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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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★明日咲様へのリクエスト作品★
(「攻撃相手が違うだろ!」の続編/ネリ達にゼロバ.レ)

「ジェレミア卿。あのナイトメアモドキを格納庫に戻して来い。それからラクシャータに言って整備もちゃんとして貰え」
『何故デシタ!?貴方様はゼロ!傍に!』
「確かに傍にいる事は認めるといったが、仕事をしないのならば邪魔だ。わかったら今言った事をして来い」
『理解は幸せ!直ちにイキマセ!』
メカオレンジはそう応じると敬礼をして踵を返しナイトメアモドキに歩いていった。
それを見て、藤堂と四聖剣はホッと息を吐いた。
「藤堂。怪我はなかったか?」
「あぁ。‥‥平気だ。‥‥しかし、なるべくと言っていたが、かなり沸点が低そうだったんだが‥‥」
「そうだな。普段は冷めていて穿った見方をする奴なのに、キレるのは早いし、そうなると手がつけられないとの評判は聞いた事があるな」
さらっと言ってのけるゼロに、藤堂も四聖剣もこの先を思ってげんなりとした。
「あのさ、ゼロ。さっき聞きそびれたんだけど、藤堂さんが目の敵にされるのって?」
朝比奈がなんとか気を取り直して尋ね直す。
ゼロは何故か周囲を見回して、他に人がいない事を確認すると、一つ息を吐いてから答えた。
「それは、だな。‥‥わたしが藤堂を特別に想っている事が何故かオレンジ君にバレているからだな」
仮面の正面はさり気に藤堂や四聖剣から外されていて、「ぅお、テレてるのか!?」と卜部はゼロを可愛いと思ってしまう。
「それって‥‥」と朝比奈は聞き返しながら、「今までそんな素振りなんて見た事無いのに‥‥」と首を傾げる。
「それは、恋愛対象として特別、と捉えて良いのか?ゼロ。‥‥ちなみに、両想いですか?中佐」
千葉は何故か冷静に、尋ねるところは尋ねる。
「あぁ。恋愛対象として、だな。わたしはそう言う意味で藤堂が好きなんだが‥‥。何故オレンジ君にバレたのかは不思議に思っている」
ゼロが答えたので、四聖剣の視線は藤堂に向かい、4人は固まって頬を染める藤堂を発見した。
「と、‥‥藤堂中佐?いかがなさったか?」
仙波が恐る恐る尋ねると、藤堂はハッとした後片手で口の辺りを隠した。
「い、‥‥いや。る‥‥ゼロがそんな事を言ってくれたのが‥‥初めてだったので、‥‥な」
テレる藤堂に4人は呆れの混じった驚きの表情を浮かべてしまう。
「そ、‥‥そうだったかな?い、いや。わたしはちゃんと好きだと言った事は有ったはずだ。何度も」
「ゼロ。『恋愛感情として』の好きと言う事ではないか?中佐が聞きなれていないのは。それとも『愛している』とも言ったか?」
「そッ‥‥そんな恥ずかしい事は言えないッ」
「‥‥‥何が言えないと?」
唐突に割って入ってきた声に、ゼロと藤堂と四聖剣は入り口を振り返る。
そこには扇とコーネリアとギルフォードが立っていた。
「扇?何故連れてきた?」
「あその、すまない、ゼロ。‥‥ラクシャータからおれん‥‥じゃなくてジェレミアのナイトメアモドキが来たと連絡が有って、そしたらもう平気だろうって‥‥」
「あぁ、‥‥そうか。扇。オレンジ君はこのまま騎士団に残る事になった。『オレンジ』とは言わないように徹底させておけ。特に玉城に」
ゼロの言葉に、扇は引きつりながらも頷き、気の毒そうな視線を藤堂と四聖剣に向けた。
それからコーネリアとギルフォードをゼロと藤堂達に任せると、扇は今のゼロの指示を徹底するべく、立ち去って行った。

「‥‥で?何が言えないと?」
扇が姿を消してから、コーネリアはゼロに向き直り尋ねる。
「『愛している』とか『恥ずかしい』とか聞こえていましたね、姫様。テロ等をしながら恋愛とは余裕のある事ですな」
「‥‥聞こえていたのか。テロリストだからと全てを諦めなければならない理由にはならないと思うが?」
「ほぉ?それで?黒の騎士団の総司令は誰と恋愛をしていると?」
コーネリアは面白そうに尋ねる。
「‥‥‥これでは立場が逆ではありませんか?もう少し捕虜らしくなさって頂きたいですが?」
「だから抵抗はしていないだろう?それよりも気になるのだから答えよ、ゼロ。まさか『オレンジ卿』か?」
コーネリアの開き直りとも言うべき言葉と、それに続く問いに、藤堂と四聖剣はげんなりとし、ゼロはきょとんとする。
「‥‥オレンジ君?何故そこにオレンジ君の名前が挙がるのですか?」
心底不思議そうにゼロは言って仮面を傾けた。
四聖剣はオレンジとの間に有るのが恋愛感情では有りえない事を知って藤堂の為にホッと息を吐く。
つまりゼロとオレンジの間に有るのはゼロに向かう一方的なベクトルだけのようだ。
「ならば‥‥」
コーネリアが次の人物を挙げようとした時、どどどどど‥‥と地響きつきで派手な足音が近付いてきて、その場の全員が音を振り返る。
『貴方様はゼロ~~~!』
当然ながらやって来たのは、話題に上っていたメカオレンジだった。
藤堂がゼロの前に立ち塞がり、その前に四聖剣が布陣してゼロとの間に垣根を作る。
ギルフォードはコーネリアを庇いつつ下がる。
オレンジはゼロの姿が遠い事に即座にキレた。
『抹殺ッ!滅殺ッ!排除~!』
藤堂は溜息を吐くと「ゼロ下がっていろ」と声を掛けてから四聖剣を従えつつオレンジとの戦闘に突入した。

暫く唖然として先刻に酷似したやり取りを見ていたコーネリアとギルフォードはぽつねんと佇むゼロの呟きを耳にした。
「‥‥良いな。じゃれてるなんて。‥‥わたしは除け者か‥‥」
羨ましそうに呟かれた寂しさ混じりの言葉に、二人は顔を見合わせて笑みを見せる。
さっきまで敵としか思っていなかったというのに、たった一言だけで憎めない存在になった事を互いに確認してしまったのだ。
「‥‥ゼロ。もしかすると先程の話は『奇跡の藤堂』か?」
質問者がコーネリアとは思っていないのか、ゼロは戦闘を見ながらこくりと頷いた。
その仕草があまりにも可愛く見えてしまってコーネリアはうろたえた。
そしてそれは側で聞いていたギルフォードにしても同じだった。

いい加減うんざりしてきた朝比奈は「やっぱりゼロに止めて貰おう!」と思ってゼロの姿を探し、そして声を上げた。
「ゼロぉ!何呑気に敵将と井戸端会議なんてやってるのさ。まずはこれどうにかしてからにしなよー」
半分以上オレンジをコーネリアに嗾ける為だったのだが、オレンジは全く反応せずに藤堂との戦いに終始している。
当然ながら朝比奈は疑問に思った。
仲の良さそうなゼロとコーネリア、コーネリアが側にいても藤堂の時のようにキレないオレンジ、何かおかしい。

「ちょっと待った~~~~!!!」

朝比奈は声を張り上げ、藤堂とオレンジとの戦いも止まって朝比奈は注目を集めた。
「藤堂さん。一つ聞いても良いですか?」
その朝比奈の言葉に嫌な予感を覚えた者は二名。
ゼロと藤堂は揃って「気づいたか‥‥」と苦く思い、この場でそれを言われるとどう転ぶか判らなくて「危険かも知れない」とも思うのだ。
なので、藤堂の答えは「ダメだ」の一言だったりする。
一瞬漂う「さてどうしたら?」と言った空気に、動いたのはオレンジで、ゼロに向かって突進する。
その勢いにゼロが思わず後退したら、今度はコーネリアとギルフォードが間に立ち塞がっていて藤堂と四聖剣を驚かせた。
そして更に驚いた事に、オレンジが勢いを止めて手前で立ち止まった事だ。
『‥‥‥‥‥貴女様は皇女殿下‥‥‥』
まるで今気づいたとでも言うように、オレンジはぽつりと呟いた。
オレンジの言い回しに「あれ?」と思った者が順次ゼロに視線を向けて行き、集まった視線にゼロは嘆息した。
「‥‥‥‥まさかとは思うがゼロ、お前‥‥‥」
ゼロは仮面の下で気づかれないように藤堂を見て、藤堂もまた諦めに近い表情を見せているのに気づいてゼロは肩を竦めた。
「その通り、だと申し上げればどうなさいますか?」
ゼロとコーネリアの意味深な会話に、ギルフォードと四聖剣が首を傾げる。
「‥‥なるほどな?オレンジ卿がゼロについた時点で気づくべきだったな、すまない。わたしもお前に味方しよう。構わないだろう?」
「姫様ッ!?」
ギルフォードの驚きの声が広間に響き、ここまでとは思っていなかったギルフォードは主を凝視する。
「‥‥‥‥本当に宜しいのですか?わたしは‥‥」
逆にゼロは戸惑った声音で問いかける。
「構わない。クロヴィスとユーフェミアの事は確かに残念だし悲しかったし辛かった。‥‥だが、お前のそれに比べればまだマシなのだと思うからだ」
コーネリアはそう言ってゼロを抱きしめた。
オレンジは黙ったままだったが、若干二名が動く。
「姫様ッ!」
「ゼロッ!」
ギルフォードがコーネリアをゼロから引き離し、解放されたゼロを藤堂が庇う。
そして途端に騒ぎ出すオレンジは暴れだす前になんとか四聖剣の男三人が押し留める事に成功した。
「‥‥第二皇女。弟妹の死を構わないと言い、ゼロを抱きしめたのは何故か話して貰おうか?」
千葉がコーネリアに向かって詰問する。
「‥‥そうか。『奇跡の藤堂』とオレンジ卿は知っているようだから言うが、ゼロも我が弟だ。それと知って敵対し続ける事などは出来ない」
「「「「「‥‥‥ッおとうと~~~!???」」」」」
四聖剣とギルフォードの声が重なる。
「ぁーあ。バレたぞ、藤堂。後で四聖剣には口止めしておけよ」
ゼロは藤堂の腕の中に納まったまま、嘆息してから藤堂に指示を出す。
「‥‥判っている」
藤堂はゼロを抱きしめる腕に力を入れながら憮然として応じた。
もっとも四聖剣が藤堂に従わない事はほとんどないので、口止めは楽勝だろうとは思う藤堂だが。
「‥‥ところで『奇跡の藤堂』!いつまでゼロを抱きしめている!?オレンジ卿。引き剥がせッ!」
コーネリアの声にオレンジがバージョンアップしたのに気づいた四聖剣は慌てて抑える手に力を込めた。
四人に共通する思い、それは「従う相手が違うだろッ!オレンジ~~~!!」というものだったはずだ。



