★hidori様へのリクエスト作品★
(朝ゼロの騎士団日常話 or 周囲からから見た朝ゼロまたはゼロ(ルル)の話)
それを目撃したのが、別の者ならば未だに知る者は少なかっただろう。
だが、目撃したのは玉城で、仰天した玉城はその場ですぐには動けず、当事者達が立ち去った後我に返り、幹部達が集まる場所へと駆けて行ったのだ。
当事者達は別の場所に行ったのか、そのラウンジにはおらず、まぁいないのは二人だけと言う、お誂え向きなメンツに向かって玉城は叫んだ。
「ゼロがッ!」
ガタガタと何人かが玉城の慌てぶりに立ち上がって振り返り、「どうしたッ!?」と尋ねかける。
「いや、朝比奈がッ!」
その名前に藤堂と四聖剣が渋面を作って思う事は「今度は一体何をやったんだ、あいつは」である。
「ちょ‥‥少しは落ち着きなさいよ。玉城。何が言いたいのかさっぱりわからないじゃないの!‥‥で、問題なのはゼロなの?朝比奈さんなの?」
「どっちもだよ。さっき、あっちで!」
「あっちで何かなー?その続きはー?」
玉城の裏返り気味の声に被さるように、朝比奈の声が聞こえて玉城は慌てて振り返って「朝比奈ッ!」と叫んで後退る。
「‥‥朝比奈。何が有ったんだ?」
藤堂が尋ねる。
「えーっと。報告必要ですかー?藤堂さん」
朝比奈は藤堂の問いに、「どうしようかなぁ」と思案の様子を見せ、四聖剣の三人は「珍しいな‥‥」と呟いた。
「おれとしてはー。報告するのは別に良いんですけどー。ゼロがいないところで言うと、後で怒られそうなんでー。玉城怒られてみる?」
朝比奈が玉城に尋ねると、玉城はぶんぶんと首を振った。
「い、言わねぇ」
「‥‥で、ゼロはどこにいる?」
「‥‥‥えっと?さっきピザ屋の請求書を悲しそうに見てたから、自室でC.C.と喧嘩してるんじゃないかなー?」
藤堂の問いに、朝比奈は「わたしは自室に戻ってC.C.に意見してから行く。先に行っていろ」と言うゼロの言葉を思い出しながらそう言った。
「千葉。ゼロに来てもらえ。ゼロがいなければ言えないのならばゼロに来てもらうしかないだろう」
「承知」
藤堂の指示に、千葉はあっさりと頷くとゼロの部屋へと向かっていった。
「‥‥って藤堂さん!?報告必須?なんですか?」
「みんなが気にしている。このままでは気になって仕事が手につかない恐れがありそうだ。特にディートハルトや紅月が」
言われて朝比奈がそちらを向くと、ギンギンと突き刺さってくる視線が痛い事に気付いた。
「あちゃー。どうするのさ、玉城。大袈裟に騒ぐからこんな事に‥‥」
「ぅ、うっせー。あんなところであんな事をしてる方が悪いんだろうが」
と玉城は再び気になる言い方をしてのけ、朝比奈は「これはダメだ」と諦めた。
少しして、ゼロと千葉がやってきた。
「すまないな、ゼロ」
藤堂がゼロに詫びる。
「いや。それで、話とはなんだ?」
「‥‥あー、ゼロ。とりあえず、座った方が良いと思うよ。おれは」
朝比奈がゼロにそう進言すると、即座にゼロの定位置までの道が出来る。
「‥‥お前がそんな事を言う時は、ろくな事にならないからな。‥‥このまま引き返すという選択肢はないのか?」
「う~ん、多分ないと思う~」
ゼロが敵前逃亡並みの提案をしてみるが、朝比奈があっさりそれを退けたので、ゼロは溜息を吐いて定位置に向かって行って腰を下ろした。
朝比奈が当然のようにゼロの後に続いてゼロの隣に座る。(ちなみに逆側は藤堂だ)
「それで?」
ゼロは藤堂に尋ねる。
「玉城が何かを見たらしく、先程慌てて駆け込んできた。それには君と朝比奈の名前が挙がって、詳しい事を聞こうと思ったんだが」
「玉城が話す前におれが来ちゃって。そしたら今度は藤堂さんに何が有ったのか聞かれてー。で、ゼロがいないのに言ったら怒られるからって答えたところー」
藤堂の説明の後を朝比奈が引き継いで説明した。
ギギギとゼロの仮面が、藤堂から玉城へと移る。
「‥‥つまり、あれか?‥‥あれを見た‥‥と?」
そう言うゼロに、玉城は「ゼロが来てても十分怖ぇじゃねぇか」とびびりながらもこくこくと頷いた。
「見たのに、その場では何も言わずに、いない場所で言いふらそうとしたわけだな?」
「ご、誤解だそれはッ!驚きすぎて固まってただけだッ。気付いたらお前等いなくなってるしッ!」
「だからって本人いないところで話そうとしていたんだから、言いふらそうとってのは事実なんじゃない?」
言い訳をする玉城に朝比奈がツッコミを入れる。
「‥‥それで、朝比奈。ゼロがいるところでなら報告するのだろう?」
「藤堂。玉城が見たのは‥‥活動外だ。報告の必要は認められない」
藤堂が朝比奈に向かって再度尋ねた言葉に、朝比奈が「えっと」と考えていると、ゼロが割って入った。
「‥‥だが、ゼロ。玉城の驚きようは只事ではない。このままではみな気になって作業に支障を来す恐れがある」
「‥‥‥‥。藤堂、お前もか?」
「そうだな」
あっさりと頷く藤堂に、ゼロは溜息を吐いた。
「‥‥後悔しても知らないぞ。それで良いなら玉城か朝比奈に聞け。わたしは何も言わない」
そう言うと、ゼロは立ち上がる。
「えー。ゼロ行くんですか?てかどこまで話して良いか、いまいちわからないんですけどー」
「朝比奈、後で報告に来い。わたしはまだC.C.に苦情を言い足りないんだ」
ゼロは朝比奈の問いにも答えずに、そう言うと避ける団員の前を通り過ぎて自室に戻って行った。
後編に続く。
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作成 2008.04.30
アップ 2008.05.12
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