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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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──審査「ミレイ&リヴァル」編──

様子を見に行ったダールトンが戻って来て藤堂とカレンに声を掛けた。
「藤堂と紅月。まずは二人を、との事であった」
呼ばれた二人は同時に立ち上がり、足取り軽いカレンの後に、足取りの重い藤堂が続いてゼロの部屋へと向かった。

ソファに座るゼロの前に置かれた経歴書が二枚。
向かいに座りながらカレンはその表面にチラと視線を流していた。
完全に座る直前に固まってストンとソファの上に腰が落ちた。
続いて座ろうとしていた藤堂だったが、嫌な予感を覚えて、ソファから少し離れた。

「なッ、なッ、なッなぁに考えてるんですか!あの人達はぁ~~!?」

叫びながらカレンが思い浮かべた人物は、写真を見るまでもなく、生徒会長のミレイ・アッシュフォードと生徒会役員のリヴァル・カルデモンドだった。
叫んで荒い息を吐くカレンに、ゼロは追い討ちを掛けるように、経歴書のそれぞれの一点、備考欄を指し示した。
藤堂もまた、ソファの後ろからその場所を見る。
『既にカレンって言うわたしと同じ学生も採用してるんだから、まさか断りはしないわよね~?』
『入団志望の動機はさぁ。とある人物への個人的制裁がしたいからってやつかな?なんとかならね?枢木スザク』
藤堂はリヴァルという少年の備考欄に書かれた内容に渋面を作ると、尋ねる。
「スザク君は、学園で一体何をしているんだ?」
しかしカレンは自分が騎士団に所属している事が既にミレイに知られていた事に動揺して、藤堂の話を聞いていないので、溜息を吐いたゼロが応じる。
「‥‥ゼロと騎士団への批判が凄まじいんだ。生徒会でな。それも似たような事しか言わず、生徒会のメンバーが辟易しているのにも気付かない」
「それは‥‥スザク君ならやりかねないが‥‥」
藤堂にはその様子がありありと想像出来てしまい、「不甲斐無い弟子を持ってしまったな。‥‥申し訳ない」と心中で詫びた。
「初めはみんなもスザクの話をちゃんと聞いていたんだがな。今ではカレン以外は素通りさせていてまともに聞いていないぞ」
藤堂とゼロの会話を聞いていたカレンは「あれ?」と思う。
そして、ミレイに知られていたと言う衝撃以上の衝撃を覚えてゼロを凝視した。

「あ、‥‥‥。ぜ、ぜろ?‥‥ってやっぱり、るるー、しゅなの?」

驚きすぎて巧く回らない口を何とか動かして、カレンは尋ねるが、否定して欲しいのにも関わらず、ゼロはあっさり頷いた。
駄目押しとばかりに、藤堂もまたカレンの隣に座る危険を避けて一人掛けのソファに座りながら頷いていた。
「なんで、ルルーシュがゼロなんてやってるのよッ。貴方、スザクと親友だって、そう言って笑ってたじゃないッ」
カレンが憤って、問いただす。
「7年前は確かにな。戦後、最後に会った時までは確かに親友だった。最近、再会した時もそうだと思ったんだがな」
ゼロの仮面をつけたまま、淋しげに紡がれる言葉に、カレンの勢いは削がれた。
「‥‥違ったの?」
「わたしは七年前、スザクに初めて会った時には既に、ブリタニアを憎んでいた。スザクの前で『ブリタニアをぶっ壊す』と言った事もある」
ゼロの、ルルーシュの言葉に、カレンの表情は別の意味で険しくなる。
「だが、再会した時のスザクは、既に名誉ブリタニア人で、軍にも所属していた。わたしの言葉等、あいつの中には残っていなかったらしい」
声音に自嘲の色が混ざるゼロに、カレンはますますスザクへの怒りを増加させた。
「あいつは人の話ってものをひとっつも聞こうとしないんだもの。それに頭が空っぽで身体にしか栄養回ってないから覚えてないんだわ」
そう言ってから、カレンは再び「あれ?」と首を傾げた。
「‥‥って、待った。さっき、わたし以外がどうとかって‥‥」
「あぁ、スザクの話は一度聞けば十分だからな。それ以降、同じ事しか言わないだろ?聞き流していても話は通じるんだ」
ゼロのと言うよりはルルーシュの言葉に、カレンは今までの苦労を思って肩を震わせた。
「ど、どーして教えてくれなかったのよ?わたしが何度あいつを張り飛ばそうと思ってそれを必死に抑えてたと思うのよ」
「あぁ。みんなして『カレンは真面目だな』と思って見ていたんだが、流石にスザクを前にして『聞き流せ』とは言えないだろう?」
「な、ならあいつがいない時にでも言って欲しかったわ。たくさん有ったじゃない」
「‥‥病弱なカレンさんはおれを嫌っていただろう?話しかけると露骨に嫌な顔をするし、会長のイベントなんかで忙しい事も多かったからな。忘れていた事もある」
ゼロ‥‥というか、ルルーシュとカレンの言い合いを、藤堂は渋面を作って見ていたが、「そろそろ止めるか」と思って口を挟んだ。
「ゼロ。‥‥何故、紅月にバラしたんだ?」
「てか、藤堂さんはどうして知ってるんですか?」
藤堂とカレンが前後して疑問を口にする。
「藤堂は昔の知り合いでな。早い段階でバレたんだ。この二人が来る事になれば、流石にカレンにもバレるからな。先にバラしておく事にした」
「え!?会長とリヴァルは知っているんですか?」
「教えてはいなかったが、入団を希望してくる以上知っているとしか思えない。この先の展開まで予測出来てかなり嫌なものはあるがな」
ゼロは疲れた様子で溜息を吐いた。
「‥‥ゼロ。いっそ、幹部にだけでも仮面を外してみないか?後から来る者がみな知っている状態では古参の者達が不満に思う」
藤堂が提案する。
「素性を明かせ、と言うのか?藤堂。気付けばお前以外は、ブリタニア人しか残っていないなんて事になりかねないのに?」
ゼロの言葉に、半分ブリタニアの血が入っているカレンは首を傾げた。
「顔と名前だけでも良い。なんなら紅月に説明してもらえば良いだろう?」
「ってなんでわたし?」
「今のおれを知る者は、カレンとC.C.くらいだからな。まぁ、会長やリヴァルが来ればまた別だが」
「あ。それで会長達は本気で入れるんですか?」
「本音は入れたくはない。特に会長には色々と世話になっているからこれ以上迷惑は掛けたくないが、カレンの事がバレている以上そうも言ってられないからな」
ゼロは嘆息すると、「二人とも入る気満々だろうから、何が有っても退かないだろう?」と言ってカレンを見た。
「‥‥そ、そーですよね。でも騎士団に入って何をするんですか?あの二人」
「言っておくが、会長のナイトメアの操縦はかなりのものだぞ。カレンとタメを張るかも知れない」
「‥‥へ?会長が!?」
「あぁ。‥‥っと、しまった。そうすると、ラクシャータに頼んで、ナイトメアを‥‥いや、プリン伯もいる事だし」
驚くカレンが聞き返すと、ゼロは機械的に頷き返してから、自分の考えに没頭し始めた。
「‥‥ゼロ。今回は面接もせずに合格にするのか?」
藤堂の問いに、ゼロは固まる。
「‥‥い、いや。そうしたいのは山々なんだが、流石にそういうわけにはいかないな。そんな前例を作れば、後続のブリタニア人達を落とし難くなる」
ゼロの言葉のニュアンスに、藤堂とカレンは顔を見合わせてからゼロに視線を戻した。

───────────
作成 2008.04.24 
アップ 2008.05.23 

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★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)

