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コードギアスの二次創作サイト。 ルルーシュ(ゼロ)至上主義です。 管理人は闇月夜 零です。
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ゼロ(ルル)至上主義です。
騎士団多め。
表現力がなく×ではなく+どまり多数。
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「「「「「「‥‥‥‥は????」」」」」」
アッシュフォード学園生徒会長ミレイ・アッシュフォードの言葉に、生徒会役員全員が揃って聞き返していた。
何かの間違いだ、聞き間違いだ、きっと耳がおかしかったんだ、とそれぞれ心の中で叫んでいたりするが。
ミレイがそんな事を斟酌する事はなく。
「だからぁ。来月初めに、『ゼロイベント』をするよ~って言ったのよ。全員一日ゼロに扮して行動するの」
「「「「「‥‥‥‥きゃっかぁ~~~~~!!!!」」」」」
ルルーシュ、スザク、カレン、シャーリー、ニーナの声が室内に響き渡る。
「う~む、けど会長~。ゼロの衣装って露出がないし誰が誰だか分らないし、面白みに欠けると思うんですけど~」
一人リヴァルは、唸り声を上げながら、ミレイの言葉を検討していた。
「そぉ?‥‥じゃぁね。『黒の騎士団イベント』にしましょう。十人くらいがゼロに扮して残りは騎士団の格好をしてゼロ役の指示に従うの。どぉ?」
「あ、それならなんとか。なぁ?」
変更したミレイの意見に賛成したリヴァルは、どうだお前等と言った様子で残りのメンバーを顧みた。
「どこがですか、会長。リヴァル、お前もだ。そんな事をして、軍や黒の騎士団に目をつけられたらどうする気ですか?」
「そうだよ。黒の騎士団は何をどういったところでテロリストなんだよ?それをイベントに取り上げようだなんて」
ルルーシュが危機感に訴えれば、スザクも頷いて非難する。
「イレブンでしょう?‥‥その真似事をするなんて‥‥」
「そうですよ、会長。正義の味方とか言っておいて、やる事はひどい連中なんだから」
ニーナとシャーリーもまた否定的な言葉を口にした。
「ノリが悪いわね~。みんな。‥‥カレンも反対?」
「え、えぇ。やめておいた方が良いと思うのですけど‥‥」
カレンは曖昧に頷いて応じた。
「だ、け、ど~。これは決定事項ね~。一番巧かった人には!なんと、豪華賞品をプレゼント!なのだよ、諸君」
「はいは~い。会長~。豪華賞品ってなんですか~?」
一人ノリの良いリヴァルが、ミレイの話に即座に喰いつく。
「ふっふっふ~。ゼロの写真と、騎士団が名乗った時の写真等、騎士団に関するデータ満載!のお得版よ」
「‥‥‥‥。会長、それ、どこで手に入れたんですか?」
「んー?それは~‥‥ひみつよ、ルルちゃん。‥‥あ。スザクくん。『是非、一番になって賞品を貰って帰ってくるように~』って連絡が有ったわよ?」
ミレイの言葉に、スザクはがっくりと項垂れてしまった。
「‥‥‥‥あぅ‥‥あの、ゼロはやりたくないですんでー」
それでも、これだけは譲れないとばかりに弱い口調でスザクは主張していた。
一方、カレンもまた内心で「そんなのブリタニア軍人のスザクに持ってかれたら大変じゃないの~~ッ」と奮起している。
ルルーシュはというと、カレンと似たような心境だったが、加えてカレンの心理も読み取れてしまい、頭痛を覚えるものの聞いておく事を尋ねる。
「‥‥スザク、会長。それ誰の言葉ですか?」
「あー‥‥ロイドっていう、ぼくの上司。‥‥ですよね?会長さん」
「大正解~。てことで、スザクくんも参加よね。後は~?」
「つまり、軍は既にこのイベントがおこなわれる事を認めているんだな?‥‥とすると残るは騎士団の方か」
「お?ルルちゃん、やる気になったのかな~?」
「どうせ止めたって聞いてくれないでしょう?会長は。ならなるべく安全を確保したいですからね。あ、言っておきますがおれもゼロはしませんよ?」
「うむうむ、流石頼りになる副会長だわ。ルルちゃんは~♪‥‥でもね~。ゼロ役の方が似合ってると思うけども?」
「しませんて」
「よし。なら衣装を用意してくれるっていうなら団員で良い事にするわよ?」
ミレイの交換条件に、ルルーシュは目を丸くする。
「ちょっ、‥‥学園に一体何人の生徒がいると思ってるんですか。そんな数、一人で用意できるはずがないでしょう?」
「ちゃんと他のみんなを使って良いからね~?それともゼロをやる?」
「‥‥‥‥わかりましたよ、会長。‥‥カレン、衣装のデザインは君に任せる。リヴァルとスザクは服屋を当たってくれ。黒の生地を確保しておかないと‥‥」
盛大な溜息を吐いたルルーシュは折れると、早速とばかりに指示を出した。
「ちょ‥‥っと待って、ルルーシュ。わたしはまだ」
慌てたのはいきなり話を振られたカレンである。
しかも、病弱設定の今、過激に否定できるはずもなく、言葉少なに反論を試みたのだが。
「参加、するんだろう?‥‥最近は調子良さそうだし、デザインだけならそう負担にはならないと思ったんだが?」
相手を思っているような言い方に、再度の反論は封じられてしまった。
勿論、ルルーシュの中にカレンの不参加は既に存在していない為、反論なんぞ取り合わない。
「流石ルルちゃん。良く考えてるわね~。じゃあ、カレン。よろしくね。あ、そうそう。カレンはどっちをやる?団員?それともゼロ?」
ミレイに問われてカレンは考える。
ゼロ役など大それた事ではあるけれど、騎士団が名乗った時の写真まであるとカレンも映っている可能性もあるわけで。
「‥‥あ、あの。‥‥では、ゼロを‥‥」
ついでに、ゼロになってみたいという、純粋な誘惑も確かにあったので、カレンはそう応じていた。
「おーーー。そっかそっか~。まぁ、カレンなら露出が無い方がいいかも知れないわね~。ニーナ、シャーリー。二人はどうする?」
「‥‥‥‥か、会長~。‥‥裏方をやるので、変装は勘弁してくださ~い。ダメなら当日休みますから~」
「あ、あの‥‥。わたしもそれで‥‥」
「んー‥‥仕方がないわね~。じゃあ、ルルちゃん。二人は裏方だそうだから、仕事の割り振りをよろしくね。‥‥言っとくけど、貴方達はもう裏方には回さないわよ?」
ミレイが裏方を認めたので、スザクとルルーシュとカレンが反応したところを、先手を打たれてしまい肩を落とした。
「‥‥会長。それで、騎士団の方はどうするつもりなんですか?イベントの最中に乱入されでもしたら、大変ですよ?」
ルルーシュが最大の懸念事項を尋ねる。
「ん?大変って?」
リヴァルが首を傾げて尋ね、ルルーシュに視線が集まる。
「遊びで騎士団の格好をするブリタニア学生に彼等が寛大とは思えない。それに、騎士団が出張ったと知れば軍だって動くだろう?見分けがつくと思うか?」
ルルーシュの言葉に、スザクやニーナ、シャーリーは頷き、けれどミレイは一人平然としている。
カレンはフイと視線を泳がせながら、病弱設定でなければ、「弱者の味方の騎士団なのよ。それに出張ってくる程暇じゃないわよ」くらいは言っていたかも知れない。
が、玉城がいる以上、本当に出張らないかどうかすら不明の為、病弱設定のまま、無言を通したのだった。
「平気よ、ルルちゃん。ちゃんと騎士団には申し入れしておくから。だ、か、ら。準備の方はよろしくね~♪」
ミレイは簡単に請け負うと、ヒラヒラと手をひらつかせて部屋を出て行ってしまった。
どうやって申し入れをするのか、尋ねる暇さえありはしない、早業だった。
「‥‥‥。ニーナ、シャーリー。全校生徒への告知、各クラスで一人、ゼロ役になる者の選出と、採寸を頼む」
ルルーシュが裏方に決まった二人に指示を出した。
あぁなったミレイは誰にも止められないのだ。
ミレイを良く知るルルーシュ、リヴァル、シャーリー、ニーナは、肩を落としながらも動き出す。
「えーっと‥‥。反論は終わり?なのかな?決定?」
スザクが首を傾げながら呟く。
「終わりだよ、スザク。もう会長は止まらないからな。とりあえずスザクはリヴァルと服屋を頼む。カレン、君も固まってないでデザインを」
ルルーシュの声の響きには、諦めがありありと表れていた。

───────────
作成 2008.01.18 
アップ 2008.01.30 

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突然、C.C.がやってきた事に、その場にいた騎士団幹部とキョウトの面々は驚いた。
いや、一人、藤堂だけはあらかじめ知っていた為驚かなかったのだが。
C.C.は一同を見渡すと桐原に視線を向けた。
「桐原公。ゼロが話があるそうだ。‥‥それと、藤堂。お前も来い」
次いで藤堂に視線を転じると、その後はそのまま踵を返して立ち去ろうとする。
慌ててC.C.の背中へ、扇が声をかける。
「ちょっ、ちょっと待ってくれC.C.。ゼロは」
「後だ。今は忙しい。桐原公に藤堂。いつまでゼロを待たせるつもりだ?」
足を止めたC.C.は肩越しに扇を睨みつけると、それだけ言って再び歩き出した。
「わかった」と呟いた桐原と、無言のままの藤堂がその後に従った。
その背後では、アチコチでざわめきが巻き起こっていた。


