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──「団内の反応」編──
前日、ゼロは「表の用事が有るから数日来れない」と言って去っていった。
次の日、静かなアジトに団員達は戸惑った様子で周囲を見渡していた。
原因は言ってみれば簡単な事で、最近立て続けに入団したブリタニア人達が大人しかったからである。
ロイドはラクシャータを筆頭とした技術者達との話に熱中していた。
主な内容は、紅蓮弐式と白兜の事で、これに月下や無頼、無頼改もところどころ混じる。
ラクシャータ以外の技術者は、ロイドの博識ぶりに、「これで性格がまともならば」と嘆いたとか。
一方、ダールトンとジェレミアはディートハルトといた。
ディートハルトが収集してきたデータを見て、ダールトンとジェレミアが意見を述べたり補足をしたりと、データをより確かなものにしていっていた。
これにはディートハルトも喜び、「次は‥‥」と言いながら、資料に手を伸ばした。
藤堂はトレーラーのソファに座っていた。
腕を組んで、表情はすっかり渋面である。
藤堂の前には左右に分かれて四聖剣が立ち、彼等の表情を彩っているのは、戸惑い、であろうか。
藤堂の正面に揃う旧扇グループと、藤堂とを四聖剣は見比べている形である。
「藤堂さんに聞きたい事があるんだ」
そう話を切り出したのは扇だった。
だがしかし、次の瞬間には玉城が割り込んでいた。
「やい、いったいどういうつもりだ、藤堂さんよぉ。あんな連中次々引き込みやがってッ!!」
玉城は語尾も荒く言い放ち、「伯爵や将軍、挙句はオレンジだと!?」と続ける。
「‥‥それを藤堂中佐に言うのはお門違いというものですな。決めたのはゼロであって中佐ではない」
仙波が弁護に入り、発言者の玉城を見据える。
「あ、あぁ。それは判ってるんだが。‥‥その、どういう経緯で入団が認められたのかが知りたくて」
扇が背後に視線を感じながら、それでも控えめに尋ねた。
「‥‥経緯?」
藤堂は訝しげに問い返す。
「そう。これまでブリタニア人はディートハルトだけしか受かってなかったし、それだって彼が民間のジャーナリストで、ゼロを撮りたいとかって変な動機だからだろう?」
確かに変な動機なのだが、それについては誰にも異論はなかった。
ラクシャータはキョウトからの紹介で、別なのは周知の事実なので除外されている。
「だけど、今度の三人は動機もハッキリしないし、みんな軍人で、これまで敵対すらしてたんだ。俄かには信じられないと思っても仕方がないと思うんだ」
扇の言葉に、旧扇グループが一斉にうんうんと頷いている。
ロイドは白兜を擁した特派の主任だし、ダールトンは現在敵対しているコーネリアの副官だったし、ジェレミアに至ってはゼロに陥れられて恨みを持っていた。
「‥‥‥。動機は‥‥ゼロ。‥‥だそうだ」
藤堂はゆっくりと、告げた。
「動機がゼロ」とは際どい言い回しで、その場にいた幹部達は、意味を図りかねていた。
「いや、それがわからないし」とみんな思う。
確かにロイドとジェレミアがゼロを慕っているのは一目瞭然で判るのだが、何故そうなったのかもわからないのだ。
「あ、あの。藤堂さん。‥‥ゼロ、嫌がってたんじゃないんですか?あの時だって、『これだからブリタニアはッ』てすっごく忌々しそうに呟いてましたし」
その間にカレンが自分の疑問をぶつける。
相手がどれだけ慕っていようが、ゼロが嫌がっているのならばとカレンは考えたのだ。
「あ、あぁ。‥‥ブリタニアのノリとか思い切りの良さとか、思い込みの激しさには、時々ついていけないものを感じるからな」
藤堂の言葉に、「あぁなるほど」と思わず頷いたのは、一人や二人ではない。
どころか、ほとんどがそんな心境だろう。
脳裏にはディートハルトや、ラクシャータが浮かんでいたかも知れないし、ロイドやダールトン、ジェレミアだったかも知れないが。
カレンの脳裏には、何故か生徒会のメンバーが浮かんでいた。
