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おれがゼロを初めて見たのは、イレブン総督のクロヴィス皇子暗殺犯として逮捕された、枢木スザクの護送を放送している番組でだった。
相手の用意した茶番、何かしら罠が在るだろうその場所に、わざわざ出向く必要はないと言い切り、おれは傍にいた解放戦線の同志達を抑えていたのだが。
まさか堂々と現れ、且つ真犯人として名乗りを上げ、無事に枢木スザクを救出して脱出に成功するとは、と感心したものだった。
枢木スザクとは面識もあり、その無事は嬉しい事ではあるが、ゼロと名乗ったクロヴィス暗殺の真犯人の真意が読めず、苛立ちも覚えていた。
次に見たのは、河口湖事件の報道でだった。
解放戦線の中でも強硬派がホテルジャックをおこない、ブリタニアの一般人を人質として立てこもっていた場所に、ゼロは現れた。
強硬派達を倒し、ブリタニアの一般人を救い、仲間と共に姿を見せたゼロは、「黒の騎士団」を名乗って「世界を裁く」と宣言していた。
イレブンもブリタニアもなく、弱きを助け強きを挫くのだと、言ってのけたゼロ。
その言葉通りの活躍を、ゼロと黒の騎士団がしてみせていた事は、その後連日のように賑わしている紙面でも確認できていた。
ゼロと実際に対面したのは、おれがブリタニアに捕まり、処刑される事になった後だった。
おれを助ける為に現れたゼロは、「奇跡の責任を取れ」とおれに迫ってきた。
余力を残して敗北した日本人は、「厳島の奇跡」があるからこそ、余計にテロ活動が盛んになっているのは、間違いようのない事実だ。
だからこそおれはこの場で大人しく処刑されるわけにはいかず、ゼロの手を取っていた。
黒の騎士団のアジトに戻った後、ゼロの様子がおかしい事に誰もが気づいた。
みんながナイトメアフレームから降りても、一人だけ出てこようとしなかったゼロ。
騎士団の幹部達が、心配そうにゼロの乗る無頼を見上げる中、そのコックピットからは狂気を窺わせるゼロの笑い声が響いてきたのだ。
おれもまた表情を曇らせて無頼を見ていたし、後ろでは四聖剣が顔を見合わせていたのも判っていた。
暫くして、気が済んだのか笑い声の止んだ無頼から、ゼロが降りてきた。
ゼロがタラップを降り切るまで、誰も発言するものはいなかったが、降りた後、紅蓮弐式に乗っていた少女がゼロに駆け寄って尋ねた。
「あの、ゼロ。大丈夫ですか?」
「あぁ、カレンか。‥わたしは大丈夫だ。なんともない」
それはさっきまで、狂気を孕んだ笑声を響かせていたとは思えない程、落ち着いた声だった。
カレンと呼ばれた少女は、戸惑いながらも再度声を掛けた。
「あ、あの。先程は何故笑っていたのですか?」
ゼロは少女の方を向き(仮面を向け)、数瞬間を置いてから「あぁ」と頷いた。
「聞こえていたのか。少々皮肉でな。我が事ながら、あまりにも滑稽だったから笑っていただけだ」
少女の反応がなかったのをどう取ったのか、ゼロは少し置いて続ける。
「以前、枢木を助けたのは、枢木の無実をわたし自身が良く知っていた事と、弱者だと思っての事。だが、それ以前に既に牙を剥かれていたとはな‥」
そう言ったゼロの言葉に、少女を含めた黒の騎士団の面々は、納得顔になって頷いた。
それはゼロがゼロと名乗る前に、既に白兜と一戦交えていた事をあらわしていた。
少女から離れたゼロがおれの前まで来て立ち止まる。
「さて、『奇跡の藤堂』、それに四聖剣。黒の騎士団と行動を共にするか、それとも袂を分かつか‥。その返答を聞かせてもらおうか」
ゼロの問いによって、背後に感じた息を呑む気配に、チラと見れば、四聖剣の四人はそれぞれ酢を飲んだような表情をしてゼロを凝視していた。
それでも何も言わない四人からゼロに視線を戻すと、おれは口を開いた。
「‥共にしない、そう言えばゼロ、お前はどうする気だ?」
おれの言葉に、仮面のせいで表情の変化を知りようもないが、それでもこの場の空気が凍ったように感じた。
ザワリと黒の騎士団からざわめきが起こったのも、その変化を感じたからだろう。
「‥‥四聖剣。お前達はどうする?」
キリリと歯を噛み締める音の後に、千葉が口を開く。
「わたしはッ、‥中佐と行動を共にする」
「おれも藤堂さんに従います」
「おれも同じく」
続いて朝比奈と卜部が賛同したが、仙波だけは異なっていた。
「‥‥藤堂中佐を助けていただいた恩を返すまでは、ゼロに従おうと思う」
「「「仙波さんッ!?」」」
驚いた残りの三人が仙波の名を呼んでいた。
ゼロが溜息を吐く。
