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再び座るゼロに、視線が集中する。
ディートハルトとラクシャータの表情が引きつっているのは、笑いの余韻が中途半端に残ったせいだろう。
「‥‥カレン。どこまで説明した?」
「あ、はい。イベントの名前と、簡単な内容です。まだ本決まりにはなっていなかったので、触りだけですけど‥‥。あの、ゼロッ」
「なんだ?」
「ゼロの機嫌が悪いのは‥‥‥。この話のせいですか?」
カレンは思い切って尋ねる。
「‥‥。四割程はその通りだな。‥‥桐原公も突然の事に少々驚かれていた様子。‥‥お陰で夜中に叩き起こされる始末だ」
「四割って、じゃあ他にも?」
朝比奈が尋ねるが、ゼロは「そうだな‥‥」と言って黙ってしまった。
「ゼロ。‥‥何故、その話が桐原公から回ってきているのだ?」
藤堂が訝しげに尋ねる。
「アッシュフォード学園から打診が有ったそうだ。『イベントをおこないたいが軍と黒の騎士団双方の介入は避けたい』と。『騎士団に関しては頼めないか』だそうだ」
「あ。‥‥その、生徒会長が、『騎士団の方にはちゃんと申し入れをしておくから』と言ってたんですけど‥‥」
「なるほど?直接ではなく、間にキョウトを挟んだわけか‥‥。とすれば、桐原公が懸念していた、最優秀者とやらに贈られる『豪華賞品』についても確かなのか?」
ゼロの問いかけに、カレンはビクンと身を震わせた。
「カレン?なんだ、その‥‥『豪華賞品』って言うのは?」
カレンの反応に戸惑った扇が尋ねる。
「あ、その。‥‥会長がどこからか入手したみたいで‥‥その、止めようとは思ったんですけど‥‥。どの程度のモノかも見てないのでハッキリしないですし‥‥」
「‥‥今ハッキリしていないのは君だろう?」
情報の出し惜しみよろしく、しどろもどろのカレンに、ディートハルトがイライラと突っ込む。
「えと。会長の言葉をそのまま言います。‥‥『ゼロの写真と、騎士団が名乗った時の写真等、騎士団に関するデータ満載!のお得版よ』‥‥です」
ぶはッ。
誰かが吹いた。
ディートハルトは撃沈しているし、四聖剣も千葉以外突っ伏している。
「あら~。それは確かに言いにくいわね~。わかるわ~」
ラクシャータは全然気にしないとばかりに、そうコメントした。
藤堂は、呆れた様子だったが、不意にハッと顔色をわずかに変えて口を開いた。
「待て、紅月。確か枢木スザクも同じ学校だったはずだな?」
「あッ」
藤堂の言葉に、四聖剣と扇が声を上げる。
「はい。‥‥その、スザクはロイドって言う上司から、『是非、一番になって賞品を貰って帰ってくるように~』と命令されています」
頷いたカレンは、顔を歪めて会長の言葉を伝える。
「あら~?‥‥大変ね~、それはぁ?」
ラクシャータは嫌そうな表情を浮かべながら言い、珍しい事もあると内心思う。
「‥‥桐原公からも同様の事を言付かっている、カレン。『軍の手に、情報が渡るのは避けた方が良かろう?確か学園に通っている団員がいるそうだな』と」
ゼロの言葉に、カレンは「え゛ッ‥‥」と唸ってしまい、他の者はカレンに同情と憐みの視線を送る。
「『その者に、必ずや最優秀者になるようにと伝えてくれんかの。この件で表だって騎士団が関わるのはデメリットにしかなるまい?』と言われた」
「ぅわ~‥‥。桐原さんも案外オチャメだったんだな~。ねぇ千葉さん」
朝比奈が率直な感想を述べる。
ところが、桐原のこの言葉はカレンだけに向けられたものではなく、ゼロ本人に対しても向けられていたりしたのだが。
当然ながら、ゼロは一存を持って黙殺してのけ、全てはカレン一人に託される事になったのである。
「わたしに振るな。‥‥紅月、こっそり潜入とか無理なのか?みながみな騎士団の格好をしているのならば、見つかる確率も減るだろう?」
「あー‥‥たぶん、無理、です。‥‥あの学園、何故か警備はかなり厳重で‥‥。外部の者の出入りはかなり制限されているんです」
千葉の問いにカレンは力なく答える。
厳重な理由を知るゼロは、仮面の下で思わず笑みを浮かべてしまう──笑うしかないと言うべきだろう。
「‥‥ゼロ。騎士団としてはどう動くつもりだ?」
二人の会話を聞きながら、藤堂はゼロに尋ねる。
「‥‥‥‥。そうだな。イベントに関してはカレンを頼むしかないだろうな。‥‥騎士団は同日、別にひとつ作戦を展開する」
「「「‥‥は?」」」
「話では当日、軍が学園付近の警備を厳にして、騎士団が網にかかるのを待っているとか。‥‥ならば、他はかなり手薄となるだろう」