───────────
作成 2008.06.14 
アップ 2008.06.26 
 

PR

「扇、ラクシャータ。後を頼む。‥‥藤堂と四聖剣は話がある」
アジトに着くなり、格納庫内で、ゼロは告げる。
「あ、あぁ‥‥わかった」
「い~わよぉ。とりあえず、ナイトメアフレームの修理から始めようかしらねぇ」
扇は気負って、ラクシャータは面倒そうに、それぞれ頷いて請け負った。
ゼロは藤堂と四聖剣の返答を待たずに踵を返す。
付いて来るも来ないも自由と言わんばかり、或いは付いて来る事を疑っていないのか。
藤堂は、四聖剣を振り返るとゼロの後を追い、四聖剣もまたそれに続いた。

ゼロは小会議室の一つに場を設けた。
長方形の机には人数分の椅子が並んでいる。
これまでこのメンツでこの場所を使った時は、ゼロと藤堂が向かい合って座り、四聖剣は二人ずつに分かれて座っていたのだが。
ゼロが座った後、藤堂はゼロに右隣を示されて、座る位置を変えた。
それに倣うように、四聖剣もまた、座る位置を変える事になった。
まず朝比奈が、それならばと藤堂の隣に座り、それを呆れたように見ながら仙波が藤堂の向かいに、卜部がその隣に座る。
‥‥そう、今回のメインとなる千葉が、普段は藤堂が座っているゼロの向かいに座る事になったのだ。

「‥‥さて。まずは、状況を訊こうか?仙波、卜部、朝比奈」
全員が座り、沈黙が降り切る前に、ゼロがそう切り出した。
「えぇッ、そこから?」
朝比奈が驚いた声を出す。
「なんだ?問題でもあるのか?」
ゼロは朝比奈に仮面を向けて訝しげに尋ねる。
「いえ、全然。さ、仙波さん、説明説明」
朝比奈は首を振って否定した後、説明を年長者へと押しつけた。
「む‥‥。わしには、敵機を追跡中に、千葉の月下が突然制御不能になったように少し蛇行して見えた」
押しつけられた仙波は顔を顰めて朝比奈に視線を向けたが、いつもの事なので苦情は後回しにして、ゼロに説明する。
「あぁ、おれにもそう見えたね。んで、敵に隙だと思われたのか、そこを突破しようと‥‥反転して来たんで、仕方無くその場で殲滅しちまったわけだよ」
卜部もまた仙波の言葉に頷いた後、先を続けた。
「ほら、逃がす方がマズイじゃない?だから、最悪の事態にはならなかったって事で、ねぇ?ゼロ」
朝比奈が最後にそう締めくくった。
「‥‥朝比奈」
藤堂が、減刑を求める朝比奈の名を呼んで黙らせる。
「‥‥千葉。月下の不良か?単なるミスか?‥‥それとも、作戦中に別の事でも考えていたか?」
ゼロはまっすぐ千葉と向き直って訊ねるのだが、その声に藤堂は微かに眉を寄せた。
これまで、ゼロは失敗をした者に対して原因を尋ねる時、その声には苛烈さや厳格さが混じっているのが常だったが、今の声には感じられなかったからだ。
「申し訳ない。‥‥わたしのミスだ。手を滑らせたのは確かなのだから‥‥」
千葉はゼロの仮面から視線を逸らせる事無く、キッパリと言い切った。
そして、沈黙が落ちる。
何かを考えているのか、ゼロが次の質問なり、言葉なりを発しないので、誰もがゼロと千葉とを見比べるように首を巡らせるだけで途方に暮れた。
「‥‥ゼロ?」
藤堂が流石に訝しんで声を掛けるとゼロは溜息を吐いた。
「唯のミスだと、そう認めるのか?千葉」
「そうだ。わたしのミスには違いがない」
千葉は躊躇わず、もう一度繰り返す。
「‥‥ならば、次の作戦時、謹慎と言う名目で外さなければならなくなるが?」
「なッ、それは困るよ、ゼロ。おれ達四聖剣は四人一緒じゃないと」
「朝比奈ッ。少し黙ってろ」
朝比奈が慌てて抗議すると、藤堂が注意する。
「唯のミスだと言うのならば、再発する可能性がある。ならば使うわけには行かないのは当然だと思うが?」
ゼロは淡々と一同に同意を求める。
当然と思うからこそ、四聖剣は慌てる。
「千葉。何か別の事を考えていたのではないのか?」
「そうそう。悩みがあるなら相談に乗るからさ。抱え込んでないで言ってみろって」
「そうですよ、千葉さん。ゼロがいると話し難いって言うなら外して貰うし」
仙波、卜部、朝比奈の順で、「だから唯のミスじゃない事にしとけ」と暗に付け加えながら言い募った。
「‥‥‥‥‥‥」
それでも何も言わない千葉に藤堂もまた声をかけた。
「千葉。‥‥仙波達の言う通りなら、話してくれないか?」
「中佐‥‥しかし、‥‥ミスはミスです」
「ふぅん?確かにわたしは結果を大切にしている。しかし過程の全てを蔑ろにしているつもりはないぞ?」
頑なな千葉に、ゼロは面白そうな声を掛ける。
「ほら、千葉さん。ゼロだってこう言ってるじゃないですか。だから、ね?話してくださいよ」
朝比奈がその尻馬に乗った。
「この部屋の外では単なるミスだった、と言う事で通しても良い。その後、藤堂に厳重に叱って貰った、と言う事にしても良いと思ってはいるが」
ゼロの破格の妥協に、藤堂と、千葉以外の四聖剣は驚き、千葉は折れた。
「‥‥わかった。‥‥確かに、あの時。わたしは一瞬別の事に気を取られた。‥‥逃げる敵機を追う我々に、別の景色が被ったような気がしたんだ」
折れた千葉は、すぐに白状した。
その言葉に、ゼロは仮面の下で「まさか‥‥」と声にならない声で呟いて渋面を作り、朝比奈はポンと両手を打った。
「あッ、既視感って奴ですね?千葉さん。‥‥その別の景色って言うのは?」
「‥‥今日、道案内をしてくれた‥‥相手だ。会った時に、逃げていたから‥‥それが被った」
千葉は言い難そうにそう告げると、細く息を吐いた。
「逃げて?それって、犯罪絡み?それとも騒動?」
朝比奈が首を傾げる。
「‥‥いや、どちらも違う。‥‥どちらもブリタニアの学生だったから‥‥。強いて言うなら騒動、の方だろうが‥‥」
千葉が首を振って応じた。

───────────
作成 2008.02.21 
アップ 2008.06.25 

★疾風真神様へのリクエスト作品★
(朝ゼロi.n騎.士団/風邪引き朝を看病するゼロ/ゼロバ.レ任意)

「ちょっとちょっとぉ」
ラクシャータの呆れたような声が唐突に格納庫内に響き渡り、みな作業の手を止めてラクシャータの姿を探した。
ラクシャータは月下や紅蓮が並んだ区画にいて、目の前には朝比奈の姿があった。
「なぁにしてくれるわけぇ?もっとちゃんと見なさぁい。どうやったらこの配線切断できるのぉ?」
傍に寄ってきた残りの四聖剣がラクシャータの指す朝比奈の手元を見て絶句した。
操作系のメインとなる為それなりの太さがある線がものの見事に切断されていたのだ。
単なる整備でこんな状態になるなんて普通ならば有り得ない。
「朝比奈‥‥」
千葉もまた呆れた声を出した。
格納庫の入り口付近で扇と話をしていたゼロはその様子を見上げていたが、扇との話も一区切り付いていた事だしとそちらに足を向けた。
「ラクシャータ。予備はあるのか?」
「月下や紅蓮の線は今ないわよぉ。無頼のならあるからとりあえずそれつけとくけどぉ。操作伝導率が下がるわねぇ」
話に割り込んできたゼロに、ラクシャータは難しい顔をして応じる。
「そうか。月下専用の配線は至急取り寄せるようにしよう。‥‥藤堂」
「‥‥なんだ?ゼロ」
ゼロは月下隊長機の傍から様子を見ていた藤堂に声を掛け、藤堂が返事をすると朝比奈を指差した。
「朝比奈を借りるぞ。どの道、こんなミスをするようではこれ以上整備をさせるわけには行くまい」
「‥‥‥わかった。ゼロ、任せる」
藤堂は数瞬の間をおいてから頷いた。
「なッ‥‥藤堂さん、おれ出来ますよ」
「煩いぞ、朝比奈。‥‥藤堂、卜部も少し借りる。卜部、黙って朝比奈を連れて付いて来い。方法は任せる」
今度はあっさり頷いた藤堂に、ゼロは卜部に指示を出してから踵を返して先に歩き出した。
「ほら、行くぞ朝比奈。中佐の許可貰ったゼロに逆らうのは時間の無駄だって」
卜部はそう言ってそれでも動かない朝比奈の腕を掴んでからハッとして藤堂を振り返る。
「卜部、急げ。‥‥ゼロを待たせているぞ」
藤堂は小さく頷いてからそう指示を出し、卜部はひょいっと朝比奈を担ぎ上げた。
「なッ卜部さん!?」
「いいから大人しくしてろ」
卜部はそれ以上朝比奈の言葉を聞かずにゼロを追いかけたのだった。

