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──「親展と発覚」編──
近頃、ゼロ宛に親展の手紙が来るようになっていた。
トレーラーの1階で幹部──既に新規参入ブリタニア人三名も幹部の仲間と見做されている──達が休憩していた。
その時、1階にいたのは藤堂と四聖剣、扇、カレン、ディートハルト、ラクシャータ、ロイド、ダールトン、ジェレミアである。
突然、バンッと二階から勢い良く扉が開け放たれる音が響いてきて、幹部達を驚かせた。
バッと音のした方を振り仰ぐ者が大半だったが、ロイドとジェレミアは「我が君」「我が主」と言いながら先を争うようにして階段を駆け上っていた。
腰を浮かして警戒したのはダールトンだけで、他の元からの幹部達は、ただ首を動かしただけに留まった。
案じるロイドとジェレミアを纏わりつかせたまま、ゼロは降りてきて、ディートハルトの前で立ち止まる。
これには流石のディートハルトも戸惑いを覚えて、作り笑いを浮かべながら立ち上がって「どう、なさいました?ゼロ‥‥」と尋ねた。
「わたしは、『当分の間、ブリタニア人は落としまくれ』と言っておいたはずだな?ディートハルト」
ゼロの怒りを含んだ低い声に、藤堂は「またか‥‥」と嘆息し、他の日本人幹部達は嫌そうな表情を浮かべた。
新参幹部はバツの悪そうな表情になってゼロを見、ラクシャータはにやにやと面白そうにそんな一同を眺めていた。
「お言葉ですが、ゼロ。わたしは落としておりますが‥‥」
「あれを落としたとは言わないだろう?『合否判定はまだか』と言う催促の手紙がやってくるくらいだ。保留にしているだけではないのか?」
反論するディートハルトにゼロは容赦なく違いを指摘する。
「ってゼロに直接ですか?」
驚いたカレンが横から口を挟む。
「ここのところ、親展扱いの手紙が良く届く。‥‥まぁ、全てが全てブリタニア人というわけではないが、大半がそうで、内容がその件なんだ」
「申し訳ありません、ゼロ。‥‥ブリタニア人の書類を弾いた後、不合格者のところへ戻すのを忘れていたようです」
「‥‥‥‥‥‥。では今持って来い。ハッキリ引導を渡してやろう」
ゼロがディートハルトにそういった途端、ロイドとジェレミアがゼロから離れ、その事にダールトンとラクシャータ以外が驚いた。
「‥‥え‥っと‥‥。承知いたしました」
ディートハルトは戸惑ってロイド、ジェレミアを見、ダールトンとラクシャータに視線を移してみるが、何も言いそうに無いので返事をして踵を返した。
ゼロがいつもの場所に座ると朝比奈が声を掛けた。
「えーと、さ。ブリタニア人だけじゃないって、日本人からも親展来てるんですかー?」
「桐原公から時たま便りが来る事はあるな、親展で」
「「「‥‥って文通!?」」」
「斜めに読んで必要が有れば連絡を入れるつもりだったが、あれらに返事をする必要を感じず放ってある」
桐原からの手紙を受け取って、それを斜め読みするだけでなく返事を書かないとは‥‥と日本人達は呆れた。
そして桐原とゼロの力関係を思う。
というか、「桐原公、一体どんな内容の手紙をゼロに送っている?」と藤堂や四聖剣ですら疑問に思う。
バタバタを足音がしてディートハルトが戻ってきた、かなり早い。
そしてかなりの量の経歴書の束をゼロに差し出した。
「これ、です」
ゼロは手を伸ばして受け取り、一番上になっている経歴書に視線を落とすとそれなりに覚悟していたはずなのに、即効固まった。
「‥‥‥ゼロ、平気か?」
藤堂が声を掛けると我に返ったゼロは「あ、あぁ」と頷く。
「‥‥ゼロ。あのさ。ホントに落としまくるのか?問答無用で?」
扇が恐る恐る尋ねる。
「‥‥いや。一度目を通さねばならないだろうな。‥‥ラクシャータ」
「なぁにかしらぁ?」
「この後する予定の整備は、紅蓮弐式と月下隊長機から始めろ。二人には後で話がある」
「わかったわぁ。わたしは行かなくても良いんでしょぉ?」
「あぁ。将軍、オレンジ卿、プリン伯爵も手持ちの仕事は終わらせておけ」
「「「イエス、マイロード」」」
3人は一斉に踵を鳴らして敬礼する。
それは既に身に染み付いた行動で、ブリタニア式の敬礼もまた、日本人達の反感を買っている事に、彼等は気付いていなかった。
「ゼロ。その三人に、『郷に入っては郷に従え』ということわざを教えてやれ」
藤堂が忠告を入れる。
「‥‥そうだな。日本人と、敵。どちらかがいる前では止めておけ。‥‥わたしは暫く自室にいる。緊急以外は煩わせるな」
ゼロはそう言うと、立ち上がり、さっさと部屋へと戻っていった。
何故かいつもは扉の前まで纏わりつくロイドとジェレミアも階下でゼロを見送っていた。
「ねぇ。プリン伯爵とオレンジ卿。どうして今日は付いて上がらなかったの?」
二階で扉の閉まる音がしてから、気になっていた事をカレンが尋ねる。
「簡単よぉ。プリン伯爵達はぁ、ゼロの勘気のとばっちりを喰らいたくなかっただけぇ。ねぇ?プリン伯爵ぅ」
ラクシャータは代わりに答えて立ち上がる。
「当然でしょ~。流石にとばっちりで引導を渡されるのは避けたいしー?」
「主の引導はそれはそれは容赦がない。出来うるならばその場に立ち会いたいとすら思わない程だ」
「あぁ、そういえば、オレンジ卿は疑惑の件で体験済みだっけ~?」
「むッ‥‥。プリン伯も体験してみてはどうだ?」
「いッやだねー」
「二人とも、そこまでにしておけ。お呼びが掛かった時に手持ちの作業がまだ残っていた、という事にだけはしておくなよ」
ロイドとジェレミアの言い合いを止めるのは既にダールトンの仕事の一つになっているようで、諌めてからダールトンは溜息を吐いた。
「じゃあ、藤堂とお嬢ちゃんは整備に行くわよぉ」
ラクシャータはまずはと指示された二人を呼ぶと格納庫へ向かって歩き出し、藤堂とカレンがその後に続いた。
一方、ゼロの私室では、ゼロが溜まりに溜まったブリタニア人の経歴書をかなりの速度で仕分けしていた。
そうして仕分け終わった後、枚数的には一番少ない山を持ち上げ、首を傾げた。
「‥‥どうしてバレたんだ?」
「バレていなければ、こいつ等が入団を希望するはずもなく‥‥」とゼロは呆然とする。
手持ちの作業を終わらせたにも関わらずゼロからの音沙汰がない事を訝しんだダールトンが控えめなノックをするまで、それは続いたのだった。
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作成 2008.04.17
アップ 2008.05.21
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黒の騎士団入団試験 【8】親展と発覚編 ゼロ:「ハッキリ引導を渡してやろう」
親展を受け取ったゼロによってとある事が発覚しましたとさ?
これによって次の審査が始まります。