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(「災厄は突然に」設定/藤ル.ル/ルル)
ルルーシュは暫く鏡を見つめていた(実際は見惚れていた(と言うのは内緒だ))が、溜息を吐くと鏡から離れる。
幾ら見つめていようがこの紛れもない事実は変わらないと察したからだ。
着ていた寝間着を脱いで軍服を手に取る。
「藤堂。ゼロの服、着方判るのか?」
ルルーシュが声を掛けてみるも、藤堂からの返事はなく、ルルーシュはもう一度溜息を吐くと先に着替える事にした。
軍服に着替え終わっても藤堂は戻って来ないので、そのまま台所に入って朝食に取り掛かる。
背の高さが違う事がこれ程不便なものなのだとは今まで気づかなかった。
高ければその分手が届く範囲が広くなるだろうと思っていただけだが、今は認識を改めた。
勝手知ったる間合いが違うと不便で仕方がない事がわかったからだ。
気をつけていなければ、すぐに今まで通りに動こうとしてあちこちにぶつける羽目になるのだ。
ルルーシュはそれをすぐに念頭に置いた。
「藤堂、食べるだろう?」
二人分の食事を並べた後に声を掛けたら、藤堂はやっと戻ってきたようだった。
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2008.06.10作成
2008.06.25-2008.07.03up
2008.07.22再録
※「心の叫び」の続きです。
メカオレンジを引き続きC.C.に委ね、残りは部屋を出た。
一応反省したらしいC.C.は、当面「オレンジ」とは言わないだろうと思われたからだ。
「あれ?卜部さん、どうしてここにいるんですか?」
とカレンが首を傾げたのは廊下に出てすぐだった。
「どうした?カレン」
足を止めたゼロはカレンに声を掛ける。
「え?‥‥だって、卜部さんにはあいつ頼んだはずなんですよね。どうしたんです?」
その言葉に、一同の視線は卜部に集まった。
「簀巻き状態だったし、部屋に閉じ込めて来たんだが‥‥?」
卜部の回答に、ゼロは深々と溜息を吐いた。
「‥‥ならば枢木のところへ向かうのが先か。カレン。扇達への説明は任せる。卜部、閉じ込めたという部屋はどこだ?」
「なッ‥‥わたしも行くわよ。てかあいつの方こそ誰かに任せるべきよ」
ゼロの指示に卜部が踵を返そうとしたところへ、カレンの反論が入って動きが止まる。
「ダメだな。カレンとC.C.の話通りならば、枢木はわたしの素性を知っている事になる」
「‥‥あれ?紅月さん、いつからゼロとタメ口だったっけ?」
「紅月が枢木を『即効落とせ』と言ったのはそのせいだったのか?」
朝比奈と千葉がそれぞれ疑問を口にする。
そしてゼロは再び溜息を吐いた。
「カレンと藤堂にもわたしの正体はバレている。後はC.C.と桐原公。‥‥それにジェレミア卿だな」
「「「‥‥は?」」」
「だから、ジェレミアにもバレていると言ったのだ。流石にそうでもなければ、説得など出来るものか」
「えっと‥‥藤堂さんにはいつ?」
「さっき、だ。藤堂とも昔、会った事があるのでな。それに枢木の師匠だったし?当然同行するよな?」
「あぁ。‥‥卜部と朝比奈はおれと。仙波と千葉は紅月と」
「「「「承知ッ!」」」」
「カレン、頼む」
「‥‥‥わかったわよ。確かに貴方が直接話してると、収拾つかなくなりそうだし、事前説明くらいしてくるわよ」
カレンは渋々折れて頷いた後、「理由は、『大切』にしとく?『最愛』にしとく?」と尋ねた。
「任せる。‥‥だが」
「それはわかってるわよ。そんな事は言わせないから心配しないで。それよりもあいつには気をつけてね」
「わかっている」
ゼロとカレンは頷き合うと、それぞれ目的の場所へと歩き出し、藤堂と四聖剣が従った。
仙波と千葉を従えて戻ってきたカレンに、幹部達は気付くなり、周囲に集まった。
