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ユーフェミアをその騎士スザクに任せて、半ば引きずるようにしてロイドを連れ出したセシルは、そのまま手近な空き部屋に連れ込んでいた。
「どーしたんだぃ?セシルくん」
「とぼけないでください、ロイドさん。‥‥本当に発表されてしまうのでしょうか‥‥皇女殿下の件は‥‥」
セシルはいつもの調子でのらくらと発言するロイドにきつく言ってから、一転不安そうな様子で訊ねる。
「そりゃ、皇帝陛下が許可したっていうくらいだしね。近日中には発表があるだろうねぇ」
室内を見回していたロイドは興味なさげに応じて、見つけた椅子に座った。
「なんとかならないんですか?スザク君、せっかく騎士になれたのですし‥‥」
セシルが重ねてロイドに問いかける。
「それはぼくに言うことじゃないよね、セシルくん。それに、一番の問題はそこじゃないしー?」
ロイドはあくまでも普段通りだ。
「それはわかってます。あのゼロの言が正しいかどうかは置くとしても、"日本人"達の反感は買いますよね、絶対」
「うん、それは確実だね‥‥。コーネリア殿下に一言相談していれば、こんな事にはならなかったんだろうけど」
「ダールトン将軍は知っていらしたんでしょうか?」
「どうかな。せっかく姉君がお付けになった補佐役だって言うのに、将軍も可哀想だよねー。立つ瀬ない上に行方不明だしぃ?」
式典会場で戦闘前に姿を見たのが最後だと言う、ユーフェミアの補佐役を二人は思い浮かべる。
だが、ロイドはそれも一瞬で終わらせてしまう。
「それよりも、ぼく達はこの後が大変だよ~、セシルくん。コーネリア殿下が向かっているからね~。合流したら、こんなのんびりとはしてられないよー?」
「コーネリア皇女殿下はどうなさるおつもりでしょう?」
「さぁね~。最悪、妹姫を本国に‥‥う~ん、それもまずいかなぁ。殿下の庇護がない状態で本国にいるのもまずくなるだろうし?」
「でも、このままエリア11に留まっているのも‥‥」
「ここで、ぼく達が頭を悩ませていてもどうにもならないんだけどね~。まぁ、早目に気づけて良かったんじゃないの?」
ロイドは明るく突き放す言い方をした。
「‥‥どういう事ですか?」
「『行政特区日本』が始まってからだともっと大変だったと思うよ~?ぼくは」
「‥‥それは、」
「行政特区日本」の成立が「ユーフェミア・リ・ブリタニア」の名前で宣言される。
次いで、その「ユーフェミア・リ・ブリタニア」の廃嫡が宣言される。
すると、「行政特区日本」は有名無実の空手形になり、そこに集う"日本人"達もまた"イレブン"に逆戻りする事になる。
また、「ユーフェミア・リ・ブリタニア」廃嫡宣言のタイミングによっては、あぶれた"イレブン"による暴動が起きていたかも知れない。
そうすると、他のエリアでも同様の「特区」を求める運動や、暴動が起こるだろう。
そして、「行政特区日本」に参加した"日本人"となっていて"イレブン"に戻った人達も当然、「ユーフェミア」に対する怒りを抑えられないに違いない。
「あの場所で、ゼロが暴露したせいで、この程度で済んでいるのかも知れないよね~この騒ぎ」
「でも、」
反論をしようとしたセシルを制止して、ロイドは続ける。
「ぼくはねー。あのタイミングまで、ゼロは発言を控えていたんだと思うんだよねー」
「‥‥どういう事ですか?ロイドさん」
訝しげに顔を顰めるセシルが声を低くして訊ねるのだが、ロイドの答えはセシルにとって難解だった。
「ゼロはユーフェミア様に撃たれていたにも関わらず、誰の名前で『特区』が宣言されるのか、それまで待っていたんだと思うよーって」
「だから、それはどうしてですか?」
さっぱりわからないセシルはイライラ感を募らせるが、ロイドには全然通じない。
「んー。もしかしたら、別の名前で宣言されるのならば、大人しく引き下がる気が有ったのかな~って思ったんだよねー」
言いながらロイドはゼロのセリフを思い出す。
『第二皇女「コーネリア・リ・ブリタニア」か、第二皇子「シュナイゼル・エル・ブリタニア」の名前でなければ、機能しない事も、念頭になかったのですか?』
つまりゼロにはその二人の名前で宣言されていれば、「特区」に参加する意思が有ったのではないか、と思ったのだが。
「ま、その辺は、本人に聞かないとわからないんだろうけどね~。つまりゼロにとっては、本当にお姫様は『裏切り者』なんだろうなーと」
結局、ロイドの口調は、最後まで変わらなかったのである。
一方コーネリアは、アヴァロンに合流するべく、移動中であった。
「‥‥姫様」
執務机に両肘をついて組んだ手の上に額を乗せたコーネリアの様子に、心配したギルフォードが声をかける。
つい先程、第二皇子シュナイゼルからの通信が有ったばかりなのだ。
それまでは、ゼロの偽りだと思っていた、コーネリアの最愛の妹姫が「名前を返上した」件が事実なのだと知らされ、かなり凹んでいるのだ。
「‥‥わたしは、‥‥そんなに頼りない姉だっただろうか?ギルフォード」
ポツリと、コーネリアが呟く声には全くと言って良い程、力がなかった。
「いえ、そんな事はありません。姫様はとても頼りにされておりましたとも」
ギルフォードは反射的にそう返しながらも、妹姫であるユーフェミアに、勿論無理なのだが一言言いたい気分になってくる。
そう、せめて補佐につけたダールトン将軍にくらい相談していれば、きっと、何が何でも止めていたはずなのに、とギルフォードは確信している。
きっと、一人で考えて一人で決めて、一人で皇帝陛下に連絡を入れたのだろうと思うと、かなり悔しいと思うギルフォードだった。
「皇帝陛下に、発表を控えていただくように進言出来ないものなのでしょうか?」
ギルフォードは一番被害の少ない案を尋ねる。
「返上する」件がないのであれば、ユーフェミアの所業はゼロに対してのみの詐称だけと言う事になり、反感は最小限で済むはずなのだ。
「‥‥無駄だな。あの父上が、こんなチャンスを逃すとは思えない」
力なく頭を振るコーネリアは、自分が今情けない顔をしているとわかっているので、顔をあげる事が出来なかった。
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作成 2008.01.07
アップ 2008.01.25
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「おれを撃て」【7】特派(ロイド+セシル)、合流中のコーネリア+ギルフォード。
このままユフィが生きて廃嫡→スザク解任もありかなぁ~。
現時点でダールトンが一番不幸?
そしてロイドはやっぱりゼロ寄り?
あのタイミングまで待ってた理由とか。
もっと悪く取ろうと思えば出来るんですよね。
「ユーフェミアにダメージを与える為に、あのタイミングまで待っていた」‥‥とか。
あ、コーネリアの方が不幸かも。