到着した場所は朝比奈の部屋でも医務室でもなく何故かゼロの自室で、卜部は初めて入る部屋を見回しながら奥に入り、朝比奈をゼロのベッドに下ろした。
「すまないな、卜部。朝比奈、体調管理も仕事の内だぞ。無理を重ねても今回のように失敗するだけだ」
「そうそう。中佐も心配してたし。‥‥てかゼロ。良く判ったな。おれ等も気付かなかったってのに」
「来た時から大人しいから気になっていた。卜部すまんが着替えさせてやってくれ。終わったら戻って良い。まだする事があるだろう?」
ゼロはそう言うと着替えを卜部に渡して寝室から出て行こうとする。
「着替えって‥‥ゼロの服か?なんなら朝比奈の部屋から取って来るが‥‥」
卜部は渡された着替えの服を広げながら提案する。
「そうか、では頼む。‥‥それから、今後このような無茶をしないように後で言いきかせておけ」
「あ、あぁ‥‥。そうしよう。あ、そうだ、ゼロ。何だってここに連れて来たんだ?」
踵を返して扉に向かいながら、卜部は尋ねる。
「お前達の部屋には台所が付いていないだろう?ここならば氷や水の調達が楽で良い」
「へ?台所、付いてるのか?」
「あぁ。ほら、急げ、卜部。朝比奈が悪化する」
「あ、そうだな、すまん」
指摘された卜部は慌てて部屋を出て行った。

【朝比奈】
ラクシャータの声を聞いて我に返って手元を見て、おれは固まった。
有り得ない、有り得なさ過ぎる。
ちょっとぼーっとしていた事は認めるけどさ、まさかこの配線切断するなんて有り得ない。
けれど、目の前には今切断されたばかりに見える配線と、右手に持つペンチが、否定しきれない現実を突きつけていて。
「朝比奈を借りるぞ。どの道、こんなミスをするようではこれ以上整備をさせるわけには行くまい」
「‥‥‥わかった。ゼロ、任せる」
唐突に飛び込んできたゼロと藤堂さんの会話に、更に蒼白になっておれは慌てた。
「なッ‥‥藤堂さん、おれ出来ますよ」
反論するも、ゼロに「煩いぞ、朝比奈」の一言で即座に却下されてしまった。
余りにも早い返答に、おれが固まっていると、いきなり浮遊感を伴って視界が回った。
「なッ卜部さん!?」
卜部さんの肩に担がれた自分を発見しておれは慌てた。
「いいから大人しくしてろ」
卜部さんの呆れたような声に、おれはそれでもジタバタともがくが、その抵抗は何故か思ったよりも弱いものだった。

目を開けると場面が切り替わっていた。
どうやら意識がなくなっていたらしい。
おれはベッドで横になっていて、酷く喉が渇いていると思った。
「あぁ、気づいたのか?朝比奈。まだ眠っていていいぞ?」
「‥‥ぁ、‥‥ゼ、ロ‥‥?」
かすれてしまって巧く声が出ないおれの視界に、薄暗い部屋の中ゼロの仮面が近づいてきた。
「喉が渇いているみたいだな。‥‥飲めるか?」
はっきり言って薄暗い中に浮かぶ黒光りする仮面は不気味である。
しかし、ゼロの普段とは余りにも掛け離れた行動に驚きすぎて不気味な仮面も余り気にならなかった。
誰が信じるだろうか?
甲斐甲斐しく病人(おれだけど)の看護をするゼロなんて。
横になっている人に対して飲み物を飲ませるのも手馴れているし、そうまるでずっとそう言う介護とかをしていた人みたいなのだ。
「イメージが全然違う!」と思うのだが、介添えするゼロの手が気持ちよくて些細な事に思えてしまう。
「‥‥朝比奈?どこか辛いのか?」
目を細めてついうっとりしていたおれに、ゼロの心配そうな声が降って来る。
「ぇ、‥‥ゼロの手が気持ち良いなぁって」
思考力も落ちているのか、素直に答えてから流石に「あ、まずいかな」と思ったが。
しかしゼロは溜息を吐いた後、「仕方ないな」と椅子をベッドに更に引き寄せて座りなおした。
「暫くこうしていてやるから、大人しく眠っておけ」
ゼロはそう言うと、白い手をおれの額に乗せた。
「‥‥白ッ!?」スルーしそうになったけれど、いつの間にかゼロが手袋を外している事に気づいて驚いた。
驚きの声は音にならなかったので、ゼロは気づかないで白い手を引っ込める様子も無い。
おれはなんだか色々なゼロを見れた気がして嬉しくなり、「たまには風邪を引くのも良いかも」なんて不謹慎な事を思いながら、眠りについた。

【ゼロ】
みんな元気で、風邪を引いたと言う報告もなかったから、余り考えた事がなかった気がする。
ブリタニアと言う強国を相手に戦争を吹っかけようとしていたからつい局地的な視野が疎かになりがちなのだろう。
もしかするとおれが気づかなかっただけで体調の悪かった者は他にもいたかも知れないが。
とにかく、気づいたのは朝比奈が最初だったのだ、きっとそれだけだったのだと思う。
藤堂に許可を得て、朝比奈を隔離したのも、これ以上足を引っ張られては困ると思ったからに過ぎない。
なのに。
おれは朝比奈が眠っている間に、クラブハウスに連絡を入れ、戻れない事を告げている。
咲世子さんには苦情を言われたが、ナナリーには取り成してくれると言ってくれたから安心して任せられると、おれは戻らなかった。
うんうんと苦しそうに唸る朝比奈に、思わず「もしこのまま‥‥」なんて思ったのがいけなかったのだろうと推測する。
死はいつも近くに在ったから、目を覚ますまで不安だと思った、それだけのはず。
目を覚まして平気そうなら、後はソファにでも横になって仮眠を取るつもりも満々だった。
なのに。
「ぇ、‥‥ゼロの手が気持ち良いなぁって」
消え入りそうな声で朝比奈がそう言うものだから、側を離れられなくなった。
おれは溜息を吐いた後、「仕方ないな」と呟いてから、椅子をベッドに更に引き寄せて座りなおす。
「暫くこうしていてやるから、大人しく眠っておけ」
おれはそう言うと、手を朝比奈の額に乗せた。



翌朝。中々出てこないゼロと朝比奈を心配した藤堂と四聖剣の残る三人はゼロの私室の前で立ち往生していた。
風邪を引いた部下(同僚)を結局任せきりにしてしまったのだ、忙しいゼロに。
ノックをするかどうかで迷っているとC.C.がやって来た。
事情を話して中に入れて貰った4人とC.C.が見たものは。
ベッドの中からゼロの仮面を愛しそうに撫でる朝比奈と椅子に座ってベッドに突っ伏して眠っているゼロの姿だったそうな。



───────────
作成 2008.06.14 
アップ 2008.06.24 
 

※「暴走」の続きです。

カレンが室内に見たモノは、惨状とも呼ぶべき状態。
ソファは切り裂かれ、切り口からは綿が溢れているし、机は真っ二つになって傾いている。
壁や天井にも幾つも線が走っていたし、床にも何かの破片が散乱している。
メカオレンジがおかしな格好で固まっているのはともかく、全員が身動ぎしないのに、カレンは少し怯んだ。
剣を持ってる卜部と朝比奈、銃を手にした千葉、四聖剣の中で一人武器を持っていない仙波は破片を避けて壁際に立っている。
C.C.は一人、ソファに座っている。
カレンはゼロの姿を求めて視線を動かし、仙波に隠れていた藤堂とゼロを見つけて目を見張った。
「ゼロッ、どこか怪我を!?」
膝をついた藤堂が、やはり床に膝をついているゼロの様子を伺っているのだ。
「放っておけ、カレン。ゼロがうっかり禁句を言っただけだ。‥‥そうだな。とりあえず、武器は没収しとけ。危ないからな」
呆れたC.C.の言葉に、カレンは結構ドジな面もあるルルーシュを思い浮かべて、思わず納得してしまった。
なので頷いてメカオレンジに向かったのだが、そんなカレンを見た四聖剣は驚いた。
「ゼロ命!」なカレンならば、C.C.につっかかるか、気にせずゼロの様子を見に行くかすると思っていたからだ。
カレンはメカオレンジに対して手を差し出した。
「武器を。ここにいるって言うなら、渡せ。でなければ、ゼロが反対したって、わたしが、あんたを排除する」
ギギギィ‥‥と、メカオレンジの上がったままだった手が下がり、姿勢がゆっくりと戻ってカレンに向き合った。
「‥‥‥‥言い訳ムダ」
ポツリ、とメカオレンジが呟いた言葉に、カレンは訝しげな視線を向ける。
「‥‥わたしは武器を渡せ、と言ったんだ。言い訳でもなんでもないだろうが。渡さないなら全力で排除しに掛かるわ」
気を取り直してカレンは再度宣告した。
「‥‥‥‥‥言い訳ムダ」
しかしメカオレンジはカレンの言葉を聴いていないかのように、再び同じ台詞を口にした。
「ッかぁ~~。追い出すッ!」
頭に血を上らせたカレンがメカオレンジに飛び掛ろうとするのを、卜部に持っていた剣を投げ渡した朝比奈が慌てて止めた。
「ま、待った、紅月さん。落ち着いて。ちょっとだけ待った、ホントに少しで良いから」
後ろからカレンを羽交い絞めにしながら、朝比奈は上擦った声を掛ける。
必死な様子の朝比奈に、カレンは少し暴れるのをやめた。
「何ですか?朝比奈さん。庇うなら、一緒に」
「ぅわ、そーじゃなくて。‥‥。藤堂さん、ゼロ落ち着きました?」
カレンからギロと睨まれた朝比奈は、慌てて否定してから、藤堂に声を掛けた。
「‥‥ゼロ。まだ無理か?」
藤堂が、ゼロにそっと声を掛けた。
ゼロは仮面から右手だけを外すと藤堂の肩を掴み、顔を上げた。


またやってしまった。
なんたることだ!手が勝手に剣を持ちあの方に襲い掛かろうとするとは!
一度は許された、だが今度は許される事はないだろう。
折角、温情を頂けたと言うのに!
自らそれを壊してしまったとは!
言い訳など、最早欠片も出て来ない程の大失態だ!
穴があったら埋まりたい、いや、いっそ造ってしまうか?
あの方を傷つけるなど、己であっても、いや、己だからこそ余計に許されない!
滅殺だ、瞬殺だ、抹殺するのだ!