いないのはゼロの傍にいる三人と、ディートハルトくらいだ。
「やっと説明する暇が出来たのか?カレン」
杉山が尋ねる。
「えぇ、そうね。‥‥それで、何が知りたいの?」
「大事な局面でいなくなったわけが知りたい」
「何がおれのせいだってんだ?」
杉山の抑えた声と、苛立つ玉城の声が前後する。
「学園を放棄した玉城のせいよ。‥‥何故ゼロが学園を拠点にしようとしたのか、説明しなかったところはゼロの落ち度かもしれないけどね」
鋭い眼差しで玉城を見据えた後、カレンはそう言って溜息を吐いた。
「白兜を捕まえる為、‥‥じゃなかったのか?学園の生徒だから誘き寄せやすいって言う‥‥」
「あいつはどこにだって来るわよ。‥‥何の説明もなかったから察しろッて言う方がきついのかも知れないけどね」
「なら‥‥」
「知ってるでしょ?あの学園はわたしも通っていたわ。だから知り合いも多いし、仲良くなった子もいたのよね。ブリタニア人だったけど、子ども、よね?学生だもの」
カレンはそう言って、「つまるところ、ブリタニア人とはいってもゼロの言うところの弱者に入るんじゃない?」と問いかける。
「‥‥まさか、学園の生徒を守る為、だなんて言わないだろうな?」
「なッ、ふざけんなよ、カレン。おれ達は日本の為にだな」
「ふざけてるのはあんたの方よ、玉城。『合衆国日本は人種を問わない』って言ったゼロの言葉、忘れたの?」
「‥‥待て、カレン。つまり、ゼロが学園にこだわったのはカレンの為、か?」
「と言いたい所だけど違うわ。学園に有ったのよ。ゼロが、ゼロになった理由が。『合衆国日本』を求めた理由が、ね」
カレンは首を振ってからそう答え、「でも玉城が学園を放棄してしまった。コーネリアと対峙してる時にその連絡を受けたらしいわ、ゼロは」と続ける。
幹部達は息苦しさを覚えて押し黙る。
「学園にいたはずの、ゼロの大切な人が浚われたって連絡を、ね。ゼロにとって、その人は世界よりも大切な人だったのよ」
カレンの静かな声は、静かになった空間に染み渡る。
「あっさり騎士団を捨てた、なんて言わないでよね?その人がいなければ、ゼロ自身がいないも同じ、ゼロがゼロである為には、その人が必要だったの」
「その人って言うのはぁ、藤堂が抱えて降りて、車椅子に乗ってった子ぉ?」
唐突にラクシャータが言葉を挟んだ。
「‥‥え、えぇ、そうよ」
「あー‥‥。まぁ、そーかもぉ?確かに世界よりも大切よねぇ」
「‥‥ってラクシャータ?」
「わたしぃ、ゼロとゼロの大切な人ってぇ知ってるかもぉ。なぁるほどぉねぇ。大納得だわぁ」
ラクシャータの言葉を聞いた仙波と千葉は揃って小さく「「またか」」と呟いた。
それはカレンにのみ聞こえて、「顔が広いにも程がある」とか「というより世の中狭いというのか?」と続く呟きも聞いてもっともだと納得した。
「と、とにかく。浚われたその人を助ける為にゼロは戦場を離れる事になったのよ。その時のゼロの最大の誤算は、扇さんが負傷してた事ね」
「「誤算?」」
尋ねたのは仙波と千葉だった。
「それでなくても焦って気が動転してたゼロは、扇さんが負傷してるって聞いてパニックになったらしいわよ。想定外が重なりすぎたとも言うけど」
カレンがそう言うと、「あぁ、ゼロってそう言えば、想定外の事には結構弱かったよな」とあちこちで頷くのが見えた。
「本当は指示したかった作戦とか有ったけど、ファイルは扇さんに預けていたし、一から説明する心のゆとりもないから、前線の藤堂さんに任せたって」
カレンの説明を聞いて、「それは確かに誤算としか言い様がないなぁ」と幹部達は納得した。
ゼロが離れた場合を想定した作戦を用意していて、副指令に預けていたにも関わらず、それが使えなかったのだから大誤算だっただろう。
それまでは確かに有った刺々しいギスギスとした空気が、フッと消えていくのをカレンは感じた。
了