ゼロはその部屋で、ソファに座っていた。
マントを羽織り、仮面を被り、入って来たC.C.と桐原、藤堂の三人を待っていた。
二人を招きいれ、最後に入ったC.C.は、そのまま扉を閉めて鍵をかける。
「座れ。立ったままでは話も出来まい」
C.C.が後ろから声をかけると、桐原は向いのソファに座る。
動かなかった藤堂に、C.C.は苛立ち紛れに再び声をかけた。
「藤堂。座らないのならば、追い出すぞ」
言われて、藤堂は桐原と同じソファに座るのも躊躇われ、横のソファに腰を降ろした。
といってC.C.が座る様子は見せない。
「この場に、藤堂を呼んだのは、この男もまたお主の正体を知っているからか?ゼロ」
まずは桐原が切り出した。
「‥‥そうだな。藤堂ともあの時会っている。知っていてもおかしくはないだろう?」
ゼロは平然と言う。
「ならば、‥‥仮面を取って話をしてはどうだ?」
桐原の言葉に、藤堂は息を呑み内心焦る。
だが、C.C.もゼロも平然としたまま、ゼロは頷いた。
「良いだろう」
答えたのはゼロだったが、仮面に手を伸ばしたのは、いつの間にかゼロの背後に立っていたC.C.だった。
カシュンと軽い音を立てて、仮面が取り除かれた。
既に仮面の下にある顔を知っているはずの桐原と藤堂は、だがしかし、それを見るなり驚きに絶句してしまう。
ゼロの素顔の、左目を覆うように黒いバンダナが斜めに取り巻いていたのだ。
「‥‥それは、一体‥‥」
呟いたのは桐原だった。
藤堂は、もしこの場に桐原がいなければ、ゼロに突進していってバンダナを剥いでいたかもしれない程、驚いていてまだ声が出なかった。
「何が有った」、あるいは「どうした」と、詰問していたのかも知れない自分を、藤堂は自覚していた。
「気にするな。‥‥それよりもこの先の話だ。キョウトにはわたしの指揮下に入って頂く。『特区』が不発に終わった今、我々が『日本』を宣言する為に」
ゼロはなんでもないという態度を崩さず、桐原を呼んだ本題に入った。
「キョウト六家はわしが説得しよう。‥‥だが、『特区』と違うと認めさせるのは、こうなると少々骨じゃぞ」
「‥‥宣言した後、トウキョウ租界を落とす。そこを手始めとして、日本全土を開放していく。そうすれば"日本人"も認めざるを得まい」
隻眼でも尚鋭い眼光で、ゼロは言い切った。
「‥‥お主は、今後の展開を、どこまで見ておるのじゃ?」
少し思案した桐原が訊ねる。
「コーネリア皇女が妹姫の為に打てる手は八通り。その内、ブリタニア皇帝にユーフェミア皇女の『廃嫡宣言』をおこなわせない手は二通りしかないな」
ゼロはそう切り出した。
「『廃嫡宣言』が出されれば、"日本人"の支持は一気にこちらに傾くだろう。そうなれば、全国各地で、一斉蜂起と言う事も有り得るな」
「‥‥コーネリアが、何もしなくても皇帝が『廃嫡宣言』を出さない、という事はないのか?」
藤堂が、黒いバンダナの下を気にしながらも、そう切り出す。
「それはない。奴がこの機を逃すとは思えないからな。出さない時は、コーネリアか、‥‥シュナイゼル辺りが働きかけた時だけだ」
「その根拠はなんじゃ?」
確信めいたゼロの言葉を不思議に思った桐原が、訊ねる。
「‥‥『閃光の』マリアンヌの庇護下にいたおれ達が良い例だな。‥‥奴はコーネリアの庇護下にいるユーフェミアを見てはいないだろう」
ゼロの自嘲気味の言葉に、二人は日本に送られてきた幼い皇子と皇女を思い出していた。
「出されなければ、『ゼロ』の虚言だった、とでも言い繕い、あの場の惨劇を黒の騎士団のせいに出来る。あちらにとってはそれがベストだろう」
クツクツとゼロは笑いながら言う。
「‥‥そうなる確率はどの程度と見ておる?」
桐原が痛ましそうな表情を浮かべて尋ねる。
「‥‥まず、二割も有るまい。その筋書きに達するには、コーネリア達にとっては道が険しすぎよう」
「宣言を出させない方法が二通り、と言ったな?‥‥それは?」
藤堂が口を挟む。
「コーネリアがブリタニア皇帝に向かって言えば良い。『ユーフェミアの代わりにわたしを』‥‥と。奴はそれ以外は恐らく認めまい」
ゼロの言葉に桐原も藤堂もC.C.すらもが目を見張って絶句する。
「もっともそうなれば、庇護をなくしたユーフェミアに待つのは、他の皇族による毒牙である以上、コーネリアはそれを口にはしないだろう」
「それで?もう一つの方法とは?」
C.C.が後ろからゼロの仮面を胸に抱えたまま訊ねる。
「‥‥宣言者がいなければ、宣言しようがないと思わないか?」
ゼロはその整った顔に悪魔の笑みを浮かべる。
禍々しくも美しいその表情に、桐原と藤堂はハッと息を呑む。
「‥‥‥‥。それこそあり得ない話だな?まさか、貴様が殺めに行くとでも?」
「まさか。‥‥シュナイゼル辺りなら、本当に守りたいと思っていればそのくらいはするだろうと思ったまで」
「第二皇子は、‥‥行動に出るかの?」
桐原が乾いた唇を舌で湿らせながら、訊ねる。
「出ないな。‥‥出るとすれば‥‥、コーネリアに対して何らかの交換条件を出す場合か?弑逆するとなればコーネリアは頷かないかな」
ゼロはそこまで言うと溜息を吐く。
「この辺りは予測でしかない上に、あの二人は読む相手としては少々厄介だからな。暫く様子を見る必要はあるだろう」
随分と先走った事を訊ねていたと言う事に思い当たり、桐原は頷いた。
「‥‥ゼロ。‥‥そのバンダナは如何にした?それもユーフェミアにやられたものなのか?」
桐原は仮面を外しているにも拘らず「ゼロ」と呼び掛けていた。
それはゼロの放つ気がそうさせているのだが、ゼロは怪しく笑う。
「‥‥いいや?これはわたしがゼロである事の証。それとも代償と言うべきかな?」
左手をバンダナの左目の部分に宛がい、皮肉気に言うゼロは残った片目でC.C.を見上げる。
「‥‥‥‥そうだな。代償‥‥、だが、呪いと言いたくはならないのか?」
C.C.は頷き、仮面の表面を撫でてから、何かを堪えるような表情を見せて尋ねた。
「ならない。‥‥第一自ら望んだ事だ。‥‥さて。宣言は夕刻。舞台は任せる。まずは先手を打つとしよう」
ゼロはC.C.に笑いかけ、スッと真顔に戻って桐原を見据えると言った。
桐原はそれ以上の話はないと見ると、立ち上がる。
桐原からの目配せを受け、内心渋々藤堂も腰を上げる。
藤堂は桐原に続いて部屋を出る直前、ゼロを振り返り、視線を絡ませ合う。
フッと微笑んだゼロが頷くのを見て、藤堂もまた笑みを浮かべて頷き返し、部屋を後にしたのだった。

───────────
作成 2008.01.20 
アップ 2008.01.29 

朝比奈が、藤堂に軍服を手渡す。
着替えると有って、千葉だけは後ろ向きに座っているが、席を外す気はなさそうだった。
藤堂の無事を喜びながらも、不機嫌なのを隠そうとしない、という器用な事をやってのけている。
「‥‥何がそんなに不満なんだ?お前達は」
「ゼロですよ、ゼ、ロ。‥‥藤堂さん、ホントにゼロとお知り合いなんですか?」
朝比奈が憤懣やるかたないと言わんばかりに言う。
「あぁ。彼は‥‥。‥‥それで?彼の何が不満だと?」
藤堂は言いかけた言葉を飲み込み、続きを促した。
「‥‥我々は藤堂中佐を助けていただく代わりに戦力になる、とゼロに申し出ておったのです」
仙波がその時の状況を思い出しながら、藤堂に説明する。
「勝手に決めたのは悪いと思ったけど、藤堂中佐がいなくなるのはもっと嫌だったからな」
卜部も言い訳するように口を開いた。
「‥‥なのにあの男ッ。我々にまでどうするか、等と聞いて来たんですよ、中佐」
「千、千葉さ~ん。少し落ち着きましょうよ~。まぁ聞いてくるくらいだからって好きに選ばせて貰ったんじゃないですか~」
朝比奈が千葉の勢いに押されたのか、宥めに掛かっている。
「あ、それで思い出した。仙波さん、どうしてゼロの元に残るって言ったんだ?」
ポンと手を打った卜部が、隣の仙波に尋ねていた。
「‥‥不愉快で有ろうと、約束は約束だからな。恩を受けたからには返さなければなるまい。‥‥そう思っただけだ」
仙波の言に、卜部、千葉、朝比奈は押し黙る。
「‥‥仙波に言ったように、ゼロの中では今回限り、と見ていたのではないか?だから今後どうするか尋ねたのだろう」
藤堂が、四聖剣に向かって、そう締めくくった。
「仙波の言葉も。卜部、千葉、朝比奈の言葉も。‥‥おれは嬉しく思う。‥‥今回は助かった、礼を言う」
「「「「はいッ。おかえりなさい。藤堂中佐(さん)」」」」