ゼロは藤堂の手を借りて立ち上がり、その肩にすがりながらも、声を出した。
「──わたしは、『いい加減にしろ』と言ったはずだぞ、ジェレミア・ゴットバルト」

低い、それはあまりにも低い声だった為、室内の空気が、人間毎一気に固まった。
そう、C.C.さえも例外ではない程に。

「‥‥‥んーと?ゼロ?それって、『言い訳ムダ』ってのの事?どんな意味?」
「ん?‥‥ぁあ、それは別にカレンに言った訳じゃない。ジェレミアが言い訳しようがない程後悔してるってだけだ」
「へ‥‥‥?どうしてわかるの?」
カレンが呆然として、思わず口調もゼロに対するものではなく、ルルーシュに対するそれに変わっている事にも気付かず尋ねる。
「ジェレミアは、‥‥言ってみれば二重人格か?分裂症かな?ジェレミアにわたしを傷つける意思はないそうだ」
「だが、先程のあれは‥‥」
千葉が、まだ銃を構えたまま、口を挟む。
「あれが別人格だな。禁句で浮上してくるらしい。そちらはわたしを恨んでいる。復讐したいと思っているようだ」
あっさりと言うゼロに一瞬唖然とした一同だったが、四聖剣とカレンは、慌ててメカオレンジとゼロの間に立ち位置を変更した。
「ッてそれが判ってるならどうしてここに来たんですかッ!」
四聖剣よりもゼロに近かったカレンが思わず、ゼロに対してそう叫んでいた。
「煩いんだ。人格AとBとが言い合うところなんか、ハッキリ言えば聞いていたくはない。‥‥耳鳴りもするから止めに来た」
「‥‥不徳が最大」
ポツリ、とメカオレンジが呟く。
「C.C.。何か言う事はあるか?」
「‥‥すまなかった。これからはそいつでは遊ばないようにしよう。‥‥これで良いな?」
「今回は、な」



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作成 2008.04.10 
アップ 2008.06.23 

★hidori様へのリクエスト作品★
(千葉ルルというか、女性陣とゼロ(ルル)の話)

その時、格納庫にいたほぼ全員が驚愕の声を上げた。
ゼロが格納庫に顔を出す事は、それ程珍しい事ではない。
ラクシャータに用が有ったり、ガウェインのメンテナンスをする為に訪れたり、その他にも各種所用で来る事があるからだ。
だからゼロがやって来た事に関しては誰も驚いたりはしなかった。
驚いたのは、千葉がゼロの元へと向かって行った事だ。
‥‥いや、それだけならば、「ゼロに用事があるんだろう」と思うだけで珍しいとは思っても驚き尚且つ声を上げたりはしなかっただろう。
声を上げる程驚いた原因は、千葉の言葉から続いた一連の会話にある。

「ゼロ。この前はありがとう。良ければ礼がしたいのだが‥‥」
「この前」が何を指すのかわからないが、「作業中に持ち場を離れてまで言う事でもない気がする」と言うのが大半の思いだ。
「別に大した事ではない。そう気にするな」
ゼロはさらっと受け流す。
「いや!そうはいかない。‥‥それに‥‥実はまた頼みたいと思っているし、だから是非何か」
しかし千葉は譲らずに首を振った後、心持ち躊躇い気味に付け加える。
「それは別に‥‥。いつもと言う訳にはいかないが、それで良ければ構わないし、礼にも及ばない」
ゼロもまた千葉の様子に戸惑いながら応じる。
すると千葉は誰もが初めて目にするのではないか?という程の満面の笑顔を見せて喜んだ。
「ありがとう、ゼロ。嬉しい‥‥」
ゼロは目の前で自分に向けられたその表情に、仮面の下で驚いて目を見張る。
うっかりそれを目撃してしまった朝比奈と卜部はあんぐりと口を開けて、初めて見る同僚の表情に唖然としてしまっている。
しかしゼロや周囲が驚きから冷めぬ内に、千葉は表情を改め、真面目な面持ちになるとゼロの手を持ち上げて握り締めた。
そして問題の、驚愕の声を上げる原因になった言葉を千葉は発したのだ。
すなわち──

「ゼロ!‥‥いっそ、わたしの嫁になってくれ!!」

突発的な出来事にはからきし弱いゼロは、当然ながら驚いて、手を握られている事も忘れ果てているように固まっていた。

まず我に返ったのは朝比奈だった。
「ち‥‥‥ちちちちち千葉さんッ!!何言ってるんですか!?曲がりなりにも千葉さんは女性なんですから嫁は貰えないですよ!」
しかしツッコミどころは間違っている。
千葉はゼロの手を握ったまま朝比奈にチラと視線を向ける。
「何を言う、朝比奈。わたしよりもゼロの方が良い嫁になる。そしてわたしはゼロよりも良い婿になってゼロを守るから釣り合いは取れている」
きっぱりすっぱり言い切る千葉に、「釣り合いの問題じゃないですよ、千葉さんッ!」と朝比奈は再度ツッコミを敢行する。
「何故だ?‥‥わたしはゼロを幸せにしてみせるし、必ず守る。だからゼロ。嫁に来い」
千葉は朝比奈に対して一言言って首を傾げた後、再びゼロに向き直って真正面からプロポーズをおこなう。
勿論それを黙って見ている事が出来ない者はいる。
ディートハルトが進み出ようとするのを素早く沈めてからカレンが突進する。
「千葉さん、ずるいですッ!」
「ダメだぞ、紅月。わたしに譲る意思はないからな」
カレンのゼロに対する想いを知っていても千葉は大人気なくもそう言い切る。
「そんな酷いです、千葉さん!とにかくまずその手を離してくださいッ!」
カレンが尚も食い下がっていると、いつの間にかラクシャータと井上が近寄っていた。
「確かに千葉さんだけなんてずるいわね。わたしだってゼロを是非お嫁さんに貰いたいもの」
井上がカレンに同意しつつも言うその言葉に、旧扇グループは絶句する。
「あらぁ。あんた達に渡すくらいならぁ。わたしが貰うわよぉ、嫁にぃ。だぁからぁ、千葉、その手を離しなさいねぇ」
ラクシャータまでもが、ゼロを嫁にと言い出し、男性陣は全員パニック状態に陥った。
カレンはまだ判るのだ、常日頃からゼロへの想いを隠そうとしないから、気づいていないのは当のゼロだけだったからだ。
しかし、千葉の奇行に始まって、井上とラクシャータが参戦するに至り、揃いも揃って「嫁に」と言う彼女達に疑問を覚えたのだ。

「‥‥まさかとは思うけどよ。ゼロって女なのか?」
玉城がその可能性に思い至って、恐る恐る尋ねる。
しかし、「馬鹿を言うな。それでは結婚なんて出来ないではないか」と千葉に一蹴されてしまう。
当事者であるところのゼロは未だに放心状態にあるのか無反応なので、説明を求めたい男性陣は途方に暮れた。

「‥‥千葉。とりあえず、ゼロの手を離してやれ。それから、事情を説明しろ」
藤堂が男性陣からの視線に押されるようにして、声を掛けた。
「すみません、中佐。ゼロの返事を聞くまで待ってください」
しかし、藤堂至上であるはずの四聖剣だと言うのに、千葉はそう言って藤堂の言葉を後回しにしてしまったのだ。
これに慌てたのは当然ながら残りの四聖剣である。
「千葉ッ!いい加減にしとけよ。中佐の言葉まで退けるなんて」
「千葉。そのようなプライベートな事は、せめて任務外にするべきであろう?」
「う~ん。ゼロ、返事してあげたら?そしたら落ち着くみたいだし?」
卜部と仙波が千葉に注意をするが、朝比奈は千葉に言っても無駄な事を早々に察してゼロに声を掛けた。
「‥‥‥わたしは男で、嫁になるのは無理だが?何故、そう言う話が出てくるのだ?千葉」
ゼロはまだ状況が良く判っていないようで、断りながらも説明を求めている。
それは遠巻きで見守るだけの男性陣も是非知りたいと思っていた事なので、固唾を呑んで返事を待つ。
しかし続いた千葉の言葉は説明ではなかった。
「平気だ。手続きや形式上はゼロが婿、わたしが嫁で一向に構わない。だから『嫁に来い、ゼロ』」
更にプロポーズは続くらしく、千葉の言葉はおかしいだろうと思いつつも、なんだかどうでも良くなってくる男性陣。
ゼロは溜息を吐いた。
「朝比奈、扇、杉山、ディートハルト‥‥は寝ているのか?‥‥ならば技術班。今は任務中だろう?」
ゼロは女性陣に意見する事を諦めたのか、それぞれに近しい者達に引き剥がすように命じる。
「「「「ゼロ。答えを聞いてない」」」」
「後にしろ、後に。‥‥わたしは藤堂に話が有ってきたんだ」
その言葉に、千葉がやっとゼロの手を離した。
「では、休憩時間になったら返事を聞きにいきますね、ゼロ」とカレンは言ってうきうきと作業に戻る。
「ふぅ~ん。後で答えてくれるのねぇ。楽しみぃ」と言うラクシャータは楽しげに持ち場に戻る。
井上は気負うでもなく「楽しみにしてるわね、ゼロ」と言って杉山に引きずられて離れていく。
千葉だけが「‥‥快い返事を待っている、ゼロ」と真面目に訴えてから、朝比奈の手を振り払いつつ戻る。
ゼロは「とりあえず助かった‥‥」と安堵の息を吐きながら、藤堂への用件を告げるべく、近付いたのだった。


この後の休憩時間で、ゼロが女性陣を相手にどう答えたのか、男性陣が知るのはかなり後の事になる。



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作成 2008.06.14 
アップ 2008.06.22 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ルル(ゼロ)を愛し守ることを誓う騎士団と生徒会)

