04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
朝比奈が、藤堂に軍服を手渡す。
着替えると有って、千葉だけは後ろ向きに座っているが、席を外す気はなさそうだった。
藤堂の無事を喜びながらも、不機嫌なのを隠そうとしない、という器用な事をやってのけている。
「‥‥何がそんなに不満なんだ?お前達は」
「ゼロですよ、ゼ、ロ。‥‥藤堂さん、ホントにゼロとお知り合いなんですか?」
朝比奈が憤懣やるかたないと言わんばかりに言う。
「あぁ。彼は‥‥。‥‥それで?彼の何が不満だと?」
藤堂は言いかけた言葉を飲み込み、続きを促した。
「‥‥我々は藤堂中佐を助けていただく代わりに戦力になる、とゼロに申し出ておったのです」
仙波がその時の状況を思い出しながら、藤堂に説明する。
「勝手に決めたのは悪いと思ったけど、藤堂中佐がいなくなるのはもっと嫌だったからな」
卜部も言い訳するように口を開いた。
「‥‥なのにあの男ッ。我々にまでどうするか、等と聞いて来たんですよ、中佐」
「千、千葉さ~ん。少し落ち着きましょうよ~。まぁ聞いてくるくらいだからって好きに選ばせて貰ったんじゃないですか~」
朝比奈が千葉の勢いに押されたのか、宥めに掛かっている。
「あ、それで思い出した。仙波さん、どうしてゼロの元に残るって言ったんだ?」
ポンと手を打った卜部が、隣の仙波に尋ねていた。
「‥‥不愉快で有ろうと、約束は約束だからな。恩を受けたからには返さなければなるまい。‥‥そう思っただけだ」
仙波の言に、卜部、千葉、朝比奈は押し黙る。
「‥‥仙波に言ったように、ゼロの中では今回限り、と見ていたのではないか?だから今後どうするか尋ねたのだろう」
藤堂が、四聖剣に向かって、そう締めくくった。
「仙波の言葉も。卜部、千葉、朝比奈の言葉も。‥‥おれは嬉しく思う。‥‥今回は助かった、礼を言う」
「「「「はいッ。おかえりなさい。藤堂中佐(さん)」」」」
肩を怒らせた玉城が、二階から降りてくる、続いて消沈したカレンと扇が続く。
「あらぁ~。やっぱり怒らせたのね~?」
ラクシャータがそんな三人を見て気のなさそうなコメントを言う。
「あの野郎、な~にが、『昔話をするとは言ったが、仮面を取るとは言ってない』だ。ふざけやがって」
玉城は悪態を吐くと、どさっとソファに座り込んだ。
扇とカレンは顔を見合わせてから、玉城から離れた椅子に座った。
「う~ん。七年前に一度かぁ、おれが四聖剣に入ったのは開戦後だったしー。心当たりないんだけど、開戦前とか、‥‥仙波さん達、心当たり有りませんか?」
逆の端では四聖剣が固まって座っていて、朝比奈が憤慨する玉城を見ながら仙波達に尋ねていた。
「ゼロの事か‥‥。開戦前だとすると、藤堂中佐は良く単独行動をされておいでだったからな‥‥」
「そうそう。道場で一時期師範とか、あちこちで会談とかしてたからな。そこまでついてくわけにもいかなかったし」
「わたし達もそうそう軍を離れられない状況だったからな」
開戦前の、それなりに平和だった頃へと思いを巡らしながら、三人は思い当たらないのか考え込む。
「あの頃はそこそこ人の出入りが激しかった頃でもあるし、その内の誰かがゼロだったのだろうか‥‥」
「だけど仙波さん。一度会っただけで、それも仮面越しに言い当てるなんて、相当言動の印象が残ってないと出来ないと思うけどよ?」
「顔ではなく、だな。‥‥やはり心当たりはないな。わたしには」
千葉が早々に諦め、「わしもない」「おれもお手上げ」と仙波と卜部も匙を投げた。
「やっぱり藤堂さんに聞くしかないかなぁ~。でも、さっきもはぐらかされたようなものだったしなぁ。どう思います?」