扇の持つ携帯にゼロからの連絡が入ったのはそれから三時間後の事だった。
扇と藤堂、ディートハルトは揃ってゼロの部屋へ向かった。
「暫く、騎士団の活動は停止する事になった」
室内に招かれた三人がソファに座るのを待って、ゼロはそう言った。
「「‥‥停止!?」」
扇とディートハルトの声が重なる。
「どういう事だ?ゼロ」
「ブリタニア側に動きがある。それが落ち着くまでは何をしても無駄で無意味で無益という結論に達した」
藤堂の問いに、ゼロはあっさりと応じる。
「動き?」
扇と藤堂はディートハルトを見て、「本当か?」と尋ねた。
しかし、情報担当のディートハルトの耳にもそんな話は届いていない。
「それはどのような‥‥?」
ディートハルトは訝しげに尋ねるが、ゼロはくすくすと笑うだけで答えない。
「さて。本題はここからだ。もしも、わたしの素性を知った時、お前達はどうする?」
「‥‥教えて頂けるのですか?素性を?」
ディートハルトは一瞬で目を輝かせて信じられないという思いで尋ねる。
「あぁ。ブリタニアが動くからな。これ以上隠せないし、いずれバレる。ならば、お前達には自ら明かした方が良いだろう?」
「待ってくれ、ゼロ。それは‥‥ブリタニアのこれからの行動が君に関わってくるという事か?」
扇はゼロの言葉に慌てる。
「わたしが日本人でない事は既に知っているだろう?」
「‥‥おれは君に助けられた。桐原公の意向もあるが、おれは自分で君に従うと決めた。今更君が誰であれ、それを覆すつもりはないな」
藤堂は息を吐くと、一気にそう告げた。
「あ、あぁ。リーダーになってくれ、と頼んだのはおれだったしな。君にはこれまでの実績もある。君が念を押すくらいだから、悩んだりはするだろうけど‥‥」
扇はそこまで言ってから、思案気な表情になって、「今は君を信じてる。だから、きっと君を信じるって事に落ち着くと思うんだ」と続けた。
「わたしは貴方が誰であろうと構いません。貴方について行くという道しか、わたしには存在しませんから」
ディートハルトは葛藤など存在しないかのように、きっぱりすっぱりと言い切った。
「やれやれ。‥‥良いだろう。今仮面を取ろう」
苦笑したゼロはそう宣言すると、仮面に手を掛け、外した。
黒髪のブリタニアの少年がそこにいて、まだ子供である事にも驚いたが、その美貌にも驚いて固まった。
「君は‥‥ルルーシュ君かッ!?」
「え!?藤堂さん、ゼロの事知っているんですか?」
名前を呼んだ藤堂に驚いた扇が藤堂に尋ね、ディートハルトはそれすら耳に入らないかのようにルルーシュに見入っている。
「えぇ。お久しぶりですね、藤堂さん。しかし、一瞬でわかるとは‥‥随分変わったと思っていたのですけど?」
「「ぜ、ゼロが‥‥敬語!?」」
「驚くところはそこなのか?扇、ディートハルト。‥‥さて、と。おれの素性がわかったところで、今一度答えて頂けますか?藤堂さん」
「従おう。‥‥君に敵対するなんておれには考えられない。また会う事が出来て嬉しく思う
「前から思っていましたがおかしな人ですよね、藤堂さんも。普通は敵対する道しか選ばないと思いますけど」
「「藤堂(さん)!!一体!?」」
苦笑しながらのゼロの言いように、扇とディートハルトは直接ゼロにではなく藤堂に詰め寄ったが、口を開いたのはゼロだった。
「今表では別の名前を使っているがな。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。神聖ブリタニア帝国の第十一皇子にして、以前は第十七皇位継承権を持っていた」
「「ブリタニアの‥‥皇子!?」」
「そうだ。それでもわたしに従うと?」
「身分など、関係ありませんな。わたしには、今ここにいる貴方が全て!」
元々がブリタニア人のディートハルトはただ崇拝の色を強めてゼロを見返して言いきった。
「‥‥何故、君はゼロになったんだ?」
「大切な人の為。いや人達の為だったが、一人はわたしの元を離れてしまったからな。‥‥今は大切な人の為、だ」
「なら良いんだ。おれは君に従うよ」
少年の答えに扇は頷いて、微笑みながら答える。
「そうか‥‥。ありがとう。‥‥これで第一関門は突破か。幹部に知らせるとなると第二関門が待ってるなぁ‥‥」
誰も離反しなかった事に、ルルーシュは嬉しそうに礼を言ってから、今後の事を思って顔を顰めた。
「‥‥第二関門?」
「あぁ。カレンとラクシャータは『ルルーシュ』を知っていてな。カレンは表でのクラスメイトなんだ。怒るぞ、あいつは」
ルルーシュはそう言って苦笑し、「後は玉城だな。何にでも反発する奴だから、『皇族になんて従えるかッ!』とか言いそうだし」と嘆息する。
否定要素など何もなく、扇は「言いかねないな、確かに」と納得してしまった。
「それで?ブリタニア側の動きとは?それに君が関わってくるというのも気にかかる」
藤堂は、幹部達の事よりもルルーシュの今後が気になっていたので、話を続けるように促した。
「近々、エリア11の総督交代の動きがありまして。勿論、副総督もですが」
「ちょっと待て。では第三皇女の名前でおこなわれている『行政特区』はどうなる?」
予想だにしなかった回答に、藤堂は眉間の皺を深めて問いかけた。
「さて。あれは『ユーフェミア・リ・ブリタニア』の名で宣言されたものですから、後任の総督、副総督が引き継ぐ物ではありませんし」
ルルーシュは冷めた様子で「ユーフェミアが指揮を執るのではありませんか?後任の総督達の許可を取り付けるところから?」と興味すらなさげに答える。
「けど、騎士団やゼロにも名指しで参加の呼びかけが有っただろう?」
「コーネリアは実妹には甘かったからな。本来総督として副総督の勝手な宣言を許すべきではないというのに、事後承諾と言う形でゴーサインを出したが」
「そもそも、総督に許可すら求めずに宣言を発するなど、有ってはならない事でしょう?」
扇の問いかけにも、ルルーシュは動じた様子もなく答え、ディートハルトもまた冷笑を浮かべながら追従した。
「それを後任がそのまま引き継がなければならないわけではないしな。まぁ、コーネリアも今交代する事になるとは思ってもいないだろうが」
「ゼロ。‥‥いや、ルルーシュ君。その話はどこから来たものなのだ?現総督のコーネリアすら知らない情報を入手できるなど‥‥」
「出どころですか?宰相閣下と言えば分りますか?第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアから、連絡が入りましたので、確かですよ」
くすりと人の悪い笑みを浮かべたルルーシュがニュースソースを尋ねた藤堂に第二皇子の名前を出した。
「お、おい。シュナイゼルと連絡を取り合ってるって言うのか?」
「取り合っているというのは語弊があるな、扇。こちらから連絡を入れた事はないし、シュナイゼルから連絡が来たのもこれが初めてだ」
ルルーシュは「人聞きの悪い事を言うな」と扇に顰め面を見せて言う。
ドキリとした扇は、思わず話題を変えてみた。
「えーっと。ゼロ。どうして藤堂さんにだけ敬語??」
「知り合いだからだ。‥‥と言う事で、騎士団でする事が終われば、わたしは暫くここを空ける。お前達はその間、団員達が暴走しないように徹底していろ」
「えーっと。ゼロ。その『と言う事で』と言うのはどこにかかるんだ?」
「‥‥『シュナイゼルから連絡が来た』と言っただろう?」
「それじゃわからないから聞いているんだが」
「時が来ればわかる。予定はあるが確定ではないからな。一応、シュナイゼルが準備万端だと言って根回しもしているはずだが‥‥」
藤堂が片手を動かして話に割り込んだ。
「一つ聞きたい。第二皇子はおれ達の敵か?味方か?」
「今のところは味方でしょうね」
「今のところ?‥‥何もなく敵になる可能性があるという事か?」
「あの義兄は何を考えているのか、わからないところがありますから。なので、ここで考えていても無意味です」
ルルーシュは肩を竦めて、まだ渋面のままの藤堂に、「それに、第二関門を突破するのが先です」と言った。
確かにある意味優先事項なので、藤堂はひとまず話を置くことにした。


ルルーシュの懸念は大当たりだった。
カレンと玉城は、ほぼ予測通りの反応を示したからだ。
しかし、それは一時の事に過ぎず、幹部達は全員一致で、ゼロの素性を知った後もゼロを受け入れたのだった。