肩を怒らせた玉城が、二階から降りてくる、続いて消沈したカレンと扇が続く。
「あらぁ~。やっぱり怒らせたのね~?」
ラクシャータがそんな三人を見て気のなさそうなコメントを言う。
「あの野郎、な~にが、『昔話をするとは言ったが、仮面を取るとは言ってない』だ。ふざけやがって」
玉城は悪態を吐くと、どさっとソファに座り込んだ。
扇とカレンは顔を見合わせてから、玉城から離れた椅子に座った。

「う~ん。七年前に一度かぁ、おれが四聖剣に入ったのは開戦後だったしー。心当たりないんだけど、開戦前とか、‥‥仙波さん達、心当たり有りませんか?」
逆の端では四聖剣が固まって座っていて、朝比奈が憤慨する玉城を見ながら仙波達に尋ねていた。
「ゼロの事か‥‥。開戦前だとすると、藤堂中佐は良く単独行動をされておいでだったからな‥‥」
「そうそう。道場で一時期師範とか、あちこちで会談とかしてたからな。そこまでついてくわけにもいかなかったし」
「わたし達もそうそう軍を離れられない状況だったからな」
開戦前の、それなりに平和だった頃へと思いを巡らしながら、三人は思い当たらないのか考え込む。
「あの頃はそこそこ人の出入りが激しかった頃でもあるし、その内の誰かがゼロだったのだろうか‥‥」
「だけど仙波さん。一度会っただけで、それも仮面越しに言い当てるなんて、相当言動の印象が残ってないと出来ないと思うけどよ?」
「顔ではなく、だな。‥‥やはり心当たりはないな。わたしには」
千葉が早々に諦め、「わしもない」「おれもお手上げ」と仙波と卜部も匙を投げた。
「やっぱり藤堂さんに聞くしかないかなぁ~。でも、さっきもはぐらかされたようなものだったしなぁ。どう思います?」
それでも尚も諦めきれないのか、朝比奈が問いかける。
「藤堂中佐と、桐原公が認めておる人物だからな。‥‥ゼロが誰であろうと、わしは構わぬよ」
「まぁ藤堂中佐以外に従う気はないしなぁ」
「ゼロか中佐か、桐原公が何か言うまで待てば良い」
「それはおれだって。藤堂さんのいるところがおれのいるところですから。‥‥じゃなくて、単に気になるだけじゃないですか~」
所詮、藤堂至上主義の四聖剣にとって、ゼロは二義的なものにしかならなかった。
ゼロの正体が、ではなく、藤堂がいつ、どこで、どうやってゼロと知り合ったのかが知りたいだけなのだ。

不意にニュースの音が飛び込んできた。
『お聞きください。本日、ブリタニア第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア殿下が騎士を発表いたしました』
それはどこか興奮したアナウンサーのモノで、テレビに近かった団員がボリュームを上げる。
『なんと前代未聞の騎士指名であります。指名されたのは名誉ブリタニア人で軍に所属する准尉です』
バババっと何人かがテレビを振り返って凝視する。
『過日には先代イレブン総督故クロヴィス・ラ・ブリタニア殿下の暗殺犯として調べられた事もあります』
「まさかだろ~~??」
玉城が驚きの声を上げる。
『日本最後の内閣総理大臣・枢木ゲンブの嫡男だった、その名は枢木スザクです。ユーフェミア皇女殿下は枢木スザクを騎士に指名しました』
「「「‥‥ッなんで~~~!!!」」」
何人かの叫び声が合唱する。
「‥‥‥‥なんで、スザクが?」
カレンがポツリと呟いた。
「‥‥ッ、ゼロに報告してくるッ」
扇は言うなり立ち上がり、駆け出した。
まだ喚いているテレビを他所に半数以上は扇の後姿を追いかけた。

「‥‥このタイミングだと、枢木スザクが白兜に乗ってたのがバレたからってのもありそー」
朝比奈が眉を顰めながら嫌そうに呟いた。
「普通の名誉ではなく、ナイトメアフレームに騎乗出来る、騎士なればこそ、というわけか?」
千葉が朝比奈の言葉に反応する。
「しっかし、思いきったことするな~。風当たりとか相当きつくなるんじゃない?」
嫌そうな響きを込めたまま、それでも感心した風に、朝比奈は言った。

「ディートハルト。この件について詳しい情報を集めてくれとゼロが」
二階から扇が降りてきながら声をかける。
「わかりました。早急に」
ディートハルトは無駄な問いを発する事なく、そう応じると出て行く。
「藤堂さんは?」
「すぐに来る。玉城、南、杉山、井上。他のテログループを注意するように言われた。手分けして当たってくれ」
「了解。すぐに取り掛かる」
「ッて、指示だけ出してゼロは出てこないつもりかぁ~?」
「こら、玉城。とにかく先に動きなさいよね。あんただって口先ばっかりじゃないの」
井上に急きたてられながら、玉城は転ぶように部屋から追い出された。
残る三人もそれに続く。

「当分、忙しくなるぞ」
下まで降りてきた扇が、残る一同に向かってそう声をかけた。

扇のその言葉が、別の意味でも的中してしまう事を、誰も知らなかった。



───────────
作成 2008.01.23 
アップ 2008.01.28 

部屋に戻って暫く。
控えめなノックに開錠して扉を開ければ、四聖剣の誰かが用意したのだろう、軍服に着替えた藤堂が立っていた。
その後ろに何故か扇と玉城、カレンが立っていたが。
「‥‥どうした、扇。何か有ったのか?」
問われた扇は、「えっと、その、あの」と、しどろもどろで要領を得ず、痺れを切らした玉城が横から口を挟んだ。
「おれ達初期の幹部すら素顔知らないってのに、入ったばかりの奴になんて、ありえないだろ、普通ッ」
「わたしは昔話をしようと言っただけだが?仮面を取るとは言っていない。‥‥それに、お前達はわたしが仮面をしたままなのを承知の上だと思っていたが?」
おれは呆れたように応じる。
「ッ、それは‥‥。そうですけど。‥‥でもッ」
カレンが弾かれたように応じるが、先が続かないようであった。
「確かに、キョウトの桐原公が保障してくれている事もあるし、そのままの君についていく事には異論はない。‥‥しかし、気になるのも事実なんだ‥‥ゼロ」
扇が、ゆっくりと言う言葉に、「まぁそうだろうな」と内心思わざるを得ないのだが。
「‥‥それで?仮面をしてここにいる以上、わたしに昔話一つするな、とでも言いたいわけか?」
しかし、気になるからと言われて「はいそうですか」と、バラすつもりは毛頭なく、ズレた事を言ってみる。
「い、いや‥‥」
「では、わたしのプライバシーを認めないと?」
否定する扇に畳み掛けると、扇はハッとした表情になった。
「‥‥すまなかった、ゼロ。そんなつもりじゃ、なかったんだが‥‥。‥‥戻ろう。玉城、カレン」
扇の言葉に、「けッ」と言って引き返す玉城と、辛そうな表情を向けるカレン。
「あの、ゼロ。わたしはッ‥‥。例えゼロが誰だったとしても‥‥」
カレンはそれだけ言うと、一礼して玉城の後を追い、扇がおれとカレンを見比べてから続いた。

三人の消えた廊下を暫く見た後、一人残った藤堂に向き直る。
「待たせてすまなかったな、藤堂。‥‥入って、掛けてくれ」
扉の前を大きく開けると、ずっと黙って成り行きを見守っていた藤堂が静かに中に入った。
おれも続いて部屋に入ると、扉を閉めて鍵をかけた。

廊下での一騒動の後、ゼロの部屋に入ってソファに腰を下ろす間に、ゼロは扉を閉めて鍵をかけていた。
カチャッと音がして、しかし続く音がない事に訝しみ、おれは扉の前に立つゼロに視線を向けた。
「‥‥どうした?ゼロ。‥‥いや、ルルーシュ君」
尋ねれば、「いいえ、別に」との返事と共に、動き出す。
歩き寄りながら、仮面に手をかけ、慣れた手付きでカシュンと仮面を外した。
そしてそのまま、おれの向かいのソファに腰掛ける、仮面は脇に置いた。
露わにされた漆黒の髪、白い肌、そして紫の瞳は、記憶にあった少年の面影を色濃く残していて、彼が生きていたのだと、おれはやっと実感を持つ事が出来た。
「仮面は外さないのではなかったのか?ルルーシュ君‥‥」
「仮面を取らないとも言ってない。‥‥それに、素性がばれている以上、隠しておく意味はないからな」
ルルーシュはそう言って笑みを見せた。
「‥‥では、まず、聞くべきなのだろうな。『何処でわかった?』」
「おれが知っているのは、スザク君を助けに現れた時と黒の騎士団を結成した時、その後の活動と、おれを助けに現れた、ゼロだ」
まずは手札を開いていく。
「それで?」と視線で続きを促され、おれは続ける。
「桐原公がゼロを知っていると聞いた。そう思えば、ゼロの考えは、ルルーシュ君のものに近いと思い当たった」
「待て。‥‥七年前死んだ事になっていたはずだぞ」
「あの時、二人が亡くなったと聞いたあの時、おれは信じなかったんだ。‥‥信じたくなかった、と言えば良いか」
そう、あの時は、幼い二人の兄妹の境遇に、かなり同情していた。
そして、そのまま亡くなったのだとしたら、と思うと辛くなった。
だから、どこかで生きていて幸せになっていて欲しかったのだ。
「‥‥それに、残ると言った仙波を突っぱねただろう?」
「‥‥‥あぁ、仙波は律儀だったからな。‥‥四聖剣を藤堂から引き離す程、冷酷ではないつもりだ」
「つまり、おれと四聖剣の付き合いを正確に把握していた事になるな。ナイトメアフレームについてもそれを裏付けている」
おれは最後の札を見せた。
「‥‥なるほど。‥‥七年前に一度、か。‥‥隠すつもりなのか?」
ルルーシュの紫の瞳に鋭さが加算される。
「‥‥‥。スザク君、だったな。彼は君の事は‥‥」
「今、同じ学校に通っている。‥‥何故か、紅蓮弐式に乗っていた紅月カレンも一緒にクラスメイトとして。‥‥呉越同舟、というのだったか?」
ルルーシュはクスリと笑みを零す。
「ルルーシュがゼロだと言う事は、二人とも知らない。スザクはカレンが紅蓮弐式のパイロットだと言う事も知らないだろう」
そこまで言うと、ルルーシュは笑みを引っ込めた。
それを見計らったように、廊下でバタバタッと騒がしい足音が近づいてきて、ルルーシュは仮面を手にとって被り、ゼロとなった。