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作成 2008.04.24
アップ 2008.07.14
(「入.団試.験」設定/過去捏造/皇子i.n本.国/特.派の前身たる研究所+皇.妃)
マリアンヌがその部屋に入った時、誰もが忙しそうに作業をしていて気づくまでに時間が掛かった。
それまでの間、マリアンヌはのんびりとその様子を楽しそうに眺めていたが。
ふっと顔を上げたラクシャータがマリアンヌの姿を目に留めて、慌てて駆け寄る。
「いらしていたのでしたら、お声を掛けて戴ければ宜しかったですのにぃ」
駆け出したり、声を弾ませるラクシャータに驚いた所員達は、来たのが誰かを知って、我も我もと集まった。
1人、ロイドだけは気づいた様子すらなく作業に没頭していたが。
ロイドの場合は、たった1人の幼い皇子以外に関心がないのか、気づかない事がままあるのだ。
「良いのですよ。忙しいのでしょう?」
「ヴィ家より優先したいものなんてないですわぁ」
ラクシャータはにこにことマリアンヌに応える。
マリアンヌはラクシャータの言葉に、嬉しそうに微笑みを浮かべ、周囲に集った所員達を魅了した。
『ヴィ家』と言う単語にロイドは顔を上げて周囲を見渡す。
目当ての人物『幼い皇子』がいない事を確認してから作業に戻った。
ロイドはそれを後で少し悔やむ事になるがそれはまた後のお話。
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2008.06.14作成
2008.06.15-2008.06.24up
2008.07.21再録
(「災厄は突然に」設定/藤ル.ル)
おれを抱き込んでいた者、それはどう見ても「藤堂鏡志朗」だった。
そう、いつも鏡に映るそのままの、しかし驚きに目を見開いているところだけが違う自分。
おれが抱き心地が良いと抱きしめていた者、それは猫などではなく‥‥おれ自身!?
何故、目の前に呆然と見返してくる「ルルーシュ・ランペルージ」がいるんだ?
「「‥‥‥なら、おれは!?」」
期せずして同時に呟かれた言葉に、おれ達はかなり慌てるようにして鏡の前へと移動した。
「「‥‥‥‥どういうことだ!?」」
藤堂は「ルルーシュ」の姿で眉を顰め、ルルーシュは「藤堂」の姿で首を傾げていた。
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2008.06.10作成
2008.06.21-2008.06.29up
2008.07.17再録
(「災厄は突然に」設定/藤ル.ル/ルル)
腕の中で何かが動いている。
‥‥猫か?
‥‥‥‥アーサーかな?
おれは寝惚けながらもそう思って余計に抱き込む。
しかしいつの間にベッドに潜り込んで来たんだ?アーサー。
そんな疑問が浮かびはしたが、抱き心地が良く、おれは再びまどろみ、眠りに落ちて行った。
覚醒した後、腕の中にいた正体に気づいて呆然とするまでにはまだ少し時を要した。
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2008.06.10作成
2008.06.16-2008.06.25up
2008.07.14再録
(「災厄は突然に」設定/藤ル.ル/藤堂)
目を覚ました時、何かおかしいと思った。
その何かが誰かの腕に抱き込まれている事だと知った時には暫く自失した。
‥‥ちょっと待て、おれをすっぽり抱きこめる奴なんて誰がいると言うんだ?
腕を解こうともがくががっちり組まれているのかビクともしない。
誰かを確認しようにも密着しすぎて顔が判らないのだ。
「‥‥ッく‥」
こんな経験は終ぞなく、おれはますます慌て、もがいた。
てか、寝てるのか?こんなにもがいていても気づかない程熟睡しているのか?