3に続く。

───────────
作成 2008.04.27 
アップ 2008.05.23 
 

★未来(みく)様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ=枢機卿猊下/枢機卿権限(皇帝を超える程のものと捏造)で日本を手に入れ、楽園を築く)

珍しく生徒会メンバーが全員揃ってお茶を楽しんでいた。
ミレイが溜めに溜めた書類仕事が片付いたところでもあり、みんな少しハイになっているようだと、ルルーシュは見ていて思った。
「ルルーシュ~。今度さー」
「ダメよ、リヴァル。ルルを賭に誘っちゃあ」
「悪の道に誘っちゃいや~って?」
「もう会長、茶化さないでくださいよー」
「ミレイちゃん、からかうのは良くないよ?」
身振りも交えて騒ぐ四人に楽しそうに笑って見る三人。
日常の風景。
ふと、ルルーシュが携帯を取り出して立ち上がった。
マナーにしていた携帯に着信が有ったのだが、これも時々見られる日常。
「会長、少し外します」
言い残して、ルルーシュは足早に部屋を出て行った。

「お久しぶりですね」
『久しぶりなのは確かだけど、挨拶がそれだけなのは淋しいね』
「‥‥用件がないようでしたら切りますが?」
『本当につれないね‥‥。仕方がないから本題に入るけど、事前準備は全て整ったよ。承認も得たしね。後は君にして貰わないといけなくてね』
「‥‥‥‥。もう少し早くそのお言葉を聞きたかったですが。助かりました。一週間後から三週間程でよろしいですか?」
『わかった、根回しはしておくよ。これでも早い方だと思うのだけどね。確かにコーネリアには可哀相な事になったが』
「残念です。後で謝っておいてくださいね。‥‥では一週間後に」
ルルーシュは簡潔に締め括るとさっさと通信を切ってしまう。
しかしそれは、これからする事の多いルルーシュには仕方がない事だった。

「ミレイ会長」
生徒会室に戻るなりのルルーシュの言葉に、ミレイは素早く立ち上がって振り向いた。
ルルーシュにしか見えないミレイの顔には真剣な表情が浮かぶ。
「どしたの?ルルちゃん。まぁたお出かけ~?」
冗談めかして明るく尋ねるミレイにルルーシュはその通りだと頷いた。
「行くところが出来たので、これから準備して行ってきます」
「おいおいまたかよ~。お前ほいほい呼び出され過ぎ!電話の相手に物申しちゃうぞ、おれは」
「そうか、相手には伝えておくよ、リヴァル。だけど今の相手は電話してきたのなんて初めてだぞ」
ルルーシュが苦笑して応じると、リヴァルは驚かず悲しげに眉を下げた。
「おれってポッと出にまで負けるのかー?悲しーぜ、ルルーシュ~」
「悪いな、リヴァル。会長、では一月程よろしくお願いします」
リヴァルに一言詫びたルルーシュは、ミレイに声をかけた。
「わかったわ、ルルちゃん。ナナちゃんと他、こっちの事は任せておいて」
ミレイはサラっと応じたが、他のメンバーには捨ておけない単語に当然反応する。
「「‥‥ひとつきぃ~!?」」
一際大きな声を出したスザクはフラフラと立ち上がってルルーシュの元へと歩み寄る。
「る、るるーしゅ。一か月もどこで何を?」
「それはまだ秘密だな、スザク。その内判ると思うし。危ない事じゃないのは確かだ。スザクはこれ以上成績落とさないように頑張れよ」
聞きようによっては皮肉にも聞こえる事をルルーシュはくすくすと笑って言うと、スザクから視線を外して巡らせる。
「‥‥‥‥帰って来るんだよな?勿論」
「あぁ。用事が終われば戻ってくる。当然だろ?ここは気に入っているんだ」
不安そうに尋ねるリヴァルにルルーシュはしっかりとした頷きを返したので、リヴァルはホッとして「んじゃ、頑張れよ」と声をかけた。
「多少前後するかもしれないが、それはその都度、ミレイ会長には連絡を入れる。‥‥間に合わなくなると困るからもう行くよ」
そう言った後、ルルーシュはもう一度ミレイに「頼みます」と言ってから出て行った。


アジトにやって来たゼロは、誰かに指示をするでもなく、挨拶にも軽く頷いただけで自室に篭ってしまった。
そのいつもとは違う様子に、幹部一同は首を傾げる。
会議には出て来るだろうと気にしながらも待っていたが、時間が過ぎてもゼロは自室から出て来ないので、会議室は騒然となる。
「へッ。どうせ表で何か嫌な事でもあったんだろーぜ。おれ達に八つ当たりしてるんじゃねぇの?」
「別に当たられてないだろ?玉城。‥‥だが、報告や次の作戦について、ゼロがいないと話が進まないな」
玉城の的外れな言葉を一蹴しておいて、扇は途方にくれる。
カチャっと扉が開く音に、幹部達の視線が扉に集まるが、入って来たのはゼロではなく、C.C.だった。
「会議は中止だ。今あいつは手が離せなくてな」
「‥‥手が離せない‥‥とは、一体ゼロは何をしている?」
藤堂が代表して尋ねる。
「ん?さぁ。わたしは知らない。強いて言うならば準備、か?‥‥たぶんそんなところだと思うが‥‥」
C.C.の答えは曖昧で、幹部達は首を傾げざるを得ない。
「あぁ、そう言えば。‥‥扇と藤堂。それにディートハルト。してもらいたい事があるとか言っていたから、後で部屋に行け」
「後で?今でなくても良いのか?」
「今は‥‥入れないぞ?わたしも居られなくなったから出て来たのだし‥‥」
「準備とは‥‥なんの準備だ?」
「知らんと言っただろう?あいつは言わないし、わたしも聞かないからな。とにかく、会議の中止と三人への伝言。確かに伝えたからな」
堂の問いに答えにならない返答を返すと、C.C.はさっさと会議室を出て行った。
「あー‥‥とにかく。今は解散、だな。後でおれ達がゼロに話を聞いて来るから、それまでは今まで通りで頼む」
扇がそう締めくくると、会議は中断と言う形で終わった。

2に続く。

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作成 2008.04.27 
アップ 2008.05.22 
 

──「親展と発覚」編──

近頃、ゼロ宛に親展の手紙が来るようになっていた。

トレーラーの1階で幹部──既に新規参入ブリタニア人三名も幹部の仲間と見做されている──達が休憩していた。
その時、1階にいたのは藤堂と四聖剣、扇、カレン、ディートハルト、ラクシャータ、ロイド、ダールトン、ジェレミアである。
突然、バンッと二階から勢い良く扉が開け放たれる音が響いてきて、幹部達を驚かせた。
バッと音のした方を振り仰ぐ者が大半だったが、ロイドとジェレミアは「我が君」「我が主」と言いながら先を争うようにして階段を駆け上っていた。
腰を浮かして警戒したのはダールトンだけで、他の元からの幹部達は、ただ首を動かしただけに留まった。
案じるロイドとジェレミアを纏わりつかせたまま、ゼロは降りてきて、ディートハルトの前で立ち止まる。
これには流石のディートハルトも戸惑いを覚えて、作り笑いを浮かべながら立ち上がって「どう、なさいました?ゼロ‥‥」と尋ねた。
「わたしは、『当分の間、ブリタニア人は落としまくれ』と言っておいたはずだな?ディートハルト」
ゼロの怒りを含んだ低い声に、藤堂は「またか‥‥」と嘆息し、他の日本人幹部達は嫌そうな表情を浮かべた。
新参幹部はバツの悪そうな表情になってゼロを見、ラクシャータはにやにやと面白そうにそんな一同を眺めていた。
「お言葉ですが、ゼロ。わたしは落としておりますが‥‥」
「あれを落としたとは言わないだろう?『合否判定はまだか』と言う催促の手紙がやってくるくらいだ。保留にしているだけではないのか?」
反論するディートハルトにゼロは容赦なく違いを指摘する。
「ってゼロに直接ですか?」
驚いたカレンが横から口を挟む。
「ここのところ、親展扱いの手紙が良く届く。‥‥まぁ、全てが全てブリタニア人というわけではないが、大半がそうで、内容がその件なんだ」
「申し訳ありません、ゼロ。‥‥ブリタニア人の書類を弾いた後、不合格者のところへ戻すのを忘れていたようです」
「‥‥‥‥‥‥。では今持って来い。ハッキリ引導を渡してやろう」
ゼロがディートハルトにそういった途端、ロイドとジェレミアがゼロから離れ、その事にダールトンとラクシャータ以外が驚いた。
「‥‥え‥っと‥‥。承知いたしました」
ディートハルトは戸惑ってロイド、ジェレミアを見、ダールトンとラクシャータに視線を移してみるが、何も言いそうに無いので返事をして踵を返した。

