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★レイシア様へのリクエスト作品★
(枢.機.卿とル.ルーシュ/依存兄弟/二人に優しい話)
数日後、ルルーシュは扇に泣き付かれて、渋々ゼロになってアジトに顔を出していた。
当然ながらゼロの機嫌は最悪で、扇は少し後悔しながらも、ゼロの判断が必要なあれこれを報告、相談していた。
話の合間を縫うように、他の幹部達もやって来ては相談を持ち込む。
側にいる扇はその度に更にゼロの機嫌が悪くなるのがわかって、泣きたくなっていた。
「ゼロッ、扇さんッ!外部監視員から、今ブリアニア人が近付いて来てるって連絡がッ!」
団員が扉をどんどんと叩いてから慌てた口調で報告してきたのを聞いたゼロはガタンと立ち上がった。
「攻撃は待て。すぐに向かう」
扇には一言もなく、ゼロは歩きだし、扇もまた慌ててその後を追い掛けた。
カレンは近付いて来た人物が誰かに気付いて、「なんだってあいつがッ!?」と額に青筋が浮かぶのを知覚した。
そこにゼロに報告しに行っていた団員が駆け戻って来て、「攻撃は待てとゼロがッ!」と告げる。
ゼロと扇はそのすぐ後に姿を見せた。
カレンは「もしかしてつけられてたのかも!?」と焦りまくる。
わたわたと慌てるカレンに訝し気な視線を向ける者もいる中、ゼロはスタスタと無警戒に接近者に近付いて行った。
「‥‥‥‥ゼロッ!会いたかったッ‥‥‥‥」
そう言ってゼロを抱きしめた相手に、周囲から驚愕の叫びがあがり、カレンがキレた。
「ちょっ‥‥いきなりやって来てゼロになんて事してるのよ!離れなさいルルーシュ!」
カレンの出した名前に藤堂とラクシャータが目を見開いて驚き、他はカレンを見た。
「やめろ、カレン。人違いだ。‥‥わたしは事前に連絡を寄越せと言わなかったか?」
ゼロはカレンに間違いを指摘して制止し、抱きついた相手に対して問い質す。
「聞いたさ、もちろん。わたしが君の言葉を聞き逃すわけがない。ただ頑張って説得して早く来たんだから少しくらい手順省いても良いだろ?」
カレンはゼロに懐きながらそう言う「ルルーシュにしか見えない」乱入者に「マジに別人!?」と混乱する。
「「‥‥‥‥なら(ぁ)、ゼロがルルーシュ(君/様)なの(か/ねぇ)‥‥‥‥」」
どこか納得したような台詞が藤堂とラクシャータから同時に出て来てカレン含めた幹部達はパニックに陥った。
「あれ?ラクシャータじゃないか。失踪したって聞いてたから心配してたんだ。元気そうで安心したよ」
ゼロを抱きしめたままラクシャータに声をかけた「ルルーシュに似た」乱入者は、あまりというかまったく心配していた風には見えない。
「気にかけて頂けていたなんて光栄だわぁ。でもぉだぁれが失踪なんてお耳に入れたんですかぁ、アラン様ぁ?」
それでもラクシャータは嬉しそうに受け答えしていた。
「お土産にプリン持って行ったら換わりに彼女がね。さぁゼロ、話を始めよう」
ハグをといた「アラン様」はそのまま自然にゼロの背中に手を添えて歩きだそうとする。
「「「‥‥‥‥ちょっと待ったあ~ぁ!!!」」」
その周りを無視した動きに幹部達の焦りを含みまくった大合唱が巻き起こった。
「アラン様」が煩そうに幹部一同を冷たい視線で見渡し叫ばなかった三人以外の背筋が冷えた。
「ゼロ、こんな連中しかいなくて良く今まで勝ってこれたな‥‥。これからは君にだけ苦労させたりしないからな」
馬鹿にしたようなこれ見よがしの溜息を吐いた後、ゼロに向き直った時には優しい雰囲気に一変して労う。
「これでも言う程悪くはないんだがな。時々羽目を外すだけだろう」
「優しいな、君は。けど他の奴らにまで優しくする必要ないだろ?」
ゼロは相手の変わらない言葉に、「この人にはこの件で何を言っても時間の無駄なのだ」と諦めて妥協案を提示する事にした。
「‥‥‥‥わかった。部屋に軽食の用意はしている。それで手を打て」
「そうしよう。‥‥‥‥さっき叫ばなかった三人なら煩くなさそうだな」
「あーはいはい。藤堂、カレン、ラクシャータ。一緒に来い。聞いた話は後で適当に他の幹部に伝えて貰う。わたしはそこまで暇ではないからな」
「軽食付きなら行きますけどぉ?」
ラクシャータは心得たように、笑みを見せて応じる。
「心配するな、ラクシャータ。想定済みだ」
「ほらみろ。連絡入れなくってもちゃんと準備して待ってるじゃないか」
得意がる「アラン様」と「今日は突発に呼び出されてやって来たハズだろ?」と驚く幹部達。
「‥‥わたしが声を聞きたかったとは思わなかった、と?」
「‥‥‥‥あ‥‥。すまないゼロ。そうだな、わたしが間違っていた」
「アラン様」はそう言って再びゼロを抱きしめる。
「今日は当然、帰ってくるのだろうな?泊まる時間は?」
「君の許す限り」
抱きしめられたまま平然と尋ねるゼロと抱きしめたまま甘く応じる「アラン様」。
「‥‥ゼロ。おれ達がいる事を忘れているのではないか?」
藤堂が呆れたように口を挟んだ。
「忘れてはいないが。久しぶりなのだから多少大目に見ろ、藤堂」
呆れる藤堂に対して平然と言い返すゼロに「おいおい」と内心でツッコミを入れつつ、「ゼロ壊れてるか?」と幹部達は思う。
「麗しい兄弟愛よねぇ。ホント、兄弟の事しか念頭にないんだものぉ、変わらないわねぇ」
ラクシャータは懐かしそうに目を細めて二人を見てそう評し、「こいつが例の電話のゼロの兄貴かッ?」と更に驚いた。
「‥‥て事は、ホントのホントにゼロが‥‥ルルーシュなわけぇ!?」
カレンにとってはそれよりも驚く事があり、思わず声を上げてしまっていたが。
「カレン。軽食にありつきたいなら、部屋の前で待っていろ。兄が離れない事には歩けない」
「て、引き剥がしなさいよ、そんなの」
「何故だ?」
「へ?‥‥何故って、部屋に移動して軽食食べながら説明してくれるってさっき言ったわよね?それが先じゃないの?」
「兄のしたい事が優先されるに決まっているだろう?次に『そんなの』呼ばわりすればカレンと言えど赦さないからな」
ゼロの言葉に、「ルルーシュ」を知らない幹部は絶句し、藤堂とカレンは「シスコンだけでなくブラコンも凄まじい(な/わね)」とどこか納得する。
ラクシャータは一人、「懐かしいわねぇ」と微笑んで二人を見ていた。
後編に続く。
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作成 2008.05.16
アップ 2008.06.03
★レイシア様へのリクエスト作品★
(枢.機.卿とル.ルーシュ/依存兄弟/二人に優しい話)
トレーラー一階のソファに座るゼロを階段付近に固まって心配そうな視線を送るのは旧扇グループと四聖剣にディートハルト。
早い話が藤堂とラクシャータを除いた幹部達だ。
いない二人は月下隊長機のメンテナンス中である。
ゼロはと言うと、どこか心ここにあらずな様子で、そっとかけた程度の呼び掛けだと気付かないくらいなのだ。
副司令だからと言う理由で、みんなから押し付けられた扇が、背中を押されようとした時、着信音が響いて幹部達は慌てた。
一部は自分か?と服の上から携帯を叩いて確認する者もいる中、ゼロが動いて携帯を取り出した。
すぐに取るかと思った幹部達の予想は外れ、着信音はやむ様子を見せず、ゼロは携帯を見つめたままだった。
「ってゼロ、おい!電話取らなくて良いのかよッ!いつまでも鳴りっ放しじゃうるせーんだよ!」
痺れを切らせた玉城が怒鳴る。
その声に背中を押されるかのようにゼロは通話ボタンを押して携帯を耳にあてた。
『ルルーシュ?』
良く知っている、毎日のように耳にする、けれども懐かしい声が仮面ごしに耳に入って来る。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
『ルルーシュ?聞こえている?わたしだよ?元気にしてた?』
「なッ。‥‥どれだけ連絡を取ろうとしていたと思っている?ずっと音信不通でやっと連絡してきたと思えば『元気にしてた?』だと?ふざけるな」
『ごめんね、ルルーシュ。ずっと本国だったんだ、それも奥の院で外部との連絡が取れなくて‥‥やっと出て来れるようになったからね、真っ先に』
「まさか‥‥幽閉されていたのか?」
相手の声が聞こえない幹部達は、ゼロの言葉だけを聞いて、その度にどよめいている。
『違うよ、ルルーシュ。勉強?修行かな?今ね、枢機卿に就任したところなんだ』
「なんだと!?まさか、わたしの敵になるなどと言う気ではあるまいな?」
『ありえないよ、ルルーシュ‥‥。そうか、やっぱり君がゼロなんだね。勿論協力するよ、枢機卿の特権だって色々使えるし』
「‥‥手を組むと?」
『当然じゃないか。わたし達が敵対するなんてありえないのは、ルルーシュだってわかっているよね?』
「それにしては、良くこれまで黙ってこれたな?わたしがどれだけ」
『「わたし」?さっきもだけど、今外なの?ゼロの活動中?』
改めて言及されてゼロは自分を見る幹部達に気付いたが、色々とツッコミどころ満載な事を口走った自覚はあるので半ば諦めた。
「あ、あぁ、そうだが‥‥。良いだろう。それで、すぐに会えるのか?」
『エリア11に着くのは、早くても十日後なんだ‥‥』
「なんだと?‥‥一人で来い、一人で。奴はいらないからな」
『どうしてそうシュナイゼル義兄上を嫌うかなあ』
「嫌う?‥‥違うな、それは。間違っているぞ。わたしの手は二本しかないだけだ」
『わたしとナナリーだけで良いって?わたしもだよ、それは。ルルーシュとナナリーが傍にいてくれればそれだけで幸せだから』
「わかっているならさっさと会いに来い。‥‥必要はないだろうが念のため策のすり合わせもしたいしな」