カレンはルルーシュがやっと動いて息を吐き出すのを見た。
「‥‥‥る、るるーしゅ?」
カレンの躊躇いがちな声に、視線が集まる。
「まさか、受け入れられるとは思わなかったな」
「お兄様は考えすぎなのです。みなさん良い方達ばかりなのでしょう?信じて差し上げたら宜しいのではありませんか?」
自嘲気味に呟くルルーシュを、優しく諭すような声をかけるナナリー。
「ナナちゃん。急には無理よ~。あ~んな事仕出かしてくれちゃった人がいたんだしぃ?」
「まぁ疑心暗鬼にもなるよなぁ。おれだったらグレてるぜぇ~。なぁ?」
「リヴァル。貴方それ以上どうやってグレるつもりなのぉ?いっつも脱走とかしてるのにぃ」
「シャーリー。リヴァルはグレてないつもりなのよ。じゃないと副会長を誘ったりしないと思う」
「あぁ、そう言う事なの~?」
生徒会のメンバーが口々に言い始めた言葉は、藤堂の「ルルーシュ君」と言う呼びかけによって収束する。
「信じてくれないか?みんな、君達を。君を裏切らない。裏切ったりはしないだろう」
藤堂の言葉に、ルルーシュがまっすぐに藤堂を見、そしてその紫の双眸が驚きに見開かれる。
「‥‥気づいた、と言うのか?」
「あぁ。何故こんな手段を取ったのかも理解した。同じ目的を持っているか改めて確認したかったのだろう?」
「‥‥そうだな。騎士団の目的は『弱者を虐げない優しい世界』その為の『正義の味方』だと言う事だったからな」
「あぁ、そぉいうことぉ?ってぇ、なぁんだぁ。結局信じてるから来たんでしょぉ」
ラクシャータが納得の色を声音に乗せて嬉しそうに言い切った。
「そうですわね。信じてらっしゃらなかったら、初めからキョウトに向かっていたでしょうね、ルルーシュ様ならば」
咲世子がにっこりと笑って肯定した。
「‥‥つまり君はこの騎士団をそれなりに気に入ってくれていたわけだな?‥‥自惚れて構わないだろうか?」
藤堂の言い回しはまるでルルーシュが騎士団に来た事があるかのようで、それに「自惚れる」って?と団員達は混乱する。
と、朝比奈がぽんと手を打った。
「藤堂さん。もしかしなくても、その『ルルーシュ君』がゼロなんですか~?」
朝比奈のある程度の確信を持った言葉に、驚いた幹部達は数瞬後、一斉に汗を噴き出させた。
「受け入れない」と答えていた場合、幹部達自らがリーダーであるゼロを切り捨てていた事になるのだから。
「自惚れて良いぞ、藤堂。でなければ、そいつが大事な大事な妹を連れてくるはずがないし?」
黙ったままのルルーシュに代わって答えたC.C.の言葉に、「あ、なるほど」と納得したのは藤堂とラクシャータ、それにカレンと生徒会メンバー。
「悪かった!ゼロ!」
玉城が真っ先に声を上げた。
驚いた視線が集まる。
「お前が若いってのは気づいてたし、正直意地になってたところは有るけど、今まで悪かった」
「‥‥どうしたんだ、玉城。お前が謝るなんて雪でも降らすつもりか?」
ルルーシュはまだ驚いたまま呆然と言い返す。
玉城の名前を知っていた事で、幹部達は彼がゼロだと納得した。
「若いと思ってたけど成人はしてると思ってたんだ。だから甘えてた。まさかこんな子供に頼ってばっかだったなんて‥‥恥ずかしいと思う。すまなかった」
玉城の言い分に幹部達は確かにと納得し、同様に今までゼロに強いてきた無理を思う。
ゼロは完璧でだから少しくらい頼ったって良いだろうと思っていた節は大なり小なり確かにあるのだ。
それに思い至った幹部達は一斉に居住まいを正して頭を下げた。
「「「「すまなかった、ゼロ!!」」」」
「あぁ、なんだ。みんな結構無茶を強いるなぁって思ってたらまだ子供だって事に気づいてなかったんだねー」
あはあはと朝比奈が笑い、「そこは笑うところじゃないだろう?」と千葉に咎められていた。
一斉に頭を下げられたルルーシュは唖然とした後、ふいと顔を背けた。
「‥‥別に。おれが隠していたからそれは仕方がない事だ。気にしていない」
そう言うルルーシュの頬は誰の目にも明らかに朱に染まっていた。
「あっらぁ~。テレてるのねぇ、ルルちゃん。かっわいぃ~」
ミレイがからかうような声を上げる。
「ッ‥‥からかうな、ミレイッ!」
ますます赤くなるルルーシュに見慣れていない幹部達は呆然と見惚れた。
C.C.は「落ちたな‥‥」と呟き、それを聞いていたラクシャータは「そりゃぁそぉでしょぉ」と笑う。
「まぁこれで団員達があいつを裏切る事はなくなったな」
「そうでしょぉねぇ。‥‥ねぇ、あんた達ぃ。ゼロを裏切ったりはしないわよねぇ?」
ラクシャータは呆然と見惚れたままの幹部達に声を掛けて正気に戻す。
「あぁ‥‥まさかあんなに可愛いとは‥‥」
「てかうっかり守りたくなるわよねぇ」
「目的が『弱者を虐げない優しい世界』だって言うんだから、彼を守るのに何も問題はないよ」
「問題がないどころか、彼がいないと進めないだろおれ達」
そうした呟きが口々に零れ出し、そうして思いは一つになった。
「「「「ゼロ!!いや、ルルーシュ君。おれ達は君についていく。一緒に『弱者を虐げない優しい世界』を作ろう!!」」」」
唐突に唱和された言葉に、ルルーシュは再び幹部達を見て目を見開く。
「「「「だから、もう無理はせずに、おれ(わたし)達に頼ってください。君を守るし裏切らないと誓うから!!」」」」
「良かったですね、お兄様」
ナナリーが声もなく驚くルルーシュに声を掛けその手に触れると、ルルーシュの頬に涙が伝った。
「‥‥ここにいる者達は、君が選んだ。君の名付けたとおり、君の騎士団になる。ここが君の新しい居場所だよ、ルルーシュ君」
「ちょっ‥‥藤堂さんッ!ゼロの騎士はわたしですからね!!」
「紅月。抜け駆けは禁止だ。みんな騎士団に入っている以上、リーダーであるゼロの騎士には違いないはず」
「ぅ‥‥あ、でも零番隊はゼロの親衛隊だわ」
「カレン、てめやっぱり抜け駆けする気だな!?」
「ゼロ、写真を」
「「ゼロに近付くな変態!!」」
賑やかに騒ぐ幹部達を、生徒会メンバーは楽しそうに見る。
ルルーシュに近付いた藤堂はそっとルルーシュの涙を拭ってやった。
「良かったな、ルルーシュ君」
「‥‥ノリで騒いでいるだけじゃないのかって思うのは気のせいですか?」
「そうかもしれないが、みんな君を裏切る事はない。信じてやってくれ」
「そうそう。裏切ったりしたらわたし達がちゃぁ~んととっちめてあげるから、ね?」
「「「「あー。藤堂(さん/中佐)抜け駆け禁止です!!!」」」」
「‥‥なんか、裏切りそうにないんだけども?ルルーシュ」
「‥‥‥。あぁ、おれもそんな気がしてきた」

黒の騎士団、『正義の味方』を唱えるエリア11最大のテロリストグループ。
しかし、そのアジト総本部は、今日も平和です。



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作成 2008.06.06 
アップ 2008.06.19 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ルル(ゼロ)を愛し守ることを誓う騎士団と生徒会)