ゼロがいつもの場所に座ると朝比奈が声を掛けた。
「えーと、さ。ブリタニア人だけじゃないって、日本人からも親展来てるんですかー?」
「桐原公から時たま便りが来る事はあるな、親展で」
「「「‥‥って文通!?」」」
「斜めに読んで必要が有れば連絡を入れるつもりだったが、あれらに返事をする必要を感じず放ってある」
桐原からの手紙を受け取って、それを斜め読みするだけでなく返事を書かないとは‥‥と日本人達は呆れた。
そして桐原とゼロの力関係を思う。
というか、「桐原公、一体どんな内容の手紙をゼロに送っている?」と藤堂や四聖剣ですら疑問に思う。
バタバタを足音がしてディートハルトが戻ってきた、かなり早い。
そしてかなりの量の経歴書の束をゼロに差し出した。
「これ、です」
ゼロは手を伸ばして受け取り、一番上になっている経歴書に視線を落とすとそれなりに覚悟していたはずなのに、即効固まった。
「‥‥‥ゼロ、平気か?」
藤堂が声を掛けると我に返ったゼロは「あ、あぁ」と頷く。
「‥‥ゼロ。あのさ。ホントに落としまくるのか?問答無用で?」
扇が恐る恐る尋ねる。
「‥‥いや。一度目を通さねばならないだろうな。‥‥ラクシャータ」
「なぁにかしらぁ?」
「この後する予定の整備は、紅蓮弐式と月下隊長機から始めろ。二人には後で話がある」
「わかったわぁ。わたしは行かなくても良いんでしょぉ?」
「あぁ。将軍、オレンジ卿、プリン伯爵も手持ちの仕事は終わらせておけ」
「「「イエス、マイロード」」」
3人は一斉に踵を鳴らして敬礼する。
それは既に身に染み付いた行動で、ブリタニア式の敬礼もまた、日本人達の反感を買っている事に、彼等は気付いていなかった。
「ゼロ。その三人に、『郷に入っては郷に従え』ということわざを教えてやれ」
藤堂が忠告を入れる。
「‥‥そうだな。日本人と、敵。どちらかがいる前では止めておけ。‥‥わたしは暫く自室にいる。緊急以外は煩わせるな」
ゼロはそう言うと、立ち上がり、さっさと部屋へと戻っていった。
何故かいつもは扉の前まで纏わりつくロイドとジェレミアも階下でゼロを見送っていた。

「ねぇ。プリン伯爵とオレンジ卿。どうして今日は付いて上がらなかったの?」
二階で扉の閉まる音がしてから、気になっていた事をカレンが尋ねる。
「簡単よぉ。プリン伯爵達はぁ、ゼロの勘気のとばっちりを喰らいたくなかっただけぇ。ねぇ?プリン伯爵ぅ」
ラクシャータは代わりに答えて立ち上がる。
「当然でしょ~。流石にとばっちりで引導を渡されるのは避けたいしー?」
「主の引導はそれはそれは容赦がない。出来うるならばその場に立ち会いたいとすら思わない程だ」
「あぁ、そういえば、オレンジ卿は疑惑の件で体験済みだっけ~?」
「むッ‥‥。プリン伯も体験してみてはどうだ?」
「いッやだねー」
「二人とも、そこまでにしておけ。お呼びが掛かった時に手持ちの作業がまだ残っていた、という事にだけはしておくなよ」
ロイドとジェレミアの言い合いを止めるのは既にダールトンの仕事の一つになっているようで、諌めてからダールトンは溜息を吐いた。
「じゃあ、藤堂とお嬢ちゃんは整備に行くわよぉ」
ラクシャータはまずはと指示された二人を呼ぶと格納庫へ向かって歩き出し、藤堂とカレンがその後に続いた。


一方、ゼロの私室では、ゼロが溜まりに溜まったブリタニア人の経歴書をかなりの速度で仕分けしていた。
そうして仕分け終わった後、枚数的には一番少ない山を持ち上げ、首を傾げた。
「‥‥どうしてバレたんだ?」
「バレていなければ、こいつ等が入団を希望するはずもなく‥‥」とゼロは呆然とする。
手持ちの作業を終わらせたにも関わらずゼロからの音沙汰がない事を訝しんだダールトンが控えめなノックをするまで、それは続いたのだった。

───────────
作成 2008.04.17 
アップ 2008.05.21 

★砂伊様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ皇子時代、ロイドさんと楽しくシュナイゼル兄さまで遊んだ話)

ルルーシュの部屋に戻ると、ルルーシュとロイドがシュナイゼルを振り向いた。
ロイドは驚いた様子だったが、ルルーシュは平然としていて予測していたのだと知れる。
「母上を味方につけたようですね、義兄上」
ルルーシュがそう言って挨拶をする。
「‥‥‥‥って、誘惑!?殿下、マリアンヌ様だけはおよしになられた方が宜しいですよー」
ロイドは目を見開いて驚き、忠告する。
「挨拶をしただけだ。おかしな邪推はやめたまえ、ロイド。ルルーシュが本気にしたらどうする?」
シュナイゼルはほんの少し眉間に皺を寄せてロイドを睨み据えて言う。
「‥‥‥‥その時は『義兄上』ではなく、『義父上』と呼びましょうか?」
ルルーシュもやっぱり渋面を作ってそう言うと小首を傾げた。
「あらー。距離が遠くなりますね~、殿下ー」
「ルルーシュ。そんな事にはならないから、今まで通り『兄上』と呼んでおくれ」
シュナイゼルはロイドの言葉を無視してルルーシュに優しく訴える。
すると今度はロイドがシュナイゼルを無視してルルーシュに話しかけるのだ。
「あぁ、そういえば、ルルーシュ様」
「どうした?ロイド」
「先程は途中になってしまいましたけどー、答えてくださるのですよねー?」
ロイドはそう応えてルルーシュを抱き上げた。
「なッ!ロイドッ!ルルーシュを即刻降ろしたまえ!そのようなうら‥‥おこないは皇族に対して無礼だろう!」
シュナイゼルが慌てて友人の行動を諫め、抗議する。
途中に混じった本音に、ロイドは笑い、ルルーシュは気づかない。
「義兄上、このくらいは構いませんから。義兄上の友人なのでしょう?喧嘩は良くありませんよ」
「ほーら殿下。ルルーシュ様は良いって仰られてるじゃないですかー」
にこにこと優越感に浸るロイドはシュナイゼルに対して得意満面に言う。
「ルルーシュ。以前から思っていたが、君はロイドに少々甘くし過ぎてないかぃ?」
「そうですか?‥‥それでロイド、先程の話とは何の事だ?」
「ですからー、ぼくの事、好きですかー?」
これまたにこにこと笑うロイドに「まだ言っているのか‥‥」とルルーシュは呆れる。
しかしシュナイゼルの心は穏やかではいられなかった。
ふるふると握った拳を震わせるシュナイゼルにロイドは気づくがルルーシュは気付いていない。
「ロイド・アスプルンド。今すぐ、ルルーシュを降ろしたまえ」
シュナイゼルの低い声音にロイドは「少し遊びが過ぎたか‥‥」と思って今度は素直に指示に従ってルルーシュを降ろした。
「あぁ、ロイド。義兄上がスッ飛ばした場所に置いて来たメモを回収して来てくれないか?」
「あぁそうですね、わかりました。すぐ戻りますから」
ロイドはルルーシュにそう答えると部屋を出て行った。
「ルルーシュ。‥‥ロイドに告白されたのかぃ?」
シュナイゼルの突然の言葉に、ルルーシュはきょとんと首を傾げる。
「告白‥‥ですか?」
「今、ロイドが『ぼくの事、好きですか』と聞いていただろう」
「ロイドの事は好きですよ?義兄上もだからロイドと友人をしているのでしょう?」
重ねて問うシュナイゼルに、ルルーシュはあっさりと答える。
本人にでなければ、さらっと言えるルルーシュは気負ったところは全くない。
「ならわたしは?ルルーシュ。わたしの事は好きかぃ?わたしは君の事がとても好きなんだが」
シュナイゼルの突然の告白に、ルルーシュはしかし「またか‥‥」と思う。
今日は何かと本人から「好きか?」と尋ねられ、ルルーシュは「何の日だろう?」と首を傾げてしまう。
そこへ脱兎の勢いでロイドが駆け戻って来る。
「ただ今戻りました、ルルーシュ様!」
汗一つ流さず、呼吸も乱していないロイドに、メモを置いた残りの場所を思い浮かべたルルーシュはあまりの速さに呆れた。
「そんなに急がなくても良かったのに。誰かにぶつかったりしてないだろうな?」
「勿論ですとも、ルルーシュ様。それにルルーシュ様に早く再会したかったものですから」
やっぱりにこにことロイドは応じる。
「‥‥ルルーシュ。わたしの事、好きかい?」
再び尋ねる忘れられた感を覚えたシュナイゼルに、ロイドはルルーシュの解答を知っていてにやりと笑う。
「‥‥それは秘密ですよ?シュナイゼル義兄上」
「そうそう、それは秘密ですよ?殿下」
ルルーシュとロイドはそう言って顔を見合わせると、くすくすと笑った。
憮然としたシュナイゼルと、にこにこ顔のロイドがルルーシュの部屋から去ったのはそれから暫く後の事。