『そうだね、多分枢機卿の特権やゼロについての細かな辺りを話し合えば良いだろうね。また連絡いれるね?』
「当然だ。今度音信不通になってみろ、その時は赦さないからな」
『わかった。けど、ルルーシュ。随分と口が悪くなってないかい?昔みたいに呼んで欲しいと思うのは、わたしのわがままかな?』
「‥‥‥‥わたしがどこにいるか知っていてそれを要求するのか?」
『いけないかなぁ?』
「‥‥‥‥とにかく、連絡を待っている。‥‥無事なようで安心しました、兄上」
要望に答えて、返事も聞かずに通話を切ったゼロは、携帯をしまうと先程まで騒ぎ立てていた幹部を見た。
ゼロは自分から何かを言う気はなかった。
幹部達は何からどう聞けば良いかわからなかった。
そうして出来上がった沈黙の中、整備を終わらせた藤堂とラクシャータがやって来た。
「んー?なんかあったのぉ?」
「入口で固まられては邪魔になるんだがな」
二人が声をかけると、幹部達は左右に別れて道を作り、二人はその道を通ってソファに腰掛けた。
「‥‥それで?ゼロ。何が有った?」
「別に何もないな。わたしが私用の電話を受けたが、これまでも何度か有った事で報告する事ではないだろう?」
「‥‥だけどゼロ。敵に回るとか手を組むとか、全く無関係と言う訳でもなさそうだったし‥‥」
扇が控えめに意見する。
「策のすり合わせをするとも言っておられましたね」
ディートハルトも言い添える。
「後は、幽閉とか音信不通とか」と続けたのは朝比奈で、「今のゼロのお兄さんなんですか!?」とカレンが核心に触れた。
藤堂は眉間の皺を深くし、ラクシャータも流石に笑みを引っ込めた。
「ゼロ、幽閉や音信不通と言うのは?」
「‥‥‥‥私用電話だと言ったはずだが?わたしにもプライベートは存在する」
「君の兄弟だったのだろう?困った事があるのならばおれ達だって力になれる事があるかもしれない」
「必要ない。久方振りの連絡で、明るくわたしの身を案じる程度に余裕のある相手だ。お前達の手を借りるまでもない」
ゼロの返事はにべもない。
「なぁらぁ、敵になるとか手を組むって話はぁ?」
「ものの例えだ」
「ゼロのお兄さんてぇのはほんとぉ?」
「‥‥あぁ。随分と連絡の取れなかった‥‥兄だったな。わたしがどれだけ心配したかも考えずに『元気にしてたか?』などとほざいてくれたがな」
「ゼロ、それってテレ隠し?『無事なようで安心しました、兄上』て敬語使ってたよね、さっき」
朝比奈が笑みを浮かべながら指摘した。
「そう言えと言ったのは兄だ。‥‥あぁそうだ、扇、それに藤堂」
朝比奈に応じたゼロは、扇と藤堂に声をかけ、二人が返事をすると続ける。
「わたしは暫くここには来ない。その間の事は二人に任せる。活動は控えてくれ」
「それもお兄さん関連でですか?ゼロ」
カレンが驚いて尋ねる。
「そうだ。兄の部屋を用意して掃除して家具を揃えて‥‥‥‥する事が増えたからな」
「ってゼロ!騎士団の活動より掃除のが大事だってのか!?」
「当然だ!兄との再会をわたしがどれだけ願っていたと思っている?‥‥そうだ、兄が来る事を報せなければッ」
玉城の発言を一蹴してのけ、ぶつぶつを言い始めたゼロは立ち上がった。
「と言う事でわたしは帰る。次に来るのは兄からの来訪の連絡が有った後だ」
「‥‥待て、ゼロ。君の兄は何者だ?」
「‥‥‥‥わたしが大切に思っている二人の内の一人だ。危害を加えた者には一切の容赦も情けもかけるつもりがない事は先に言っておく」
「ん?もう一人は?」
「‥‥妹だ。わたしの家族はその二人だけだ。‥‥少し話し過ぎたか。わたしはもう行く」
苦い声で最後に付け足したゼロは、「そそくさ」とその場を後にした。
中編に続く。
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作成 2008.05.11
アップ 2008.06.02
★咲様へのリクエスト作品★
(朝ルル+藤堂+ナナリー/交際許可取り付け/ゼロバレ)
朝比奈はアジトの廊下をこれでもか、という速度で驀進していた。
ぶつからないのは相手が恐れをなして脇に避けるからに他ならない。
藤堂の部屋に到着した朝比奈は、ノックもせずにバタンと扉を壊さん勢いで開いて飛び込んだ。
「藤堂さんはッ!!!」
呼びながら室内を見渡す朝比奈の視界には、仙波と卜部と千葉が唖然とした表情を見せるだけで肝心要の藤堂の姿がなかった。
「藤堂さんどこッ!?知らないッ!?」
「何が有ったんだ?朝比奈。そんなに慌てて‥‥」
仙波がいつになく慌てた様子の朝比奈を宥めようと口を開いたが、卜部が質問に答えてやった。
「藤堂中佐なら、さっき呼ばれてゼロの部屋に向かったけど?」
「えぇえッ!?遅かったかッ!?」
驚いた朝比奈はそのまま踵を返して扉から出て行こうとするのを、千葉がバタンと扉を閉めて足止めする。
「事情を説明するべきだと思わないのか?朝比奈。一体中佐にどんな迷惑をかけた?」
閉めた扉の前に陣取った千葉は、厳しい目を朝比奈に向けたのだった。
藤堂はゼロの呼び出しに応じてゼロの自室に赴き、今は招じ入れられてソファに座っていた。
向かいに座るゼロの雰囲気は何故か普段より穏やかに感じられ、急な呼び出しをするようには見えなかった。
藤堂がゼロの言葉を待っていると、くすりと仮面の下で笑う気配がして、藤堂は訝しげに眉を寄せた。
「どうした?」
「いや、今頃慌てているだろうと思ってな。気にするな。‥‥それよりも来て貰った話なんだが‥‥」
ゼロは本題に入ろうとして言葉を切り、藤堂は「それほど言い出し難い話なのか」と驚く。
「本当はわたしが藤堂の部屋に行くべきだったのだろうが、邪魔が入る事は目に見えていたから来て貰ったんだが‥‥」
「それは構わない。が、話の内容と、邪魔というのは気になるな」
どこで話そうが、気にしないと藤堂は先を促した。
「‥‥藤堂。その、朝比奈を貰っても良いだろうか?」
だが、ゼロの言葉に藤堂は一瞬思考を停止させ、次いで渋面を作った。
「‥‥‥‥それは、朝比奈をおれの配下からゼロの配下へと所属を移させたい、と言う事か?」
「ぇ?‥‥違うッ!そんな事は言ってない。四聖剣が藤堂に従っている事はわたしも認めているし離すつもりもない」
藤堂の低い声で紡がれた言葉に、ゼロは「そう言う意味にも取れたか」と慌てて否定した。
「ではどういう意味で言っているのだ?」
それでも藤堂はきつい視線をゼロに向けたまま詰問する。
「‥‥朝比奈に交際を申し込まれた。受けても良いと思っているが、正式ならば許可が必要になる。だから藤堂に許可を求めているのだが」
ゼロはどう言えば良いのか思い悩んだ末に一息に言い立てた。
今度は藤堂が混乱する番だった。
「ちょッ‥‥‥‥と待て、ゼロ。朝比奈がゼロに交際を申し込んだと言ったのか?」
「そうだが?」
「仮面をしたままの君に?それとも素顔を知っているのか?朝比奈は」
「見られた。ちょっとした油断だったが‥‥『一目惚れしたから付き合って下さい』とか迫って来たのでどうでも良くなったというか」
その時を思い出したのか溜息を吐くゼロは「本当ならばタダで済ますつもりはなかったんだが、タダですませてしまった」と苦笑した。
「そ、そうか。それで受けても良いと?‥‥朝比奈にほだされたのか?」
「そうとも言うな。あまりにしつこく言い寄って来るから、いないと物足りなくなったとも言うが」
「‥‥それで何故おれに?」
「本来は親、‥‥家族に言うべきなのだろう?だが朝比奈は『それなら藤堂さんかなぁ?』と言ったからだ」
ゼロはそう言うと仮面に手を掛けて外した。
藤堂はゼロが仮面を外した事に驚き、その下から現れた素顔に誰かが判って更に驚いた。
「君は‥‥‥‥ッ」
「お久しぶりです、と言った方が良いですか?藤堂さん」
「生きていたのか‥‥。良かった、気にしていたんだ、君達の事は」
「何の連絡もせずにすみませんでした」
「いや、無事だっただけで嬉しく思う。‥‥朝比奈は君の事は全て承知しているのか?」
「えぇ‥‥素性は全て教えました。それでもと言うので、ならば正式に付き合うべきだろうと手順を踏む事にしたんですが」
「君の場合は、妹君のところへ?」
「先日連れて行きました。‥‥全く、あいつは。今まで苦労して隠していたというのに、あっさりとおれがゼロだとバラしてくれたんですが」
「それは‥‥‥‥申し訳ない事をした。浮かれると歯止めが利かなくなってしまうのが朝比奈の欠点なんだ‥‥」
「知っていますが。‥‥それで、認めてもらえますか?藤堂さん。おれと朝比奈との仲を」
「君は‥‥、君達はそれで幸せになれるのか?」
「えぇ、勿論、幸せになりますよ?‥‥朝比奈も幸せにしてみせるから、‥‥だから藤堂さん」
「わかった。君のそんな笑顔や必死な顔を見ては反対もできまい。朝比奈を頼む、ルルーシュ君」
「はい。‥‥‥‥それでですね。勝手に妹にバラして泣かせた朝比奈に意趣返しをしたいと思うのですが、手を貸してくれませんか?」
しっかりと肯いたルルーシュは、数瞬後、一転して悪だくみをしてそうな笑みを藤堂に見せてそう誘いかけた。
「何をする気だ?」
「妹にバレてしまったし、表も何かと危なくなってきているので、妹もこちらに移そうかと考えています。なら素顔をバラすのも良いかと思いまして」
「それのどこが意趣返しなんだ?」
「素性は話したのですが、藤堂さんと面識が有った事は伏せているんですよね」
にっこりとルルーシュに笑顔を向けられて藤堂は怯んだ。
「君は‥‥、四聖剣や団員の前で今のをもう一度やれ、と?」
「お願いできますか?藤堂さん。付き合うのは望むところですが、妹を泣かせた罪は重いと思いませんか?」
「わかった。付き合おう。朝比奈にもそれはちゃんと認識させておいた方が良いだろう」
