(「入団試験」設定/過去捏造/皇子+ダル)
ダールトンはコーネリア皇女殿下の執務室から下がると、重い身体に渋面を作りながら歩く。
これは残務を手早く片付けるか、切り上げるかして部屋に戻った方が良いだろうと考える。
そう、ダールトンは体調が悪い事を自覚していた。
ダールトンが足を止めたのは体調不良の為に歩けなくなったからではない。
目の前に突然子供が現れたからだ。
「‥‥あねうぇのきしのだぁるとんだったな?」
舌足らずな物言いながらしっかりした内容に、ダールトンは少し驚きながらも居住まいを正して礼をとる。
「はッ、アンドレアス・ダールトンと申します、ルルーシュ殿下」
「ぐあいがわるいときにむりなんてするひつよぉはないからやすめ」
突然の言葉に、体調不良を表に出していたつもりのなかったダールトンは驚く。
「‥‥何を仰せに」
「うるさい。むりをするなといまいったばかりだぞぼくは」
誤魔化そうとしたら、不機嫌な声に遮られた。
「あの、ですな」
自分は大丈夫だと幼い皇子を説得しようとダールトンが再び言葉を紡ぐも、それもまた遮られた。
「やすまないっていぅのならぼくにもかんがえがあるぞ」
ふと、どんな考えがあるのかとダールトンは気になった。
「考え‥‥とは?」
それが負けの始まりだと、この時のダールトンは気づかなかった。
「だぁるとんにいじめられたといってなくぞここで」
何故か幼い皇子は胸を張って言い切った。
究極の脅し文句に、否、既に脅迫の言葉に、ダールトンは負けを認めて、大人しく休む事になった。
───────────
2008.06.05作成
2008.06.08-2008.06.12up
2008.07.09再録
PR