シュナイゼルの部屋に辿り着いた二人は、立場を入れ替えてシュナイゼルの怒りの嵐をロイドは甘んじて受けていたとか。



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作成 2008.05.10 
アップ 2008.05.20 
 

★砂伊様へのリクエスト作品★
(ルルーシュ皇子時代、ロイドさんと楽しくシュナイゼル兄さまで遊んだ話)

職務の合間にふと顔をあげたシュナイゼルは、ロイドの姿が視界から消えているのに気付いた。
ロイドは腐れ縁としか言いようのない、切りたいのに切れない友人である。
人が増える時には敏感なのに、減る事には少し鈍くなる自覚のあるシュナイゼルは、あの友人に気を許しているようで少し眉を寄せた。
それから、ロイドの座っていた椅子に二つ折りにした紙を見つけたシュナイゼルは、立ち上がって椅子に近づいた。
『殿下へ。お忙しいようでしたから、ルルーシュ様のところへ行ってますねー♪ロイドより』
手にした紙に書かれたその文面にシュナイゼルは思わずその置手紙を握り潰してしまった。
シュナイゼルは逡巡をほんの一瞬で終了させると、ベルを鳴らして部下を招く。
「処理した書類は持っていくように」
簡潔に指示を出し、部下が敬礼してお決まりのセリフを言うのを聞くと、シュナイゼルはそのまま部屋を足早に出てアリエスの離宮へと向かった。


「で~んか」
呼ばれたルルーシュは読書中の本から顔を上げて一人で近づいてくる人影に気付く。
「ロイドか。今日も一人なのか?」
「そーですよぉ。流石に第二皇子ともなると色々とお忙しいらしくってー」
にこにこと笑うロイドにルルーシュは溜息を吐いた。
「後で睨まれるのはお前だろう?ロイド」
「えぇ、そうですねー。でもルルーシュ様には怒ったりなさらないのですから、いーじゃありませんか」
「‥‥どうしてだろうね。ぼくもロイドと一緒にやってるのに」
不思議そうに首を傾げるルルーシュに、ロイドは笑う。
「あー‥‥。えーと、ですねー。それは秘密ですよ?ルルーシュ様。流石にそれをぼくから言ってしまっては怒られるだけではすまなくなるのでー」
少し困ったように言葉を濁したロイドに、ルルーシュは「そうか」と頷いた。
「ロイドは今日は一緒にやらない、というわけだな?帰るのはあっちだ。あっち」
指でビシッと出口を指してルルーシュはロイドに促してみた。
「すみません、ルルーシュ様。教えますから、追い出さないでください、お願いですから」
少しばかり慌ててロイドはルルーシュに謝り倒す。
「それで?」
腕を下ろしたルルーシュはロイドに先を促した。
「つまりですね。シュナイゼル殿下はルルーシュ様の事がとても好きなので、『怒ったりして嫌われたらどうしよう』って思って怒れないんです」
ロイドの答えにルルーシュは首を傾げた。
「ぼくも義兄様は好きだぞ?少し怒られたくらいで嫌いになったりなんてしないのに?」
「ルルーシュ様、ぼくは?ぼくの事も好きですかー?」
好きと言って貰ったシュナイゼルに嫉妬したロイドは、キラキラと期待に瞳を輝かせ、「言って言って」とおねだりモードに突入している。
「‥‥‥質問に答えてないぞ、ロイド」
ルルーシュは「今は義兄様の事を話していたはずなのに?」と不思議に思いながらも知りたい事を教えないロイドに拗ねてみる。
「ルルーシュ様が質問に答えてくださったら答えますから。ぼくの事も好きですかー?」
「嫌いなら無視してる。ここにも入れさせない。特にロイドなら義兄様に頼んで出入禁止にして頂くくらい出来るからな」
本人を前にして「好き」と言える相手は母と実妹の二人だけなルルーシュは、遠回しに言ってみる。
「好きですかー?」
しかし、ロイドは「好き」というまで諦めないのか、同じ問いを繰り返すのだ。
「‥‥‥‥。嫌いじゃない」
「好きですかー?」
「‥‥‥。あのな、ロイド。良いのか?多分義兄様はもうすぐ来るぞ?」
チラと時計を見たルルーシュはそう話題を変えてみた。
「あぁ、いけない、いけない。では今日はどちらへ参りますか?」
「まずは母様に挨拶だ」
「あぁ、『御子息をぼくにください』って?」
「殺されたいのなら止めないぞ、ロイド。墓はどんなのが良い?まずはカタログを取り寄せようか」
「普通墓ではなく、墓に備える花を尋ねませんか?」
「花はすぐに枯れるからな。石の墓も割れたりすると困るか?いっそナイトメアの装甲で墓を作るというのはどうだ?」
「すみません、ルルーシュ様。余計な事は言わずに普通に挨拶しますから」
「そうか。なら行くぞ、ロイド」
ルルーシュはにっこりと笑うとロイドを従えて部屋を出て行った。


ルルーシュの部屋に辿りついたシュナイゼルは、扉が少し開いているのを良い事に、勝手に入り込む。
しかし、思ったとおり中は無人で、テーブルの上にはロイドが残したのと同じ置手紙。
『義兄上へ。少し待ちましたが来られないようなので母上のところへ挨拶に向かいます。ルルーシュ』
シュナイゼルはそっと折り畳んで懐にしまうと、小さく息を吐いた。
「またこのパターンかぃ?ロイドも、本当に懲りないな。ルルーシュをあちこち引っ張り回すなんて‥‥」
ロイドへの怒りを募らせながら、ルルーシュを探す為に、シュナイゼルはマリアンヌの元へと向かった。

「あら。これは、シュナイゼル殿下。いらっしゃいませ。本日は‥‥?」
シュナイゼルが声をかける前にやって来たシュナイゼルに気付いたマリアンヌがにっこりと微笑み挨拶を述べる。
シュナイゼルは畏まって礼をとった。
「挨拶が遅れまして申し訳ありません、マリアンヌ皇妃様。ルルーシュのところにロイドがお邪魔をしていると言うので引き取りに参ったのですが‥‥」
「まぁ。あの子にも困ったものですわね。これを預かっているのですよ。『これから向かう先を書いていますから、義兄上が来られたら渡してください』って」
「困ったもの」と言いながら伝言を頼まれ、楽しそうにシュナイゼルに告げるマリアンヌも十分「困ったもの」である、流石親子と言うべきだろう。
シュナイゼルは差し出された手紙を黙って受け取った。
「ですが、ルルーシュの部屋に行ってみると宜しいですわ。恐らく今からならば丁度戻る頃でしょうから」
と、有力な情報を提供されてシュナイゼルは喜んだ。
「ありがとうございます、マリアンヌ皇妃様。では、失礼いたします」
シュナイゼルは再び礼をとって暇の挨拶をすると、その場を立ち去った。