ふっと陰ったルルーシュの表情に、藤堂は先刻までの躊躇いを遠くへ放り捨て頷いていた。
一時間後、素顔を晒したゼロと藤堂との感動の再会が幹部達の目の前でおこなわれ、悲鳴が上がった。
カレンは仮面を外したゼロを震えて指差し、「あ、‥‥あ、‥‥あんたが、ゼロなわけぇ!?」と絶叫していた。
朝比奈は「なッ‥‥‥‥。藤堂さん!?藤堂さんと言えどもゼロは渡しませんからね!!!」とゼロを掠めて逃げ出した。
「中佐。ゼロに何を言われてあのような芝居をおこなったのですか?」
千葉の冷静な言葉に、藤堂は苦笑する。
「朝比奈と付き合う事には同意したが、妹君を泣かせた罪は重いそうだ。彼は『意趣返し』だと言っていたぞ」
「あぁ、まぁ、確かに。てか、ホントに朝比奈さんの事好きなのね。どうでも良い奴が泣かせたりしたら命ないはずだもの」
カレンはどこか遠い目をしてポツリと呟き、それを聞いた幹部達は肝を冷やした。
後日、その恐怖の元が現れるとは、この時は藤堂しか知らなかった。
了
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作成 2008.05.18
アップ 2008.05.31
黒の騎士団、何故かいつもは夜おこなわれる幹部会議が朝も早くから招集された。
まだ眠そうな幹部達が集まり、ゼロの話を静かに聞いていたのだが。
話を聞き終わった時、その場にいた誰もが固まった。
そう例外はない。
藤堂も四聖剣もだ。
「‥‥‥‥ぜ、‥‥ぜろ?あ、あぁぁぁあああのさ」
扇がどもりまくってゼロに声を掛ける。
「どうした?扇」
「いぃぃぃぃいまの!もう一度ぃぃぃいってくれないか!?」
「なんだ、聞いていなかったのか?」
そう言って再びゼロは同じ事を口にする。
当然ながら、幹部達の耳にも同じ内容が届く、聞き間違いじゃなかったのか‥‥と遠い目をする幹部達。
「ちょッ‥‥‥‥っとまてよ、ぜろ。そそそそれはおれたちきしだんんんのしごとじゃねえだろお」
と何故か動揺しまくったまま玉城は反論し、「よっしよく言った玉城。伊達に楯突いてるわけじゃなかったんだな」と褒める(褒めてるのかこれは)。
「何故だ?我々は正義の味方だと言ったはずだな?ならば当然、すべき事だろう?」
心底不思議そうに玉城に仮面を向けるゼロに、これはこのまま黙っていては流されると幹部一同慌てた。
「ちょっと待てゼロ。一体何故こんな事を言い出した?正義の味方とはいえ、我々はテロリストだぞ?ボランティアグループでもなんでもない」
「ボランティア?何を言ってる千葉。こんな事は当たり前の事だし、本来は毎日でもすべき事だろう?」
千葉の抗議の言葉にもゼロはやっぱり不思議そうに言い返すのだ。
そして「確かに正論なのだが、どこかズレてる!」と思うのだが、もうどうして良いかわからず頭を抱える者多数。
「‥‥ゼロ。質問して良いか?本来は毎日‥‥とそう思っているのならば、何故今日そんな事を言い出す?しかも朝早くにやってきてまで」
藤堂が問いかける。
「決まってる。今日は────」
ゼロの返答に、一同はズッこけたのだった。
しかしゼロの説得に失敗した幹部達は、泣く泣く団員に指示を出し、ゼロの言う「作戦」を決行に移した。
***********
「何?騎士団がおかしな動きをしている?‥‥なんだそれは」
報告を受けたコーネリアは訝しげに聞き返して首を傾げた。
「はぁ。シンジュクゲットーのあちこちに出没しているとの報告が上がって来ているのですが‥‥」
主に問われて、しかしギルフォードは曖昧にこちらも首を傾げながら報告する。
「‥‥また毒ガス作戦でもおこなう気か?」
コーネリアはエリア11に赴任前に起こった事件を例に上げてみる。
「お言葉ですが、姫様。毒ガス事件は黒の騎士団の仕業ではありませんが」
ダールトンが訂正するが、確かに黒の騎士団の仕業ではないが、幹部の一部が関わっていたりするからむ関係とはいえない(実際には毒ガスではなかったが)。
「‥‥それで?出没して何をしているのだ?」
コーネリアはダールトンの言葉に頷いてから、気を取り直してギルフォードに尋ねる。
「‥‥‥‥‥はぁ、それがその‥‥」
またもや歯切れの悪い返答をするギルフォード。
「良いから言ってみろ」
「それが‥‥掃除と、ゴミ拾い‥‥です、姫様」
ギルフォードの答えに、コーネリアとダールトンの目が点になったのだった。
***********
『ゼロッ!ブリタニア軍が接近しています!』
第一報はカレンだった。
『だぁからナイトメアまで持ち出すのはやめようって言ったんだッ!』
玉城が慌てて泣き言を言う。
玉城の言葉通り、ゼロのガウェイン、カレンの紅蓮、藤堂と四聖剣の月下他、数機のナイトメアがこの「作戦」に駆り出されていた。
『カレン。指揮を執っているのは誰か解るか?』
しかしゼロは慌てず、軍を発見したカレンに尋ねる。
『グロースターが見えるからコーネリアが騎士連れて来てるみたいです、ゼロ。‥‥どうしますか?』
『恐らく、すぐに戦闘に突入する事にはならない。‥‥わたしが行く。お前達はその場で待機していろ』
『なッ!一人でなんて危険過ぎます!!』
『ゼロ。おれも紅月に賛成だ。せめておれと四聖剣をつけろ』
カレンが反対し、藤堂もまたそれに便乗する。
『‥‥藤堂だけで良い。他は待機だ。行くぞ、藤堂』
改めての指示に、これ以上は言っても無駄だと一同は渋々頷いていた。
『‥‥わかった』
藤堂もまた反論を諦めて了承した。
***********
『ゼロッ!貴様一体何を考えている!?』
コーネリアの第一声。
『おやおや。コーネリア皇女殿下御自ら、協力しに来てくださったのですか?』
しかしゼロは平然とそう言ってのけた。
コーネリアのグロースターのすぐ後ろに控えるダールトンとギルフォードのナイトメアも、その後ろに続く親衛隊機も更に後ろに控えるサザーランドもお構いなく。
『ふざけるな。わたしを愚弄する気か?』
『まさか。‥‥貴女こそ今日が何の日かご存じなくやってこられたのですか?』
ゼロは驚きさえ声に乗せ、問い返し、藤堂は「通じるはずがないだろう?」と頭を抱えた。
『今日‥‥‥?』
コーネリアは訝しげに呟き考える。
『今日は5月30日ですね』
『‥‥はっ、まさか!?』
ギルフォードもまた日付を口にして考えていたが、それでコーネリアが思い至ったらしい。
『やっとわかりましたか?コーネリア皇女殿下』
『すまない。‥‥そうだな。今日だけは停戦し、協力してよう』
コーネリアの言葉に、それを聞いていたゼロ以外の者が当然ながら驚く。
『『姫様ッ!一体どういう事ですか?』』
『ダールトン、ギルフォード。手分けして隊を振り分け、周辺のゴミ拾いをさせよ』
コーネリアの命令に、騎士二人を筆頭にブリタニア軍将兵はことごとく驚愕した、顎が外れるのではないかというくらい驚いた。
その様子を間近で見ていた藤堂は朝の自分達を見ているようで、ブリタニア軍に同情した。
そんな部下達に目を向けて、コーネリアは平然と言ってのけた。
すなわち、
『今日は5月30日。つまり530。ゴミゼロの日だッ!』
そうして終日、敵味方入り乱れてゲットーのゴミ拾いに終始したのだった。
了
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作成 2008.05.30
アップ 2008.05.30
★咲様へのリクエスト作品★
(朝ルル+藤堂+ナナリー/交際許可取り付け/ゼロバレ)
「‥‥ナナリー。少し良いだろうか?」
兄ルルーシュの躊躇いがちな言葉に、ナナリーは可愛く首を傾げて「どうなさったのですか?お兄様」と尋ねる。
「その、明日夕食に一人招く約束をしてしまったんだけど‥‥」
応えるルルーシュの言葉は尻つぼみに消えていった。
招く約束をしたと言うかさせられたと言うか悩むところではあるが、一応ナナリーが反対したら流す事が出来る。
ただどう切り出せば良いのかルルーシュは悩んでいたのだ。
「‥‥‥‥スザクさん、ですか?」
ふっと硬くなった表情で、ナナリーが問いかける。
「違うよ。‥‥ナナリーはスザクが来るの、良く思ってないのかぃ?」
「だってお兄様、スザクさんがいると辛そうなんですもの」
気付かれていたとは思わなかったルルーシュはナナリーの髪を優しく撫でる。
「心配かけてごめんな、ナナリー。‥‥それに今回はスザクじゃないから」
「‥‥なら良いですわ、お兄様。ご一緒致しましょう?」
あっさりと頷いたナナリーに、ルルーシュは却って不安になる。
「ナナリー?まだどんな奴か言ってないのに、本当に良いのかい?」
「勿論ですわ、お兄様。今その方の事を話されたお兄様、とても嬉しそうでしたもの」
にっこり微笑むナナリーに「そうだったかなぁ?」とルルーシュは首を傾げたが、許可を得たのを思いだす。
「じゃあ、明日、招待するから」
ルルーシュはそう告げてその話を終わらせた。
朝比奈は指定された人気のない公園でぽつねんと佇んでいた。
言わずと知れた待ち合わせなのだが、ゲットー内になるその公園を待ち合わせ場所にする事に、朝比奈は最後まで反対していた。
聞き入れられなかった朝比奈は、指定時間よりも随分と早くからそこで待っていた。
相手がやって来たら、即行で移動出来るようにである。
「朝比奈さまでいらっしゃいますか?」
唐突に女性の声でそんな呼び掛け方を近くからされた朝比奈は、驚いて慌てて振り返った。
そこには大量の荷物を抱えて立つ大人しそうな日本人の女性。
「朝比奈さまでいらっしゃいますね?」
再び問われて朝比奈はこくりと頷いた。
「‥‥君は?」
「お迎えに参りました。『予定していたルートが使えなくなったので多少のカムフラージュが必要になった』との事なので」
「どんな関係?」
「お二方のお世話をさせて頂いております」