「それならば、月下をくれてやる。‥五人とも、すぐにこの場から立ち去れ。あぁ、この場所の事は他言無用に願いたいな」
ゼロは突き放すように言い切った。
この言葉に驚いたのは、残ると言った仙波と、白衣を着た褐色の肌のブリタニア女性だ。
「なッ、わしは残ると‥」
「ちょっとちょっと~。月下はキョウトが騎士団に寄越したナイトメアフレームなのよ~。出て行く者にそんなに簡単に渡しちゃって良いわけ~?」
だが、ゼロは少しも慌てず双方に言い返した。
「仙波。それは今回の戦いで十分だ。ラクシャータ。月下は初めから藤堂と四聖剣用として回って来た物。ならば当人に渡すのは筋に通っている」
おれは驚いた。
ラクシャータと呼ばれた科学者らしいブリタニア女性に向けたゼロの言葉は、すなわちキョウトがおれ達が騎士団と合流する事を察知していた事になる。
「なぁにそれ~。じゃあ月下を要請した時には、彼等が合流する事を予測してたわけ~?」
「あぁ。可能性としては七割程だと予測していた。合流した時、使えるナイトメアフレームがなければ、即座に動けまい?」
それでもゼロは平然と言ってのけ、おれは息を吐き出した。
「‥‥良いだろう。行動を共にしても良い。‥だが、その前に一つ質問に答えてもらいたい」
ゼロはブリタニア女性からおれへと顔を向けなおして頷いた。
「‥‥。答えられる事ならば、答えよう」
「‥‥‥‥‥。おれは、以前、お前に会った事があるだろうか?」
おれのその言葉に、そこかしこから叫び声が上がる。
朝比奈なども、「藤堂さん、それ本当ですか?」とか、「どうしてわかったんですか?」とかの言葉を口走っている。
暫くして静かになるまで、ゼロは黙ったままおれを見ていたと思う。
そして、静かになった後、ゼロはやっと口を開いた。
「‥ほぉ?どうしてそう思う?」
「以前、‥いや、七年前に一度」
問いで返すゼロに、おれは言い直した。
「‥‥‥。久しいな、藤堂。しかし、何故分かった?‥いや、それよりも、それを承知の上での言葉か?」
ゼロが認めると、再びざわめきが起こる。
近くだからか朝比奈の声が良く届く。
「七年前にたった一度?それでなんでわかるんですか、藤堂さんッ。てか仮面被ってるのにどうして?」
とひたすら驚いている朝比奈の声に被って、騎士団の、特に紅蓮弐式の少女と、ブリタニアの男一人の声が大きいようだった。
「承知の上で、だ。力になろう。あの日、『ブリタニアをぶっ壊す』‥そう言った言葉に嘘はないと分かっているからな」
おれはそう言い、一度月下に視線を向けてから続けた。
「それはキョウトも承知しているようだから、気兼ねもいらないだろう」
ゼロがフッと笑う。
「桐原公も、わたしと藤堂に面識がある事を知っていたのだから当然だな。しかし、何処でわかったのだ?」
首を傾げるゼロに、おれは呆れる。
ゼロの言葉、主張はそのまま、七年前の彼の言い分そのままだったし、行動を見ていれば或いはと思って当然だと思うのだが。
逆にスザク君が敵に回っている事に驚きを禁じえなかったくらいなのだ。
あの時、ゼロの素性に確信が持てなかったとはいえ、スザク君を焚きつけるような事を言ってしまったと、少しばかり後悔がないでもない。
そして改めて思うのだ、ナイトメアフレームでの笑いの意味を。
かつての、そして或いは今もまだ親友であろう二人。
その、かたや相手を救おうとして立ち上がり、かたや相手の邪魔をするために立ちはだかっているのだ、笑うしかないという心境だったのだろう。
「‥‥それをこの場で言っても構わないのか?ゼロ」
「なるほど。そうだな。では着替えたらわたしの部屋に来て貰おうか。昔話をしよう」
「了解した」
おれとゼロはそう言って頷きあった。
すると、三度ざわめきが起こっていた。
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作成 2008.01.08
アップ 2008.01.26
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17話の後 【1】騎士団格納庫より。藤堂にゼロバレ。
前置きとして藤堂視点の17話までのゼロについての語りを入れてみた。
とりあえず積極的に情報収集をしてないだろう藤堂の入手出来る情報はこれくらいかなぁと。
そして、藤堂には仮面を取らないまま察して欲しいかなぁとかw
月下は藤堂と四聖剣の為に依頼していて欲しいなぁとかw色々願望が(汗
....気になった笑声についてはフォロー終わってしまったけれど、続きます。