後編に続く。

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作成 2008.04.30 
アップ 2008.05.19 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ダールル←スザク/仲良しグラストンナイツ(ナナリー)/ネリ+ギルばれ)

ルルーシュは公園で渋面を作ってダールトンを見返していた。
「遅くなってしまって申し訳ございません」
ダールトンはルルーシュの渋面の理由が他に思い当たらず、一番にそう謝罪の言葉を紡いで頭を下げた。
「違う。そんな事で怒っているわけではない。‥‥後ろの奴等は一体何だ?」
ルルーシュはとことん低い声で傍にいるダールトンにだけ聞こえるように言った。
ダールトンはハッとして後ろを振り返る。
遅れ気味で、急ぐ事を優先してしまったダールトンは尾行されている事に気付かなかったのだと判って己の失態を悔いた。
と同時に、そこにいたメンツに驚く。
主であるコーネリアにその騎士ギルフォード、そしてグラストンナイツ全員の姿が確認されたからだ。
しかも自分はルルーシュに頭を下げていて、それを見られたとすれば、無関係などと言い訳する事も出来ないだろうとダールトンは諦める。
「‥‥も、申し訳ござりませぬ」
ダールトンは尾行者一行に視線を止めたまま、ルルーシュに向けて再び謝罪の言葉を紡いでいた。
「仕方がない。騒がれてしまってはそれこそ困るから事情を説明するか。‥‥簡単な説明をした後入口まで連れて来い。先に行ってる」
「承知いたしました」
ルルーシュが背を向けると、ダールトンはコーネリア達に向かって歩き出した。

「‥‥姫様。何故このような場所に‥‥?」
ダールトンは自分をつけて来たと判っていながら、そう尋ねた。
コーネリアの横にギルフォードが立ち、二人の後ろに、グラストンナイツが並んでいる。
「グラストンナイツ達に、お前が行方を消す時間がある、と聞いたのでな。後をつけた」
コーネリアは悪びれずに言い切り、ダールトンはグラストンナイツに視線を向けた。
「「「「「も、申し訳ございません、ダールトン将軍」」」」」
小声での合唱が、ダールトンの耳に届く。
「休みを取って頂かなければ、と思ったのです」
「作業時間が少なくなっているのに、仕事が遅れないとなれば過労なのは明白」
「そう報告すれば休みを頂けるのではないかと愚考いたしました」
「結果、このような事になってしまいましたが‥‥」
「申し訳ございませんでした、将軍」
グラストンナイツがそれぞれ事情やら謝罪やらを口にしていた。
「‥‥つまりお前達は、ダールトン将軍がどこで何をしていたか、知っていた、という事か?」
ギルフォードがグラストンナイツを振り返ってそう尋ねる。
「「「「「はッ、その通りで有ります」」」」」
5人はビシッと敬礼して肯定した。

「ダールトン。今のはルルーシュだったな?生きていた事は嬉しい。何故報告しなかった?何故お前が一緒にいたのだ?」
考え込んでいたコーネリアがダールトンにそう尋ねる。
「最近偶然再会致しました。口止めをされておりましたので。報告は出来ませんでした」
「あッ!そう言えば、行ってしまわれたのは宜しかったのですか?」
もしも今日の二人の時間があれだけだと姫様に知られれば、大変な事になると、グラストンナイツ達は思い至って蒼白になる。
「いや。簡単に説明した後、合流する事になっている。‥‥騒がれるのを厭っておられるので」
「即刻!連れて行け、ダールトン!」
コーネリアがダールトンの言葉に喰いつきそう命じた。

「ルルーシュ‥‥」
コーネリアはこの地で亡くなったと聞かされていた義弟を前にして感極まって言葉が続かないでいた。
「コーネリア義姉上。ご無沙汰いたしておりました。お久しぶりですね」
ルルーシュは苦笑した後、そう言って頭を下げる。
「生きていたのならば、何故連絡してこなかった?わたしならば、お前達を守るために動いたというのにッ。‥‥ナナリーも無事なのだろうな?」
「勿論元気ですよ。‥‥おれは廃嫡され見捨てられた身。皇族と連絡を取れば、皇帝から受ける扱いはわかっていましたからね」
ルルーシュの言い分がわかる一同は押し黙る。
良くて「外交の道具」か、「飼い殺し」や「幽閉」、悪ければ「死」が待っているだろう事が予測されるからだ。
「しかしどうやって‥‥」
「アッシュフォードに匿って貰いました。今も素性を隠し学園で学生生活を送っておりますよ」
ルルーシュの言葉に、コーネリアとギルフォードは同時に顔色を変えた。
「ッ‥‥すまないッ!知らぬ事とは言え、ユフィのせいで安全だったはずの隠れ家を壊してしまったのではないか!?」
コーネリアの謝罪の言葉に、しかしルルーシュは笑みを見せる。
「コーネリア義姉上はすぐにその事に気付かれる。‥‥ユフィとその騎士にはわからなかったようですが」
見せたばかりの笑みが引っ込みルルーシュの表情に憂いを見つけた一同は慌てる。
「ルルーシュ様。‥‥本日はナナリー様もお待ちに?」
ダールトンがルルーシュの肩に手を乗せてそっと声を掛ける。
「あ、あぁ。そうだった。ナナリーがきっと首を長くして待ってるな。‥‥義姉上とギルフォード卿、それにグラストンナイツも同行するだろう?」
「「「「「イエス、マイロード」」」」」
これが初めてではないグラストンナイツは慣れたもので揃って即答し、コーネリアとギルフォードはそれにつられるように頷いた。
それを受けたルルーシュは先頭に立って学園までの地下道を案内し始めた。

(おい、ギルフォード。ダールトンとルルーシュの距離がおかしくないか?)
(おかしいですね。あれはある程度以上親しくなければ不敬罪と言われても仕方がないと思うのですが)
最後尾をついて行きながら、コーネリアとギルフォードがヒソヒソと囁き合う。

一行がクラブハウスにたどり着き、居合わせているスザクをルルーシュのいないところでネチネチといたぶる未来は、まだナナリーしか知らなかった。



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作成 2008.05.10 
アップ 2008.05.17 
 

★臣近様へのリクエスト作品★
(ダールル←スザク/仲良しグラストンナイツ(ナナリー)/ネリ+ギルばれ)

その情報をコーネリアに伝えたのは、グラストンナイツだった。
‥‥どちらかといえば、泣き付いて来たと言うのが正しいかも知れないが。
「将軍が日に数時間、行方をくらましますッ!」
グラストンナイツの一人、クラウディオの、それが開口一番の台詞だったが、問題にしたいのはそれではないのは表情を見ればわかる。
彼等の表情には、非難の色は欠片もなく、むしろ心配して不安になっているらしい。
「‥‥それで?」
コーネリアはただ続きを促す。
「仕事を全く滞らせません!」
「このままではいくら将軍でも身体を壊しかねません!」
アルフレッドとバートが立て続けに訴える。
つまり仕事をしない時間が数時間あるのに仕事量が変わらないダールトンを案じているのだ。
「‥‥お前達の事だから心配して後をつけたのではないのか?ダールトンはどこに行っている?」
コーネリアがグラストンナイツを見渡して尋ねる。
「申し訳ありません。いつも撒かれてしまって‥‥」
エドガーが悄然と項垂れて応じた。
「そうか。‥‥ならば、次回ダールトンが単独行動に出る前に準備を整えておけ。追跡するぞ」
「‥‥って姫様。ダールトン将軍に尋ねた方が早いのではありませんか?」
コーネリアの言葉に驚いたギルフォードが思わず尋ねてしまっていた。
「尋ねて話す事ならば、ダールトンはとうにわたしに報告しているだろう。それがないのだから、尋ねても答えまい」
「‥‥ぇ‥‥っと。あの。休ませる方向には行かないのでしょうか?」
戸惑った様子でデヴィッドがそっと尋ねる。
「どこで何をしているのかを知る方が先だ。それがわかった後、検討する。‥‥良いな?」
「「「「「イエス、ユア・ハイネス」」」」」
グラストンナイツ達は一斉に敬礼しながら、心の中で失敗を嘆いていた。


