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★武嗣彩人様へのリクエスト作品★
(藤堂とルルが付き合うに至るまで)
【ルルーシュ】
藤堂が、おれを好き?有り得ない。
いや、「ゼロ」をと言ったが、それはゼロがおれだと知らないからだ。
「誰だろうと」と言ったところで、それが「おれ」だと知ればそんな事も言っていられなくなるだろう。
「関係ない」と言っても、おれが何をして来たかを、何をしたかを知れば、離れて行くだろう。
なのに、これ以上、おれを「ゼロを好きだ」なんて言ってくれるな、藤堂。
罪悪感だと思った、だが、シャーリーに対して感じたものとは違う。
日を追うにつれて、藤堂に黙ったままでいる事が辛くなって行く、これはなんだ?
いっそのこと、ゼロがやった事を、洗い浚い言ってしまえば楽になるだろうか?とさえ思う。
藤堂や四聖剣のかつての同志だった、解放戦線に対して、ゼロが、おれがやった事。
河口湖のホテルジャック事件で草壁達を自殺に追いやり、止めもしなかったのだと。
ナリタでは解放戦線のアジトがあると、解放戦線にさえ被害が及ぶ事を知りながら、土砂崩れを起こしたのだと。
逃げる手引きを依頼してきた片瀬達を自爆に見せかけて船ごと爆破させたのだと。
告げるべきではないと理解しているのに、黙っているのが、何故、こんなにも苦しいのだろうか。
**********
立ちあがって背を向けるゼロに、藤堂は今を逃せば機会は最早訪れないのだと直感した。
だから藤堂も後を追うように立ち上がると、背を見せるゼロに近づいて後ろから抱き締めたのだ。
「なッ‥‥。離せッ!」
心底驚いたのか、ゼロは慌てて身を捩る。
「これ以上は何もしない。だが、君が消えてしまいそうに思えたんだ」
そう言う藤堂は、確かにゼロを抱きすくめる以上の事はしないので、ゼロは動きを止めた。
今ならばその手を伸ばして仮面を外す事すら容易だというのに、藤堂はそれをしようとしないのだ。
「‥‥何の真似だ、これは」
「おれは君におれの背負う荷の、その重さを軽くして貰った。今度はおれが君の荷の重さを軽くしてやりたいと思う。‥‥教えてくれないか?」
藤堂の言葉に、ビクンとゼロの身が跳ねる。
藤堂はそれについては何も言わず、唯ゼロが答えるのをじっと待っていた。
「‥‥‥‥騎士団は、確かに『正義の味方』だが、わたしはその手段を選ぶつもりはない、という事だ」
ゼロは、軽く息を吐いた後、そう答えた。
「そうだな。それはある程度正しいと、おれも思う。手段を選んで結果が得られなければ、意味はないだろう」
藤堂はゼロの意見に同意して頷き、「君は被害を最小限にしようと努力している。その上での選んだ手段なのだとしたらそれは正しいと思うぞ」と付け足した。
「‥‥バカなッ!何をしたかも聞かずに、それでは盲信にも程があるッ!」
「盲信ではない、ゼロ。‥‥『奇跡』ではないおれ自身を望んだのは、『奇跡』が起こらないと思っているからだろう?」
「‥‥そうだ。『奇跡』なんてそう簡単に起きてたまるか」
「『奇跡』を期待しない君は、最後まで目標に向かって、己の力の全力を用い、努力する事をやめないだろう。その姿勢も偽りか?」
「偽りであるものか。どんな手を使ってでも、わたしには創りたい世界がある!」
「ならばッ。おれはその結果を受け入れる。受け入れた上で、言うのだ。君が好きだと」
きっぱりと言い切った藤堂は、少しだけゼロを抱きしめる腕に力を込めた。
藤堂の言葉に、ゼロの、ルルーシュの中で何かが切れたと、ルルーシュは感じた。
「‥‥‥‥受け入れる‥‥だと?ナリタでの戦いの時、土砂崩れを起こしたのが、わたしだと言っても?解放戦線も麓の住民も巻き込んでッ」
「だが、その介入が有ったお陰で、あの時解放戦線は壊滅せずに済んだ。おれ達も間に合った」
藤堂は頷いて肯定し、「麓の住民には気の毒だったが、ブリタニア側が戦闘前に避難を徹底していれば回避出来た事だな」と続ける。
「片瀬を殺したのがわたしだと言ってもか?」