「ゼロッ、大変だッ」
「‥‥どうした、扇」
「さっきの‥‥白兜のパイロットの、名誉の枢木スザクが、ユーフェミアの騎士になるって、ニュースで騒いでるッ」
「‥‥。ディートハルトに詳しく調べさせろ。後で検討する。お前達は、他のテログループに注意していろ」
「わかった。‥‥その、」
「‥‥藤堂もすぐに戻す」
「あ、あぁ。その、すまない。待ってる」

足音が遠ざかると、ゼロは息を吐き出した。
「七年前。おれはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを殺した。‥‥今、ルルーシュ・ランペルージが消える時だろう。そして、おれはゼロになる」
藤堂は目を見開く。
「‥‥表の生活を、捨てる‥‥と言うのか?妹君はどうする?」
目の前の少年が、妹の事をとても溺愛している事を、それは今も変わりないと言う事を、藤堂は知っているからだ。
「勿論、妹もだ。‥‥学園は安全ではなくなった。‥‥恐らくキョウトに頼る事になるだろう‥」
言ってゼロは立ち上がる。
「キョウトとのコネクションは黒の騎士団の方が強い。‥‥恐らく騎士団経由になるだろう。‥‥その時は四聖剣に護衛を頼みたいが?」
大事な妹をキョウトに預けるのを既に決定事項としているゼロに、藤堂は遣る瀬無さを覚えた。
「わかった。その時は言ってくれ。四聖剣はおれが説得しよう」
藤堂も立ち上がる。
「おれは、もう二、三する事をしてから、行く。先に戻っていてくれ。‥‥藤堂。お前の言葉は、嬉しかった。ありがとう」
ゼロはそう言うと、藤堂の為に扉を開けた。
藤堂は、驚いた表情を浮かべてゼロの仮面を見てから、笑みを見せた。
そして部屋を出て行った。

部屋に一人になったゼロは、「箱庭の、崩壊か‥‥」と小さく呟いた。

───────────
作成 2008.01.16 
アップ 2008.01.27 

おれがゼロを初めて見たのは、イレブン総督のクロヴィス皇子暗殺犯として逮捕された、枢木スザクの護送を放送している番組でだった。
相手の用意した茶番、何かしら罠が在るだろうその場所に、わざわざ出向く必要はないと言い切り、おれは傍にいた解放戦線の同志達を抑えていたのだが。
まさか堂々と現れ、且つ真犯人として名乗りを上げ、無事に枢木スザクを救出して脱出に成功するとは、と感心したものだった。
枢木スザクとは面識もあり、その無事は嬉しい事ではあるが、ゼロと名乗ったクロヴィス暗殺の真犯人の真意が読めず、苛立ちも覚えていた。

次に見たのは、河口湖事件の報道でだった。
解放戦線の中でも強硬派がホテルジャックをおこない、ブリタニアの一般人を人質として立てこもっていた場所に、ゼロは現れた。
強硬派達を倒し、ブリタニアの一般人を救い、仲間と共に姿を見せたゼロは、「黒の騎士団」を名乗って「世界を裁く」と宣言していた。
イレブンもブリタニアもなく、弱きを助け強きを挫くのだと、言ってのけたゼロ。

その言葉通りの活躍を、ゼロと黒の騎士団がしてみせていた事は、その後連日のように賑わしている紙面でも確認できていた。

ゼロと実際に対面したのは、おれがブリタニアに捕まり、処刑される事になった後だった。
おれを助ける為に現れたゼロは、「奇跡の責任を取れ」とおれに迫ってきた。
余力を残して敗北した日本人は、「厳島の奇跡」があるからこそ、余計にテロ活動が盛んになっているのは、間違いようのない事実だ。
だからこそおれはこの場で大人しく処刑されるわけにはいかず、ゼロの手を取っていた。


黒の騎士団のアジトに戻った後、ゼロの様子がおかしい事に誰もが気づいた。
みんながナイトメアフレームから降りても、一人だけ出てこようとしなかったゼロ。
騎士団の幹部達が、心配そうにゼロの乗る無頼を見上げる中、そのコックピットからは狂気を窺わせるゼロの笑い声が響いてきたのだ。
おれもまた表情を曇らせて無頼を見ていたし、後ろでは四聖剣が顔を見合わせていたのも判っていた。

暫くして、気が済んだのか笑い声の止んだ無頼から、ゼロが降りてきた。
ゼロがタラップを降り切るまで、誰も発言するものはいなかったが、降りた後、紅蓮弐式に乗っていた少女がゼロに駆け寄って尋ねた。
「あの、ゼロ。大丈夫ですか?」
「あぁ、カレンか。‥わたしは大丈夫だ。なんともない」
それはさっきまで、狂気を孕んだ笑声を響かせていたとは思えない程、落ち着いた声だった。
カレンと呼ばれた少女は、戸惑いながらも再度声を掛けた。
「あ、あの。先程は何故笑っていたのですか?」
ゼロは少女の方を向き(仮面を向け)、数瞬間を置いてから「あぁ」と頷いた。
「聞こえていたのか。少々皮肉でな。我が事ながら、あまりにも滑稽だったから笑っていただけだ」
少女の反応がなかったのをどう取ったのか、ゼロは少し置いて続ける。
「以前、枢木を助けたのは、枢木の無実をわたし自身が良く知っていた事と、弱者だと思っての事。だが、それ以前に既に牙を剥かれていたとはな‥」
そう言ったゼロの言葉に、少女を含めた黒の騎士団の面々は、納得顔になって頷いた。
それはゼロがゼロと名乗る前に、既に白兜と一戦交えていた事をあらわしていた。

少女から離れたゼロがおれの前まで来て立ち止まる。
「さて、『奇跡の藤堂』、それに四聖剣。黒の騎士団と行動を共にするか、それとも袂を分かつか‥。その返答を聞かせてもらおうか」
ゼロの問いによって、背後に感じた息を呑む気配に、チラと見れば、四聖剣の四人はそれぞれ酢を飲んだような表情をしてゼロを凝視していた。
それでも何も言わない四人からゼロに視線を戻すと、おれは口を開いた。
「‥共にしない、そう言えばゼロ、お前はどうする気だ?」
おれの言葉に、仮面のせいで表情の変化を知りようもないが、それでもこの場の空気が凍ったように感じた。
ザワリと黒の騎士団からざわめきが起こったのも、その変化を感じたからだろう。

「‥‥四聖剣。お前達はどうする?」
キリリと歯を噛み締める音の後に、千葉が口を開く。
「わたしはッ、‥中佐と行動を共にする」
「おれも藤堂さんに従います」
「おれも同じく」
続いて朝比奈と卜部が賛同したが、仙波だけは異なっていた。
「‥‥藤堂中佐を助けていただいた恩を返すまでは、ゼロに従おうと思う」
「「「仙波さんッ!?」」」
驚いた残りの三人が仙波の名を呼んでいた。

ゼロが溜息を吐く。
「それならば、月下をくれてやる。‥五人とも、すぐにこの場から立ち去れ。あぁ、この場所の事は他言無用に願いたいな」
ゼロは突き放すように言い切った。
この言葉に驚いたのは、残ると言った仙波と、白衣を着た褐色の肌のブリタニア女性だ。
「なッ、わしは残ると‥」
「ちょっとちょっと~。月下はキョウトが騎士団に寄越したナイトメアフレームなのよ~。出て行く者にそんなに簡単に渡しちゃって良いわけ~?」
だが、ゼロは少しも慌てず双方に言い返した。
「仙波。それは今回の戦いで十分だ。ラクシャータ。月下は初めから藤堂と四聖剣用として回って来た物。ならば当人に渡すのは筋に通っている」

おれは驚いた。
ラクシャータと呼ばれた科学者らしいブリタニア女性に向けたゼロの言葉は、すなわちキョウトがおれ達が騎士団と合流する事を察知していた事になる。
「なぁにそれ~。じゃあ月下を要請した時には、彼等が合流する事を予測してたわけ~?」
「あぁ。可能性としては七割程だと予測していた。合流した時、使えるナイトメアフレームがなければ、即座に動けまい?」
それでもゼロは平然と言ってのけ、おれは息を吐き出した。
「‥‥良いだろう。行動を共にしても良い。‥だが、その前に一つ質問に答えてもらいたい」
ゼロはブリタニア女性からおれへと顔を向けなおして頷いた。
「‥‥。答えられる事ならば、答えよう」