カレンは片手で額を押さえながら、一行の一番後ろを付いていっていた。
「もうどうしようもない」と言うのがカレンの思いである。
事前に扇に連絡を取ったものの、ゼロは不在だと言われ、事情を話そうとしたら「行くわよ~」とミレイに急かされて途中で連絡を切る羽目になった。
お陰で、騎士団メンバーの警戒の強い事強い事。
格納庫に平然と入っていく生徒会一行の後ろで、カレンに気づいて戸惑い声を上げそうな人を見つけてはキッと睨んで黙らせるのがやっとだった。
格納庫の中央で、一行は足を止める。
戸惑う幹部団員の中で、驚いている者が数名いた。
藤堂とラクシャータ、それにディートハルトだ。
藤堂とラクシャータは驚いた表情のまま黒髪の少年と車椅子の少女に視線を向けている。
ディートハルトの視線は車椅子を押す女性に向けられていた。
スチャっとミレイが片手を挙げて注目を集めた。
「こんにちわ~。黒の騎士団のみなさん。わたしはミレイ・アッシュフォードと言いまして、この一行の責任者で~す。アッシュフォード学園から来ました~」
ミレイはそのまま騎士団の幹部達を見渡して、明るい声で挨拶をした。
「なッ。ブリキのガキが何しにきやがった?」
ミレイの挨拶に我に返った玉城が早速悪態をついた。
「頼りたい人がいたんだけどー。ていうか、知り合いがいるとは思わなかったわ。貴女もいたんですね、ラクシャータさん」
ミレイの視線はまっすぐにラクシャータに向けられていて、ラクシャータは一行に満面の笑みを浮かべた。
「久しぶりねぇ、アッシュフォードのお嬢ちゃん。‥‥貴方達の安全はわたしが保証するわぁ。誰にも手なんて出させないから安心して良いわよぉ」
「なッ。ラクシャータ、テメッ。何勝手な事言ってやがんだ?」
「煩いわよぉ、静かになさぁい。彼等に何かしたら、怒らせるのわたしだけじゃないと思ってなさいねぇ?」
「心強いわ、ラクシャータさん。頼りにさせてもらいますねー」
「良いのよぉ。こんな事なんでもないんですものぉ。アッシュフォードの成した事に比べれば微々たるものよぉ」
笑い合うラクシャータとミレイに他の幹部が戸惑っていると、スッと藤堂が一行に向かって歩き出した。
途端に、緊張が走る。
しかし、一行の前で止まった藤堂は黒髪の少年と車椅子の少女に向かって笑みを見せた。
「無事だったんだな。良かった」
藤堂の聞いた事もない程の穏やかな声に、旧扇グループどころか四聖剣までもが驚いた。
「藤堂さんですね?貴方が騎士団にいらっしゃる事を知っていたので、頼らせて貰いに来たんです。ご迷惑でしたでしょうか?」
ナナリーの言葉に、一行の中ではカレンだけが驚いた。
「‥‥知り合いなの!?」
「はい。まだここが『日本』だった頃、とてもお世話になったんです。わたしも、お兄様もとても慕ってたんですよ」
にこにこと笑ってナナリーが説明し、カレンは再び違和感を覚えてルルーシュに視線を向ける。
ルルーシュは知り合いだと言う藤堂の顔すら見ようともしないで、やっぱり黙って俯いたままだった。
「迷惑とは思わない。おれを頼ってきてくれたのも嬉しいと思っている」
「‥‥ってちょっと待ってくれ、藤堂さん。それにラクシャータも。今、騎士団のリーダーであるゼロが不在なんだ。勝手に決めるわけには‥‥」
受け入れるが如き藤堂やラクシャータの意見をそのままにしておく訳にはいかなかった副指令の扇が、慌てて割って入る。
しかし更にそれに割って入った者がいた。
「いいや。今、お前達が決めろ」
奥から出てきたC.C.がそう言いながら歩いてきた。
「C.C.?おれ達がって‥‥ゼロが不在なのに?」
「そうだ。『あいつの一存で決めたとしても、絶対従わない奴がいるだろうから』と言うのが理由だな」
C.C.は持ったピザを振りながら、「判断はお前達に任せるそうだぞ」と言ってのけた。
その場にいた幹部達は、いや、生徒会の一行さえ、C.C.の言葉に驚く。
顔を見合わせながらヒソヒソと小声で相談する者がいる中、藤堂が口を開いた。
「先に言っておく。おれは彼等を受け入れたいと思う。そして守りたいと」
「はいは~ぃ。わたしも藤堂と同意見よぉ。あんたはどぉ?」
ラクシャータはそう言ってカレンを見る。
「‥‥わたしも賛成です。学園が安全ではなくなったってそう言ってました。だから‥‥追い返す事なんて出来ません」
答えたカレンに驚きの目を向けたのはシャーリーとニーナ。
「か、カレンさん?」
「どうして、カレンさんが?」
「あら、言ってなかったっけ?二人とも。カレンは騎士団のメンバーよ~。当然病弱なんてのも偽りよね~」
にんまりと笑うミレイにカレンは唖然とする。
「えぇぇえ~~!!カレンさんが騎士団‥‥。‥‥咲世子さんが騎士団に入ってるのは知ってたのに、まさかカレンさんもだったなんて」
シャーリーの言葉に、少数の例外を除いた騎士団のメンバー達が驚いた。
驚きの声やら意味不明な喚き声やらをBGMにしてカレンが「本当なの?」と尋ねると咲世子は平然と頷いた。
「はい。あちらの方にお聞きくだされば」と咲世子が指したのはディートハルトで、視線が追って集中するとかくかくと頷いていた。
「藤堂さんが認めるなら、おれもおっけーだよ~」と言う朝比奈の言葉に、仙波、卜部、千葉が同意を示して頷いた。
「お前達はどうする気だ?扇」
「‥‥ゼロは、本当におれ達に?」
「くどいぞ。わたしは気が短いんだ。さっさと決めろ。それともわたしが決めてやろうか?」
C.C.の言葉に、「‥‥ちなみに君に決めさせた場合、どうするんだ?」と扇は尋ねてみる。
「迷う奴等を頼ったところで不幸になるだけだろう?なら『キョウト辺りに送ればどうだ?』と言ってやるが?」
平然と言うC.C.に扇は迷い、カレンを見るとしっかりと頷かれ、更に迷う。
「カレン。学園が安全ではなくなったって言ってたけど、‥‥それは?」
「どこかの頭の中にお花が咲き乱れたお姫様とその騎士になった体力だけのお馬鹿な名誉ブリタニア人が学園内でおかしな事をしてくれたせいでね~」
「てかおれらの学園祭ぶっ潰してくれただけじゃないってのに、全然気づかない似た者主従のせいだよなぁ」
ミレイとリヴァルの辛辣なしかし有る意味的を射た説明に、誰の事を何の事を言っているのか気づいた幹部達は憤る。
「‥‥受け入れて良いぜ?‥‥さっきは悪かった」
まずは玉城がそう言ったのを皮切りに、次々と賛同の声が上がった。
「C.C.。とりあえず、全員一致で彼等を受け入れる事に決まったが‥‥。ホントに良いのか?」
「‥‥受け入れ、か。‥‥カレンとそっちのメイドは日本人で元から団員だから除外として残りはみんなブリタニア人だぞ?」
C.C.が念を押す。
「それを言ったらカレンはハーフだし、他にも日本人じゃない団員は3人はいるんだし‥‥」
「そいつらよりそいつらの居場所を奪ったって言う主従が気に入らないからな」
C.C.は扇の言葉よりも玉城の言葉に反応して笑う。
「なんだ。あの体力馬鹿もたまには役に立つではないか。いつもいつも邪魔ばかりしているっていうのになぁ?」
その言葉は誰かに話しかけているようでもあり、幹部達は顔を見合わせた。

後編に続く。

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作成 2008.06.06 
アップ 2008.06.18 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ルル(ゼロ)を愛し守ることを誓う騎士団と生徒会)

アッシュフォード学園文化祭の最中に突如おこなわれた宣言。
それは何もかもをぶち壊しにしてしまった。
文化祭そのものも。
既に壊れかけていたとは言え、箱庭としての役割も。
アッシュフォード学園の本来の存在意義も。
必死に息を潜め、隠れていた者の居場所も。
そう、何もかも。
そして、宣言をおこなった者はその事にかけらも、本当にひとかけらも気づいてはいなかったのだ。


はぁ~あ。
盛大な溜息が、リヴァルの口から吐いて出る。
ここは生徒会室で、リヴァルの他にはミレイとシャーリーとニーナ、それにカレンがいた。
呼び出したルルーシュはまだ姿を見せていない。
はぁ~あ。
再びリヴァルの溜息。
「リヴァル。それやめてくれない?わたしの気まで余計に滅入るんだけど」
シャーリーが沈んだ声で注意する。
「だぁってさぁ~。何様だよ、あんの主従はぁ。こんな事ならガニメデあいつに任せるんじゃなかったぜ」
しかしリヴァルはそう愚痴った後にまたもや盛大な溜息を吐いてのけた。
カレンは内心「そうそう、しかも失敗してるんじゃないわよッ!白兜に騎乗する騎士様なのにッ!」と憤りながら同意する。
「そーねぇ。ルルちゃんが乗ってなかっただけマシと言えばマシだけど‥‥」
「その点はナナちゃんに感謝ですね。でもこれなら会長がやった方が良かったんじゃないですか?」
本来ルルーシュがガニメデに乗っていたはずのところをナナリーの鶴の一声で乗らない事になった、それはナナリーの手柄だった。
だが、その後を本職だから、とスザクがやった為に、今こんな事になっている。
「そーよねぇ」
「‥‥わたし、‥‥助けていただいた事も有ってユーフェミア様の事、お慕いしていたけれど‥‥でも」
ニーナはぽつりぽつりと俯いたまま言葉を紡ぎだす。
カレンはユーフェミア贔屓だったニーナが否定的な事を言い出すのを不思議な思いで聞いていた。
「副会長とナナリーちゃんを辛い目に合わせるなんて‥‥ユーフェミア様でも赦せません‥‥」
「当然よッ!スザク君なんてルルの親友とか言いながら、ちっともルルの事考えてあげてないしッ!」
「ルルの優しい気持ちに胡坐かきまくってるの見るのすっごく不愉快だよなぁ」
「まぁったくね。ルルちゃんもナナちゃんも人が良いんだから」
カレンは一致団結でルルーシュの肩を持ち、スザクを批判する生徒会一同を呆然と眺めていた。
「んー?まさかカレンさん、スザク君の方が正しいなんて言わないでしょうね?」
「‥‥言わないわ。彼、言ってる事矛盾だらけなんですもの。聞いているだけで凄く腹が立ちます」
「て事はカレンも同士ね。いつもの、行くわよ。『わたし達は!』」
ミレイはカレンににっこりと笑ってから一同を見渡して言う。
「『ルルーシュを愛し!』」
「あ、リヴァルそこわたしが言いたかったのに‥‥。『ナナリーちゃんも愛し!』」
シャーリーがリヴァルに小さく苦情を言ってから、先を続ける。
「『助け、守る事を‥‥』」
ニーナが小さいながらに声を出す。
そして、4人はカレンを見る。
「‥‥‥『誓うもので‥‥ありま、す』?」
カレンは視線の集中砲火に耐え切れなくなって続きそうな言葉を思わず告げていたが、思い返してみてしまったと思うが後の祭りで。
「良く出来ましたー。これでカレンも仲間よね~。一緒にルルちゃんとナナちゃんを守りましょうねー」
ミレイが逃がさないとばかりに詰め寄りながら確認を取ってくるのに、カレンは頷くしか取る術がなかったのだった。

「‥‥ミレイ会長。カレンに何を強制しているんですか?」
扉が開くと同時にルルーシュの呆れた声が響く。
一同が振り返ると、ルルーシュに続いて車椅子に乗ったナナリーとそれを押す咲世子が入ってきていた。
「えぇ~え!?だってカレンもスザクには腹が立つって言うから~」
「あいつに腹が立つ事と、おれ達を守る事は別物ですよ」
「この場合は同じだろー。あの主従がお前苦しめてるのは事実だし。‥‥第一その格好!」
「‥‥出て行くの?」
「言っておくけど、3人だけで出て行くって言うなら認めないわよ?」
「そうよルル。わたし達はルルとナナちゃんの行くところについて行くんだからね?」
「わたしも‥‥」
「‥‥ちょッ、と待って?一体どういう事?」
生徒会メンバーが口々にルルーシュとナナリーが出て行く前提で引き止めているのか付いていこうとしているのかしているのにカレンは混乱した。
「‥‥少し複雑なんだ、カレン。ただ、おれはここを。この箱庭を出て行く。それは確定事項だ」
きっぱりと言い切ったルルーシュに、カレンはナナリーと咲世子を見、ミレイ達を見る。
どの顔も真剣で、冗談を言っているわけではない事が察せられた。
「は~い!わたしも付いていくわよ?拒否は認めません!」
「おれもー。絶対ついてくからな、ルルーシュ」
「はーい。わたしも付いていきま~す」
「わたしも‥‥付いていきたい」
ミレイを筆頭に、次々に手を上げて宣言した。
「‥‥ルルーシュ。ここを出て、どこへ行くの?」
カレンは即答を避け、少し悩んだ後にそう尋ねる。
「お二人には黒の騎士団に身を寄せていただこうかと考えております」
そう応じたのは咲世子で、ルルーシュはカレンの反応が判っているのでそっと俯いた。
「‥‥‥ッ、ききき、騎士団ですってぇ~~ッ!」
病弱設定らしからぬカレンの悲鳴に近い叫びが生徒会室内に響き渡ったのだった。

