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スザクは浮かれていた。
数日前、生徒会室でルルーシュに言葉を貰ってから。
ずっと浮かれていた。
『10日、お前時間が取れるって言ってただろ?なら出て来れるよな?』
ルルーシュはスザクにそう言った。
わざわざ「10日」と言ったのは、きっと誕生日を覚えていてくれて、だから祝ってくれるのだと思ったから。
ご機嫌なスザクに、セシルは「何か良い事有ったの?スザク君」と尋ねる。
「う~ん。これから、かなぁ」とスザクは曖昧に答えて微笑む。
こんな時には適合率が普段より良い事が判っている特派主任のロイドはそれを無駄にするつもりはない。
人よりも高い適合率を誇るというのに、波が激しく、低い時には「普通の」騎乗者よりも低くなるのだ。
そんな数値を見る度に、「やる気あるのかねー?」とか「仕事だろー?」とか疑問に思うのだ。
「調子良さそうだねー、スザク君?ならさくさくっと実験やっちゃおうかー」
と機嫌の良いスザクをランスロットのコックピットへと追い立てる。
勿論スザクにも、10日に作業を残さない為にも嬉々として二つ返事でランスロットに乗り込んだ。
2日前。
今日も今日とて、ロイドとセシルを除いた特派メンバーが「ちょっと過酷じゃないか?」「いや、でも全然元気そうだし」と小声で囁きあっている。
ロイドやセシルにもそれは聞こえるが、取り合う気は全くないので、故意にスルーしている。
ロイドの携帯の着信音が鳴り、相手を確認したロイドは「セシル君、暫く頼むね」と言ってから、通話を繋げる。
「はい。‥‥じゃあスザク君。次に行きましょう?」
セシルの笑顔に、スザクは素直に頷き、特派メンバーは冷たいモノを感じながら、慌てたように次の準備に取り掛かった。
『状況はどうなっている?』
「順調ですよー」
『そうか。役に立っているなら、良いがな。‥‥それで?対象についてはどうだ?』
「それについては嫌になるくらいですけどねー。全然ですしー」
『‥‥プランの変更が必要か‥‥』
「そうですねー。いっそ全部試しますー?」
『全て、か。‥‥そうだな。調整してみよう。明日にでも最終確認の連絡を入れる』
「わかりましたー。それまでは今のままやってますねー」
『あぁ、頼む』
短い返事と共に切れた通話に、ロイドは寂しく思いながらも「明日も声が聞ける」と喜ぶ事にした。
ルルーシュは通話を切ると息を吐き出す。
「どうした?巧く行っていないのか?」
その様子を向かいから見ていた藤堂が声を掛けた。
「いや。ロイドは予定通りに事を進めているようだ。ただあいつの体力が思っていた以上に底がなかっただけだな」
ルルーシュはそう言って肩を竦めて見せる。
「それで、プランを変更すると?」
「あぁ。どうせ変更するなら全部やればどうか?と言われた。これから調整に入ろうかと思う」
「‥‥全て、か。おれのプランはきっちりこなそう」
藤堂はしっかりと請け負う。
藤堂のプランは当然といおうか、月下での対白兜破損計画である。
デヴァイサーを仕留められれば、それに越した事はないのだが、悪運が強いので、ランクを少し落としているのだ。
白兜が破損すれば、ロイドが小言を喰らわせて、「ざんねんでしたー。スザク君残業決定~」と言う事になっている。
「あぁ、疑っちゃいないさ。問題があるとすれば、白兜が出てこない事だが‥‥、それはロイド次第だな。後は‥‥」
「確か、第二皇子と第二皇女にも話をつけたとか言っていたな?それは?」
全てのプランを把握しているわけではなかった藤堂が尋ねる。
「義兄上には特派、当然白兜込みの出迎えをするようにと連絡を入れるように頼んでいる。丁度こちらに来るそうだ」
ルルーシュはそう言ってから、「予定時間を早めに告げて、機か何かのトラブルで遅くなった事にすれば長時間拘束できるからな」と笑う。
藤堂はそれを聞いて、とばっちりを受ける事になる特派のメンバーに同情した。
何をどういってもスザクを抱え込んでいる特派のダメージが一番大きいのは事実なのだ。
「義姉上には、ユーフェミアとその騎士を呼び出すように頼んだ。まぁ、口実は義兄上が来る事に関連した事ででもと言ってある」
つまり、特派白兜のデヴァイサーとして空港で長時間拘束された後、そのまま政庁に直行して、第三皇女の騎士としてまたも時間を拘束されるという事だ。
「‥‥しかしそれだけでは丸一日の拘束には至らないのではないか?」