「えっと、あッ。確か咲世子さんだよね。おれ、朝比奈省悟って言います」
女性の素性に思い当たった朝比奈はそう挨拶をしてペコリと頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願い致します。ではこれをお持ちになって頂けますか?‥‥カムフラージュ用ですので」
カムフラージュ用にと渡された荷物を抱えた朝比奈は、表に出さずに驚いた。
咲世子はまだ荷物を手にしていて朝比奈は全てを渡されたわけではないのに、「この重さはナニゴト!?」と落とさないように気をつけながら思う。
「出来るだけ顔が隠れるようにお願いしますね。正規のルートなので、話し掛けられても答えてはいけませんよ」
咲世子の忠告に頷いた朝比奈は、慌てて歩きだした咲世子についていった。
不機嫌に怒りのオーラを撒き散らしつつ朝比奈に背を向けるルルーシュ。
けれどその顔が真っ赤になっている事を知っている朝比奈はただただ謝り倒して、ルルーシュが許してくれるのを待つだけだった。
「ほんっとーにごめん。荷物が重くって‥‥じゃくて、疲れてて‥‥でもなくて、頭がパニック起こしててつい即行で言ってしまったんだ」
「おれはッ!食事が済むまで待てと言ったはずだな?制止も聞かないで!しかもッ!騎士団の事だけでなくおれがゼロだという事までバラしてしまうなんてッ!」
「うん、それはおれもすっごく悪かったって思ってるんだけど‥‥。本当に、これこの通り謝るから、ね?」
不機嫌な恋人のルルーシュを宥めながら、先程までの事を朝比奈は振り返る。
「貴方がお兄様のお友達の方ですか?初めまして、妹のナナリーと申します。いつも兄がお世話になっているのでしょうね」
そう挨拶をした可憐な少女に、朝比奈はある目的を持って来ていた事も手伝って舞い上がってしまった。
「お、おれは朝比奈省悟って言います。‥‥実は今日はルルーシュ君の大切な妹である君にお願いが有って来たんだ!」
「おッおい、朝比奈ッ。とまれ馬鹿ッ」
「お願い、ですか?お兄様が焦っていらっしゃるようですけど、わたしに出来る事でしょうか?」
「なッナナリーも聞かなくて良いッ、朝比奈ッやめろッ!」
「貴女にしか出来ない事です。おれはお兄さんのルルーシュ君を愛しています。ルルーシュ君と生涯を共にする相手としておれを認めて頂けますか?」
「朝比奈~~ッ!!」
止まらない朝比奈に、ルルーシュは真っ赤になって叫んだ。
「はいッ!お兄様にも異存がないようですし、歓迎いたしますわ。‥‥えっと朝比奈さん?」
「あ、省悟で良いよ?ルルーシュ君は恥ずかしがって呼んでくれないんだけど」
「朝比奈ッ、いい加減黙れ貴様ッ」
「では省悟お義兄様ですね?お兄様をよろしくお願いしますね?泣かせたり、傷つけたり、裏切ったりしたら赦しませんけど、構いませんよね?」
「勿論ッ!おれはぜ~ったいにルルーシュ君を幸せにしてみせるから。あ、ナナリーちゃんもね、一緒に幸せになろうね♪」
「はい!省悟お義兄様。‥‥ところで、省悟お義兄様はどこでお兄様と?」
「おれ?騎士団でね、ゼロに一目ボ」
「朝比奈ッ!!」
朝比奈の言葉を、今までにない強い口調で遮ったルルーシュに、朝比奈は失言を悟る。
「‥‥では、お兄様が‥‥ゼロなのですね?すみません、お兄様。わたし、全然気づかなくって‥‥」
悲しげに伏せられた顔と声音で謝るナナリーに、ルルーシュは焦った。
「ナナリーが謝ることじゃない。ごめん、ナナリー。黙っていたおれが悪い。気づかれないように動いていたのはおれで、気づかれていればおれが困ってた」
「でもお兄様。知っていればッ、わたしは。‥‥スザクさんをここに入れたりしませんでしたのに。あのような批判を黙って聞いていたりはしませんでしたのに‥‥」
ぽろぽろと涙を零れさせながら訴えるナナリーに、ルルーシュは固まった。
朝比奈はそっと進み出るとナナリーの前に膝を付き、零れる涙を拭ってやった。
「ごめん、ナナリーちゃん。急にルルーシュ君がゼロだって知って、動転しているんだね。枢木スザクの事はさ、おれがきっちり報復するからもう気にしないで?」
「‥‥何度か、もしかしたら‥‥そう思う事は有ったんです。‥‥でも、」
「うん、大丈夫だよ、ナナリーちゃん。ルルーシュ君の望みはナナリーちゃんの幸せで、悲しませる事じゃないからね」
「ですが、お兄様に何か有れば、わたしは笑ってなどいられません」
「うん、だからね。ルルーシュ君はちゃんとおれが守るから。二人が幸せに暮らせる優しい世界もね」
朝比奈の言葉に、ナナリーはやっと笑みらしきものを浮かべた。
「‥‥省悟お義兄様もでしょう?それで一緒に幸せになるのでしょう?」
「もっちろん♪三人で幸せになろうね、ナナリーちゃん」
朝比奈の言葉で、やっといつもの笑顔を取り戻したナナリーに、ルルーシュはほっと息を吐いた。
そう、この時点では、ルルーシュも笑顔を見せたのだ。
そんなやりとりを来た早々やってしまったので、夕食の席で、ルルーシュはかなり居た堪れない思いをする事になっていた。
現在ルルーシュが不機嫌なのはその為である。
「ルルーシュ君。そんなに怒らないでよ。次は藤堂さんに挨拶に行くんでしょう?」
朝比奈の言葉に、ルルーシュはやっと振り返り、朝比奈を見るとにやりと笑う。
「‥‥‥‥意趣返しは必要だよな、朝比奈?」
「てッ!マジ謝りますからそれだけは勘弁してください」
そうしてその日、朝比奈は泣きの入った謝罪に明け暮れたのだった。
後編に続く。
───────────
作成 2008.05.14
アップ 2008.05.30
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
政庁にやって来た騎士団幹部達は、ラクシャータが「プリン伯爵」と呼んでいた白衣の青年に先導されて広間に向かっていた。
「あんたも本国に帰ったと思ったのにねぇ」
「どうしてぼくが?主のいないところなんてもういるつもりもないね」
「白兜の製作者でしょう?ゼロだって散々苦労させられたぁ」
「あれをデヴァイサーに選んでしまったのはー、確かに失敗だったけどさー。これでも色々制限かけてたんだよー、ぼくもー」
「制限ってぇ?」
「脱出装置付けてなかったりー。エナジーフィラーの消費量が倍だったりー、制御系にだって幅を限定してみたりとかー」
単に面倒だったとか、色々機能付けたらエナジーフィラー馬鹿食いしたけど「まあ良いか」でほっといたとかの事情は言わない。
「へぇえ。でもまぁあんたは肩身狭いと思うわよぉ、あのデヴァイサーの上司だったわけだしぃ」
「えぇ!?折角ランスロット取り上げたのにぃ?特派はこっちに残るから当然ランスもだし、丁度良いからデヴァイサーから外したってのにー」
「そんなの知らないわよぉ。すると元デヴァイサーは何に乗るのぉ?」
「知らないよぉ~、そこまではー。‥‥うー、ぼくだってお傍にいたいのにー」
広間に入りながらラクシャータに突っ掛かるロイドの言葉は、待っていたメンバーにも届いた。
「ロイド伯爵。不敬を咎められたいなら遠慮はいらないよ?」
聞こえてきたシュナイゼルの言葉にロイドは慌てて否定する。
「ぅわ、ダメです。すみません、ルルーシュ様。お連れしましたよー」
順次広間に入ってきた幹部達は奥に所在なげに椅子に座るルルーシュを真っ先に見つけた。
当然ながら仮面は付けておらず、その美貌に幹部達は見惚れつつも近づいて行く。
ルルーシュの両横にはシュナイゼルと神楽耶が立ち、周囲にキョウトのメンバーやらブリタニア人やらとかなりの人数がいるのに気付いた。
車椅子に乗った少女の嬉しそうな様子を見て和むルルーシュに、藤堂とカレン、ラクシャータもまた表情を緩める。
「へーホントに騎士団も来たのねー」
「てカレン!?貴女、騎士団だったの!?」
「おぉ『奇跡の藤堂』がいる。実はファンなんだよなーおれ」
「わたしはラクシャータ様が…」
学生である生徒会メンバーが、いやだけが賑やかに騒いでいる。
何度かシュナイゼルが注意を促していたが、気にしていないように、さっきまではルルーシュも巻き込んでわいわいやっていた延長のようだ。
リヴァル等はルルーシュから、「あの時の電話の相手だ」とシュナイゼルを紹介され、即行で開き直ったという経緯もある。
「間に合って良かったです、藤堂さん。‥‥みんなも来ると思っていた」
「なッ。どうして藤堂だけ敬語なのですか?貴方が一番ですのに」
神楽耶が藤堂を睨みながら意見する。
「ルルーシュも『奇跡の藤堂』に憧れてたんだから当たり前だろー。おれ達良く『奇跡の藤堂』の事で話してたもんなー」
「あぁ、そうだな、リヴァル。‥‥とにかく、正午まで時間がない。今後の事を話し合いたいと思うが」
「って話をしてた時に騎士団の方達が到着しちゃいましたからね~。それで、先程の話ですけど、ルルーシュ様」
セシルがロイドに対して非難の眼差しを向けてから、ルルーシュに問いかけた。
「まず、わたしは『日本人』になるつもりはない。まだ当面は枢機卿でいる必要があるからだ。それは宰相である義兄上も同様」
「だからー、ここにいるブリタニア人はみんなでー、当日はどこかの島にバカンスに行きましょうねー猊下」
ロイドはるんるんとどこから取り出したのか観光ガイドを広げて見せる。
「戻って来るのですよね?ルルーシュッ!」
「勿論だよ、神楽耶。『合衆国日本』が優しい国で有る限り、おれはここにいたいと思っている」
「‥‥優しい国じゃなくなったら見捨てるってのか?」
「何を言っている?玉城。優しい国じゃなくなれば、わたし自ら改革に乗り出すに決まっているではないか。自分だけの平穏に浸っていられなくなるからな」
「そんな事にはならないと約束します。貴方が平穏に過ごせる為にも、『合衆国日本』はわたくしが責任を持って導いてみせますわ」
