★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)
その日、エリア11の政庁から、ブリタニアの発表が幾つかおこなわれた。
一つ目。朝一番に発表がなされた事と言えば。
エリア11の総督、及び副総督が交代される、というものである。
第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアと第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアは、その騎士共々一旦本国へ帰る事になったと発表が有った。
「行政特区日本」の宣言をユーフェミアがして以来、大人しかった事もあり、コーネリアはゼロと騎士団をそのままに去る事になったのが気がかりだった。
ダールトンはやりかけの「行政特区日本」の先行きが案じられた。
誰に引き継ぐとか、その後どうなるのか、等が曖昧だったからである。
ギルフォードはコーネリアの行くところが自分の赴くべきところだと、割り切っているようでも有った。
枢木スザクはエリア11、日本がどうなるかわからないままに離れる事と、そして騎士団とゼロが健在である事が気に入らなかった。
ユーフェミアは「困ったわ。折角特区と言う素晴らしい案が実現しようとしていたのに‥‥」と悲しそうに瞳を伏せた。
二つ目は正午近くに発表された。
「行政特区日本」の中止である。
これには参画していたダールトン(本来はユーフェミアと言うべきだろうが)を筆頭としたブリタニア側は驚いた。
参加しようとして申請を出していたイレブン達も驚き、かつ激怒した。
参加するかどうか迷い、或いは申請して断られたイレブン達も呆れ、怒った。
中止の理由としては、「神聖ブリタニア帝国宰相、第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニア」の鶴の一声、としか伝わってこなかった。
そして三つ目。夕方になる前に有った発表。
新たにエリア11の総督、及び副総督になる人物の発表だったのだ。
と言っても、副総督は名前も身分も伏せられていた。
総督も名前は発表される事はなかったが、「第十一皇子」と聞けばわかる者にはわかるのだ。
まだエリア11にいたコーネリア達本国帰還組は目を見張った。
「「「「「‥‥‥‥る、ルルーシュ((殿下))が‥‥!?」」」」」
全員の口から、同時に出た名前に、それぞれ顔を見合わせる。
「ど、どうしてルルーシュが!?姉様やわたしを追い出したりなんか‥‥」
「ま、待て、ユフィ。その前に驚く事があるだろう?‥‥生きていたのか!?」
生きていた事に驚くコーネリアにダールトン、ギルフォードと、総督になった事に驚くユーフェミアとスザク。
「‥‥ユーフェミア様、それに枢木。もしや、ルルーシュ殿下の御存命を知って‥‥?」
違和感に気づいたギルフォードが、詰問口調で二人に問いかけた。
「「‥‥‥‥」」
二人は答えられずに視線を逸らせるが、その行動が肯定を表している事に、二人は気づいていないらしい。
「‥‥では、ナナリーも生きているのだな?」
コーネリアはそう言って、踵を返すと部屋を出て行こうとする。
その直前で開いた扉から入って来る者がいた。
「シュナイゼル義兄上ッ!何故、突然このような‥‥。それに『特区』まで。いえ、今の放送は真ですか?ルルーシュが生きて‥‥」
部下兼友人のロイド・アスプルンドを連れたシュナイゼルを見たコーネリアは性急に訊ねた。
「まず、最初に忠告しておくべきだね、コーネリア。今後、あの方を呼び捨てる事は許されないよ?」
落ち着いたシュナイゼルにダールトンとギルフォードは訝しげな表情を作った。
「例えルルーシュ殿下が生きていらっしゃったとしても、義姉君なのですし、皇位継承順位もコーネリア殿下の方が上なのに?」と疑問に思って当然だ。
「実はね。あの方は永らく空席だった枢機卿の地位を得てね。『猊下』か、『ルルーシュ様』とお呼びするように」
「‥‥‥‥お、お待ちください。枢機卿とエリア総督とを兼任なされるというのですか?」
驚きを無理やり抑え込み、尋ねたのはダールトンだ。
「別に出来ないわけじゃないだろう?なんと言っても、枢機卿の権限は皇帝のそれよりも上なのだから。その気になったらどうとでもなるんじゃないかな?」
「‥‥‥‥る、‥‥。お義兄様の望みはエリア11の解放なのではありませんか?」
ユーフェミアがくしゃりと顔を歪めながら訊ねる。
「その通りだよ、ユフィ。あぁ、君は知っていると聞いている。無茶な真似をしたね、ユフィ。だから本国へ戻されるのだよ?」