ゼロの告白に、藤堂は「泣きそうな声だ‥‥」と思った。
仇と思う前に、こんな声を出させるまで悩ませてしまった事を、藤堂はすまないと思ってしまったのだ。
「‥‥‥‥。そうか、それでおれを避け、怯えていたのか?ゼロ。おれが片瀬少将に殉じようとしていた事を知っていたから、許さないだろうと?」
「‥‥そうだ。わたしはお前が命を掛けていた相手を殺した。いや、何度あの場面を迎えようと、何度でも殺すだろう」
「すまない、ゼロ。あの時のおれには、君に既に見えていた事が見えていなかったのだ。だから君の手を煩わせてしまった‥‥」
藤堂の詫びの言葉とその内容に、ゼロは驚いて仮面の下で目を見開いた。
「どういう意味だそれは。見えていれば藤堂が片瀬を殺めていた、と?」
「違う。見えていれば、勇退を勧める事が出来ただろう。少将が咄嗟の時、最終的な判断が、既に出来なくなっていた事を、認めたくなかったのだ」
というよりは、解放戦線自体が数だけを頼みとして実際には弱体化していて、片瀬少将が問題視される事がなかったから気付かなかったと言うべきか。
黒の騎士団が現れて、初めて顕在化し、浮き彫りにされてきた問題だ。
初めに草壁の一派が暴走し、ナリタの件で一気に瓦解し、敗走する段階では既に解放戦線としての体裁も保ててはいなかったのだ。
その結果をゼロ一人の肩に背負わせてしまった事を、藤堂はすまなく思った。
「‥‥そう、か。‥‥だが、わたしに仮面を取る意思はないぞ?」
「構わない。おれは君が好きだ。‥‥愛しく思う、ゼロ」
「‥‥ぃ、言っておくが、わたしは愛してなどいないぞ、藤堂。‥‥真実を知ったお前が、わたしを憎む事になると怯えていたのは確かだが‥‥」
ゼロの言葉に、「憎まれたくないと思う相手」である事に気づいた藤堂は嬉しく思った。
「おれは君が好きで、嫌いになったりはしない。‥‥時々、こうして抱きしめても良いだろうか?ゼロ」
「‥‥藤堂、お前。本気でわたしが良いと言っているのか?仇なのだろう?得体まで知れないのだぞ?」
呆れ混じりのゼロの声に、藤堂は苦笑した。
「勿論だ。片瀬少将の事はもう気にするな。ゼロの目標の手前に、彼の目指すものも有った。だからもう良い」
ゼロは、ルルーシュは藤堂の言葉に、心の中に淀んでいた何かが拭われるのを感じた。
「‥‥良いだろう。時々だな?‥‥但し、座らないか?立ったままのこの姿勢は疲れるのだが。それとわたしは作業をしているからな」
「あぁ、ありがとう。ゼロ」
ゼロの了承に、藤堂は笑みを浮かべ、やっとゼロを離す。
「‥‥ところで、託けた書類は読んだのだろうな?藤堂」
「あ‥‥。すまない、忘れていた」
振り返ったゼロはテーブルに投げ出されたままの書類を見つけ、藤堂に確認すると、バツの悪そうな声音と表情で藤堂は詫びた。
「仕方がないな。ここで読んで行け、藤堂。質問が有るならば受ける。わたしもまだする事が残っているしな」
そう言ったゼロは、藤堂の横をすり抜けてソファに座り、少ししてからぽんぽんと隣を叩いて藤堂を招いた。
藤堂は「これからこんな穏やかな時間をたくさん作って行こう」と決めながら、ゼロに近づいて行った。
二人が正式なお付き合いを始めたのは、それから暫く後の事であった。
了
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作成 2008.05.05
アップ 2008.05.08
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武嗣彩人様へ。
お気に召していただけましたでしょうか?
リクエスト内容に合致しているかはいまいち不明ですが、
どうぞ、お受け取りください。
思った以上にシリアスになってしまいました。
しかも、お付き合いにまで行ってない上にルルじゃなくてゼロ!?
更に言うならば、バレが先に来るはずだったのが大幅にズレまくりました。
執筆者が悩み倒している間に、藤堂がキレて暴走しまくってます。
結局バレはなく、仮面男に愛を囁く藤堂.....あれぇ?