「良くぞ申されました、神楽耶さま。わしら一同、その為の尽力は一切惜しまぬつもりでおります」
神楽耶に桐原を筆頭としたキョウトの面々が頭を下げる。
「お、わたし達黒の騎士団も、『合衆国日本』の為に出来る事はします。なぁ、みんな」
「‥‥おれ達は、レジスタンスだったわけだが、その事についてはどうするつもりだ?」
「何。『合衆国日本』に弓を引いたわけでもない。一月後、この地におれば国民だ。それまでに政府各所に取り込めれば問題はなかろう?」
「それについては既にルルーシュから案を頂いております。最終的な参加不参加は各人の判断と言われていますから後で調整致しましょう」
「猊下。そろそろお時間ですよ?」
シュナイゼルが口を挟み、それぞれが時計に目を向けると、正午まで後僅かになっていた。
「神楽耶。初めの宣言を」
「はい!ルルーシュ」
ポーンと時報が鳴る。
『わたくしは、旧日本の皇神楽耶と申します。今、この時を以って「合衆国日本」の建国を宣言致します!』
神楽耶はそう言った後、すぐにはマイクを置かなかった。
『「合衆国日本」は新しい国です。優しい国を目指します。過去に囚われず、未来へ進む国を目指します』
「一言、多かったみたいだね、姫君?」
「一言くらい宜しいでしょう?シュナイゼル殿下。建国早々ルルーシュの手を煩わせるなんて御免ですもの」
「なるほどね。その調子で頼むよ、姫君。さ、エリア11の総督も副総督もめでたく解任だ。そろそろ行きましょうか?」
「‥‥どこへ連れて行くつもりだ?」
藤堂がルルーシュの傍まで歩み寄ってシュナイゼルの前に立ち塞がる。
「邪魔をしないでくれないかな?『奇跡の藤堂』。わたしが弟と妹をどこへ連れて行こうとわたしの勝手だろう?」
「義兄上?藤堂さんに絡まないで頂けますか?第一、一緒に行くとは一言も言っていません」
「わたしはこの八年、随分と頑張って来たと思うのだけどね?」
「勿論感謝していますよ、義兄上。ですが、わたしは‥‥」
ルルーシュはそこで一度言葉を止めると、溜息を吐いてから続けた。
「おれは学園や生徒会が好きだし、騎士団の連中も気に入っている。この地には失いたくないものが沢山出来てしまいました」
ルルーシュの言葉に、ミレイとシャーリーとニーナがルルーシュに飛び付いた。
「あ、ずるいですわ」
と言って、神楽耶もルルーシュに抱きつく。
「お兄様、もててらっしゃいますね」
ナナリーはそれに対して嬉しそうにコメントして「宜しかったですね」と応じる咲世子と微笑みあう。
それにカレンが参加し、ディートハルトが参加しようとしたところを井上と千葉によって沈められ、その間にセシルとロイドと朝比奈が参戦しに行った。
「ってちょっと待て。どこを触ってる?やめないかっ。‥‥笑ってないで助けてください、藤堂さん」
「ならわたしが助けよう」
名指しで助けを求められた藤堂が動こうとしたところへシュナイゼルがそう言って動くから、藤堂はそちらの牽制に回る。
「‥‥こうして、『合衆国日本』建国第一日目がスタートしたのでした。‥‥か?」
千葉が小さく呟いたその言葉は傍にいた仙波と卜部だけが耳にしていた。
一月後、「合衆国日本」の国民たる「日本人」が彼の地にあふれた日。
本国に戻っていたシュナイゼルはコーネリアとユーフェミア、その騎士達を執務室に招いた。
「さて、色々忙しくてすまなかったね、ユーフェミア」
唐突に名指しされたユーフェミアは「え?」と首を傾げる。
「忘れたのかい?申請していた件が受理されたよ、と言っているのだよ?」
「シュナイゼル義兄様?」
「やれやれ、本当に忘れていたのかぃ?皇帝に直接申請したのだろう?『ブリタニア』の名前を返上する、と」
「あ、‥‥義兄上、そ、‥‥それは真なのですか?」
あまりの事にコーネリアの声が上ずっている。
「わたしもね。戻って来てから知ったのでね。取り消すのに尽力はしたのだけど、無理だったのだよ。結局ユーフェミアの申請通りになってしまった」
「で、でもわたしは‥‥」
「わたしが聞いていたのは『行政特区日本』についてだけだったから、そちらは白紙にしたけどね。わたしを飛ばして皇帝に持ち込まれては‥‥」
「‥‥では、ユフィは‥‥」
「あぁ、皇室を出て庶民として暮らす事になるね。‥‥当然。騎士は返上。枢木は騎士就任に依る昇進の為、位をいくつか落とす事になる」
コーネリアの問いに答えたシュナイゼルは、厳しい目を枢木に向けて言った。
「ん?返事は?」
「い、イエス、ユア、ハイネス」
こうして、元皇族の騎士にして現一等兵枢木スザク名誉ブリタニア人が誕生した。
了
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作成 2008.05.11
アップ 2008.05.27
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
『昨日、エリア11の総督に就任致しました、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです』
それが、放送のはじまりの挨拶だった。
何故か、声だけの放送に首を傾げながらも「今度は一体なんなんだ?」的な表情を作る。
『今日はみなさんに幾つかの報告をしたいと思います』
アヴァロン。
ロイド:「始まったねー、セシルくん」
セシル:「あまり浮かれ過ぎていてはいけませんよ、ロイドさん」
『一つ。希望するブリタニア人は本国へ戻る事が出来ます』
生徒会室。
ミレイの緊急招集で、生徒会役員が集まっていて、ミレイ以外は絶賛大混乱中である。
リヴァル:「ん?なぁに始める気なんだ?てか、ルルーシュが皇族!?総督ってなんだよ?」
ミレイ:「ルルちゃんが皇族だったら嫌?それとも隠してた事が嫌なの?リヴァルは」
リヴァル:「う~ん。後者、かなぁ?会長は平気なんですか?」
ミレイ:「わたし?知ってたからね~。ルルちゃん達が皇族だって事。『ランペルージ』姓を用意したのアッシュフォードだからね」
リヴァル、シャーリー、ニーナ:「「「‥‥‥‥え~ッ!」」」
『二つ。本日正午より、このエリア11に「合衆国日本」を建国する事を宣言します』
ブリタニア本国への帰途の皇族専用機。
ギルフォード:「無茶をなさいますね。『行政特区日本』を潰したばかりで信用する人なんてそんなにいないとわからない方ではないはずなのに」
コーネリア:「そうだな。だが、無茶だろうと無謀な事はしないだろうからな。何らかの勝算はあるのだろう」
ギルフォード:「そうですが、『特区』をそのまま用いて改革をおこなった方が混乱は少なく済んだのではないでしょうか?」
コーネリア:「‥‥‥‥そう、だな。‥‥一体、どうする気なんだ?」
『以前、一皇族の個人名で宣言された「行政特区日本」とは違い、「合衆国日本」の宣言は枢機卿の名でおこなわれます』
「「「枢機卿!?‥‥って何!?」」」
『三つ。「合衆国日本」のトップはキョウトの皇神楽耶とし、「合衆国日本」の民は「日本人」と呼ばれます』
「「「キョウト!?皇って!!‥‥じゃなくて枢機卿ってなんだよ!?」」」
『四つ。本日正午、「合衆国日本」建国と同時に、エリア11は廃止し、永久欠番とします。ブリタニア本国とは関係のない独立国となります』
「「「「「独立国だと~~~~!!!」」」」」
「日本‥‥」
「日本人‥‥」
「『合衆国日本』‥‥」
『最後に、「合衆国日本」の国民は一月後、現在エリア11と呼ばれるこの地にいる者全てとします』
黒の騎士団アジト。
幹部のみが集まる会議室内。
朝比奈:「ぅわぁ~。強引だな~。てかそれで前総督御一行は本国に戻したのかなぁ?」
千葉:「それより、総督という挨拶はしていたが、枢機卿というのはどこから来たのだ?」
卜部:「いや、その前に、その枢機卿ってなんだよ、そもそも?」
仙波:「聞いた事がありませんな」
ディートハルト:「確か、永らく空席だったはずです。というより、歴代の皇帝はその地位を埋める事をよしとしていなかったものですから、大抵は空席ですが」
ラクシャータ:「そりゃそぅよねぇ。何と言っても、皇帝よりも権限持っちゃってるんだから、皇帝にとっちゃ目の上のたんこぶなんだしぃ?」
扇:「‥‥皇帝よりも権限を?」
ディートハルト:「はい。かつては皇帝の戴冠式を執行していた関係で、枢機卿は皇帝の上に位置されているのですよ。ゼロが就かれたとは知りませんでしたが」
ラクシャータ:「んーとねぇ。宰相の第二皇子がぁ、色々動いたみたいねぇ。まぁったくぅ、お陰でプリンから『これからよろしくー』なんて言われちゃったじゃないのぉ」
カレン:「‥‥‥‥プリンて何?」
ラクシャータ:「第二皇子の学友でぇ、特派‥‥白兜要する部隊の主任でぇ、そのデヴァイサーの上司よぉ。伯爵だから普段はプリン伯爵って呼んでるけどぉ」
『「日本人」になりたくないブリタニア人及び諸外国の方々は、一旦帰国し、「合衆国日本」となった後、来日する事になります』
生徒会室。
リヴァル:「てことはやっぱりおれ達も一旦本国に戻らないと?」
ミレイ:「まぁねぇ。多分、アッシュフォードの生徒もかぁなぁり、減る事にはなるんだろうけどねぇ」
ニーナ:「ミレイちゃん、学校廃校にはしないんだね?」
ミレイ:「あったりまえよ~。なんたってルルちゃんとナナちゃんが残るのは確実なんだもの。絶対存続させて見せるわ」
シャーリー:「なら、わたしも戻ってきます、会長」
リヴァル:「お~れも♪」
ニーナ:「わたしも」
『名誉ブリタニア人となったかつての日本人にも勿論適用されます。注意事項としては「合衆国日本」に入国するにはパスポートが必要となります』