結局、相手が起きるまで解放される事なく、無駄に動いたおれは、かなり消耗した一日の始まりを迎えた。
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2008.06.10作成
2008.06.12-2008.06.21up
2008.07.11再録
ガウェインに乗ったC.C.は、続いたラクシャータがゼロの席に落ち着くのを確認すると、コックピットを密閉し、通信が繋がっていない事を確かめた。
「さて‥‥と」
「まず、良いかしらぁ?‥‥その仮面、予備なんかじゃないんでしょぉ?」
C.C.が本題に入る前に、ラクシャータが機先を制して尋ねた。
「‥‥あぁ、そうだ。‥‥予備は作っていない。そうだな。機能を追加してもらった後、予備の一つ二つも作ってもらった方が無難だろうな」
ラクシャータに話す分には問題ないと判断したC.C.は肯定する。
「ふ~ん。なら藤堂がゼロの素顔知ってるってのは、ホントだったんだぁ」
「あぁ。だからゼロの部屋はパスした。アイツがいると煩いのも事実だしな。‥‥さて、と。実はこれの機能追加と関連する事なんだが、眼帯も一つ作って欲しい」
面白がる風のラクシャータを不思議な思いで見たC.C.は、それよりもと話を進める。
「‥‥眼帯?ってゼロ、眼も怪我してたのぉ?それとも元から?」
スッと眼を眇めたラクシャータの声音が幾分か低くなっている。
C.C.は溜息を着くと、無言でゼロの仮面を被る。
「今、この仮面についている機能は、コレだけだ」
そう言ってから、仮面の側面に触れると、シュッとごくごく軽い音を立てて、仮面の一部が消え、C.C.の左目が現れる。
ラクシャータは眼を見開いてその様子を見ていた。
「なぁに、それぇ?」
「アイツの左目は少々特殊でな。それでこんな仮面を作ったのだが‥‥。色々と使いすぎた為に暫く光に当てたくないんだ。だから光すら通さない眼帯が欲しい」
C.C.は我ながら良くもまぁこんな嘘がつける、と内心苦笑する。
「特殊、ってぇ?」
「わたしからは言えない。それと使いたい時に使え、仮面の機能と連動していればそれに越した事はないな。本人にしか操作できないような感じが一番良いな」
「‥‥それは眼帯の方の機能、でしょぉ?その仮面に追加する機能ってぇのはぁ?」
「今更だが、他言無用だぞ?藤堂もこの辺りは知らない。当然、桐原公もだ。コレについて知っているのは、アイツ本人とわたし、それにお前だけだ」
C.C.が遅ればせながらそう恫喝し、「技術屋のお前にはそれっぽくて良いだろう?」と笑う。
「そぉねぇ。良いわよぉ。誰にも言わないって約束したげるわぁ」
ラクシャータの返事に満足したC.C.は追加する機能の説明を始めた。
ガウェインに乗った時よりも遥かに上機嫌になって降りてきたラクシャータは、部下に当たる技術者達に向かって開口一番言い切った。
「ナイトメアの修理とかはぁ。暫くあんた達に任せるからぁ。よろしくねぇ♪」
そうしてラクシャータは驚く一同に背を向けると、鼻歌混じりに自室へと向かっていった。
特にラクシャータを良く知る技術者達の混乱は凄まじい物があった。
「彼女がナイトメアを丸投げするとは‥‥」
「ゼロのあの仮面、ナイトメアよりも興味深いとでも言うのだろうか‥‥」
「「「‥‥‥気になるッ」」」
技術者達は、自分達だけでそんなふうに盛り上がっていた。
盛り上がる技術者一同を幹部が呆然と見ていると、今度はC.C.が降りてきた。
C.C.は用は済んだとばかりにスタスタと立ち去ろうとしている。
「ちょっとお待ちなさい」
それに待ったを掛けたのは、皇神楽耶である。
足を止めたC.C.は胡乱気に振り返ると「なんだ?」と煩そうに尋ねる。
「ゼロ様の愛人というのは真か?」
声を怒らせて尋ねる神楽耶に、「最初のツッコミがそこですかッ」と問いたい衝動に駆られた者が多数いたが、みな何とか黙っていた。
「まさか。わたしにも好みというものがある。だいたい自分を一番に想わない相手を選ぼうなどとは思わない」
C.C.の好み云々で「ゼロってやっぱり不細工だから顔を隠しているのか?」と思った者がいたが、それよりも続いた発言にみな驚いた。
「‥‥ゼロ様に既に想い人がいらっしゃると言うのか?」
ショックを受けた神楽耶が呆然と呟いた。
紅蓮の足元でカレンもまたショックを受けていた。
「一番目は昔から決まっているし、今後も変わる事はないだろうさ。話がそれだけならば、わたしはもう行くぞ」
相手のショックなど気にせず言い放つとC.C.は踵を返して歩き出す。
