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「そこの団員、126番」
スザクは中庭でルルーシュを待っていると、名指し(番号指し)で呼ばれて軍人の習性上、振り返って直立した。
そこにはゼロが一人。
ぅ、嫌だな、なんか‥‥ゼロを一人二人と数える日が来るとは‥‥とスザクの脳裏に要らぬ事が駆け巡ったりしていたが。
「このわたし、7番のゼロが命じる。126番はこれより校門へ急行し、外に展開するブリタニア軍に対し手を振って戻って来る事。それを十回繰り返せ」
「ゼロ」の声はそう命じる。
スザクにとってはあまりにも聞き覚えのある、本物の「ゼロ」ッぽい声に、驚きを隠せない。
大体、最初の命令を言った放送の時からそう思っていたのだけど、とスザクは7番のゼッケンをつけた「ゼロ」を凝視する。
なのにルルーシュに結び付けようとはしないスザクは抜けているのか天然なのか──げに、恐ろしきは先入観。
「‥‥どうした?団員だと言うのに、わたしの命令には従えない、と?」
「‥‥本当に生徒の変装?」
スザクは思わず訊ねてしまう。
「‥‥‥‥。当たり前だ。こんなところに本当のゼロが来ると?言ったはずだ。わたしは7番のゼロだと。速やかに命令を実行に移せ」
「‥‥了解。えっと門へ行って手を振る‥‥を十回だったね。じゃあ行ってくる」
応じると腑に落ちないものを感じながらもスザクは駆け出して行った。
中庭が見渡せる教室の一室で、ニーナとシャーリーがその状況を見下ろしていた。
「ねぇねぇシャーリー。あの7番のゼロって誰かな?」
「んー‥‥。ミレイ会長?それか3年の誰かかも。スザク君、面喰らってたね。あれって‥‥」
「うん、減点対象、かなぁ?でも、おかしな事命じていたよね」
「馬鹿にして~とかって軍の人に怒られないかなぁ?‥‥会長に報告しとく?」
「大丈夫、だと思うけど‥‥。でも、7番のゼロは結構点数稼げるね、コレって」
「そうね。さっきの放送も点数高いし、今のやり取りもいけてるし。結構上位に喰い込みそう」
ニーナとシャーリーは顔を見合せてどちらからともなく笑みを見せた。
「んー?」
学園の門を映していたモニターを見るともなしに見ていたロイドは、不意の変化に声を上げた。
「どうかしたんですか?ロイドさん?」
セシルに尋ねられてモニターを指さす。
「これ。誰か近づいて来たよ。‥‥脱走かなぁ?」
促されて見たセシルは、モニターの中に黒の騎士団の姿をした人物を見つけた。
軽く身長よりも高い門の上に飛び乗ったその団員は、キョロキョロと周囲を見渡すといきなり手を振った。
「何かの合図かな~?」
「っていうかロイドさん。コレ、スザク君ですよ?」
「知ってるよ~。パーツくらいの身体能力がないと、あれに飛び乗るなんてできないしぃ?」
スザク扮する団員は、ひとしきり手を振り終えると門から飛び降りて駆け去ろうとして少し行ったところで立ち止まった。
パラパラとブリタニア軍人が数名外から門に近づいて、どうやら呼びとめたらしい。
「‥‥わたし達も行った方が良くないですか?」
「ん~。‥‥流石に生徒に無体な事はしないでしょ~?」
ラクシャータとの取り決め通り、大人しくしているつもりのロイドは、のらりとかわした。
そのラクシャータはというと、後方支援として、出撃している騎士団に同行していた。
作戦開始まではまだ時間が有る事もあって、ラクシャータはのんびりとソファに腰を降ろしている。
『あのー』
そこへ、前線で待機している月下から朝比奈の声が回ってきた。
「んー?ど~かしたぁ?なんか、トラブルぅ?」
ラクシャータは気のない返事を返す。
『じゃないですけどね~。ちょっと気になって~。紅月さんのせいだっていう、ゼロとの会話。アレ、なんだったんですか~?』
ゼロはラクシャータの名前を呼んだだけで、かなり嫌がっていたラクシャータの事が、朝比奈は気になって仕方がないらしい。
このタイミングで訊ねたのは、このままでは任務に支障を来しかねないとでも思ったのだろう。
「‥‥‥‥‥‥答える必要はないと思うけどぉ~」
ラクシャータはかなり言い渋った後、そんな返答を返した。
『だけど~。ゼロは「あれが出て来るとややこしい事にしかならない」とかって言ってましたしー?』
「だからぁ、それは出てこないように言っといたしぃ?」
