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騎士団のアジトは騒然としていた。
事の起こりはゼロの登場だ。
いつも通りやってきたゼロは、とてもいつも通りとは言えないモノを肩に担いでいて、幹部団員達はそれに驚いたのだ。
活動に関係の無い物をあまり持ち込む事のないゼロが持って来たモノ。
それは──。
「笹?‥‥‥ってゼロ。あの、もしかして七夕するんですか?」
カレンが心底意外そうに尋ねる。
どこから運んで来たのか、ゼロは大振りな笹の枝を担いでいたのだ。
「そうだ。短冊に願い事を書く。‥‥年に一度の事だ。気休めでもやりたくなってな。まぁお前達に強制するつもりはないから安心しろ」
立ち止まって応えるゼロの言葉に、一同戸惑う。
七夕をするつもりで笹まで用意して来たゼロが、きっぱりと「気休めでも」と言った事に、どう反応すれば良いか測りかねたのだ。
てか「安心しろってなんだ?」という気持ちもある。
「ゼロ。信じてないのに願い事書くの?」
朝比奈が尋ねる。
「そうだな。‥‥『鶴を千羽折って願い事をすると叶う』と同じくらいには信じているかな?」
ゼロが応えると、「いやそれ叶わないし‥‥」と思わずツッコミたくなった一同に恐らく非はないだろう。
「‥‥折ったのか?千羽鶴‥‥」
唖然として玉城が呟く。
「いや‥‥。話を聞いただけだ。‥‥信じて折っている最中の者は知っている。叶うのか?」
玉城はゼロに素でそう応えられ、仮面を傾けるゼロにたじろいだ。
「えっと、おれは千羽折れたって人に会った事がないから‥‥判らない、かな」
絶句した玉城に代わって、扇が応えると、ゼロは「そうか‥‥」と呟いた。
「あのッ!ゼロの願い事って何ですか?」
カレンが勢い込んで割り込み尋ねる。
「わたしの?わたしの願いは変わらない。『優しい世界』。それに『ブリタニアの崩壊』だ」
ゼロはそう言うと歩き出す。
「わたしも同じ事をお願いします。一人で願うよりも効き目があるかもしれませんしッ!」
カレンの言葉にゼロは立ち止まってカレンを振り返る。
「カレンの願いは別にあるだろう?日本を取り戻す事、それに‥‥。とにかく七夕に無理をしてわたしに合わせる必要はない」
「でもッ!取り戻した日本が『優しい世界』だったら嬉しいですッ!その為にはブリタニアが邪魔なのも変わりありませんッ!」
勢い込んで反論するカレンに、それでもゼロは頷かなかった。
「‥‥表でする気がなかったから持ち込んだだけだ。お前達にまでやれとは言わない」
そう言ってゼロは歩き出す。
困惑する幹部団員達は、戸惑うように隣や近くの者と視線を交わしあう。
「‥‥ちょっと待った~~~あ!ゼロストップストップ」
笹を担いだまま格納庫を出ようとしていたゼロを朝比奈の声が呼びとめた。
立ち止まったゼロは朝比奈を振り返ると煩そうに「なんだ?」と尋ねる。
「う~ん。ちょっと聞きたい事が有ってさ~‥‥」
躊躇うように朝比奈はそう言ってゼロの反応を待った。
「なんだ?言ってみろ、朝比奈」
ゼロは溜息を吐いた後、先を促した。
「えーっと、ですねー。ゼロが七夕をどう認識しているのか、ちょーっと興味があってさー」
朝比奈の言葉の意味が理解できた者はこの場にはいなかった。
藤堂や四聖剣も例外ではなく、質問されたゼロもそうだった。
「認識?」と仮面を傾けるゼロに誰もが無理もないと思う。
「うん、そう。おれが考えてる七夕と、なんか違ってそうだったから気になってさ」
朝比奈の言葉に、「そう言えば『強制しない』とか『お前達にもやれとは言わない』とか言ってたよな、ゼロ」と思い当たる。
幹部団員達にとって、七夕は祭りである。
なのに、「見せびらかすだけ見せびらかして一人で楽しもうなんて」と思った者もいたわけで。
最初の認識が違っているのなら仕方がないかもとゼロの答えを待つ事にした。
「七夕は‥‥『願い事をする日』だろう?『自分一人では叶えられない願いをする日』。‥‥違うのか?」
合ってるのに違うような気がしてならず、曖昧に首を傾げるだけで頷く者はいない。
「えーっと。織姫とか‥‥は?」
扇が躊躇いがちに聞く。
「‥‥あぁ。晴れると良いな」
ゼロは空は見えないのに、格納庫の天井を見上げて、そう呟くように言った。
「あ、やっぱり、ちゃんと合ってるんじゃないか?」とホッとし、「ならなんで一人で?」と首を傾げる。
しかし、続くゼロの言葉に頭を抱える事になる。
「晴れてくれれば、心置きなく願い事が出来る」
「は?ゼロ?ちょっと待ってください。別に曇っていたって雨が降っていたって願い事は普通に出来ますよ?」