「‥‥で、話を戻すけど、『動機がゼロ』‥‥って言うのは?」
扇が疲れた様子で尋ね直した。
「‥‥ゼロの力になりたい、と言うのが動機だそうだ」
藤堂もまた答えを言い直した。
「ちょッ‥‥。藤堂さん?前から疑問だったんですけど、それってプリン伯爵も将軍もオレンジ卿もゼロの正体知ってるって事ですか?」
朝比奈が驚きながら慌てた様子で藤堂に尋ね、その質問の内容を聞いて、扇グループも色めきだす。
「‥‥ゼロがブリタニアにいた頃の、知り合いだったらしいな」
藤堂は慌てるでもなく、渋面のまま応じた。
何せ最初にやってきたブリタニア人がディートハルトで、「仮面をしたままでも!」と叫びながら嬉々として仕えてるような男だったから、みな思考停止していたのだ。
「んん?中佐よぉ。それってゼロがあの三人を呼び寄せたのか?」
卜部が首を傾げて尋ねる。
「逆だな。ゼロの正体を察した彼等の一方的な押しかけだったぞ。入団希望の書類を見て酷く驚いていたからな」
藤堂はそう言うと深々と息を吐き出した。
「‥‥中佐?もしや、中佐もゼロの素性をご存知だったりしますか?」
話を聞きながら首を傾げていた千葉が疑問を口にした。
「‥‥‥あぁ。知っている。昔、面識があったから、気付いたんだが」
藤堂の言葉に、四聖剣も旧扇グループも目を点にする。
ゼロって何者!?
日本人ではないのに、桐原公とは知り合いで、藤堂とも面識が有ったというゼロ。
現在、軍の高官(一部降格済み)で、皇族の覚えもめでたい、横繋がりのなさそうな者達とも過去に知り合いだったというゼロ。
一人目は第二皇子の友人だとかいう伯爵で、直属の部隊を預かる主任だったし。
二人目は第二皇女の副官だか騎士だかで、歴戦の将軍だし。
三人目は第三皇子(故)の元でメキメキと頭角を現し始めていた(ゼロにより失墜済み)純血派とか言う派閥のリーダーだったらしいし。
ゼロと知り合った頃に、何をしていたか知らないが、「どんな出会いだよ」とツッコミたいところである。
「てかありえねぇだろ?なんだってリーダーの素顔とか素性とか幹部が知らなくて、ポッと出の新参者が知ってるんだよ?」
玉城が吼える。
「‥‥‥それって、ヤキモチ?」
朝比奈が思わずツッコミを入れていた。
怒りで顔を染めた玉城は「んな事言ってねぇ~だろッ」と否定するが、テレで赤くなったようにも見えるのだ。
「藤堂中佐。ゼロの素性がどうのとは問いませんが、ひとつお伺いしても?」
玉城はまるきり無視で、仙波が藤堂に声を掛けた。
「なんだ?」
「現在、ゼロの正体を知っている者は、どのくらいいるのですか?」
仙波の問い。
みんな首を傾げながら、指折り数えてみる。
C.C.、桐原公、藤堂、ロイド、ダールトン、ジェレミア‥‥六人は出てきて、なら六人か?と藤堂を見る。
「‥‥‥知らん」
しかし、藤堂は憮然としてそう答えた。
「え‥‥と。C.C.に桐原公に藤堂さんにプリン伯爵に将軍にオレンジ卿で六人ですよね?」
朝比奈が確認の為、声に出して言う。
「‥‥騎士団内で言えば、加えてラクシャータが入るな、恐らく」
藤堂の答えはまたしても聞く者を驚かせるに十分だった。
「‥‥‥‥。な、なら他を入れたら?」
扇が恐る恐る尋ねる。
「だから知らんと言った。どうやら、三人の行動で、わかる者にはわかったらしい。そのような話をしていたから、軍内にはそれなりにいるそうだ」
そう言った藤堂は、それはそれは重い溜息を吐いたのだった。
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作成 2008.03.18
アップ 2008.05.04
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黒の騎士団入団試験 【7】団内の反応編 ゼロ:「表の用事が有るから数日来れない」
団内の反応....というか、ゼロがいない時にはこんなふうなやり取りもあるかなぁと。
事情知ってそうな藤堂がつるし上げ喰らうのは仕方なし?