ブリタニア本国への帰途の皇族専用機。
スザク:「名誉‥‥」
ユーフェミア:「スザク?やっぱり、『日本人』に戻りたいのですか?」
コーネリア:「枢木、よもやユーフェミアを見捨てたりはしまいな?」
スザク:「も、勿論です。コーネリア皇女殿下」
『この「合衆国日本」については、EUや中華連邦をはじめとする諸外国からも既に枢機卿の名で合意を得ております』
ざわり、と現在はまだ「エリア11」と呼ばれる地全てがざわめいた。
『神聖ブリタニア帝国枢機卿の権限は、同皇帝のそれを上回ります。諸外国からも承諾を得た以上、「合衆国日本」を侵略しようとする外敵はいません』
生徒会室。
リヴァル:「有りなのか?皇帝より偉いって!?」
ミレイ:「知らないの?枢機卿って皇帝の戴冠式の時、冠授けたリしてたのよね。だからその関係で色々と特権持ってるのよ」
『最後に。「合衆国日本」が発足する本日正午を以てエリア11総督及び副総督は解任されます。‥‥後3時間と短い期間ですがどうぞよしなに。以上』
新総督の放送はそれで終わった。
アヴァロン。
ロイド:「史上最短の就任期間だよねー」
セシル:「良かったのでしょうか?」
ロイド:「枢機卿までやめるわけじゃないからねー。問題ないよー。『日本人』になるわけでもないしさー」
セシル:「え?そうなんですか?」
ロイド:「うん。流石に『日本人』になっちゃうと枢機卿でいられなくなるから、ブリタニア人のままでいるって仰ってたんだよねー」
セシル:「なら、ロイドさんもですよね?」
ロイド:「もっちろん。当日はバックレるから、セシルくんも付き合うよねー?」
セシル:「はい。あ、じゃあ、パスポート用意しておかないとですね」
ロイド:「そのとーり」
『神聖ブリタニア帝国宰相、第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアです。さて、新総督のご挨拶は聞いた通りだけど、今度は副総督として一言』
ブリタニア本国への帰途の皇族専用機。
ダールトン:「シュナイゼル殿下?一体‥‥?というか、シュナイゼル殿下が副総督だったのですかッ!?」
コーネリア:「なんらかのフォローだな。一種の点数稼ぎとも言うが」
ギルフォード:「姫様、流石にそれは言い過ぎではないかと‥‥」
コーネリア:「事実だ」
ギルフォード:「‥‥しかし、枢機卿が総督、宰相が副総督とは‥‥最強コンビですね」
『一つだけ補足しておこう。出国する為の便には限りがある事を念頭に入れておいた方が良いよ。今から予約して果たして取れるかどうか‥‥』
黒の騎士団アジト。
幹部のみが集まる会議室内。
ディートハルト:「取れるかどうかって‥‥」
玉城:「ぁん?てめぇ、ブリタニアに戻る気か?ディートハルト」
ディートハルト:「わたしは『日本人』になりたくて参加したわけではありませんから。あくまでもブリタニア人として参加していたつもりですが?」
ラクシャータ:「そぅねぇ。別に『日本人』じゃないからって『合衆国日本』の為になにかしちゃいけないって話じゃないんだしぃ」
『それと、今から宣言しておく。「合衆国日本」からと受け取りたまえ。皇帝シャルル!「貴方は立入禁止です」。入国は断固認めません』
アヴァロン。
ロイド:「ぅわー。言っちゃいましたねー。殿下ってばー」
セシル:「今まで色々溜まってたんでしょうね‥‥」
『第三皇女ユーフェミア。「貴女は立入禁止です」。これは「日本人」からと受け取りたまえ。入国は断固認めない』
生徒会室。
ニーナ:「ユーフェミア様、来れないんですね‥‥」
ミレイ:「ニーナも本国に残る?」
ニーナ:「‥‥ううん、来るわ。ルルーシュやナナリーちゃんやみんなといる方が楽しいもの」
リヴァル、シャーリー:「そうこなくっちゃ」
『第三皇女の騎士、枢木スザク!「貴様は立入禁止だ」。これは枢機卿からの言葉と受け取るが良い!入国は永久に断固認めないからそのつもりで。以上』
黒の騎士団アジト。
幹部のみが集まる会議室内。
カレン:「よっしゃ、良く言った~~~!あーすっきりしたー。これであいつの顔見ないで済むと思うと一番の朗報だわ」
扇:「よ、よっぽどストレスが溜まっていたみたいだな、カレン‥‥」
カレン:「有ったり前よ~。もう、もうほんとーにイライラする日々だったわ」
朝比奈:「藤堂さん?どうしました?」
藤堂:「いや、なんでもない。ゼロの怒りの程が良く分かる言葉だと思っていただけだ」
千葉:「裏切ってはいけないものを全て裏切った偽りの騎士には似合いの結末だ」
藤堂:「‥‥ゼロが幹部一同を政庁に招くと言っているが、‥‥行くか?」
一同:「「「「勿論!行きます!!」」」」
6に続く。
───────────
作成 2008.05.10
アップ 2008.05.26
──面接「ミレイ&リヴァル」編──
今回、面接に立ち会う事になったのは、カレンだけで、ゼロはカレン一人を従えてアジトを離れた。
「彼女一人だけ連れてくなんて、今回の入団希望者ってどんな人達なのかな~?我が君に危険な事は?」
未練がましく遠ざかるゼロの姿を見送りながら、ロイドは引き返そうとする藤堂に尋ねた。
藤堂は足を止めて振り返る。
四聖剣が立ち止まり、ロイドと一緒になって聞く体制になっていたダールトンとジェレミアはもとよりラクシャータとディートハルトも注目する。
周囲に残った面子に、藤堂はゼロの危惧が判る気がした。
「問題ない」
藤堂が返したのはその一言だけだった。
「だけどー。ゲットーって何かと物騒だしー?」
ロイドの心配は「外見はどうみてもブリタニア人に見える子ども二人では危険」というものである。
そう考えてから、ロイドは「おや?紅蓮のパイロットは知らないんだっけ?」と今更ながらに思ったが。
「問題ないな。今回の面接場所は租界だと言っていたからな」
藤堂は曖昧に応じたが、実際にはその「面接会場」が「生徒会室」で有る事も知っていた。
藤堂の言葉に、ディートハルトを除いたブリタニア人達は慌てた。
「主を誘き寄せる為の罠という事はありえないのかッ!?」
「租界で不審な行動を取るのは、流石に目に留まり易いと思われる。今からでも止めに行った方が‥‥」
「そうですよ。今は軍も殺気立ってるだろうしー?」
「う~ん、わたしはぁ。ゼロがわざわざ租界を指定してまで面接しようとしている今回の入団希望者に興味あるわねぇ」
その時、半数が騒ぐ一行の横を、C.C.が歩いて通り過ぎる。
「あれ?C.C.どこ行くの?」
「ゼロが出かけた事だしな。わたしも戻って休む。ここではゆっくり休めなくなったからな」
「いかにゼロの『共犯者』といったところで、現状租界が危ない事には変わりない。アジト内で大人しくしている事を勧めるが」
ダールトンがC.C.に真っ向から意見する。
「流石堅物だけの事はあるな。ゼロより口喧しい。だが、その案には従えない。わたしにはするべき事があるのだからな」
そう言ってC.C.が踵を返そうとするのを、ジェレミアが腕を掴んで止めた。
「ッ‥‥離せッ、オレンジッ!」
C.C.の勢いに気圧されたジェレミアは、掴んだ腕を離して数歩後退る。
「‥‥‥わたしに触れるな。わたしは誰の指示にも従わない。ゼロに関する事なら聞く事もあるが命令されるのは真っ平御免だし、触られるのも嫌だ。覚えておけ」
幾分抑えた声音で言った後C.C.は再び歩きだす。
辛うじて藤堂がその背中に「気をつけて行け」と声を投げただけでC.C.の姿は一同の視界から消えた。
「あ~あ、C.C.の機嫌損ねたねー、オレンジ卿。後であの子とゼロに謝っときなよー」
朝比奈がまだC.C.の消えた路地に視線を向けたまま、ぽつりと呟いた。
「ゼロにも、というのは?」
未だ衝撃から覚めないジェレミアに代わり、ダールトンが尋ねる。
「C.C.がやけ食いに走ると、ゼロの懐直撃だから?」
朝比奈の何故か疑問形な回答に、ダールトンとロイドがジェレミアの肩を叩き、ジェレミアは呆然と「はい」と呟いたのだった。
「へぇ~?やっと認めるってわけね?」
生徒会室に入ると既に待っていたミレイの声がかかる。
「おれ達、話してくれるのず~っと待ってたんだぜ~」
次いでリヴァルの声が恨めしげに飛んでルルーシュとカレンにぶつかった。
「‥‥‥‥リヴァル、ナイトメアの騎乗は?」
ルルーシュは肯定も弁解もせずに質問を投げる。
「おれ?ガニメデならまっかせなさ~い?」
リヴァルは首を傾げてからおどけた様子でそういって笑った。
「会長ですか?リヴァルにガニメデを教えたのは」
「あったり~♪アッシュフォードから四機つけちゃうわよ~。ガニメデ部隊ができるでしょー」
ミレイも笑う。
「四?また中途半端な数字だな、ミレイ。つまり騎乗者は既に決めているんだな?」
ルルーシュはそんな二人に苦笑した後、口調を変えてミレイに問い掛けた。
それと気付いたミレイもまた口調と態度を改めた。
「はい。わたしとリヴァル。後は咲世子さんと‥‥‥‥ナナリー様です、ルルーシュ様」
「そうか、わかった。その覚悟があるのなら、入団を認める。ガニメデを弄れるとなれば技術班が泣いて喜ぶだろうし?」
二人のまるで芝居がかったやりとりにリヴァルとカレンは驚き目を見張る。
「ありがとー♪ルルちゃん。でもねー、他はともかくロイド伯爵喜ばすってのはねー。誘ってもくれなかったしー?」
だが、ミレイは即座に元通りに戻ってしまい、二人はがっくりと肩を落とした。
「報復がしたいなら別の事でしてくださいよ、会長。あいつの技術力はナナリーの為にも必要なんですから」
「わかってるって。‥‥‥‥んー?驚いた?だぁてねー、これからルルちゃんの下で働くわけでしょー?これくらい出来なくちゃ?」
「会長のノリはころころ変わるってわかってるだろ?リヴァル。こんな事で驚いてたらこの先大変だぞ」
