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黒の騎士団の本部。
上級に位置する団員達が作業もそこそこ、そこかしこで少数の塊を作ってヒソヒソと話し合っている。
内容は言わずと知れた、彼等のリーダーについてである。
先程、現れたゼロは、仮面をしていても不機嫌なのがありありとわかる状態で、「部屋にいる。しばらくは誰も寄越すな」と言い置いてさっさと篭ってしまったのだ。
ならなんでやってきたのか?と疑問にも思うと言うもの。
カレンはゼロの私室がある方向をチラチラと気にしているが、一歩を踏み出せないでいる。
「落ち着かないね~、紅月さん。そんなにゼロが気になるのかなぁ?」
紅蓮弐式のメンテナンス中のその状態に、隣の月下からやっぱりメンテナンス中の朝比奈が声を掛けた。
「ッ‥‥それは‥‥確かに気になりますけど。‥‥その、報告したい事があるんです」
カレンは動揺しつつも、問いに答えた。
カレンの言葉に、他の月下からは藤堂と四聖剣が視線を寄越し、横に立っていたラクシャータも顔を上げた。
「そっかぁ。‥‥急ぎとか深刻とかの話なら、言いに行った方が良いんじゃないかなぁ?それか扇さんに報告しとくか」
「おれ達にでも良いよ~?」と朝比奈が返した。
言われて暫く躊躇っていたカレンが言いさした時、不意に立ちこめたピザのにおいに顔を上げた。
やってきたのは言わずと知れたC.C.だ。
気づいた順に口を閉ざし、波が引くように静かになる。
現れたC.C.は格納庫を見回すと、ディートハルトと話をしている扇を見つけ声を掛けた。
「扇。あいつが話があるそうだから会議室へ行って待ってろ」
C.C.が扇にだけ声を掛けたことに、一同騒然となる。
煩そうにC.C.が顔を顰めていると、扇は頷きながらも問いかける。
「わ、わかった。‥‥けど、‥‥おれだけなのか?」
「いや?‥‥‥煩いぞ、貴様等」
ピザを口に銜えながら応じていたC.C.が、ピザを口から放すなり、声のボリュームを上げた。
当然、再びピタリと静かになる。
「扇の他は、カレン、ディートハルト、ラクシャータ。‥‥藤堂と四聖剣‥‥だったかな?」
「はぁ~?なんでおれ様が入ってないんだよ。おかしいだろ?おれだって幹部なんだぜ?」
玉城が速攻で抗議を口にする。
「煩い。あいつは入れようとしていたがわたしが却下した。貴様が入ると話が進まないからな」
「なッ、テメッ勝手な事してるんじゃねーぞ」
「煩い。‥‥今、あいつの機嫌は最悪なんだ。貴様があいつに怒られたいのは勝手だし忠告する義理はないが言ってやる。‥‥今だけは止せ。骨も残らないからな」
C.C.は玉城にそれだけを言うと、「指名した者は急げよ」と手を振りながら戻っていった。
玉城はC.C.の姿が見えなくなるまで呆然としていて、ハッと我に返る。
「なッ‥‥。ふざけるな。おれ様がゼロに怒られたいだと~。勝手な事言いやがって」
一人憤慨する玉城を誰も取り合わない。
蒼褪めるのは呼ばれたメンツだ、──特に扇。
「骨も残らないってなんだ?」
「機嫌最悪ってどんだけだよ」
と呼ばれなかった幹部や、団員達がヒソヒソと話をする中、最初から下にいた扇とディートハルトを先頭に、ナイトメアフレームから下りたメンバーが続いた。
その足取りは、重いながらも確実なもので、内面の葛藤が現れているようでもあった。
会議室に入った後、ゼロが現れるまでに三十分程を無駄に過ごした。
ゼロは無言で現れて、定位置に座ると一言。
「カレン」
「はッ‥‥はい」
いまだ機嫌の悪い様子のままのゼロに、突然呼びかけられて、身体を強張らせたカレンは半ばパニック状態である。
「桐原公から話が回ってきた。‥‥事実か?」
唐突な質問に、カレンは完全にパニック状態になった。
「え?え?え?え?」
と無意味に繰り返すだけで要領を得ない。
「待てゼロ。‥‥桐原公が何を言ってきたのか、それをまず話すべきじゃないのか?紅月も驚いているし、話が見えない」
気の毒に思ったのか、藤堂が助け舟をだす。
ゼロは藤堂に仮面を向け、それから一同を見渡した。
「‥‥‥‥。あぁ、言っていなかったか?‥‥C.C.はどうした?」
