。そうすれば傘下に入る事を認めるぞ?」
『はぁ~あ?何、冗談言ってやがんだッ、ゼロ!オレンジはゼロの事憎んでるんだろッ!何だって傘下がどうとかって話になるんだよ、おい!』
「バカがッ」
ゼロのボソリとした呟きを認識したと同時に、オレンジの叫び声と、攻撃が同時におこなわれる。
『のおおおお。死ンデイタダケマスカ!?』
『どぅおぉおおわッ!!』
攻撃を受けて間一髪で避けた玉城はしかしナイトメアの腕を一本持って行かれる。
「ジェレミア・ゴットバルトを『オレンジ』と呼べばそうなる。今後は気をつける事だな。こればかりはわたしにもとめようがない」
さらっと言い切るゼロに、C.C.は呆れた溜息を吐いた。
「‥‥ゼロ。攻撃相手が違うだろ?こんなときくらい団員の玉城を庇ってやればどうだ?」
「そうか?自業自得の責任まで負えと?‥‥ジェレミア。わたしの気が変わらない内に、態度を決めた方が良いぞ」
ゼロは不思議そうにC.C.に応じておいて、オレンジに呼びかけた。
『ゼロ。まだそいつを味方に引き入れようとするのか?今騎士団を攻撃しただろう?』
「あれは玉城の失言だからな。‥‥ジェレミア。『オレンジ』と言った以外の団員に攻撃を仕掛けたならば、そこまでと思っていろよ」
『ゼロ。何故君はその単語を言っているのに攻撃されないんだ?』
「わたしだからだよ、藤堂。わたし以外が『オレンジ』と言えば、あーなるんだ。藤堂、特にお前は気をつけていろよ」
『へ?どうして藤堂さんが特にって言われないといけないんですか?』
朝比奈が目の前のナイトメアを破壊しながらも驚いた声を上げる。
「‥‥‥‥説明が面倒だ。戦いが終わって落ち着いたらその内話してやる。今はそう言うものだと覚えておけ」
「そうだな。お前達、今が戦闘中であり作戦行動中だという事を忘れていないか?ゼロ、お前もだが」
「そうなんだがな。ジェレミアをこのまま放置しておくわけにもいかないだろう?」
「ならばさっさとどうにかしろ」
「わかった。ジェレミア。即答を命じる。わたしに従い騎士団につくか、わたしと敵対するか。どちらかだ」
『貴方様はゼロ~~~!!認識を確認!対象が把握!標的が殲滅!』
オレンジが本当に即答すると、くるりとそのマシンが反転して即座にブリタニア軍に向かって突進していった。
そして誰もが唖然とする中で、ブリタニア軍に対する攻撃を始めたのだ。
『『『『攻撃相手が違うだろーーーー!!!!』』』』
ブリタニア軍将兵から、一斉に叫び声が上がり、逃げ惑う。
「あー‥‥、藤堂。とりあえず、とばっちりを喰わないように、精鋭以外は下げろ。‥‥意図して騎士団を狙う事はないと思うが‥‥」
『‥‥わかった。紅月は零番隊とゼロの傍に。四聖剣は壱番隊、弐番隊とおれに続け。残りは扇の指示に従って後方へ』
ゼロの要請に従った藤堂の指示に、それぞれが承諾の返事をして行動に移した。
後編に続く。
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作成 2008.04.30
アップ 2008.05.10
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