「てか、なんで平然としてるの?ナナリーちゃんをナイトメアに乗せるって言ってるのに!」
「とめてやめるならとめてる。本当に危険と判断したら絶対に乗せたりはしない」
そのルルーシュの言い分にカレンは勢いを削がれ続きを待った。
「だがな、カレン。ミレイがこう言った以上、ナナリー用にガニメデの調整は出来てるだろうし、そうである以上、ナナリーの腕はぴか一なんだ」
「「‥‥‥‥へ?」」
カレンとリヴァルの声が被る。
「調整はばっちりよ~♪ナナちゃんに合わせてるから他の人は乗れないけどねー」
「それで?二人は?奥か?」
尋ねるルルーシュの視線は会長室に向けられる。
するとカチャと扉が開いてナナリーの座る車椅子を押した咲世子が入ってきた。
「お兄様‥‥‥‥」
「すまない、ナナリー。黙っていて。いつ気付いたか、聞いて良いかぃ?」
「スザクさんが乗ってらしたランスロットが黒の騎士団に参加したと知った時からです。乗ってらっしゃるのはロイド伯爵でしょう?」
「あぁ、迂闊だったな。ナナリーは以前ロイド伯と何度か手合わせした事が有ったからな‥‥気付いて当然か」
「「「‥‥‥‥あの、ルルーシュ(様)。手合わせ、とは‥‥ナイトメア戦、(だよな?)」(です)よね?」」
「そうだ。流石に6歳の少女に白兵戦を挑もうとする愚か者はいなかったからな。‥‥で、ナナリーが勝てなかったのは一人だけだった」
「‥‥‥‥ナナリーちゃん?ルルーシュの言ってる事、ほんと?」
「はい♪お母様には一度も勝てませんでした。とっても強くって‥‥。いつかわたしもお母様のように強くなってお兄様をお守りしようってそう思っていました」
恐る恐る尋ねたカレンの言葉ににっこりと笑ってナナリーは応じたが、それはちょっとばかりズレた答えでもあった。
「しかし、‥‥一度に四人か‥‥」
「‥‥あの、ルルーシュ様?わたしは既に騎士団に所属しているのですが‥‥ご存知ではありませんでしたでしょうか?」
咲世子の控えめな問いに、ルルーシュとカレンは顔を見合わせる。
「あいつか」「それしかないでしょ」「何のつもりだ?一体‥‥」「戻ったらとっちめてやりましょう」「そうだな」と、ルルーシュとカレンはげんなりとした表情で言い合った。
「あ、そうだ、会長、それにリヴァルも!どうしてスザクの話流せって教えてくれなかったんですか?」
「あっら~。やっと気づいたの~てか教えたのルルちゃんね~?」
「んなの、ささやかな嫌がらせに決まってるじゃん。おれら出し抜いて騎士団に所属してるからだぜー?」
カレンはミレイとリヴァルの言葉に、がっくりと肩を落とした。
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作成 2008.05.13
アップ 2008.05.25
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
黒の騎士団幹部はその日も大忙しだった。
ぱったりと活動をしなくなった事に不満を抱く団員達を抑えるのに、ほぼ全ての労力を割かねばならない程になっていたからだ。
しかし、朝一番でディートハルトが持ってきた情報により、そんな事はなんでもないのだと、幹部達は俄かに活気付いていた。
ゼロの事前情報、である「総督交代」が報じられれば、「もうすぐゼロが戻ってくる」のだと、早くもホッとする者もいた。
しかし、次にもたらされた「『特区』の中止」には、団員だけでなく、幹部ですら愕然としてしまった。
幾ら先がないとはいえ、まさかそこまで思い切ったことをするとは思わず、しかも「宰相の横槍」と聞いては不安が高まる。
「まさか、敵に?」とは、幹部達の誰もが思うことだった。
だが、それは暫く姿を見せなかったC.C.の一言によって改まる。
「‥‥甘いとわかっていたが、ここまで甘いとはな。まさか自ら汚れ役を引き受けるとは‥‥」
「どういうことだ?」
「ん?簡単だ。全てのマイナス面を白紙に戻した状態で新総督に渡したかったのさ」とC.C.は言って、さっさと立ち去った。
そしてその日、最後にもたらされた「新総督は第十一皇子」という報告に、幹部一同は目の前が暗くなるのを感じた。
昼間のC.C.の言葉からして、これは最初からの計画だったのだと思うと、悲しくなった。
そこへ再びやってきたC.C.が「藤堂、お前に電話だ」と持っていた携帯を差し出した。
C.C.を経由している以上、相手はゼロでしかありえず、幹部達の視線はその携帯に注がれる。
携帯を受け取った藤堂はそれを耳にあてた。
『藤堂さん?ずっと連絡できなくてすみませんでした。しばらく本国に戻っていましたので‥‥』
「いや。君は‥‥。総督になって何をするつもりなのだ?」
『ここまで来たら今種明かしをしてしまっては勿体無いでしょう?明日の発表を待ってくれませんか?』
「『特区』を中止し、君は何をなす?」
『中止にしたのは義兄上ですよ?「宰相の許可を取り付けたと勘違いしたユーフェミアの独断による行動を否定したのだ」と言っていましたが』
「だが、C.C.は『第二皇子が君に甘いから』だと言っていた」
「余計なことまで言う必要はないだろう?藤堂」
藤堂の言葉にC.C.が憮然とした表情で言葉を挟む。
『確かに義兄上が矢面に立ってくださった形にはなりますが‥‥。連絡を取ったのは伝えたい事が有ったからです。聞いてくださいますか?藤堂さん』
「‥‥伝えたい事?」
『ええ。明日の発表の後、それに納得が出来ましたら、政庁にお越しください。‥‥そう、幹部一同をご招待します。来る来ないの判断は各自に任せますが』
「‥‥だが、幹部が揃ってアジトを空ければ、団員達が暴走するぞ?」
『‥‥かもしれませんね。ですから、その判断は明日』
「何故今日ではないのだ?」
『無茶を言わないでください、藤堂さん。流石に準備をしなければなりませんし。どんなに急いでも明朝まで掛かります』
「‥‥そ、そうか。すまない」
『納得したのでしたら、カレンに代わってもらえますか?』
「わかった。‥‥紅月。君に代われと」
藤堂は携帯を耳から離して、カレンを振り返って差し出す。
「は、はいッ」
カレンは慌てて藤堂に近づいて携帯を受け取った。
『カレンか?おれだ』
「そ、それで?」
『事情は藤堂に説明した。カレンにはやって貰いたい事があるが』
「何?」
『学園に行って、妹に。今声を聞くと、全てを放り出して会いたくなってしまうからな』
「わかったわ。なんて伝えれば良いの?」
『‥‥「待たせた」と「これからはずっと傍にいる」‥‥だな。後は会長に、「長電話が過ぎるのでは?何時掛けても話中ですよ?」と』
「わ、わかった。伝えておくけど‥‥わたしからで良いの?」
『構わないだろう?会長は‥‥ミレイはおれの素性を知っているからな。きっと今日の発表を聞いてあちこちに連絡とっているんだと思うが‥‥』
「え、っと。そっちもだけど、こっちの件は?」
『教えてはいないな。知っていても不思議じゃないって程度か。‥‥この後、キョウトにも連絡をしないといけないから、そろそろ切るぞ?』
「あ、うん。そうね。‥‥てか団員達には?それも藤堂さんに言ってるの?」
『団員?‥‥「黒の騎士団は破壊だけが目的のテロリストグループではなく、正義の味方である事を再度頭に入れ直せ」と言っておけ』
「そ、そうよね」
『後は、「破壊する事よりも、創る事を、守る事を考える時が来ている事を自覚しろ」ともな』
「‥‥創る、‥‥守る?わ、わかったわ」
カレンの返事の後、通話はすぐに切れた。
「藤堂さん。ゼロは藤堂さんに事情を説明したって言ってましたけど‥‥なんて?」
カレンの問いかけに、藤堂は「果たしてあれをして事情の説明というのか?」と渋面を作る。
「明日、おこなわれる発表を待て。そう言っていた。ディートハルト。何か情報を得てはいないか?」
「確かに明日、何かしらの発表があるらしいとは噂されていますが、誰もその内容までは知らない様子。後」
ディートハルトは藤堂に応じた後、途中で言葉を切った。
「後?なんだ?」
「前総督及び前副総督とその供の一行は今夜本国へ発つとか。その発表がなんであれ、その者達には関係ないことなのだと推測されます」
「つまり、お飾り皇女は言いっ放しのやりっ放しで逃げ切りなわけ?」
「コーネリアは手強かったから助かる、か?」
「いや、それよりも今度の総督の事のが問題じゃねぇ?てか副総督は誰だよ?」
「お前達。おれ達は彼についていく、と決めたはずだな?何故最後まで信じない?」
「彼の想いは変わっていないわ。ならやる事だって変わらないはず。わたし達を裏切ったりなんてしないわ」
藤堂の言葉にカレンもまた同意すると、携帯を扇に差し出した。
受け取る扇に、カレンは「わたしはこれからゼロの用事で出かけて来るから、後はお願いします」と言った。
「紅月、明日の朝にはアジトに戻って来ていろ」
扇よりも早く藤堂が声をかけた。
「夜の内には戻ってると思います」
カレンはそう言うと扇の手から「それはわたしのだ」と携帯を奪い取るC.C.を尻目に、出かけて行った。
「あぁ、ミレイ君かぃ?そっちの状況はどーなってるのかなー?」
『状況も何も、今朝の告知で、彼は本国へ行く事に決まっているのですから、当然転校の手続きは致しましたよ?』
「あはー。本国初めてで、ナンバーズの彼を受け入れるような学校があるとは思えないんだけども~?」
『既に職業軍人、就職しているのですし、高校は義務教育でもありませんから、そこまで心配する必要はないでしょう?』
「まーそーなんだけどねー。それで、その他の事は?」
『この学園は箱庭ですから、その辺りはおいおい。少なくとも残留出来る体制は整えていますわ』
「そっかー。なら十分だよねー?でも、知れる事になるけど、その後のフォローとか考えとかはー?」