「‥‥‥‥‥。おれは、以前、お前に会った事があるだろうか?」
おれのその言葉に、そこかしこから叫び声が上がる。
朝比奈なども、「藤堂さん、それ本当ですか?」とか、「どうしてわかったんですか?」とかの言葉を口走っている。
暫くして静かになるまで、ゼロは黙ったままおれを見ていたと思う。

そして、静かになった後、ゼロはやっと口を開いた。
「‥ほぉ?どうしてそう思う?」
「以前、‥いや、七年前に一度」
問いで返すゼロに、おれは言い直した。
「‥‥‥。久しいな、藤堂。しかし、何故分かった?‥いや、それよりも、それを承知の上での言葉か?」
ゼロが認めると、再びざわめきが起こる。
近くだからか朝比奈の声が良く届く。
「七年前にたった一度?それでなんでわかるんですか、藤堂さんッ。てか仮面被ってるのにどうして?」
とひたすら驚いている朝比奈の声に被って、騎士団の、特に紅蓮弐式の少女と、ブリタニアの男一人の声が大きいようだった。

「承知の上で、だ。力になろう。あの日、『ブリタニアをぶっ壊す』‥そう言った言葉に嘘はないと分かっているからな」
おれはそう言い、一度月下に視線を向けてから続けた。
「それはキョウトも承知しているようだから、気兼ねもいらないだろう」
ゼロがフッと笑う。
「桐原公も、わたしと藤堂に面識がある事を知っていたのだから当然だな。しかし、何処でわかったのだ?」
首を傾げるゼロに、おれは呆れる。
ゼロの言葉、主張はそのまま、七年前の彼の言い分そのままだったし、行動を見ていれば或いはと思って当然だと思うのだが。
逆にスザク君が敵に回っている事に驚きを禁じえなかったくらいなのだ。
あの時、ゼロの素性に確信が持てなかったとはいえ、スザク君を焚きつけるような事を言ってしまったと、少しばかり後悔がないでもない。
そして改めて思うのだ、ナイトメアフレームでの笑いの意味を。
かつての、そして或いは今もまだ親友であろう二人。
その、かたや相手を救おうとして立ち上がり、かたや相手の邪魔をするために立ちはだかっているのだ、笑うしかないという心境だったのだろう。

「‥‥それをこの場で言っても構わないのか?ゼロ」
「なるほど。そうだな。では着替えたらわたしの部屋に来て貰おうか。昔話をしよう」
「了解した」
おれとゼロはそう言って頷きあった。
すると、三度ざわめきが起こっていた。

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作成 2008.01.08 
アップ 2008.01.26 

ユーフェミアをその騎士スザクに任せて、半ば引きずるようにしてロイドを連れ出したセシルは、そのまま手近な空き部屋に連れ込んでいた。
「どーしたんだぃ?セシルくん」
「とぼけないでください、ロイドさん。‥‥本当に発表されてしまうのでしょうか‥‥皇女殿下の件は‥‥」
セシルはいつもの調子でのらくらと発言するロイドにきつく言ってから、一転不安そうな様子で訊ねる。
「そりゃ、皇帝陛下が許可したっていうくらいだしね。近日中には発表があるだろうねぇ」
室内を見回していたロイドは興味なさげに応じて、見つけた椅子に座った。
「なんとかならないんですか?スザク君、せっかく騎士になれたのですし‥‥」
セシルが重ねてロイドに問いかける。
「それはぼくに言うことじゃないよね、セシルくん。それに、一番の問題はそこじゃないしー?」
ロイドはあくまでも普段通りだ。
「それはわかってます。あのゼロの言が正しいかどうかは置くとしても、"日本人"達の反感は買いますよね、絶対」
「うん、それは確実だね‥‥。コーネリア殿下に一言相談していれば、こんな事にはならなかったんだろうけど」
「ダールトン将軍は知っていらしたんでしょうか?」
「どうかな。せっかく姉君がお付けになった補佐役だって言うのに、将軍も可哀想だよねー。立つ瀬ない上に行方不明だしぃ?」
式典会場で戦闘前に姿を見たのが最後だと言う、ユーフェミアの補佐役を二人は思い浮かべる。
だが、ロイドはそれも一瞬で終わらせてしまう。
「それよりも、ぼく達はこの後が大変だよ~、セシルくん。コーネリア殿下が向かっているからね~。合流したら、こんなのんびりとはしてられないよー?」
「コーネリア皇女殿下はどうなさるおつもりでしょう?」
「さぁね~。最悪、妹姫を本国に‥‥う~ん、それもまずいかなぁ。殿下の庇護がない状態で本国にいるのもまずくなるだろうし?」
「でも、このままエリア11に留まっているのも‥‥」
「ここで、ぼく達が頭を悩ませていてもどうにもならないんだけどね~。まぁ、早目に気づけて良かったんじゃないの?」
ロイドは明るく突き放す言い方をした。
「‥‥どういう事ですか?」
「『行政特区日本』が始まってからだともっと大変だったと思うよ~?ぼくは」
「‥‥それは、」
「行政特区日本」の成立が「ユーフェミア・リ・ブリタニア」の名前で宣言される。
次いで、その「ユーフェミア・リ・ブリタニア」の廃嫡が宣言される。
すると、「行政特区日本」は有名無実の空手形になり、そこに集う"日本人"達もまた"イレブン"に逆戻りする事になる。
また、「ユーフェミア・リ・ブリタニア」廃嫡宣言のタイミングによっては、あぶれた"イレブン"による暴動が起きていたかも知れない。
そうすると、他のエリアでも同様の「特区」を求める運動や、暴動が起こるだろう。
そして、「行政特区日本」に参加した"日本人"となっていて"イレブン"に戻った人達も当然、「ユーフェミア」に対する怒りを抑えられないに違いない。
「あの場所で、ゼロが暴露したせいで、この程度で済んでいるのかも知れないよね~この騒ぎ」
「でも、」
反論をしようとしたセシルを制止して、ロイドは続ける。
「ぼくはねー。あのタイミングまで、ゼロは発言を控えていたんだと思うんだよねー」
「‥‥どういう事ですか?ロイドさん」
訝しげに顔を顰めるセシルが声を低くして訊ねるのだが、ロイドの答えはセシルにとって難解だった。
「ゼロはユーフェミア様に撃たれていたにも関わらず、誰の名前で『特区』が宣言されるのか、それまで待っていたんだと思うよーって」
「だから、それはどうしてですか?」
さっぱりわからないセシルはイライラ感を募らせるが、ロイドには全然通じない。
「んー。もしかしたら、別の名前で宣言されるのならば、大人しく引き下がる気が有ったのかな~って思ったんだよねー」
言いながらロイドはゼロのセリフを思い出す。
『第二皇女「コーネリア・リ・ブリタニア」か、第二皇子「シュナイゼル・エル・ブリタニア」の名前でなければ、機能しない事も、念頭になかったのですか?』
つまりゼロにはその二人の名前で宣言されていれば、「特区」に参加する意思が有ったのではないか、と思ったのだが。
「ま、その辺は、本人に聞かないとわからないんだろうけどね~。つまりゼロにとっては、本当にお姫様は『裏切り者』なんだろうなーと」
結局、ロイドの口調は、最後まで変わらなかったのである。


一方コーネリアは、アヴァロンに合流するべく、移動中であった。
「‥‥姫様」
執務机に両肘をついて組んだ手の上に額を乗せたコーネリアの様子に、心配したギルフォードが声をかける。
つい先程、第二皇子シュナイゼルからの通信が有ったばかりなのだ。
それまでは、ゼロの偽りだと思っていた、コーネリアの最愛の妹姫が「名前を返上した」件が事実なのだと知らされ、かなり凹んでいるのだ。
「‥‥わたしは、‥‥そんなに頼りない姉だっただろうか?ギルフォード」
ポツリと、コーネリアが呟く声には全くと言って良い程、力がなかった。
「いえ、そんな事はありません。姫様はとても頼りにされておりましたとも」
ギルフォードは反射的にそう返しながらも、妹姫であるユーフェミアに、勿論無理なのだが一言言いたい気分になってくる。
そう、せめて補佐につけたダールトン将軍にくらい相談していれば、きっと、何が何でも止めていたはずなのに、とギルフォードは確信している。
きっと、一人で考えて一人で決めて、一人で皇帝陛下に連絡を入れたのだろうと思うと、かなり悔しいと思うギルフォードだった。
「皇帝陛下に、発表を控えていただくように進言出来ないものなのでしょうか?」
ギルフォードは一番被害の少ない案を尋ねる。
「返上する」件がないのであれば、ユーフェミアの所業はゼロに対してのみの詐称だけと言う事になり、反感は最小限で済むはずなのだ。
「‥‥無駄だな。あの父上が、こんなチャンスを逃すとは思えない」
力なく頭を振るコーネリアは、自分が今情けない顔をしているとわかっているので、顔をあげる事が出来なかった。

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作成 2008.01.07 
アップ 2008.01.25 