中編に続く。

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作成 2008.06.02 
アップ 2008.06.17 
 

「中佐ァ~、今日は『父の日』なんだからゼロんとこ行かなくて良いのか?」
卜部が藤堂にそう声をかけたのは、月下周辺に藤堂と四聖剣しかいないまだ朝の内だった。
昨日、有った作戦の終了が遅かった為か、アジトに泊まったゼロは、まだ姿を見せていないから自室にいると思われる。
藤堂も今日が「父の日」であることは知っていた。
と言うか、昨夜眠る前にも「明日は父の日だな‥‥」と呟いていたりする。
いや、更に数日前から幾度となく「後何日で父の日か‥‥」と思ったりもした藤堂である。
なのにゼロの部屋に向かうのを躊躇っているのは、昨夜、最後に会った時にもゼロが何も言わなかったからだ。
単に忘れているだけかも知れないが、それでも藤堂は二の足を踏んでいた。

それが四聖剣には不思議でならない。
母の日ですら「母親役」としてゼロのところへ行った藤堂がまさか「父親役」として行くのを渋るとは思わなかったのだ。
「あ、でも『父親役』なら仙波さんとかの方が適任じゃないですか?」
朝比奈が提案してみる。
勿論、「母親役」が藤堂に適任だったとは思っていないのは言わなくても判っているのだが。
「わし‥‥か?」
指名された仙波はどうしたものかと思い藤堂を窺う。
藤堂はますます悩んだ。
藤堂は「自分が行くか、誰も行かないか」と言う選択肢しか考えていなかったのだ。
まさか他にお鉢が回る事があるとは思わなかった藤堂は「迂闊なのだろうか?」とも悩む。
しかし藤堂は、結局ゼロの部屋に向かう事に決めた。
たとえ四聖剣の仙波とはいえ、この役を譲る気にはなれなかったからだ。
四聖剣に「行って来る」とだけ言い置いて、藤堂はゼロの部屋へと向かったのだった。
藤堂が格納庫から消えて程なく。
ラクシャータが珍しくも少し慌てた様子でやって来て四聖剣は何事か生じたのかと身構えた。
「早いわねぇ、あんた達はいつもぉ。‥‥んで?藤堂はぁ?」
ラクシャータはそう言って月下隊長機の方を透かし見て「コックピットの中ぁ?」と尋ねる。
「えっと‥‥今、ゼロのところに向かったけど?」
朝比奈が言うと、ラクシャータは本当にらしくない程に慌てた。
「ちょッ‥‥すぐに連れ戻してきなさい。今日はダメなのよッ!」
一瞬四聖剣は驚き、まず千葉が身を翻し、次いで卜部がその後を追った。
「‥‥ダメ、とは。いかなる理由か聞いても構わぬか?」
藤堂を連れ戻すのは卜部と千葉に任せてその場に残った仙波がラクシャータに問いかける。
朝比奈が残ったのはラクシャータが慌てる程の行動を藤堂に嗾けた事に愕然としていてまだ動けないでいるからだ。
「えぇ!?わたしはぁ。ゼロの母親とは交流有ったしぃ、尊敬してたけどぉ。父親とは直接会った事もないからねぇ」
答えるラクシャータの表情に嫌悪の色が見て取れて仙波は戸惑った。
「ゼロはその、両親についてはどのように?」
「‥‥‥‥。わたしが言ったなんて他言したら赦さないわよぉ」
ラクシャータが脅しの言葉を紡ぐと仙波どころか、落ち込み中の朝比奈も慌てて頷く。
「母親の事は尊敬して、憧れて、愛してたでしょうねぇ。‥‥‥父親に関しては、ブリタニアよりも憎んでるんじゃないかしらぁ?」
ラクシャータの言いように、仙波と朝比奈は目を見開いて驚く。
ゼロがブリタニアを憎んでいるのはその言動の端々から窺い知る事が出来ていて、或いは騎士団にいる誰よりもと思うことすら有った。
なのに、「更に父親に対する憎しみの方が上なのか?」と二人は驚いたのだ。


やがて、藤堂が戻ってきた。
しかしその様子はとてもいつも通りとは言えない。
卜部が藤堂の背を押すようにしながら強引に引き連れてきたというべきだろう。
千葉が周囲に視線を走らせ、誰にも見られないように気を配っている。
仙波は「間に合わなかったか‥‥」と嘆息し、朝比奈は「どうしようどうしようどうしよう‥‥」と「すみませんすみませんすみません‥‥」だけが脳内で踊っている。
ラクシャータは一人、「藤堂をあんな風に呆然とさせちゃうなんてぇ、なぁに言ったのかねぇ、ゼロはぁ?」と面白そうに呟いた。

藤堂は何も説明せずに「暫く一人になる‥‥」と言って、月下隊長機のコックピットに消えていった。
ラクシャータは「つまらなぁい」と呟いてから、仙波と朝比奈に今一度口止めをするとのんびりと立ち去っていった。
残った四聖剣の内、卜部と千葉は何の事かと二人に視線を向けるが説明は得られなかった。
仙波は約束したからで、朝比奈はそれどころではないというのが理由だったが。
また、逆に卜部と千葉にも言うべき事がない。
二人がゼロの私室の前に着いた時には、既にあの状態の藤堂が一人ぽつんと佇んでいたからだ。
四人は同時に溜息を吐くと、月下隊長機へと視線を向けたのだった。


コックピットに篭った藤堂は、ただいま絶賛混乱中だった。
ゼロの部屋の前で、それでも往生際悪く暫く悩んでから藤堂はノックをした。
「ゼロ。‥‥藤堂だが‥‥」
そこまで言った藤堂は、中から投げられた言葉によって口を閉ざす事になる。
半分以上突っぱねられる事を想定していたから、ぴしゃりとした言葉が飛んできていても藤堂はここまで無防備な姿は晒さなかっただろう。
だが、結果的に藤堂は、卜部と千葉がやって来るまで、いや、やって来てさえ、無防備な状態から脱出できずにいた。
藤堂を案じる四聖剣に気づいていたのに何も言えずに、こうやって篭っているわけだが。
距離が近くなったと思い不用意に踏み込み過ぎた事に恥じ、まさかゼロがあんな風に言うとは思わず藤堂は混乱する。
そしてラクシャータが知るというゼロの素性に藤堂自身、思い当たる人物がいた事についても「どうすれば‥‥」と悩んでいたりした。
藤堂は一旦狭いコックピットの中を見回してから、「当分出れそうに無いな」と溜息と共に吐き出していた。


ゼロは、‥‥いや、この場合はルルーシュと言うべきか。
ルルーシュは悩んでいた。
勿論、悩むのにもわけがある。
昨年まではここまで悩まなかったと自信を持って言えるし、実際ちょっとした鬱憤晴らしをするだけで済んでいたのだ。
だが、今年はかなり盛大に悩んでいた。
原因は藤堂鏡志朗にある、‥‥いや、その言い方もまた語弊があるだろう。
簡単に言うならば、単にルルーシュが味を占めてしまっただけの話である。
すなわち「行事の日には藤堂が甘えさせてくれる」というものだ。
既に「こどもの日」と「母の日」によってそれは証明されていて、だからこそルルーシュは現在悩んでいるのだ。
ルルーシュにとって「父の日」とは今まで鬱憤を晴らす日でしかなかった。
最近ではリヴァルとどこぞへ出かけたり、ミレイと料理を作ったり馬鹿な話をしたりして余り考えないようにしていた。
ナナリーと二人だけではどうしても「あれ」を思い出してしまうので、大勢でいるようにしたりと工夫もした。
なのに、今年は少しだけ期待して、その事に驚いて自己嫌悪に襲われる。
「母の日」や「父の日」とはそれぞれに対し感謝する日だが、「あれ」に対して感謝したい事など欠片もないのだ。
ならばそんな日がある事自体を無かった事にすれば良いのだとずっと無視してきたのだ、今までは。
なのに、今年は期待してしまった。

そして、ルルーシュが何かを言う前から、藤堂がやってきてくれたのに。
ルルーシュは考えすぎて混乱したままに、藤堂を追い返してしまったのだ。

ルルーシュは余計に落ち込み、悩み事が増えてしまった。

そこへ再びノックが聞こえて、ルルーシュは抱えていた頭を上げる。
『そのままで良いですからぁ聞いてくださいますかぁ?』
続いて聞こえたのはラクシャータの声で、ルルーシュは失望している自分を見つけて自嘲する。
つまりは「藤堂が戻ってきたのではないか?」と期待しているのだ、ルルーシュは。
『今日が何の日だろうと、関係ないですよぉ?人が誰かに甘えたいと思うのは自然ですしぃ。貴方には必要な事ですからねぇ』
「‥‥‥しかし‥」
ラクシャータの言葉に、迷うルルーシュに対して、扉の向こうで笑う気配が伝わってくる。
『理由が必要ですかぁ?』
「‥‥‥必要だ。少なくともわたしにはッ!」
『ならぁ。別の理由を作っちゃえば良いんですよぉ。行事に拘るから動けなくなってしまうんですよぉ。「傍にに居たい」それだけでも理由としては十分ですって』
ラクシャータの言い分に、ルルーシュは戸惑い躊躇う。
『行事なんて気にしたくないなら気にしなければ良いんですよぉ。それともぉ「妹の日」にしか妹に会えない、なんて言わないですよねぇ?』
「待てッ!そんな日は初めからないだろう!?」
ナナリーに会えないなんてとルルーシュは慌てて反論する。
『まぁそうですけどねぇ。‥‥だからぁ関係無く藤堂に甘えてきなさいなぁ?』
「関係無く?‥‥‥‥しかし、ラクシャータ。それでは藤堂に迷惑だろう?」
ルルーシュはますます混乱する。
『‥‥‥‥ゼロぉ?‥‥ま、まぁ一度藤堂に言ってみれば良いと思うわねぇ、わたしはぁ?』
ラクシャータは何か問いた気だったが、続いたアドバイスに混乱していたルルーシュは頷いた。
「わかった。そうする。‥‥先程の件も謝らなければならないし‥‥」
『それならぁ。何か作って持って行ってやればぁ?‥‥‥‥ちなみにぃ、なんて言ったか聞いて良いかしらぁ?』
ルルーシュは「そうか、詫びに和食でも‥‥」と思っていたので、ラクシャータの問いかけに素直に答えていた。