だが、神楽耶もいつまでも自失していなかった。
「では二番目は誰です!?」
C.C.の背中に、神楽耶が声を投げた。
「これ、神楽耶さま。流石にそれは皇の言葉としては見過ごせませぬぞ」
桐原が神楽耶に注意を促す。
「わたしではないが。‥‥そうだな、埋まっているのではないか?あれをなんと呼ぶのかは知らないがな。この話は終わりだ」
C.C.はそれでも答えると話を打ち切り、再び歩き出した。
だが、それも幾らもいかない内に止まる。
「扇」
「あ、‥‥あぁ。なんだ?」
突然名前を呼ばれた事に扇は驚いて、どもりながらも何とか返事をする。
「報告する事があるなら、簡潔に纏めておけ。多分、次に呼び出されるのはお前だ。良いか、簡潔に、だぞ」
C.C.は念を押し、「だからと言って漏れていて二度手間になるなんて事はわたしが許さないからな」と更に脅す。
「‥‥わ、わかった。善処する」
扇は顔が引きつるのを自覚しながら、頷いた。
「後は‥‥。カレン、今から出るのか?」
「え、えぇ。そうよ」
カレンもまた挑むような目つきでC.C.を睨みながら、躊躇いがちに頷く。
「そうか。‥‥では四聖剣の、‥‥そうだな、仙波で良い。『わたしが用事を頼むから早目に戻れ』とでも伝えておいてくれ」
「えーと‥‥。仙波さん限定なの?」
訳がわからずカレンは首を傾げるが、わからないのは他の幹部もご同様だった。
「別に卜部でも構わないが。千葉と朝比奈はさっき出たばかりだろう?とんぼ返りをさせる気はない」
カレンは「確かにさっきよね」と一応納得する事にして頷いた。
それを見たC.C.は今度こそ、本当に立ち去ったのだった。
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作成 2008.04.24
アップ 2008.07.13
(「入団試験」設定/過去捏造/皇子+ロイ)
気づけばぼくは空を仰いでいた。
えーっと、空を仰ぐ趣味はないんだけどもー?
そう思ってからなにやらあちこちが痛いなーと思う。
更には胸の上に乗っかる何かを抱き込んでいるような?と首が動かないから内心で傾げてみる。
「ろいどおぃろいどしっかりしろもうへいきだからてをはなせきずをみせろろいど」
愛しの皇子の声が聞こえて、あぁと思う。
2階からナナリー殿下を庇って落ちるルルーシュ様を咄嗟に受け止めたのだ。
ハッとしてぼくは痛いのも顧みず起き上がった。
「ルルーシュ様お怪我は!?」
「けがをしているのはおまえだばかものろいど。ぼくはおまえがたすけてくれたからどこもけがなんてしてない」
しっかりした返事を聞いてぼくは深々と息を吐き出した。
良かったお守り出来たーとぼくは喜ぶ。
「‥‥おぃろいどおまえけがしてるのになぜわらう?ぼくがかなしいのにそうかおまえはそういうやつなんだな?」
非難がましい皇子の言葉に、ぼくを心配している様子がありありとわかって一層嬉しくなる。
「ろいどつぎにぼくをかばっておまえがけがをしたときはゆるさないからそのつもりでいろよ」
「えッちょっと待ってくださいルルーシュ様」
段々と脅し文句になってきた皇子の言葉にぼくは慌てる。
「ぼくをまもっただれかがけがをするのはいやだ。ぼくをまもってもけがをしないつよいやつにならまもられてやってもいい」
皇子の言葉にぼくは更に慌てた。
それはつまり怪我をしてしまったぼくには守らせないと言っているようなもので。
「ルルーシュ様。ぼくはもっと鍛えて強くなりますから守らせていただけますか?」
「その前に怪我を手当てしたまえ。ルルーシュを守った事は褒めるけどね、ロイド。泣かせた事は許し難いな」
「ちょッ‥‥殿下までそんな事言うんですかー?ちゃんと鍛えますから」
「むだぐちをたたくまえにさっさとちりょうしてもらってへやにもどってねろ」
「あぁあ。ルルーシュが完全に怒ってるよ、ロイド。君はルルーシュの機嫌が直るまで自室で謹慎してなさい」
「えぇ!?そんな、あんまりですよ~」
「にぃさまぼくのきげんはろいどがなおるまでなおらないからしっかりみはっていてください」
皇子の言葉はぼくの見張りをシュナイゼル殿下に頼むもので、つまり殿下も一緒になって皇子に会えない事を意味する。
「えッ!?ちょっと待ってくれ、ルルーシュ」
慌てた殿下が引き止めるが、しかし皇子は殿下の声にも振り返らずに館に引き返していってしまった。
怪我よりも殿下の視線が痛いんですけどーとぼくは涙に暮れる。
完治するまでの間、針のむしろ状態を味わったぼくが、その後今まで以上に鍛えた事は言うまでもないよねー?