C.C.がゼロの部屋に戻った時、藤堂とゼロは並んでソファに腰掛け、ゼロが仮面を被ったまま藤堂に寄り掛かって眠っていた。
「仮面を取らなかった事は褒めてやろう、藤堂。‥‥暫く起きないだろうから、そのまま着替えさせてベッドに放り込んでくれ」
痛ましそうにゼロを見下ろしていた藤堂が顔を上げ、C.C.と視線を合わせて来たから、そう言ってC.C.は手に着替えの服をローテーブルの上に放った。
「‥‥おれがゼロの素顔を知っている事は、C.C.も知っているはずだ。‥‥何故今更仮面に拘るのだ?」
藤堂はゼロに聞けなかった分、C.C.へと尋ねる。
「そう、お前はこいつの素顔も、素性も知っているな、藤堂。‥‥ではこう言えば良いか?あの女もまたこいつの事を知っていた、と」
C.C.はギアス云々について語るつもりはなかったし、これはかなり説得力のある話なので、ついでに被ってもらう事にした。
「‥‥ッまさか」
「そのまさかだ。異母兄である事を知っていて傷を負わせた」
C.C.は「嘘は言っていないな」と内心付け加えていた。
「おい、殺気を振りまくなよ。とにかくさっさと着替えさせて横にさせてくれ。‥‥それとお前はまだまだする事が残っているだろう?」
ユーフェミアに対する憎悪が増して思わず殺気を放っていた藤堂は、言われて慌てて気を落ち着ける。
折角眠ったところなのに、起こしてしまってはまずいのだと言う事は、藤堂にしろC.C.にしろ承知していた。
藤堂はゼロを起さないようにそっとゼロをソファに寄り掛からせると、着替えさせ始める。
それを見ながら、C.C.は必要事項を告げ始めた。
「こいつが目を覚ました後、キョウトとの話し合いを望むだろう。桐原を待機させておけ。当面はブリタニアの奇襲に注意しろよ」
「‥‥何をする気だ?」
藤堂は手を止めずに、チラと一瞬C.C.を見てから尋ねた。
「別に。『行政特区』とやらが不発に終わりそうだからな。こいつならこれを機に、こちらの『日本』を別に宣言しそうだと思っただけだ」
それはユーフェミアが「行政特区日本」の件を発表する前に、黒の騎士団内でゼロが明かした今後の展望に有った事だ。
「‥‥可能なのか?」
「さあな。わたしは知らん。こいつがどうする気なのか、本当のところはわからないからな。可能性は押さえておきたいだけだ」
さらりと言い切ったC.C.の言葉に、藤堂は不思議なものを見る目を向ける。
これまで、C.C.はゼロの傍にいたりいなかったりと姿を見せていたが、口を挟んだ事は稀で、いつも我関せずだったのだから当然だろうが。
着替えを終わらせた藤堂はゼロをそっと抱きあげてベッドへと運んで横たえる。
「‥‥まぁ数時間は目を覚まさないだろうから、安心して仕事をしてこい。‥‥起きたら真っ先に連絡を入れてやろう」
ゼロに布団を掛ける藤堂を見やりながら、C.C.はそう言った。
「‥‥急に協力的になったのはどういうわけだ?」
あまりにも違うC.C.に藤堂は戸惑うばかりだ。
「煩い。あのお気楽主従のせいで、こいつが不安定だから、安定剤代わりだ。まさか妹を連れて来るわけにはいかないからな」
C.C.は忌々しげに言うが、今の状態を妹に知らせたりすれば、後で何を言われるかわかったものではないのも事実だ。
「‥‥そうか。‥‥いや、そうじゃなくて、ゼロに対して協力的だと尋ねたのだが‥‥」
自分に掛けられた言葉の意味を理解した藤堂は頷いてから、もう一度言葉を付け加えてC.C.に尋ねた。
「こいつは自分の事には無頓着らしいからな。周りが気にかけるくらいが丁度良いだろうと思ったまでだ。‥‥今は怪我人だしな」
C.C.はそう応じると、「もう行け」と藤堂を追い払う仕草をした。
藤堂は頷いてベッドの傍を離れると、部屋を横切り扉に向かう。

「‥‥藤堂」
自分で追い払おうとしておきながら、C.C.はその背中に声をかけていた。
藤堂は立ち止り振り返る。
「お前は、‥‥こいつを裏切らないか?見捨てないか?置いていかないか?欺かないか?一人にしないか?」
C.C.は藤堂の視線をまっすぐに捉えて、訊ねていた。
藤堂は、初めてC.C.と向き合ったように、少なくとも真正面から視線を合わせたのは初めてだと思った。
「おれは、裏切ったりしない。見捨てたりもしない。置き去りにもしないし、一人にもしない。‥‥決して欺いたりもしない。‥‥誓う」
藤堂は、ひとつ息を吐くとC.C.を相手に何かの儀式のように言いきった。
それを聞いてC.C.は笑みを見せる。
「そうか‥‥。‥‥ならば、わたしの出番はまだ先になりそうだな」
そう呟いたC.C.は藤堂から興味を失ったかのようにベッドで眠るゼロに向きなおった。
「‥‥お前がどういうつもりなのかは知らないが、‥‥今は彼を頼む」
藤堂はC.C.にそれだけを言うと、部屋を出た。


部屋に残ったC.C.は、おもむろにゼロの仮面に手をかけてそっと外す。
目を閉じたルルーシュは、今まで通りの寝顔で眠っている。
だが、瞼の奥にある瞳の色は、片方は紫だが、もう片方は赤くなっているのを、C.C.は知っている。
失血のせいで、元から白い肌は、紙のように色をなくしてしまっている。
C.C.は手に持っていた黒いバンダナを左目を覆うように斜めに巻きつけて結んだ。
「‥‥王の力は、お前を孤独にする。‥‥だが、わたしと、あの男だけは、お前の傍に残りそうだぞ。‥‥それとお前の妹‥‥か」
C.C.は溜息を吐くと、ベッドに乗り出した身を引いて、近くの椅子に座った。
「‥‥あのお姫様の事があるから、妹の事も考える必要があるな‥‥。‥‥早く元気になれ、ルルーシュ」
C.C.は祈るように呟いていた。

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作成 2008.01.06 
アップ 2008.01.24 

黒の騎士団曰くの白兜、ランスロットによって連れ戻されたユーフェミアは、周囲の説得にも応じずどこで拾ったのかマシンガンを頑として手放そうとしなかった。
「皇女殿下、それはとても危険ですから‥‥」
セシルが穏便に説得しても。
「ユフィ。とにかくそれを離して。ゼロならぼくがちゃんと‥‥」
スザクが宥めても賺しても。
「あら、ゼロはうたなくてはいけないのですわ。あの時もっとうっておけば良かったのかしら」
「だからと言って、本人が撃つ必要はないよね~。騎士であるスザク君に頼めば良い事なんじゃないの~?」
「あは~」と笑いながら、ロイドも参戦する。
「‥‥そうかしら?‥‥でも、持っていないといざと言う時、うてませんし‥‥」
一瞬説得成功か?と喜んだのも束の間、考える時にマシンガンを見る為に少し離したユーフェミアは、再びそれを抱え込んでしまった。
「‥‥あー、そうですわ。お疲れじゃありませんか?皇女殿下。お部屋にご案内いたしますから、少し休まれては如何でしょうか?」
「あーそれが良いね、セシル君。じゃあ案内よろしくね。スザク君もお姫様の騎士なんだから一緒に行くようにぃ」
うんうんと一人頷いたロイドの言葉に、セシルを筆頭にしてスザクに促されたユーフェミアが移動していった。


「あー、やれやれ。全く、危なっかしいお姫様だなぁ、もー」
一人になったロイドが呟いていると、ロイドが使用する端末に通信が入った。
ロイドがすぐさま回線を繋ぐと、モニターに現れたのは第二皇子シュナイゼルだ。
『ロイド‥‥、ユフィ、は?』
ロイドはこれまでこれ程蒼白になったシュナイゼルを一度しか見た事がなかった。
「お元気ですよぉ、とってもー。どーしてもゼロを倒すんだーってマシンガン抱えてますけど~」
そんなシュナイゼルに対しても、ロイドは普段と全く変わりなく応じる。
『一体、何が有ったんだい?』
「それをぼくに言われましても~。傍にいたわけじゃないですしぃ。補佐していたダールトン将軍は行方不明ですし」
『ユフィの騎士になった枢木はなんといっているんだ?』
「あー、彼も要領を得なくてねー。皇女殿下がゼロと二人で話をして、戻ってきたらアレですしぃ?‥‥ところで殿下」
普段通りにシュナイゼルの問いに答えていたロイドが、シュナイゼルが黙った隙をついて質問に出る。
「ゼロの言った事は本当ですか?皇女殿下が『名前を返上した』っていうア、レ」
するとシュナイゼルが整った顔を顰めた。
『本当らしい。‥‥父上に確認を取ったらそのように仰られていた』
「もしかして、殿下にも言っておられなかったんですか?彼女。‥‥じゃー、コーネリア皇女殿下にも?」
『確認していないが、そうだろう。‥‥彼女が知っていれば、止めていたはずだからね』
沈痛な面持ちのシュナイゼルを見ていたロイドは、嫌な予感を感じて頭痛を覚える。
「あー、殿下?もしかして、この通信。ユーフェミア様に対しての沙汰つきですかぁ?」
「ぼくから伝えるのはいやだな~」とロイドは続けてぼやく。
『その通りだよ、ロイド。‥‥とにかく、ユフィには詳しい事を聞かなければならないからね‥‥』
「聞きたくないんですけど~、事情聴取は誰がするんですか?」
『今、コーネリアがそっちに向かっているのだけど、聞けるところは先に聞いておいてくれても良いよ』
「それはコーネリア殿下がお越しになる前に、聞ける範囲は聞いておけって事ですか~?」
『‥‥話が早くて助かるよ、ロイド。‥‥とにかく、今は出ずに事態の収拾に当たってくれ。後の事は、コーネリアの指示に』
「わかりましたよ、殿下。殿下も少しお休みになった方が宜しいですよ~」
『そうだね。‥‥また連絡する』
通信が切れると、ロイドは深々と溜息を吐く。
「‥‥彼が怒るのは無理もない、かなぁ~、これは」
ロイドは呟くと、休憩していると思われる部屋に向かって歩き出した。