「ん?わたしは、『すみません、藤堂さん。今は一人にしておいてくれませんか?』と‥‥あ、‥‥」
その言葉の意味に気付いてルルーシュは固まった。


(あらぁ‥‥もしかして藤堂のあれって‥‥バレたのかしらねぇ?殿下の素性?)
とりあえずは大丈夫だろうと判断したラクシャータは固まったままのルルーシュをそのままに部屋の前から離れたのだった。



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作成 2008.06.15 
アップ 2008.06.15 

★nao様へのリクエスト作品★
(ゼロの騎士と推進会の続き/推進会の活動)

6月13日。晴れ。

【カレン】
今日も藤堂さんとゼロの部屋に訪れる。
やはり一日の始まりはここから始めるべきよね。
藤堂さんがゼロと今日の簡単な打ち合わせをしている間に、わたしはナナリーちゃんと挨拶がてら会話をするのよね。

「おはようございます、カレンさん」
「おはよう、ナナリーちゃん。今日も調子良さそうね」
「はい、こちらに来てからはとても体調も良いのですよ」
そう言いながらナナリーはわたしにディスクを手渡す、勿論最愛の兄に見つからないように、だ。
まぁ、ナナリーちゃんがそんなヘマをするはずが無いから、見つかるとしたら相手のミスだろうと、戦々恐々なのだけど。
わたしはディスクを受け取ると、「今日の予定は?」と尋ねる。
「今日はお兄様が騎士団のお仕事でお出かけになるから、咲世子さんとここで待っているんです」
「ナナリーちゃん‥‥。安心して、待っていてね。お兄さんはわたしや藤堂さんがちゃんと守るから」
「はい。お兄様の選んだ騎士ですもの、信頼しています、カレンさん」
「紅月、そろそろ行くぞ」
藤堂さんの合図で、わたしはナナリーちゃんから離れる。

「ではゼロ。また後で」
「あぁ。二人とも頼んだ」
「承知」「分かってるって」

ゼロの部屋を出ると、ナナリーちゃんから受け取ったディスクの内容を印刷するべく藤堂と別れたのだった。


【藤堂】
毎朝、名誉会長に何故か納まっているゼロの、ルルーシュ君の妹であるナナリー君から抹殺計画書が渡される。
良く尽きる事が無いものだと、最近は感心してしまうくらい、その計画書はバリエーションに富み、会員になった者は必死にその内容と自分の役割を覚え込む。
ナナリー君の凄いところは、会員の能力を全て諳んじているかのようなところだろう。
一度も会った事のない団員、もとい会員に対しても適材適所としか思えない役割を割り振っているのだ。

おれは会長とは言え、名ばかりなので、ナナリー君の計画書を読み、指示を出す事くらいしか役には立っていなかったが。


【扇】
最近、というか、推進会が発足して以来かな?ゼロの作戦内容が若干違ってきていると感じている。
え?勿論おれも入っているけど。

なんというか、推進会の活動の機会がさり気に与えられているというか、動く余地が残っているというか。
以前なら、「指示に従え」、「勝手な事をするな」、「想定外の行動を起こされたんでは策を練る意味が無い」とか言っていただろう。
なのに、今はその余地の範囲内で勝手に動いても怒られる事はない。
仕切っているのがゼロの騎士になったと宣言した藤堂さんとカレンだからだろうか。

そう、カレンは元々零番隊の隊長だったり、「紅蓮の騎士」などと呼ばれていたからそれ程驚く事は無かったけれど、藤堂さんが一緒だったのには驚いた、心底。
それは四聖剣も同じで、彼等にさえ一言も無く決めた事にも驚いていたりする。

そして今日も今日とて、推進会幹部からの指示が回ってくるのだ。


【朝比奈】
いつも通り何故か遅れて現れる白兜が戦場に姿を見せた時、藤堂の指令が伝わってくる。
今回は「28番。パターン13」だと言うから、おれは千葉さんと白兜の背後に回る。
はっきり言って白兜にというかそれに乗ってる枢木スザクに目にモノ見せてやれるのは望むところなんだ。
おれだって推進会に入っているわけだし?
藤堂さんが会長だっていうから、入らない手は無いしね。

ん?藤堂さんがゼロの騎士になった事について?
関係ないはずだけど?推進会にしては‥‥まぁ、藤堂さんが選んだ事だからおれ達は従うだけだよ。
藤堂さんがゼロを守りたいなら、おれ達だって全力を挙げてゼロを守るさ。
んー親衛隊みたいなもんだね、おれ達四聖剣や黒の騎士団はさ。

問題なのは日々増えていく抹殺計画書を付属パターン毎に自分の行動を覚えなければならない事、かな。
毎日計画書が作成され、そのパターンは少ない時でも5、多い時だと20以上ある事もあるからね。
玉城なんかは悲鳴上げてるし。


【卜部】
これくらいでネをあげてどうする、朝比奈。
紅月に比べれば、まだ良い方だぞ?
紅月は学園での計画書まで覚えているという話だからな。
まぁ、学園でやれる事と言えば、抹殺等ではないのかも知れないけどさ。

おれは白兜の左側面に回る。
事が始まったら、右側面に回った仙波大尉と連携して白兜の注意を引くのが役目だ。
今は紅蓮が白兜の正面で仁王立ちしているから、注意はそっちに向けられているけどな。

しかし、傍目に見ても仮面をつけた状態だったとしても、判る程あのゼロが愛情を一身に向ける、ゼロの妹が考えたんだよな‥‥これ。
毎日新しい抹殺計画書が届くから読むけどよ、なんつーか。
‥‥あ、これ提出有りか?
いや、ホント素晴らしい出来だよな、うん。


【仙波】
口は災いの元と言うくらいだ、もう少し気をつけよ、卜部。
とは言うものの、確かに少々堪えるのは確か。
藤堂中佐がゼロの騎士になったからと、わし等四聖剣を中心に、親衛隊なるものも構成しつつあるから、忙しさはそれでなくとも倍増している。
更には同じく正式に騎士になった紅月と共に、この推進会を発足させ、団員が次から次へと入会するものだから、会の運営も当然忙しい。
だが、そこまではまだ良かったのだ。
問題は‥‥‥、やはりゼロの妹がやって来てからといえよう。
尽きる事無く、次から次に作成されていく抹殺計画書を覚えるのが大変なのだ。

藤堂中佐の合図を受け、わしは白兜に向かってスラッシュハーケンを発射していた。


【カレン】
「あら?珍しい人がいるわね。何をしに来たの?枢木君?」
カレンは久しぶりに登校してきたスザクを目ざとく見つけて声を掛けた。
「あ、カレンさん。おはよう。うん、今日は暇が出来たから‥‥学校へ行っておいでって」
「あら、そうなの?あぁ、来たのなら丁度良いわ。裏庭の木に猫が登って降りれなくなったみたいで。今人を呼びに行こうと思っていたところなの」
「あ、じゃあぼくが行ってくるよ」
「お願いするわ。‥‥わたしがついていかなくても良いわよね?」
「うん、平気だよ?ちゃんと猫は降ろしておくから。‥‥その猫ってアーサー?」
「違うわ。アーサーなら生徒会室にいたと思うもの。じゃあ、よろしくね、枢木君」
そんな会話をカレンが枢木スザクと交わしたのは数日前だ。
その日、スザクはクラスに顔を出さず、当然授業も受けず、生徒会室にすら顔を見せる事はなかった。
昼休みに一度カレンが裏庭を覗きに行って見たのは、スザクが木の上で寛いでいる大量の猫をひたすら下に降ろそうとする姿だった。
猫はスザクが近づくと警戒し、手を伸ばすと引っかき、降ろされる間も暴れまくっていた。
降ろされた後、次の猫に取り掛かるスザクの視界の外で再び木に登る猫もいた。
スザクが全ての猫を降ろした時には、既に真夜中をとっくに過ぎて空が白み始めた頃だったとか。
「学園編、31番。パターン1(猫任せ。猫の調教は終了済み)」は成功かしら?
多分次に持ちかけても、頷いてくれないでしょうけどね。

紅蓮の右手を突き出して、輻射波動をぶち込む。
白兜はそれを剣で受け止め、紅蓮と白兜は暫しの睨みあい。
コックピットの中にいる、スザクがあちこちに猫による引っかき傷だらけかと思うと、哂えるものがあるカレンはそれを必死に抑えていた。


【ナナリー】総評
今日もお兄様が可愛らしく首を傾げていました。
「なぁ、藤堂。白兜が出てくると、途端にみんな作戦にない動きをするんだが‥‥何か知っているか?」
藤堂さんがチラとわたしを見た気がしたので、わたしはにっこりと笑みを浮かべてみる。
「‥‥いや、すまないな。やはり気に入らない‥‥か?」
「いや。ナナリーから『いつもの事なのでしたら、そうなると諦めてみたらどうでしょう』って言われたからな。半分諦めている」
お兄様は苦笑してそう言うのですが‥‥まだ半分だったのですか‥‥「後でもう少しお願いしてみましょう」とわたしは考えた。
「そう言えばカレン。昨日かな、リヴァルが2、3日前にスザクを見たはずなのにクラスにも生徒会にも顔を出さなかったって不思議がってたが‥‥知っているか?」
「‥‥来たの?最近見てないわよ?わたしは。‥‥大方、登校してすぐに呼び戻されたか何かしたんじゃないの?」
カレンさんはさらっとそんな事を言って誤魔化しているけれど、「学園編31番」が功を奏した事は既に報告を受けているので、わたしはくすくすと笑っていた。
やはりスザクさんにはもっともっと酷い目に遭って頂いてから、地獄巡りにご招待するべきですわね、とわたしは心に誓い、新たな計画を立案する事にした。

本日の収穫。
白兜の腕1本。
どこかでどなたかの悲鳴が聞こえた気がしましたけれど、きっと気のせいだと思いますわ。



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作成 2008.06.04 
アップ 2008.06.15 
 

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