それでも尚も諦めきれないのか、朝比奈が問いかける。
「藤堂中佐と、桐原公が認めておる人物だからな。‥‥ゼロが誰であろうと、わしは構わぬよ」
「まぁ藤堂中佐以外に従う気はないしなぁ」
「ゼロか中佐か、桐原公が何か言うまで待てば良い」
「それはおれだって。藤堂さんのいるところがおれのいるところですから。‥‥じゃなくて、単に気になるだけじゃないですか~」
所詮、藤堂至上主義の四聖剣にとって、ゼロは二義的なものにしかならなかった。
ゼロの正体が、ではなく、藤堂がいつ、どこで、どうやってゼロと知り合ったのかが知りたいだけなのだ。
不意にニュースの音が飛び込んできた。
『お聞きください。本日、ブリタニア第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア殿下が騎士を発表いたしました』
それはどこか興奮したアナウンサーのモノで、テレビに近かった団員がボリュームを上げる。
『なんと前代未聞の騎士指名であります。指名されたのは名誉ブリタニア人で軍に所属する准尉です』
バババっと何人かがテレビを振り返って凝視する。
『過日には先代イレブン総督故クロヴィス・ラ・ブリタニア殿下の暗殺犯として調べられた事もあります』
「まさかだろ~~??」
玉城が驚きの声を上げる。
『日本最後の内閣総理大臣・枢木ゲンブの嫡男だった、その名は枢木スザクです。ユーフェミア皇女殿下は枢木スザクを騎士に指名しました』
「「「‥‥ッなんで~~~!!!」」」
何人かの叫び声が合唱する。
「‥‥‥‥なんで、スザクが?」
カレンがポツリと呟いた。
「‥‥ッ、ゼロに報告してくるッ」
扇は言うなり立ち上がり、駆け出した。
まだ喚いているテレビを他所に半数以上は扇の後姿を追いかけた。
「‥‥このタイミングだと、枢木スザクが白兜に乗ってたのがバレたからってのもありそー」
朝比奈が眉を顰めながら嫌そうに呟いた。
「普通の名誉ではなく、ナイトメアフレームに騎乗出来る、騎士なればこそ、というわけか?」
千葉が朝比奈の言葉に反応する。
「しっかし、思いきったことするな~。風当たりとか相当きつくなるんじゃない?」
嫌そうな響きを込めたまま、それでも感心した風に、朝比奈は言った。
「ディートハルト。この件について詳しい情報を集めてくれとゼロが」
二階から扇が降りてきながら声をかける。
「わかりました。早急に」
ディートハルトは無駄な問いを発する事なく、そう応じると出て行く。
「藤堂さんは?」
「すぐに来る。玉城、南、杉山、井上。他のテログループを注意するように言われた。手分けして当たってくれ」
「了解。すぐに取り掛かる」
「ッて、指示だけ出してゼロは出てこないつもりかぁ~?」
「こら、玉城。とにかく先に動きなさいよね。あんただって口先ばっかりじゃないの」
井上に急きたてられながら、玉城は転ぶように部屋から追い出された。
残る三人もそれに続く。
「当分、忙しくなるぞ」
下まで降りてきた扇が、残る一同に向かってそう声をかけた。
扇のその言葉が、別の意味でも的中してしまう事を、誰も知らなかった。
了
───────────
作成 2008.01.23
アップ 2008.01.28
───────────
17話の後 【3】着替え藤堂。四聖剣。ニュース速報。
一応一区切りなので、完結と言う事で。
【2】の前の藤堂が着替え中の一コマ、憤慨する四聖剣。
軍人気質の仙波は寡黙で融通が利かないところが良いかなとか。
四聖剣には、ゼロの正体じゃなくて藤堂とどうやって会ったかに気を取られて欲しいかな。
尻切れッポイけど、タイトルこれだとこれ以上は続けられないと言うか....(汗