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2008.06.10作成
2008.06.12-2008.06.19up
2008.07.16再録
(「入団試験」設定/過去捏造/皇子+ジェレ)
ジェレミアは表情にも態度にも出さずにパニック状態に陥っていた。
なんてことだなんてことだなんてことだなんてことだ‥‥‥
どうすればどうすればどうすればわたしはどうすればいいというのか‥‥‥
周囲に人影はなく、目の前には壊れた花瓶と水を吸った絨毯と、散乱する生けられていた花。
そう、ジェレミアはうっかりというか蹴躓いて花瓶を倒して割ってしまったのだ。
「なにをしている?」
幼い声がかかり、ジェレミアは直立不動の体勢をとった。
ここにいる子供とはすなわち皇族の誰か、或いは大貴族に連なる者くらいだからだ。
「はッ!申し訳ありません!花瓶を割ってしまいました」
反射的に自己申告をしてしまうジェレミア。
「おまぇ‥‥ここはいぃからへやにもどってやすめ」
幼い子供の言葉に、ジェレミアは「貴様は罷免(くび)だ」と言われた気がして愕然とする。
「たいちょうがわるいときにむりをするからしっぱいするんだいいからもどってやすんでよくなったらでてこい」
しかし続いた言葉にジェレミアは子供をマジマジと見つめた。
珍しい黒髪の整った顔立ちの可愛い‥‥
「‥‥なにをみている?」
子供は少し不安になったのか、表情を緩めて首を傾げる。
「‥‥罷免‥‥という話では」
「くび?くびがいたいのか?とにかくむりせずにやすめ」
「‥‥あのッ。わたしは体調はどこも‥‥」
「やすむきがなくてもやすませてやるぞぼくが」
子供はそう言うとすたすたと歩き出し、ジェレミアを無視して割れた花瓶の前にしゃがみ込む。
手を伸ばして破片を触ろうとする子供をジェレミアは慌てて制した。
「お待ち下さい、危険です。怪我でもしたらどうなさるおつもりなのですかッ!」
「‥‥やすまないというのならこれはぼくがかたづけるぞ」
「休みます!休みます!休ませて頂きますからそのまま離れてください!」
子供を相手に懇願し、花瓶の傍から離れたのを見届けてからジェレミアは宣言した通り下がった。
いつの間にか皇族かどうかもはっきりしない子供に対して必死になっていた事にジェレミアが気づいたのは部屋に戻ってからだった。
ジェレミアが子供の素性を知る、数日前の事であったとか。
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2008.06.05作成
2008.06.10-2008.06.15up
2008.07.12再録
(「母親役選出」続編/藤堂とゼロ)
膝の上でずっと動かなかった仮面が動いたのに気づき、藤堂は閉じていた目を開ける。
「ん‥‥ぁ、すまない。眠っていたか?」
状況を把握したゼロは少し慌てたように身を起こした。
「問題ない。こんな時くらいゆっくり休めば良い」
正座に慣れている藤堂にとっては、ゼロの軽い仮面が膝に乗っていたくらいで痺れたりする事はない。
しかしゼロは時計を見ると首を振る。
「‥‥もう十分休ませて貰った。藤堂、まだ時間は有るか?」
「あぁ、それは‥‥平気だが?」
藤堂は「今度はなんだ?」と内心で少しばかり警戒しながらもそれを表に出す事無く尋ねる。
「‥‥礼代わりになるか判らないが食べていくと良い。少し待っていてくれ」
ゼロはそう言うと藤堂の返事も待たずに奥へと消えていく。
程なくしてトントンカタカタと音が届いてきて、料理をしているのだと察した藤堂は驚いた。
暫く固まっていた藤堂だが、良い匂いが漂ってくるに至って、苦笑を漏らす。
「‥‥これではどちらが母親役だか、判らないな‥‥」
藤堂の呟きは誰の耳にも届く事はなかった。
そして藤堂が食べた夕食は、今まで食べたどの和食よりも美味しかった。
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2008.06.09作成
2008.06.10-2008.06.16up
2008.07.08再録