どうやらゼロは既に話した気になっていたらしいとみな驚いた。
「おれ達に声を掛けた後戻っていったが‥‥?」
「‥‥‥逃げたな、あいつ‥‥」
扇の言葉に、ゼロはそれはそれは低い声でポツリと呟き、軽く息を吐き出した。
「すまなかったな。‥‥桐原公が連絡を寄越して来た。カレンの通う‥‥『アッシュフォード学園でとある催しをするから、それには一切関わるな』とな」
ゼロの説明に、一同絶句。
「イベント~?一体、何のイベントなのぉ?お嬢ちゃん」
まず最初にラクシャータが何とか、それでもいつも通りの声を上げる。
「‥‥えと‥‥。‥‥仮装イベント、です。‥‥とあるテーマに沿った仮装をして一日を過ごすって‥‥来月初めに‥‥」
活発なカレンにしては躊躇いがちに、そしてゼロを気にしながらそれだけ言う。
勿論、それだけで判れと言う方が無茶なので、誰もほとんどわかっていない。
「‥‥事実か。‥‥既に桐原公から催しの名称も聞いている。‥‥カレン、他の者にもちゃんと説明してやれ。‥‥ちッ。少し外す」
話の途中で携帯を取り出したゼロは、それを手に持ったまま立ち上がると、返事も待たずに出て行く。
その背中を見送った一同は、そのままカレンに視線を戻した。
「‥‥さっき言ってたゼロに報告したい事って件?」
朝比奈が水を向ける。
「え、ええ、そう‥‥よ」
「まずは観念して、イベントとやらの名称を」
曖昧に頷くカレンに千葉が更に促す。
「‥‥‥‥‥。イベント名は‥‥‥『黒の騎士団イベント』‥‥よ」
それでもしばらく躊躇った後に発したカレンの言葉に、戸惑いを見せる日本人の扇と藤堂、四聖剣を他所に、ディートハルトとラクシャータは笑い出す。
「‥‥あのさー、それって笑い事なのか?」
爆笑する二人を、胡乱な様子で卜部が、誰にともなく問いかける。
「やはりアッシュフォード学園は他より抜きん出てイベント好きですな。まさかここまでとは」
頷きながらディートハルトが応じる。
「あっはは~。やるわね、今時の学生も~。あー、おかし~」
笑いながらも生徒を褒めるラクシャータに、これだからブリタニア関係者はと思う日本人達。
「‥‥それで、紅月。そのイベントとやらは何をするのだ?仮装して‥‥それで終わりというわけではあるまい?」
まだ笑っている二人は置き去りにする事に決めたらしい仙波が口を開く。
「あ、はい。えっと。まだ確定じゃないんですけど、『黒の騎士団の団員』に扮した大多数の生徒が、『ゼロ』に扮した十人くらいの指示に従う。だそうです」
「‥‥‥。それ、何が楽しいの?」
呆れた様子で朝比奈が突っ込む。
「あの学校の突発イベントは変わったものが多いらしいんです。聞いた話だと、『男女逆転祭り』とか、『絶対無言パーティー』とか、『水着で授業』とか‥‥」
「‥‥紅月も参加するのか?今回の、イベント」
タイトルを聞いただけでおかしい事がわかる過去のイベントに、多少は目をつぶる事にしたのだろう、千葉が話を戻す。
「‥‥‥‥‥。はぃ。団員の格好をしてバレるとまずいと思ったので‥‥『ゼロ』の役を‥‥」
カレンは「今は戻ってこないでください、ゼロ」と心中で思いながら、視線を泳がせつつ告げた。
途端にディートハルト、ラクシャータだけでなく、扇や、四聖剣、藤堂までもが笑ってしまった。
そして、タイミングが良いのか悪いのか、席を外していたゼロが戻ってきたのだった。
「‥‥楽しそうだな」
ゼロの言葉は、見事に一同の笑みを奪う効果を持っていた。
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作成 2008.01.18
アップ 2008.01.31
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学園イベント「黒の騎士団」【2】騎士団アジトより。お怒りのゼロ。
前半はお怒りのゼロに戦々恐々の団員、だけど後半はお笑い?
イベントの情報を聞いてブリタニアと日本の反応が対照的だと面白いかと思ったらお国柄に....
そして名前だけだけど桐原公登場。
....なんて言うか結構良い位置にいるよね、桐原公。