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ラクシャータは一人格納庫に戻った後、口々にゼロの容体を尋ねられ、ひとしきりの質問が落ち着くまでをのんびりと待った。
その場にいた団員とキョウト六家のお歴々に、「お目付け役として藤堂を置いてきたわぁ」と告げたのは、だからしばらく経ってからの事だ。
騎士団の一同は驚いた。
この局面で、ブリタニアが何時攻めてくるかも知れない時に、的確な戦闘指示を出せるのはゼロと藤堂しかいないというのに、と。
「ちょっとラクシャータ。ゼロが動けないなら、藤堂さんには戻って指揮を執ってもらわないと。いつブリタニアが動くか判らないんだし」
朝比奈が慌てた声を出す。
「そんなの知ってるわよぉ、わたしだってぇ?攻めてきたら呼びに行けば良いんじゃなぁい?それまではあんた達四聖剣が指揮してればぁ?」
どこか投げやりにラクシャータは言い返す。
「‥‥そんなにゼロの容態は悪いのか?」
まだ言い返そうとしていた朝比奈を抑えた千葉が、険しい表情で尋ねる。
「んー、当分は絶対安静ねぇ。傷が開いてたって事もあるけどぉ。結局のところ、過労よ、過労。無理しすぎ、させすぎ」
キセルを振りながらラクシャータは「第一体力ないんだから傷の治りも普通より遅いだろうし、もっと気遣ってあげるべきよねぇ」と一同を睥睨する。
「だからでしょ。言っちゃなんだけど、ゼロが満足出来るレベルの戦闘指揮って藤堂さんにしか無理なんだから」
ラクシャータと朝比奈、千葉のやり取りを、周囲で聞いていた団員は、改めて反省する。
思い返せば、ゼロが「指示通りに動け」と言っていた事もあって、指示通りにしか動いてこなかったのだ。
ゼロの立てた作戦は大抵において成功を収めていたし、白兜さえ出て来なければほぼゼロの読み通りだったから。
ゼロに付いて行きさえすれば‥‥。
何時しかそんなふうに思っていたのは確かなのだ。
「なら、今からもう少し考えて行動すればぁ?まだ遅くないと思うしぃ。少しはマシになるんじゃなぁい?」
キセルをゆらゆらと揺らすラクシャータには、引く様子はない。
「あの‥‥。ラクシャータ」
カレンが進み出て、思いつめたような声を掛ける。
「ん?なぁに?お嬢ちゃん」
「傍についているだけなら、別に藤堂さんでなくたって良いんじゃないの?‥‥C.C.だっているんだし‥‥」
「わたしが何だと?」
躊躇いに躊躇ってからカレンがC.C.の名前を出した途端、タイミング良く(悪くと言うべきか)C.C.の声が掛かった。
一斉にC.C.の声がした方を見て、更に驚いた。
C.C.がどう見てもゼロの仮面にしか見えないモノを抱えていたからだ。
「‥‥‥って、今、ゼロ仮面してないの!?」
カレンの驚いた声に、みんなは唯頷くだけ。
「藤堂さんがまだいるはずなのにッ??」とはカレンをはじめとする騎士団の心の叫びである。
「ん?‥‥あぁ、この仮面は予備だ。アイツが人前で仮面を外すと思うか?ラクシャータに頼みたい事があるんで、持ってきた」
「頼みぃ?どんなぁ?」
ラクシャータの声音には楽しげな色が乗っている。
「‥‥外野のいないところで話そう」
「んー?てことはゼロの部屋に逆戻りぃ?」
不機嫌そうに言うC.C.にラクシャータもまた眉を顰めて尋ねる。
「外野のいないところで、と言ったはずだぞ、ラクシャータ。あそこにはまだ藤堂がいる。‥‥そうだな、ガウェインの中に行こう」
更に低くなったC.C.の声が怒ったようにそう告げる。
「ぅわぁ、徹底してるわねぇ。‥‥それは良いけど、ゼロと藤堂は何してるわけぇ?」
「わたしは藤堂に追い出されたんだ。‥‥わたしがいるとゼロと喧嘩になるから、ゼロが安静にしていられないと言う理由でな」