セシルが隣同士にソファに座ったユーフェミアとその騎士枢木スザクにお茶と茶菓子を出したのは、部屋に通されて暫く経ってからの事だった。
出されたお茶菓子は、セシルの手作りらしく、手に取るのが怖いのでは?とスザクに思わせる代物だ。
セシルはそのまま向かいのソファに座る。
ユーフェミアがマシンガンから手を外し、カップに伸ばされるその一瞬で、隣に座っていたスザクがマシンガンを取り上げてセシルに手渡した。
「あッ、スザク何をするのですか。あれがないと、わたくしがゼロをうつ事が出来なくなってしまうじゃないですか」
一転、スザクの軍服を掴んで、せがむようにユーフェミアが言い募る。
「幾つかお尋ねしたい事があるのですけど、それにお答え頂ければ、お返しさせていただきます」
困りきってセシルに視線を送ったスザクに代わって、セシルはそう言った。
「なんでしょう?」
小首を傾げて、ユーフェミアは問い返した。
「どうしてゼロを撃ったのですか?‥‥ゼロが貴女に何かなさったとか?」
「いいえ。でもゼロはクロヴィス義兄様を殺したのですから、うたなくてはいけなかったのですわ」
「では、‥‥何故、ゼロを招いたのですか?皇女殿下はあんなにも『行政特区日本』を望んでいらっしゃったのに‥‥」
「許せる、と‥‥そう思っていたの。お義兄様の事を抜きにすれば、ゼロも絶対賛成してくれると思ったもの。‥‥でも」
続きそうになるユーフェミアの言葉が、「クロヴィス義兄様を~」とか「ゼロをうたなければ」とかになると思ったセシルは慌てて遮って次の問いを投げる。
「あ、あの。何故、ゼロが賛成すると?」
「それ、ぼくも訊きたいな~」
唐突に扉が開いてロイドが入ってきて、セシルの問いに便乗する。
セシルは慌ててソファの半分を開けてロイドの座る位置を作り、ロイドはそのまま空いたソファに腰をおろした。
「さっきね~、シュナイゼル殿下から連絡が有ったんだよね~。驚いていたよ、殿下。『返上した』事、知らなかったって」
「それは、わたくしから皇帝陛下にお願いしたんです。数日中に発表してくださるって」
はっきりしたユーフェミアの言葉に、ロイドは嘆息し、セシルは驚いた表情を見せてから、ユーフェミアとスザクを見比べる。
「‥‥それ、お姉さんのコーネリア殿下には相談してる?あーんなに、貴女の事を思っておいでのコーネリア殿下にも黙ってたのかな~?」
「だって、お姉さまはお忙しくっていらしたから‥‥。それに会えなくなるわけじゃないですし、お姉さまもきっとわかってくださいます」
何を言いたいのかわからないのか、首を傾げながらも、ユーフェミアは応じる。
「なら、貴女が騎士にした枢木スザク君には?どーかなぁ?スザク君?」
再び嘆息したロイドは、ユーフェミアに尋ね、そのままスザクに視線を移す。
「えッ、‥‥いえ、自分は聞いて、いません‥‥が?‥‥あの?」
スザクはわからないままに問いには素直に答えたものの、何の事なのか尋ねるものの言葉が見つからず短い問いかけに終わる。
「‥‥ひとつ聞いても良いですかぁ?お姫様?」
ロイドはスザクの問いを流して、ユーフェミアに視線を向ける。
「なんでしょう?」
首を傾げるユーフェミアは、笑みさえ浮かべていて、やましい事など一つもないと言わんばかりに堂々としている。
「ゼロの言ってた事だけど、『わたしが示した信頼だけは、裏切らないで頂きたいものだ』と有りましたけど、何の事ですかぁ?」
ロイドの言葉に、ハッとしたのはセシルとスザクで、「えーと‥‥」と考え込むユーフェミアに視線を移した。
「さぁ、特に何もなかったと思いますけど‥‥。さあ、答えたのですから、それを返してください」
結局、わからないと言いたげに首を振って答えたユーフェミアは、セシルに向かってマシンガンを返せと手を差し出した。
「ざぁんねぇんでした~。シュナイゼル殿下から、出撃はしないようにって沙汰が有ったからね。ゼロの件は一時御預け~」
ロイドはやっぱりいつも通りの口調で、言ってのけた。
まぁ、シュナイゼル殿下からのお達しだというのだから、問題にはならないのだろうけど、とセシルとスザクは複雑そうな表情をしていた。

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作成 2008.01.06 
アップ 2008.01.23 

握手した手を離した後、ユフィはくすりと笑った。
「でも、わたしって信用ないのね。脅されたからって、わたしがルルーシュを撃つと思ったの?」
そう言ったユフィは下から問いかけるようにルルーシュの顔を見上げた。

ゼロの仮面を小脇に抱えていたルルーシュは、一瞬きょとんとした表情を見せた後、「あぁ」と納得した様子を見せた。
「あぁ、違うんだよ。おれが本気で命令したら誰だって逆らえないんだ。おれを撃て、スザクを解任しろ‥‥。どんな命令でも」

ユフィの身体がビクンと跳ね、膝が抜けるように床に座り込んだ。

ルルーシュはその状況に驚く。
「まさか‥‥。ユフィ、今の命令は忘れるんだッ」
ルルーシュは、左目を左手で覆う。
ギアスのオンオフが出来ない?まさかッ‥‥。

「‥‥。そうね、スザクは名誉ブリタニア人だし、やっぱりわたしの騎士には無理なのよね、きっと」
ユフィはそう呟くとにっこり笑って立ち上がる。
「ねー、ルルーシュ?貴方もそう思うでしょう?そうとなれば、すぐに宣言して来なくっちゃ」
「あッ、ちょっ、待て、ユフィ」
ルルーシュは左目に走る鈍い痛みに気を取られながらも呼びかけるが、ユーフェミアは止まらず走り去る。
「‥‥‥‥チッ、このタイミングでは、‥‥最悪だ。しかも『行政特区日本』まで絡む‥‥。マズいな。間に合うか」
ルルーシュはゼロの仮面を被るなり駆け出した。


倒れているC.C.とスザク、それに数人の護衛官達。
ゼロはまずC.C.の傍らに膝を付いた。
「大丈夫か?C.C.」
「あ、あぁ。‥‥そっちはどうなった?」
眼を開けたC.C.は何もなかったように上体を起こすと状況を尋ねる。
「‥‥かなりまずい状況だ。‥‥ユフィを止めなくてはならない。‥‥スザクと、こいつらは?」
「あぁ、気を失っているだけだ。大したことじゃない」
ゼロは頷くと踵を返してガウェインに搭乗し、C.C.がそれに続く。

密室となったコックピットの中で、ゼロは仮面を無造作に剥いで、脇に置いた。
C.C.はその時見えた赤い色に、眼を伏せて「そうか」と小さく呟いていた。
「それで?一体どうかかったのだ?」
「‥‥『スザクを解任しろ』だな。このタイミングでは最悪だ。特にユフィは『行政特区』と同時に宣言するつもりのようだしな‥‥」
ゼロは遣る瀬無い溜息を吐いてから続ける。
「‥‥おれは、ユフィの『行政特区』を生かす形で策を練ると、言ったばかりだったのに‥‥」
「後悔しているのか?」
「‥‥違う。ただ、想定外だったんだ。‥‥そう、多少修正が必要になっただけだ。‥‥とにかく、余計な口は挟むなよ、C.C.」

ユフィがマイクの前に立つ姿が見える。
『わたくし、ユーフェミア・リ・ブリタニアの名の下に、「行政特区日本」成立を宣言いたします。そして、』

ゼロはオープンチャンネルにしたガウェインの中で、声を出したのだった。
「待っていただこうか、ユーフェミア皇女殿下。お話の途中で立ち去られてはこちらも困るのですが」
『ゼロ?‥‥そういえば、お話、途中でしたっけ?でも、貴方も賛成してくださいましたよね?』
「『行政特区日本』、まだ少々甘いところのある話ですが、それに参加する事自体は確かに認めました。だが、後がいけない」
『後?一体、何の事ですか?』
「今、貴方はわたしの到着を待たずして、勝手に個人のお名前で宣言したと言う事が一つ。これではわたしは拒絶されたと受け取るしかないでしょう?」
『だって、わたくし、急いでおりましたもの。わかってくださると思っていましたのに‥‥』
「何も語らずして、わかれ、と言う方が間違っていると思いますが?貴女の周りには、余程先んじて貴女の意を汲む者しか傍にいなかったようですね?」
『‥‥‥‥。そんな事ありませんわ。‥‥わたくし、ユーフェミア・リ・ブリタニアの名の下に、』
「今。それをこの場で宣言すれば、『行政特区』の破局だと言う事にすら気付かない。いや、気付こうとしないと言うべきか?」
『ゼロッ。何故わたくしの邪魔をするのですか?』
「わたしは弱者の味方ですから。折角の『行政特区』を皇女殿下の気まぐれの言葉一つで台無しにするのは余りにも忍びないと思うまで」
『ユーフェミア皇女殿下。少しお静まりを。ゼロ。言いたい事が有るのならば、この場に出てきて言うのが筋ではないか?』
ダールトンがユーフェミアを遮り、話に割って入る。
「筋、か‥‥。先にその筋を無視したのはユーフェミアの方だぞ?」
『わたくし、ユーフェミア・リ・ブリタニアの名の下に、宣言させていただきます』
「よせッ」
『わたくしは、枢木スザクをわたくしの騎士より解任いたします』
『ッな‥‥姫様。一体どういうおつもりですか?貴女は「行政特区日本」を御作りになると言うのにそのような事を申されては』
『どうしてゼロもダールトンも反対するのですか?彼は名誉ブリタニア人で、イレブンでも日本人でもないではありませんか』
ユーフェミアとダールトンの言い合う姿がモニターから窺える。
その後ろでこの場に参加する日本人の一人が立ち上がり、何かを投げ捨て、立ち去ろうとしている。
何かを言ったかも知れないその行動は周囲を巻き込み、やがてぞろぞろと動き出す。
「‥‥。ユーフェミア皇女殿下。貴女の穿った穴はそれなりに立派だった船を沈めるまでになってしまった。最早わたしの手をもってしても修復は不可能」
ガウェインが会場の上空に飛びあがる。
「ご自分が任じた騎士すら、簡単に解任するような相手とは‥‥。全く無駄骨を踏んだようですね。失礼します、皇女殿下」