『あら、失敗したのですか?』
「ッ‥‥申し訳ありません、姫様」
『そんなに恐縮しなくても、こんな事で怒ったりなんてしませんわ。では参加するのはお二人ですのね?』
「はい」
『お兄様を悲しませるような事があれば、例え貴方達やその上官の方でも』
「わかっております!その事は。そのような事には絶対にならないように全力を挙げて対処いたしますので」
『そう、よかったわ。でしたら後でお茶でもご一緒しましょう、と皆さんにも伝えてくださいね?』
「承知いたしました、姫様」
接続の切れた通信機を片手に、バートが片手を胸に当てて鼓動を抑えるのに必死になっている。
「‥‥‥ギリギリ合格?なんとか失礼に当たらない対応が取れていたな」
傍で聞いていたアルフレッドがそう評価を下す。
「え、ええ。途中でつっかえたりしたらどうしようかと」
そう言ってから、バートは手にした通信機を大事そうに一度胸で抱きしめてから次の当番のクラウディオへと差し出した。


「‥‥ダールトン将軍。‥‥少々お話があるのですが、お時間を頂いても宜しいでしょうか?」
とダールトンに声を掛けてきたのは息子同然に思っているグラストンナイツの一人エドガーだった為、ダールトンは頷いた。
「どうした?」
「あの‥‥。少しお疲れのご様子ですし。休まれた方が宜しいのでは、と」
「大丈夫だ。わたしは頑丈だけが取り柄だからな」
「そんなッ!ダールトン将軍は素晴らしいものをたくさんお持ちです。だけ‥‥等と仰らないでください!」
「あぁ、すまないな、エドガー。別に卑下したわけではなかったのだが」
苦笑したダールトンはエドガーに詫びる。
「い、いえ。わたしの方こそ、強く言い過ぎてしまいました。‥‥ですがあの、本当に休まれた方が‥‥」
「平気だ。‥‥それに、今日も約束をしている。そろそろ出なければならないからそれまでにしておきたい作業もある」
「ですが‥‥。万が一にでもダールトン将軍が倒れられたりしたら、あのお方も悲しまれてしまいます」
そんな事になったら、姫様がどんな行動に出るのかが分かっている身としては止めたいところであるし、あのお方が悲しむ姿も見たくはない。
しかし結局、エドガーはこの時、ダールトンの説得に失敗しただけでなく、当初の目的であった、コーネリアとギルフォードについての報告をもし忘れたのだった。

ダールトンは既に日課になったかのようなお忍びに出掛け、姿を消した。
唯違った事は、前後してコーネリアとギルフォードも政庁から姿を消した事である。


スザクはルルーシュを訪ねてクラブハウスに足を運んでいた。
出迎えた咲世子は一瞬眉を顰めたものの、何も言わずにスザクを通す。
「いらっしゃい、スザクさん。今日はどうなさったのですか?」
やって来たスザクにナナリーがにっこり笑って挨拶をする。
「やあ、ナナリー。ルルーシュに会いに来たんだけど‥‥いるかな?」
スザクもまたにこにこと微笑んでナナリーに挨拶をしていた。
「お兄様にですか?お出かけになっていますわ。‥‥わたしに会いに来て下さったのではないのですね‥‥」
ナナリーはそう言って憂い顔になった。
「勿論、ナナリーにも会いたかったよ。ルルーシュ、遅くなるの?戻るまで一緒にいようか?」
慌ててスザクが言い繕うと、ナナリーは再び笑顔を見せた。
「宜しいのですか?お兄様は買い物に出ると仰って‥‥すぐに戻るとは思うのですけど」
にこにことナナリーが応じると、咲世子が二人の為にお茶を持って入って来た。

後編に続く。

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作成 2008.05.05 
アップ 2008.05.16 
 

★hidori様へのリクエスト作品★
(朝ゼロの騎士団日常話 or 周囲からから見た朝ゼロまたはゼロ(ルル)の話)

朝比奈はどう言おうか、どこまで言おうか考えていたが、結局は報告はなされなかった。
「ゼロがあれ程嫌がっているのならば‥‥」そう言ったのは仙波で、みんながそれに頷いたからだ。
普段ならば反対するだろう玉城もまた熱心に頷いていたので反対者は出なかったのだ。
朝比奈はそれに、ホッと息を吐いた。

「最近態度が違うくない?」
「あぁ、朝比奈だろ?」
「朝比奈もそうだけど、ゼロもだよ」
「‥‥やっぱり気になるよな。玉城の奴、一体何の場面を目撃したんだ?」
玉城の目撃騒動から数日、幹部達の間で、そんなやりとりが交わされるようになった。
朝比奈がゼロに対して些細な要求をする場面を何度か見かけ、朝比奈が駄々を捏ねている場面を見かけ。
ゼロはそのことごとくを一言の下に退けているのだが、その口調が何故か優しいと気付いてしまい戸惑っているのだ。

「えぇ~~ッ!」
格納庫に響くような声に、その場にいた者が視線を向けると、ゼロの前に立った朝比奈が声をあげている姿が目に入る。
「何か文句があるのか?」
「とーぜんじゃないですかッ」
呆れた口調で訊ねるゼロに、朝比奈は当たり前だと声を張り上げる。
ゼロは溜息を吐いて言葉を綴る。
「とにかく、わたしは認めない」
「ゼロ~。頼みますって」
「朝比奈。自分がどれ程の声をあげているか、気付いているか?わたしに何も言う気がない事はちゃんと覚えているだろうな?」
「‥‥お願いしますって」
ゼロの言葉に、一瞬周囲に視線を走らせた朝比奈は小声になったもののそれだけで会話を続ける。
「‥‥朝比奈。お前、一体幾つだ?少しはそれを直そうとは考えないか?」
「えー。でもこれもおれですしー?ゼロは嫌ですか?」
「時々な。とにかく、今は忙しい。その話の続きは後だ」
「わっかりましたー。じゃあ後でね~」
朝比奈がぶんぶんと手を振りながら去って行くゼロを見送った。

「朝比奈、お前‥‥」
一人になった朝比奈に、千葉が声を掛けると、朝比奈は千葉を振り返る。
「なんですか?千葉さん」
「最近、ゼロに対する態度が変わってないか?」
千葉の言葉にそれとなく様子を窺っていた周囲の幹部達が「うんうん」と頷いている。
「そうですか?」
朝比奈は自覚がないのかハテナマークを浮かべて首を傾げているようである。
「ゼロは色々と忙しい身だ。あまり煩わせるな」
「別に煩わせてなんていませんて、千葉さん」
「自覚がないのか、貴様は」
「えー。ゼロって本当に迷惑だって思ってるなら、無言で無視して立ち去ってると思いますけどー。呼びとめて玉城とか酷い目に遭ってるけど」
朝比奈の反論に、「そう言えばそうかも」なんて思い当たった周囲の幹部達は頷いてから、「ならなんで?」と首を傾げた。
「それで?『今は忙しい』と言われていただろう?」
「えっとぉ、確かにそーなんですけどね、千葉さん。あれも一種のコミュニケーションというかぁ。ほら、ゼロちょっとギスギスしてたでしょ?」
「それはお前に対してじゃないのか?」
「違いますって。普段はそうそう声掛けないんですけどねー。これからまだ色々仕事残ってるのにあれじゃ参るかなぁって思って」
さらっと言ってのける朝比奈に、「ギスギスしてるらしいゼロとコミュニケーション!?」と驚く一同。
「てぇことはぁ。あんた、もしかしてゼロと付き合ってるなんて言わないでしょぉねぇ?」
ラクシャータがいつもののんびりした口調で尋ねると、玉城が「ぶはっ」と噴いてついで噎せてごほごほと咳き込んでいる。
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥あぁあ。玉城怒られるのは一人で怒られなよぉ」
無言で、しかしラクシャータの言葉が真実だと確信してしまった幹部一同に、朝比奈は天を仰いで嘆息しながら、元凶の玉城に愚痴を言った。