C.C.の言葉に、ラクシャータ以外が驚く。
「へッ、やるじゃねぇか。愛人追い出すなんて、普通しねぇだろーによぉ」
玉城の言葉はいつもの事だったが、いつもならばいない人達がいる事を、玉城は失念していたのだ。
「愛人ですって?‥‥ゼロ様の?」
ゼロに会った途端、ゼロを「未来の旦那さま」と公然と言ってのける日本最後の皇、神楽耶が過激に反応した。
怪我人だからと桐原に窘められて、ゆっくり話す機会すら与えられない神楽耶は嫉妬に頬を膨らませる。
「ほぉ、あやつもやるものよのぉ」
ゼロの自室での二人の独特の雰囲気を見ていた桐原は、逆に感心したように呟いた。
「あ、‥‥いや。‥‥あれはわたし達が勝手に勘ぐっているだけで、本人達は否定しているから、違うかと‥‥」
慌てた扇が控え目ながら否定を試みる。
キョウトの面々にまで誤解されてはゼロが気の毒だ、と思った為だ。
無言で玉城に近づいたカレンは、無言のまま玉城の頭に拳を見舞った。
「それにしてもぉ、まぁだ言い合ってたのぉ?」
「悪いか?わたしにとっては死活問題だ」
呆れた調子で尋ねるラクシャータに、C.C.は開き直ったように応じた。
「悪いでしょ、それは。そりゃ藤堂さんだって追い出すって。‥‥C.C.にとっての死活問題って、‥‥ピザの事だよね?」
思い当たった朝比奈もまた呆れた様子で口を挟んだ。
納得した雰囲気が漂う中、神楽耶が首を傾げた。
「そこの女の死活問題がピザと言うのはどういう事か?何故それで負傷しているゼロ様と喧嘩など‥‥」
「えーとですね。ゼロはC.C.の事を『共犯者』と呼んでいまして、C.C.を傍に置いてますけど、時々ピザ代の事で口論してます」
朝比奈が説明する。
「たかがピザ代くらいでガタガタと。アイツが男らしくない事を言っているからだろう?」
「しかし。‥‥あの金額をたかがとは言えないかと‥‥。個人で賄えるのは、騎士団内でもゼロしかいないと思うが。‥‥中佐でも無理だぞ」
男達が反論できずに黙る中、千葉が控えめにゼロの弁護をする。
「まぁ。ゼロ様も水臭いですわ。‥‥それくらい、キョウトに請求してくださればよろしかったですのに」
「これ、神楽耶さま。流石にピザ代は経費では落ち申さぬぞ」
神楽耶の言葉に、C.C.は瞳を怪しく光らせたが、口を開く前に、桐原が神楽耶を嗜めた。
「そのくらいなんとかなさいませ。ゼロ様が困っていると言うのですよ」
「ここでもピザ代議論始める気なのぉ?‥‥C.C.あんたも急いでるんじゃないのぉ?頼み事とやらぁ」
「あ、そうだった。行くぞ、ラクシャータ」
本題を思い出したC.C.は、唖然とする一同を置き去りにして、ガウェインのコックピットの中に入り、ラクシャータもまたそれに続いた。
「‥‥‥えーっと。‥‥結局、藤堂さんは戻ってこないわけだね?」
「そうらしいな。‥‥仕方がない。外に出ている仙波さんと卜部さんにも伝えないと」
「‥‥本気で荷が重いんですけどぉ~。早く戻ってきてくださいよ~。藤堂さ~ん」
泣き言を言う朝比奈を千葉が引きずって、月下へと歩いていった。
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作成 2008.02.26
アップ 2008.05.03
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「おれを撃て」【13】9の続き。ラクシャータ。G1格納庫にて騎士団+キョウト。
またもや間が空いてしまいましたが、なかなか書けなかった続きが進んだので、更新。
ゼロの治療を終えたラクシャータの報告。
とうとう登場の神楽耶が暴走気味です。
書いていて色々と暴走していました(汗