ゼロはオープンチャンネルを閉じ、待機中の騎士団に繋げる。
「聞いた通りだ。ここまで来させてすまないがE-3を使い順次撤退してくれ」
『‥‥宜しいのですか?』
「仕方がない。まさかユーフェミアがここまで愚かだったとは‥‥。枢木も詰らない主を選んだものだ」
『ゼロが気にする事じゃありません。そんなの、枢木スザクの自業自得です』
それに同意する声が幾つか上がる中、ゼロは通信を閉じ、深く溜息を吐いた。
「‥‥こちらの『日本』についても、かなりの変更が必要になったか」
こちらも自業自得とは言え、ゼロにとっても手痛い結末であった。



───────────
作成 2008.01.21 
アップ 2008.01.22 

ダールトンの身柄を黒の騎士団が抑えたのが良かったのか。
それとも、G1ベースを占拠したのが効いたのか。
アヴァロンが到着し、白兜が出るには出たが、その頃には粗方片付いており、白兜はユーフェミアを回収するだけで引き下がった。
もちろん、他のブリタニア側の兵士やナイトメアフレームも同時に撤退している。
この場の戦いは、黒の騎士団側の勝利、と言えなくもなかった。

G1ベースの格納庫で、ガウェインは降り立ったまま沈黙を守っていて、ゼロとC.C.が降りて来る様子を見せない。
それを心配した幹部達が、集まってガウェインを見上げていた。
ガウェインの中、そんな様子をモニターで見た後、C.C.は溜息を吐いた。
「‥‥仮面、つけれるか?」
C.C.が後ろに座るゼロを振り返って訊ねた。
「‥‥‥‥ぁ」
ゼロは小さく頷くと、仮面を拾って被る。
「動くのも辛そうだな。‥‥少し待ってろ」
言い置くと、C.C.はハッチを開けて外を見た。

「C.C.、ゼロは?」
するとすぐにカレンの声が聞こえて来る。
「‥‥藤堂、手を貸せ。扇、ゼロの部屋を用意しろ。そこまで運んでもらう。‥‥ラクシャータ、治療を頼む」
C.C.はガウェインのコックピットから、矢継ぎ早に指示を出した。
「それ以外の奴等は邪魔だから仕事してろ。‥‥こいつの負担を減らしたいならな」
「治療ね~、良いわよ~」
ラクシャータはゼロの素顔、とまではいかなくても何かしら知る事が出来るだろうと嬉しげである。
藤堂は無言でタラップを昇ってC.C.の元へと上がる。
「扇。部屋は士官ので良いからな。‥‥前の主とは相性が宜しくないだろうし」
C.C.が指示を出そうとしている扇に追加注文を出した。
前の主とはユーフェミアの事で、なるほどゼロを騙して攻撃した相手の部屋を使うのははばかられると納得した。
そこへ、ゼロを抱えた藤堂がコックピットから出て来る。
普段、誰にも頼ろうとせず、他を圧するゼロが、力なく藤堂に身体を預けてる様子に一同絶句する。
この時初めて、ゼロに護られてきていた騎士団は、ゼロをこそ守るべきではないかと言う考えに思い至った。


「ゼロって白い肌してるのね~。キメも細かいし、それに細身だわ~」
などとのんびりな口調で感想を述べながらも、ラクシャータの手付きは的確に素早く傷口を治療していた。
ゼロからの反論がないのは、口を開く気力がないからに過ぎない。
「‥‥しかし、無茶をしたもんね~。あんた、刺さった状態のまんま、暴れたりしたんでしょう。少しは自分も労わりなさい」
手当を終えたラクシャータは銜えていた煙管で最後に傷のある肩を叩こうとして、結局仮面を軽く小突くに留めて離れる。
「言っとくけどぉ、当分は絶対安静よぉ~。無理をしたら、まぁた一からやり直すからね~」
そういうと、ラクシャータは返事も待たずに部屋を後にした。

廊下に出て扉を閉めた途端、ラクシャータはその場に集まっていた幹部から取り巻かれてしまう。
「ゼロの容体は?平気なの?」
カレンが真っ先に尋ね、扇達が固唾を呑んでラクシャータの言葉を待つ。
「べっつに~。命がどうのって話にはならないわよ~。しばらくは安静にしてるしかないだろうけどね~」
それでも口々にゼロの安否を尋ねだす騎士団の中で、朝比奈が別の事を尋ねた。
「‥‥あのー。藤堂さんはまだ中ですよねー。どうしてるんですかぁ?」
問われたラクシャータはチラリと扇を見てから言った。
「あぁ。C.C.がね~。当分は藤堂に任せるからってぇ。ほら、ゼロの言いたい事一番理解するじゃない?あまり話させたくないらしいのよねぇ。‥‥賛成だけど」
確かに、実際の戦闘に関してならば、阿吽の呼吸と言える程の息の合った動きも見せるので、反論はない。
「だから、副司令の扇には悪いけどぉ、藤堂から話を聞くように~、らしいわよ~」
ヒラヒラと手を振って、ラクシャータは歩き出す。
悪いけどと言われても、現在扇のする事ははっきりしているし、急を要するのはブリタニアの再攻勢についてだろうから、扇にも否やはなかった。
それぞれゼロの仮の部屋となった扉を振り返ってから、ラクシャータの後に続いた。
「とにかく、藤堂さんが戻るまでは、各自後片付けやナイトメアフレームの整備に当たってくれ」
扇が歩きながらそう指示を出すと、銘々に頷いて、する事のある者は散って行った。


一方、ゼロの部屋では。
「おい、その服は血だらけなんだから、ベッドに上がる前に着換えろよ。‥‥なんなら手伝ってやろうか?」
いまだソファに座ったままのゼロを相手に、C.C.がセクハラ紛いの事を言っていた。
C.C.の言った通り、ゼロの服一式は、マントに至るまで、血がこびりついていて既に使い物にならなくなっている。
ついでにラクシャータによって手当をされる時に、アンダーシャツには鋏が入れられていて、現在上半身は包帯だけと言う有様だった。
その状態でも仮面を被っているので、ハッキリ言っておかしいのだ。

「‥‥ゼロ、‥‥いや、ルルーシュ君」
躊躇いがちに藤堂が呟いた途端、ゼロの肩が揺れ、それが傷を刺激したのか、息を呑む音が響く。
そう、藤堂は既にゼロの正体を知っていると言うのに、ラクシャータが出て行ってからも、仮面を取らない事に訝しんだのだが。
「C.C.。‥‥着替えと、‥‥アレも‥‥頼む」
「良いだろう。‥‥少し待っていろ。‥‥まぁ眠っていても構わないぞ。‥‥藤堂、あまり無理はさせるなよ」
C.C.は溜息を吐くと、鋭い視線を藤堂に残して、部屋を出て行った。

ユーフェミアと二人だけの時、いったい何があったのか、藤堂はそれを尋ねたいと思ったが、今のゼロにそれを問うのは酷だと理解してもいた。
治療の間、ずっと壁に寄り掛かっていた藤堂は、すっと前に出た。
途端に、ゼロの身が強張るのが遠目にも見えて、藤堂は眉を顰める。
周囲全てに、いや、C.C.を除く全てに警戒しているゼロに、藤堂は己の不甲斐無さを感じていた。
それでも、足は止めずにゼロに近づき、そのまま隣に腰かけた。
「‥‥仮面を取るのが不都合だと言うのなら、それでも構わないが‥‥もう少しおれを頼って欲しいな」
自分が軍事の総責任者だと言う事は理解しているし、である以上、さっさと外に出て指揮を執る必要がある事も藤堂には分かっていた。
それでも、この状態のゼロを一人にしておく事は出来ない事もわかっていたのだ。
フッとゼロの緊張が解けた気がしたと藤堂が思った途端、藤堂の肩にゼロの仮面が当たり、寄りかかってくるのがわかった。
「傍にいる。誰がどんな理由で、お前の敵に回ろうと、おれはお前の傍にいよう」
それは今回の発端が何だったのかを知らない藤堂の、この場で言えるただ一つの事だった。

「‥‥‥‥すまない‥‥」
ゼロの呟きは、あまりにも小さく、藤堂がその音を拾い脳に意味を到達させた時には、ゼロは意識を手放していた。

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作成 2008.01.06 
アップ 2008.01.22 

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