その話を朝比奈から聞いたゼロことルルーシュは、「やはり玉城にギアスを掛けておくべきだったか?」と少し後悔した後、開き直る事にした。
以来、他の団員とは違う態度で朝比奈に接するゼロを、幹部達は良く目にするようになった。


「ゼ~ロ。怒ってます?」
「当然だな、朝比奈。貴様が認める発言をせずに否定していれば、玉城が幾ら噎せようが誤魔化せたかも知れないのだろう?」
「うわぁ、とばっちりだー。今更だし、これからは幹部公認なんですから、前向きに考えませんか?ゼロ。好きですよ?」
「‥‥‥‥お前は前向きすぎだッ」
足早になって去って行くゼロを、「あ、待ってくださいって、ゼロー」と朝比奈が追いかけて行った。

「なぁ、おれら、これからずっとあのバカップル見続けないといけないのか?」
「玉城にそれ言う資格ないと思うわよ。あんたがあそこで噴いて噎せたりしなければッ!」
「んな無茶言うなよな、カレン。第一おれがあの時見たのはだな」
「‥‥何よ?」

「あ、今更言うんだ?玉城」

「げ、朝比奈!?なんで?さっきゼロと出てったんじゃ‥‥?」
「うんそうだけど、忘れものしちゃって。言っとくけど玉城。ゼロの怒りが収まるまで不用意な事言わない方が身のためだから。じゃーねぇ」
忘れものらしい書類を手に朝比奈が去って行くのを見届けてから、カレンはポツリと呟いた。
「‥‥朝比奈さんて、最近ゼロへの態度が違うと思ってたけど、玉城に対しての態度も違うくない?」



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作成 2008.05.05 
アップ 2008.05.13 
 

★hidori様へのリクエスト作品★
(朝ゼロの騎士団日常話 or 周囲からから見た朝ゼロまたはゼロ(ルル)の話)

それを目撃したのが、別の者ならば未だに知る者は少なかっただろう。
だが、目撃したのは玉城で、仰天した玉城はその場ですぐには動けず、当事者達が立ち去った後我に返り、幹部達が集まる場所へと駆けて行ったのだ。
当事者達は別の場所に行ったのか、そのラウンジにはおらず、まぁいないのは二人だけと言う、お誂え向きなメンツに向かって玉城は叫んだ。
「ゼロがッ!」
ガタガタと何人かが玉城の慌てぶりに立ち上がって振り返り、「どうしたッ!?」と尋ねかける。
「いや、朝比奈がッ!」
その名前に藤堂と四聖剣が渋面を作って思う事は「今度は一体何をやったんだ、あいつは」である。
「ちょ‥‥少しは落ち着きなさいよ。玉城。何が言いたいのかさっぱりわからないじゃないの!‥‥で、問題なのはゼロなの?朝比奈さんなの?」
「どっちもだよ。さっき、あっちで!」
「あっちで何かなー?その続きはー?」
玉城の裏返り気味の声に被さるように、朝比奈の声が聞こえて玉城は慌てて振り返って「朝比奈ッ!」と叫んで後退る。
「‥‥朝比奈。何が有ったんだ?」
藤堂が尋ねる。
「えーっと。報告必要ですかー?藤堂さん」
朝比奈は藤堂の問いに、「どうしようかなぁ」と思案の様子を見せ、四聖剣の三人は「珍しいな‥‥」と呟いた。
「おれとしてはー。報告するのは別に良いんですけどー。ゼロがいないところで言うと、後で怒られそうなんでー。玉城怒られてみる?」
朝比奈が玉城に尋ねると、玉城はぶんぶんと首を振った。
「い、言わねぇ」
「‥‥で、ゼロはどこにいる?」
「‥‥‥えっと?さっきピザ屋の請求書を悲しそうに見てたから、自室でC.C.と喧嘩してるんじゃないかなー?」
藤堂の問いに、朝比奈は「わたしは自室に戻ってC.C.に意見してから行く。先に行っていろ」と言うゼロの言葉を思い出しながらそう言った。
「千葉。ゼロに来てもらえ。ゼロがいなければ言えないのならばゼロに来てもらうしかないだろう」
「承知」
藤堂の指示に、千葉はあっさりと頷くとゼロの部屋へと向かっていった。
「‥‥って藤堂さん!?報告必須?なんですか?」
「みんなが気にしている。このままでは気になって仕事が手につかない恐れがありそうだ。特にディートハルトや紅月が」
言われて朝比奈がそちらを向くと、ギンギンと突き刺さってくる視線が痛い事に気付いた。
「あちゃー。どうするのさ、玉城。大袈裟に騒ぐからこんな事に‥‥」
「ぅ、うっせー。あんなところであんな事をしてる方が悪いんだろうが」
と玉城は再び気になる言い方をしてのけ、朝比奈は「これはダメだ」と諦めた。


少しして、ゼロと千葉がやってきた。
「すまないな、ゼロ」
藤堂がゼロに詫びる。
「いや。それで、話とはなんだ?」
「‥‥あー、ゼロ。とりあえず、座った方が良いと思うよ。おれは」
朝比奈がゼロにそう進言すると、即座にゼロの定位置までの道が出来る。
「‥‥お前がそんな事を言う時は、ろくな事にならないからな。‥‥このまま引き返すという選択肢はないのか?」
「う~ん、多分ないと思う~」
ゼロが敵前逃亡並みの提案をしてみるが、朝比奈があっさりそれを退けたので、ゼロは溜息を吐いて定位置に向かって行って腰を下ろした。
朝比奈が当然のようにゼロの後に続いてゼロの隣に座る。(ちなみに逆側は藤堂だ)
「それで?」
ゼロは藤堂に尋ねる。
「玉城が何かを見たらしく、先程慌てて駆け込んできた。それには君と朝比奈の名前が挙がって、詳しい事を聞こうと思ったんだが」
「玉城が話す前におれが来ちゃって。そしたら今度は藤堂さんに何が有ったのか聞かれてー。で、ゼロがいないのに言ったら怒られるからって答えたところー」
藤堂の説明の後を朝比奈が引き継いで説明した。
ギギギとゼロの仮面が、藤堂から玉城へと移る。
「‥‥つまり、あれか?‥‥あれを見た‥‥と?」
そう言うゼロに、玉城は「ゼロが来てても十分怖ぇじゃねぇか」とびびりながらもこくこくと頷いた。
「見たのに、その場では何も言わずに、いない場所で言いふらそうとしたわけだな?」
「ご、誤解だそれはッ!驚きすぎて固まってただけだッ。気付いたらお前等いなくなってるしッ!」
「だからって本人いないところで話そうとしていたんだから、言いふらそうとってのは事実なんじゃない?」
言い訳をする玉城に朝比奈がツッコミを入れる。
「‥‥それで、朝比奈。ゼロがいるところでなら報告するのだろう?」
「藤堂。玉城が見たのは‥‥活動外だ。報告の必要は認められない」
藤堂が朝比奈に向かって再度尋ねた言葉に、朝比奈が「えっと」と考えていると、ゼロが割って入った。
「‥‥だが、ゼロ。玉城の驚きようは只事ではない。このままではみな気になって作業に支障を来す恐れがある」
「‥‥‥‥。藤堂、お前もか?」
「そうだな」
あっさりと頷く藤堂に、ゼロは溜息を吐いた。
「‥‥後悔しても知らないぞ。それで良いなら玉城か朝比奈に聞け。わたしは何も言わない」
そう言うと、ゼロは立ち上がる。
「えー。ゼロ行くんですか?てかどこまで話して良いか、いまいちわからないんですけどー」
「朝比奈、後で報告に来い。わたしはまだC.C.に苦情を言い足りないんだ」
ゼロは朝比奈の問いにも答えずに、そう言うと避ける団員の前を通り過ぎて自室に戻って行った。

後編に続く。

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作成 2008.04.30 
アップ 2008.05.12 
 

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