ラクシャータはしつこい朝比奈にうんざりしながらも応じる。
『‥‥誰に?』
聞いていたのか、ポツリと千葉の声が鋭く飛び込んで来た。
「ないしょ~?知りたいならゼロに聞いて~。藤堂~、あんたの部下でしょぉ~?黙らせて頂戴ぃ?」
『‥‥‥‥後にしろ』
『『わかりました』』
やめろと言わなかった藤堂に、良いお返事を返した朝比奈と千葉はそのまま沈黙する。
「後で、ゼロに尋ねなさいね~」
含みを持たせた藤堂の言葉を気にしながらも、ラクシャータは逃げの一手を打ったのだった。
指示通り、手を振って戻ろうとしたところで、スザクは背後からの制止の声に立ち止まる。
振りかえるとバラバラとブリタニア兵が数名近づいてきていた。
スザクはバイザーの下で眉を顰めながら門のところへと戻って行く。
「あの、‥‥何か?」
「今の行動を説明したまへ。どこへ合図した?」
高飛車な言い様よりも、その内容に、スザクは警戒する。
「いえ、どこへも合図は送っていません」
「では、一体なんだったのだ?」
「‥‥単に手を振っていただけで‥‥それ以外にはなにも‥‥」
これが自分で良かったとスザクは思う。
他の一般の学生や、ましてやルルーシュだったらと考えるとゾッとするものがあるが、スザクならば同じ軍人だし対処のしようもあると少し安堵したのだ。
「学年と名前を。本当に学生なんだろうな?」
「自分は‥‥。アッシュフォード学園2年の枢木スザク、です」
「枢木スザク?‥‥まさか」
「第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア様の騎士にして、特別派遣嚮導技術部に所属する少佐です。軍は学園に関わらないはずではなかったのですか?」
「名誉の分際で‥‥。チッ」
ボソリと小声で吐き捨てるように呟いた軍人は、手で行くように合図を送る。
「‥‥自分は同じ事を後9回、する事になっている。また来るのでそのつもりで」
スザクは団員の格好のままで、ブリタニア軍人に対して注進するというスパイ行為にも見える動きをすると踵を返して駈け出した。
ちなみに、採点者がこれを見ていれば、減点対象と言う事になるだろう、恐らく。
走りながら、今度7番のゼロを見かけたらこんな指示を出さないように注意しようと心にとめる事を、スザクは忘れなかった。
カレンは暫くその場に留まっていたが、ルルーシュらしい団員が来る気配がなかったので、移動しようと踵を返す。
そこに他の知らない団員がいたので声をかける事にする。
「そこの」
団員2名がカレンを見たので、先を続ける。
「7番のゼロが命じる。‥‥グランドを2周走って来てくれ」
「ぅわ。‥‥あの、せめて1周になりませんか?さっき走って来たばっかりなんですけど」
「‥‥そうだな。では1周で」
「ありがとう、7番。それじゃあ」
走り去る団員を見送りながら、カレンは驚いている。
そして慌てて止めるスイッチを押した。
実はカレンは先程から一度も自分の声で命令を出していないのだ。
全ては事前に本物のゼロに吹き込んで貰っていたテープを流していたに過ぎない。
なのに、何故ここまで会話が成立するのかと、カレンは驚いていたのだ。
スザクとのやり取りでさえ、ゼロがスザクの性格をそれなりに把握しているから、と言われていたからまだ驚きも少しで済んでいたというのに。
偶然会った、ゼロにとっては会った事も見た事すらない相手に対してここまでとは、驚くなと言う方が無理なのだ。
今度会った時に、改めてお礼を言おうと決めたカレンは、次の獲物(団員に扮した生徒)を求めて移動を開始した。
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作成 2008.01.28
アップ 2008.02.09
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学園イベント「黒の騎士団」【6】イベントの内と外。
イベント真っ只中。
スザクは団員126番。早速やられていますw
やられているけど、ちょっとした活躍の場(?)もあって何気においしい?
ロイドとラクシャータはお互いに苦手意識を持っている....のかなぁ?
どちらも出来れば関わりあいになりたくない、とか思っているのかも知れない。
..........あ。ルルが出て来なかった(汗