カレンが驚いて問い返す。
藤堂とラクシャータが信じられないものを見るかのように、ゼロを凝視していた。
「‥‥普通に?しかし‥‥」
カレンの言葉に逆に驚いたゼロは言い淀んだ。
「‥‥ゼロ。別に晴れていなければ代償が必要になるというわけではない。ただ、願うだけで、叶えるのは結局自分達だからな」
藤堂が、諭すようにそう言うと、「一体いきなり何を言い出すんだ?」と言う視線に晒される。
「あらぁ?そう言うって事は、藤堂もおんなじ事を考えたのかしらぁ?‥‥て事はぁ、『生きてて良かったわぁ』って言うべきかしらぁ?」
ラクシャータの言葉が、藤堂とゼロと、その他の幹部団員達を驚かせた。
「‥‥‥‥なッ‥‥。何故‥‥」
否定する事すら忘れたのか、肯定とも取れる返事を返すゼロに、ラクシャータと藤堂は苦笑する。
「『七夕はね。晴れていれば離れ離れになっていた恋人達が会える日で、だから無償で願い事を叶えてくれるのですよ』って言ってた方を知ってるからぁ?」
ラクシャータは一言一句間違えないように言って見せる。
「『けれど雨が降れば会えなかった恋人達へ代償を払わなければならない。願うには会いたい人に会えなくなる覚悟が必要だ』と言った君を覚えている」
藤堂もまた、昔聞いた事をそのまま告げた。
その時も何度も「それは間違っている」と諭したつもりだったのだが、どうやら思い違いを覆すには至らなかったらしいと藤堂は思う。
「‥‥ッく。‥‥行事でバレる事になるとは‥‥」
「大体、昔から聡明だったんだからぁ。幾ら仰ったのがお母様だからって、鵜呑みにしたままにしなくても良かったんじゃないですかぁ?」
ラクシャータは呆れた口調で指摘する。
「何を言う。母上が間違うはずがないだろう?日本の文化に造詣が有って、『丑の刻参り』で何人もの幸福を祈ったとも仰っていたし」
唖然。
絶句して唖然とゼロを見る一同は、「それ間違ってる。激しく誤解してる。てかゼロに何を吹き込んでるんだ、母親はぁ!?」と内心で絶叫していた。
声に出さなかったのは、怖かったからである。
誰も、「丑の刻参り」で幸福を祈られたいとは思わないのだ。
「藁が手に入るのは秋だからな。今回は『優しい世界』を願おうと思っていた。『ブリタニアの崩壊』は秋になってから祈ろうかと」
ゼロゼロゼロゼロゼロ‥‥‥‥(えんどれす)。
「てかゼロもするんですか、藁人形に五寸釘を!!!」ともやはり口に出せない一同は数名を残して後ずさっている。
「あー‥‥お母様直伝なら多分すっごく効果抜群なんだと思うんですけどぉ。それでも皇帝はピンシャンしてるわけでぇ」
ラクシャータは遠い目をしながら「あっちの方が一枚上手なんじゃぁ?」と尋ねる。
ラクシャータの言葉に「ゼロの母親の藁人形の対象が皇帝!?てか効果抜群って程の五寸釘でピンシャンって。何モノだ皇帝はッ!?」と大混乱中の一同。
「あの男には効かないだろ。母上も散々愚痴っておられた。だから周囲から攻めようかと考えている」
「ゼロゼロ。それ、やるのってぇ秋になってからって言ってたわよねぇ?」
「そうだが?藁を手に入れて人形を作ってからになるな」
「手伝いますッ!ゼロ!」
カレンが手を挙げ立候補する。
「ゼロぉ。とりあえず提案なんだけどぉ。七夕の願い事をぉ。『ブリタニアからの寝返り』ってぇのにしないぃ?たぶん叶うわよぉ」
ラクシャータは面白そうにそう言って、「ゼロが貴方だって判っていれば最初っからこの手を使うんだったわよねぇ」と藤堂を見る。
「まぁ。‥‥ブリタニア人達にどの程度有効なのかはともかく、スザク君に効果が有るのだけはこの目で見た事があるな」
「あらぁ?疑うのぉ?白兜のパーツはいらないけどぉ。ゼロのお母様のその辺りの事を覚えている人って多いのよねぇ」
ラクシャータと藤堂がそんな会話で盛り上がった為に、ゼロの正体とか素性とか尋ねそびれた一同は、ゼロと一緒になって首を傾げたのだった。
了
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作成 2008.07.05
アップ 2008.07.07
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七夕と願い事。
やはり結局逸れました、話が。
少しずれたゼロが書きたかったのに、なぜかマリ様の話になってしまいました。
そして藤堂とラクシャータにゼロバレ発生.....。あれ?
この後は電波ジャックでもして告知することでしょう。
P.S.七夕話もまた捏造です。