「‥‥‥‥囮作戦、というわけですか?‥‥その情報も桐原公から?」
「そうだ。ディートハルトは当日の軍の動きを出来るだけ調べてくれ。カレンはゼロの役だそうだな?」
顎に手を当てながら訊ねたディートハルトに、ゼロは頷いて指示を出し、カレンに確認する。
「は、‥‥はい」
「当日、是非やってもらいたい事があるのだが?」
「はい。わたしに出来る事でしたら、なんだってッ」
咎められるかと一瞬強張ったカレンだったが、そうではないと知って勢いよく頷く。
「‥‥枢木が扮する役はどちらかわかるか?」
「あ、団員です。本人が、ゼロにはなりたくないって言ってましたから」
「‥‥なるほどな。ならば、団員に扮する枢木に指示を出せるわけだな?『門まで走って行き、外に展開する軍に手を振ってこい』‥‥とか」
ゼロの話にみな真剣に耳を傾けていたのだが、出てきた例えに、ラクシャータとディートハルト、扇に朝比奈と卜部が思わず噴き出す。
「‥‥ゼロ、それ、本気で言ってるのか?」
千葉が眇めた目でゼロを見て言う。
「‥‥‥‥。それも有りだな、ゼロ。‥‥紅月。戻って来たら即座に『もう一度』と言うのも良い。いや、『十回繰り返せ』の方が効率的か」
しかし、思案気に沈黙していた藤堂がゼロに同意して、更にを要求してきたので、四聖剣は驚く。
「有りなんですか~~。藤堂さん~」
ゼロと藤堂は同時に頷いた。
「「当然、有りだな。枢木ならば」」
見事に声まで揃えて言いきった。
「彼は一直線で前しか見ない、走り出したら止まらない、‥‥馬のような性格をしているからな」
「自分で考えているようで、本人が理不尽とは思わない命令には犬のように、かなり従順に従う。イベント等の祭りの中では疑う事すらしないだろう?」
藤堂がかつての弟子を馬に例えれば、ゼロは犬に例える、がどちらもかなりな言いようである。
「ほぉ?ゼロは枢木の事を良く把握しているな?」
感心する藤堂にゼロはフッと暗い笑声を上げる。
「現在最大の敵だからな。性格もそれなりに把握しておいた方が読みやすい」
ゼロと藤堂による、かなり黒い枢木談義である。
「‥‥えと、ゼロ。スザクの事、だけですか?」
「いや。‥‥枢木の件はまぁオマケのようなものだが。‥‥本題については後で説明しよう」
枢木をけなした事で、機嫌が少し上昇したのか、纏う空気が少しだけ柔らかくなっている。
カレンは少しホッとして頷いた。
「ラクシャータ」
次いでゼロは、ラクシャータを呼ぶが。
「え~‥‥。いやよ~わたしは~」
何も言う前から、ラクシャータは心底嫌そうに拒否を示す。
当然話の見えない他のメンバーはゼロとラクシャータとを見比べたり顔を見合わせたりするだけだ。
少し低くした声で、再びゼロは名前を呼ぶ。
「‥‥‥‥ラクシャータ」
「ちょッ、ちょっとゼロ、お~ぼ~よぉ、それは~」
柄にもなく少し慌てたラクシャータが意見するが、ゼロは取り合う気がなさそうであるし、一向に話は見えてこない。
「‥‥‥‥あの。何の話ですか?」
カレンが業を煮やしたのか訊ねる。
「お嬢ちゃんのせいよ~。‥‥ッたく~。ゼロ、今回だけだからね~」
「助かる。あれが出て来るとややこしい事にしかならないからな」
「それはそーだろう~けどさぁ。‥‥あんた、絶対性格悪いって言われてるでしょ~」
カレンの問いはスルーされ、何が自分のせいなのかと余分な疑問まで残されて悩む中、ゼロとラクシャータの間でだけ、何かしらの成立を見たらしい。
「まぁな。自覚もしている。枢木がイベントから出て来れない以上、白兜も動けまい。‥‥こちらも紅蓮二式は出られないが‥‥」
ゼロはあっさり頷き、状況を説明すると藤堂と四聖剣を見る。
「その分、月下が頑張ってくれるのだろう?」
有無を言わせぬゼロの口調に、藤堂と四聖剣は揃って頷いた。
「扇、移動の準備を進めてくれ。‥‥ではカレンのみ残れ。すまなかったな」
ゼロの言葉に、立ち上がった一同は、若干不安そうな表情をしたカレンを心配しながらその場を後にした。
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作成 2008.01.21
アップ 2008.02.01
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学園イベント「黒の騎士団」【3】騎士団アジトより。‥‥ギャグ?。
お気に入りは、ゼロと藤堂による、かなり黒い枢木談義♪
後はオチャメな桐原公とか、慌てるラクシャータとか....ちょっと遊びました(汗
ちなみにゼロの不機嫌、三割は寝不足と疲労、残りはロイドとスザクとC.C.が各一割ずつ。