『学園の生徒をなめないで頂きたいですわ。特に生徒会メンバーは、ね』
「あはー。期待してますよー?」
『そちらこそどうなっているんです?』
「どうって、特派?特派は第二皇子の直属部隊だからね。何も枢木スザクに同行する必要はないんだよー?当然ランスロットも返して貰うしー?」
『なるほど、了解です』
5に続く。
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作成 2008.04.30
アップ 2008.05.25
★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
その日、エリア11の政庁から、ブリタニアの発表が幾つかおこなわれた。
一つ目。朝一番に発表がなされた事と言えば。
エリア11の総督、及び副総督が交代される、というものである。
第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアと第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアは、その騎士共々一旦本国へ帰る事になったと発表が有った。
「行政特区日本」の宣言をユーフェミアがして以来、大人しかった事もあり、コーネリアはゼロと騎士団をそのままに去る事になったのが気がかりだった。
ダールトンはやりかけの「行政特区日本」の先行きが案じられた。
誰に引き継ぐとか、その後どうなるのか、等が曖昧だったからである。
ギルフォードはコーネリアの行くところが自分の赴くべきところだと、割り切っているようでも有った。
枢木スザクはエリア11、日本がどうなるかわからないままに離れる事と、そして騎士団とゼロが健在である事が気に入らなかった。
ユーフェミアは「困ったわ。折角特区と言う素晴らしい案が実現しようとしていたのに‥‥」と悲しそうに瞳を伏せた。
二つ目は正午近くに発表された。
「行政特区日本」の中止である。
これには参画していたダールトン(本来はユーフェミアと言うべきだろうが)を筆頭としたブリタニア側は驚いた。
参加しようとして申請を出していたイレブン達も驚き、かつ激怒した。
参加するかどうか迷い、或いは申請して断られたイレブン達も呆れ、怒った。
中止の理由としては、「神聖ブリタニア帝国宰相、第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニア」の鶴の一声、としか伝わってこなかった。
そして三つ目。夕方になる前に有った発表。
新たにエリア11の総督、及び副総督になる人物の発表だったのだ。
と言っても、副総督は名前も身分も伏せられていた。
総督も名前は発表される事はなかったが、「第十一皇子」と聞けばわかる者にはわかるのだ。
まだエリア11にいたコーネリア達本国帰還組は目を見張った。
「「「「「‥‥‥‥る、ルルーシュ((殿下))が‥‥!?」」」」」
全員の口から、同時に出た名前に、それぞれ顔を見合わせる。
「ど、どうしてルルーシュが!?姉様やわたしを追い出したりなんか‥‥」
「ま、待て、ユフィ。その前に驚く事があるだろう?‥‥生きていたのか!?」
生きていた事に驚くコーネリアにダールトン、ギルフォードと、総督になった事に驚くユーフェミアとスザク。
「‥‥ユーフェミア様、それに枢木。もしや、ルルーシュ殿下の御存命を知って‥‥?」
違和感に気づいたギルフォードが、詰問口調で二人に問いかけた。
「「‥‥‥‥」」
二人は答えられずに視線を逸らせるが、その行動が肯定を表している事に、二人は気づいていないらしい。
「‥‥では、ナナリーも生きているのだな?」
コーネリアはそう言って、踵を返すと部屋を出て行こうとする。
その直前で開いた扉から入って来る者がいた。
「シュナイゼル義兄上ッ!何故、突然このような‥‥。それに『特区』まで。いえ、今の放送は真ですか?ルルーシュが生きて‥‥」
部下兼友人のロイド・アスプルンドを連れたシュナイゼルを見たコーネリアは性急に訊ねた。
「まず、最初に忠告しておくべきだね、コーネリア。今後、あの方を呼び捨てる事は許されないよ?」
落ち着いたシュナイゼルにダールトンとギルフォードは訝しげな表情を作った。
「例えルルーシュ殿下が生きていらっしゃったとしても、義姉君なのですし、皇位継承順位もコーネリア殿下の方が上なのに?」と疑問に思って当然だ。
「実はね。あの方は永らく空席だった枢機卿の地位を得てね。『猊下』か、『ルルーシュ様』とお呼びするように」
「‥‥‥‥お、お待ちください。枢機卿とエリア総督とを兼任なされるというのですか?」
驚きを無理やり抑え込み、尋ねたのはダールトンだ。
「別に出来ないわけじゃないだろう?なんと言っても、枢機卿の権限は皇帝のそれよりも上なのだから。その気になったらどうとでもなるんじゃないかな?」
「‥‥‥‥る、‥‥。お義兄様の望みはエリア11の解放なのではありませんか?」
ユーフェミアがくしゃりと顔を歪めながら訊ねる。
「その通りだよ、ユフィ。あぁ、君は知っていると聞いている。無茶な真似をしたね、ユフィ。だから本国へ戻されるのだよ?」
「だから?どういうことですか?シュナイゼル義兄様?わたくしは、」
続けようとするユフィの言葉を、シュナイゼルは遮る。
「ユフィ。そこまでにしておきなさい。ロイド。ユフィとその騎士とを別室に。君の部下なのだからそのくらいしてくれるのだろう?」
「わかりましたよ、殿下。しかしあの件はお忘れなく」
ロイドは気軽に引き受け、シュナイゼルが「判っている」と応じた時には、スザクの腕を掴み、ユーフェミアに歩くように促している。
スザクはロイドのあまりの速さについていけないまま腕を取られ、その痛みに声すら出ない状態だ。
「なッ、義兄上ッ!?ユフィをどこへ?」
「別室に案内して貰うだけだよ?コーネリア。君達とは少しばかり難しい話をしたいのでね」
シュナイゼルの言葉の語尾にパタンと扉の閉まる音が重なり、視界からユーフェミア、スザク、ロイドの姿が消えた。
「コーネリア。君と君の騎士には悪い事をしたと思っている。すまなかったね」
突然の謝罪の言葉にコーネリアも二人の騎士も驚いて固まる。
「当初の予定では、総督の交代はなかったのだけどね。少々それが難しくなってしまって、このような形を取らざるを得なくなってしまったのだよ」
「‥‥ルルーシュ‥‥猊下については?生きているなど、聞かされておりませんでしたが」
「7年前、確かに危なかったのだけどね。アッシュフォードがあの方と妹姫とを保護したのだよ。以来エリア11で隠れるように過ごさせてしまったが‥‥」
「そう言えば、あの折、シュナイゼル殿下はルルーシュ様の死亡報告を信じず、公式記録への記入をことごとく退けておられましたね」
ダールトンは当時を振り返り、「死亡したと認識されていても、ルルーシュ様は未だに第十一皇子にして皇位継承権も有している」事を思い出した。
「戻る場所を確保してあげたかったのだよ。わたしはね。それから、わたしは地位を順調に昇って行き、目的だった宰相になった」
「‥‥宰相になるのが‥‥目的?なのですか?」
「そうだよ?そうすれば、かなりの権限を持つ事が出来る。それを用いて、あの方が枢機卿になられるように裏で動いたのはわたしだからね」
「何故ですかッ!義兄上ッ!何故、わたしには何も知らせて下さらなかったのですか?今も、また本国へ戻すような真似を」
「だからすまないと言っている。このエリア11はあの方が望まれたのでね。あの方を傷つける要素は全て排斥する事にしたのだよ」
「待ってくださいッ義兄上ッ!わたしもギルフォードやダールトンも、ユフィも、ルルーシュ‥‥猊下を傷つけるなんて気はッ」
「君と君の騎士についてはそうだろうね。だから詫びている。けれど、ユフィとその騎士は‥‥。既に排斥するに十分の事をしているのだよ」
悲しそうな口調で言うシュナイゼルの瞳は、剣呑な瞳を帯びてチラと問題の二人が出て行った扉に流れた。
「‥‥‥‥。ユフィと枢木が一体何をしたと?」
「んー。あの方に聞いた話だけどね。7年前、ユフィの騎士はあの方に言ったそうだよ?『君達はおれが守る』とね」
シュナイゼルはそう言って、「7年前、日本に送られたあの方と妹姫がどこに預けられたのかは知っているだろう?」と冷やかに付け足した。
「「「‥‥‥‥」」」
「実際にはユフィの騎士になり、ユフィを守る事にしたようだけど?それを見てあの方と妹姫がどう思うかなんて二人とも気にしなかったようだね」
嘆息するシュナイゼルに、絶句している三人は言葉もない。
「そう、どちらもあの方が生きている事を知っていたのに、ね。だから、彼等は排斥する事になったのだよ」
そういってからシュナイゼルは口調を和らげて「君達にはそのとばっちりを受けさせる事になってしまったけれどね」と再び謝った。
「‥‥‥‥しかし、このエリア11は、この後どのような形を?」
「恐らく『特区』とは別の、ブリタニアの支配から離れた、日本という名前に戻るだろうね?そうして、ユフィとその騎士は入国を禁じられる事になるだろう」
「わ、我々は‥‥!?」
「コーネリア達は、ほとぼりが冷めるのを待って解禁、という事になると思うけどね。他に入国できない者は‥‥」
シュナイゼルはギルフォードの問いに答えてから、思案気に言葉を切った。
「皇帝や許可のない皇族もそうかな?まぁ、皇帝が来ようとする日は来ないのだろうけどね」
4に続く。
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作成 2008.04.28
アップ 2008.05.24