「だから?どういうことですか?シュナイゼル義兄様?わたくしは、」
続けようとするユフィの言葉を、シュナイゼルは遮る。
「ユフィ。そこまでにしておきなさい。ロイド。ユフィとその騎士とを別室に。君の部下なのだからそのくらいしてくれるのだろう?」
「わかりましたよ、殿下。しかしあの件はお忘れなく」
ロイドは気軽に引き受け、シュナイゼルが「判っている」と応じた時には、スザクの腕を掴み、ユーフェミアに歩くように促している。
スザクはロイドのあまりの速さについていけないまま腕を取られ、その痛みに声すら出ない状態だ。
「なッ、義兄上ッ!?ユフィをどこへ?」
「別室に案内して貰うだけだよ?コーネリア。君達とは少しばかり難しい話をしたいのでね」
シュナイゼルの言葉の語尾にパタンと扉の閉まる音が重なり、視界からユーフェミア、スザク、ロイドの姿が消えた。
「コーネリア。君と君の騎士には悪い事をしたと思っている。すまなかったね」
突然の謝罪の言葉にコーネリアも二人の騎士も驚いて固まる。
「当初の予定では、総督の交代はなかったのだけどね。少々それが難しくなってしまって、このような形を取らざるを得なくなってしまったのだよ」
「‥‥ルルーシュ‥‥猊下については?生きているなど、聞かされておりませんでしたが」
「7年前、確かに危なかったのだけどね。アッシュフォードがあの方と妹姫とを保護したのだよ。以来エリア11で隠れるように過ごさせてしまったが‥‥」
「そう言えば、あの折、シュナイゼル殿下はルルーシュ様の死亡報告を信じず、公式記録への記入をことごとく退けておられましたね」
ダールトンは当時を振り返り、「死亡したと認識されていても、ルルーシュ様は未だに第十一皇子にして皇位継承権も有している」事を思い出した。
「戻る場所を確保してあげたかったのだよ。わたしはね。それから、わたしは地位を順調に昇って行き、目的だった宰相になった」
「‥‥宰相になるのが‥‥目的?なのですか?」
「そうだよ?そうすれば、かなりの権限を持つ事が出来る。それを用いて、あの方が枢機卿になられるように裏で動いたのはわたしだからね」
「何故ですかッ!義兄上ッ!何故、わたしには何も知らせて下さらなかったのですか?今も、また本国へ戻すような真似を」
「だからすまないと言っている。このエリア11はあの方が望まれたのでね。あの方を傷つける要素は全て排斥する事にしたのだよ」
「待ってくださいッ義兄上ッ!わたしもギルフォードやダールトンも、ユフィも、ルルーシュ‥‥猊下を傷つけるなんて気はッ」
「君と君の騎士についてはそうだろうね。だから詫びている。けれど、ユフィとその騎士は‥‥。既に排斥するに十分の事をしているのだよ」
悲しそうな口調で言うシュナイゼルの瞳は、剣呑な瞳を帯びてチラと問題の二人が出て行った扉に流れた。
「‥‥‥‥。ユフィと枢木が一体何をしたと?」
「んー。あの方に聞いた話だけどね。7年前、ユフィの騎士はあの方に言ったそうだよ?『君達はおれが守る』とね」
シュナイゼルはそう言って、「7年前、日本に送られたあの方と妹姫がどこに預けられたのかは知っているだろう?」と冷やかに付け足した。
「「「‥‥‥‥」」」
「実際にはユフィの騎士になり、ユフィを守る事にしたようだけど?それを見てあの方と妹姫がどう思うかなんて二人とも気にしなかったようだね」
嘆息するシュナイゼルに、絶句している三人は言葉もない。
「そう、どちらもあの方が生きている事を知っていたのに、ね。だから、彼等は排斥する事になったのだよ」
そういってからシュナイゼルは口調を和らげて「君達にはそのとばっちりを受けさせる事になってしまったけれどね」と再び謝った。
「‥‥‥‥しかし、このエリア11は、この後どのような形を?」
「恐らく『特区』とは別の、ブリタニアの支配から離れた、日本という名前に戻るだろうね?そうして、ユフィとその騎士は入国を禁じられる事になるだろう」
「わ、我々は‥‥!?」
「コーネリア達は、ほとぼりが冷めるのを待って解禁、という事になると思うけどね。他に入国できない者は‥‥」
シュナイゼルはギルフォードの問いに答えてから、思案気に言葉を切った。
「皇帝や許可のない皇族もそうかな?まぁ、皇帝が来ようとする日は来ないのだろうけどね」
4に続く。
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作成 2008.04.28
アップ 2008.05.24
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