「あぁ、だからタイミングを見計らって騎士団が行動を起こす。義姉上が物資も提供すると言っているので、ついでに奪取するが」
「‥‥その言い方は逆ではないか?物資を奪取するついでに白兜破損計画をおこなうのだろう?」
藤堂がやんわりと訂正するが、ルルーシュはきっぱりと首を横に振った。
「いや。今回ばかりは優先順位を逆転させて貰う。物資の奪取は必須だが、白兜破損も必須だからな」
ルルーシュは言い切り、「だから奪取する扇隊と白兜破損の藤堂隊に完全に分けただろう?」と笑った。
つまり、早朝から空港で長時間到着を待ち、政庁にて第三皇女の騎士として行動し、更には白兜のデヴァイサーとしてテロ対応をする。
そして、特派に呼び戻されてお小言を喰らい残業を言い渡される、というスザクのタイムスケジュールが、当人の与り知らぬところで決定されたのだった。
枢木スザクの7月10日のタイムスケジュールはゼロの予定通りになった、とだけ記しておく。
待機と銘打った拘束時間の間中、焦りを募らせていっていたスザクは、月下と紅蓮の攻撃によって白兜を見事に破損させたのだ。
そうしてロイドから小言を喰らい、愚痴を言われ、残業を言い渡されたのも、予定通りだった。
そうしてスザクの今年の誕生日は散々な終わりを告げた。
次の日。
なんとか生徒会に顔を出したスザクを待っていたのは。
「いやぁ、昨日は来れなくて残念だったなぁ。主役いなかったけど、折角用意したんだしってみんなで美味しくルルの料理食べちまったぜ」と礼を言うリヴァルと。
「モノは用意してなくってね~。サプライズを用意してたんだけど、それも昨日限定だったから、何もないのよね~」と苦笑するミレイと。
「ルルーシュに言われて結構遅くまで待っていたんだけど。‥‥普通連絡の一つも入れるものよ?」と嫌味を言うカレンと。
「騎士さまだもの。主のご用事が優先されるのは当然なのに、どうしてそんな顔をしているの?」とスザクの表情に不満そうなニーナと。
「はぁ~。スザク君も騎士なんだから、もう少し常識っての覚えた方が良いわよ?」と呆れ顔で忠告を入れるシャーリーと。
冷ややかな視線を向けてくるルルーシュだった。
「る、るるー、しゅ?その‥‥」
「お前馬鹿だろ?来ると言ってた奴が連絡もなく来なかったら何かあったかと心配するだろ?」
恐る恐る尋ねるスザクは、案じるような言葉が返ってきた事にホッとする。
「その、ごめん。連絡を入れる暇もなくて‥‥」
「‥‥仕方がないから、昨日のとは別に用意しておいた。食べるだろう?」
溜息を吐いたルルーシュの続けた言葉に、スザクは満面の笑みを浮かべて力強く頷いた。
しかし、ルルーシュが持ってきた「おにぎり」を一口食べたスザクは蒼白になるのを自覚した。
「改めて作ろうと思ったところに、お前の職場の女性がやって来て『誕生日、忙し過ぎて用意するのが遅くなったのだけど』と持ってきたからな」
ルルーシュはそう言って悪びれる事無く、「折角用意して持ってきてくれたんだ。おれが作る必要もなくなった。しっかり食べてくれ」と言い切った。
はっきり頷いた手前、今更「食べない」とは言えず、スザクは蒼い顔をしながら、「おにぎり」を平らげたのだった。
「‥‥あんな事言ってばれないかな?」
「ん?平気だろ。他の生徒と交流持つ奴じゃないし」
「昨日は生徒会室にすら集まらなかったじゃないか。ルルーシュの料理は食べたけど。スザクが来れるようになってたら何言われてたか」
「その時間なら待ちきれなくて解散したところだったんだとでも言っておけば良いんだよ」
ルルーシュは「いや結局来なかったわけだけどさ」というリヴァルにきっぱりと言い切ったのだった。
更に翌日、アジトにやってきたルルーシュとカレンによって事の顛末が幹部達に披露され、爆笑が巻き起こったという事を記し、終わりとする。
了
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作成 2008.07.11
アップ 2008.07.12
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こんな日にさえも。 スザクの誕生日小説。酷い話。
.......でした。
どうあってもスザクは酷い目にしか遭わないようです。
間に合わなかったので、後日談が加算。
酷い話がもっと酷い話になりました。
というか、13日のR2見たらこれでも足りないと思ってしまいましたorz